カイト x 転生 x 坐殺博徒   作:なほやん

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6話からの連続投稿です。


エピローグ

 

 東ゴルトー、戦争兵器の実験場地下にて。

 

 キメラアントの王とハンター協会の会長ネテロとの戦いは佳境を迎えていた。

 

「もう決して二度言うことはないぞ。余の名を言え……!」

 

 王の声には、静かな威厳と共に、どこか寂しげな響きが込められていた。この老戦士に対する敬意と、戦いの終わりを予感させる哀愁が混じっている。

 

 左腕と右足をもがれ、残る生命エネルギーの全てを放出し尽くしたネテロ。その姿は、もはや骨と皮だけになった老人の成れの果てだった。しかし、その瞳だけは最後まで闘志の炎を燃やし続けている。

 

 ネテロの武を心から讃え、自らの名前を問うた王に対し、老戦士は最後の力を振り絞って答える。

 

「……くくく。俺は一人じゃねェ……人間を舐めるなよ、メルエム……!!」

 

 その瞬間、王の真の名前を告げたネテロの次の言葉が、突然の天井崩壊によって遮られた。

 

 轟音と共に大量の瓦礫が降り注ぎ、新たな闖入者の存在を告げる。

 

「少し痩せたか?会長」

 

 天井を突き破って舞い散る瓦礫の中から、カイトが軽やかに二人の元へと降り立った。

 

 メルエムは新たな来訪者に興味深そうな視線を向ける。

 

「其の方、名は?」

 

 メルエムの問いかけは、単なる名前の確認ではない。相手への敬意を示す、格式ばった挨拶であった。

 

「カイトだ……お前は?」

 

 カイトの返答もまた、率直で飾り気がない。しかし、その中には相手を対等に見る姿勢が込められていた。

 

「余は……余の名は、メルエム」

 

 メルエムは噛み締めるように、その存在を確かめるように、母より与えられた自らの名前を口にする。

 

 それは自分という存在の宣言だった。

 

 今まさに蟻から人へと変貌を遂げようとするメルエムの姿を見て、カイトは満足げに微笑んだ。

 

 しかし、その時ふと気が付く——それまで微かに聞こえていた、規則正しい音楽のようなリズムが消えていることに。

 

 ——ラウンド終了まではまだ時間があるはず……いや、違う!今消えた音は会長の心音……!!

 

 慌てて振り向いたカイトの目に映ったのは、先ほどまでの鬼のような闘志に満ちた顔から一転し、穏やかな笑顔を浮かべたネテロの顔だった。

 

 会長は、すでに——

 

 瞬間、恐るべき装置が作動を開始した。

 

 それは貧者の薔薇(ミニチュア・ローズ)——低予算で小型でありながら、驚くほどの殺傷能力を誇る大量破壊兵器。

 

 敵を完全に排除するためであれば、自らの体内に大量破壊兵器を埋め込むことさえ厭わない。それは人間という種族が持つ底知れない悪意と執念の結晶だった。

 

 薔薇の起爆に要するその瞬間、生まれて初めての恐怖を体感し、全身に戦慄が走るメルエム。

 

 しかし、その極限状態の最中、時間が引き伸ばされたような感覚の中、メルエムは確かに聞いた——

 

「領域展開」

 

 大当たり中の領域展開——

 

 それは本来、坐殺博徒の設計には存在しない特殊な状況だった。しかし、その想定外の状況が、能力の性質そのものを根本から書き換えてしまう。

 

 領域の外に弾き飛ばされるメルエムの脳内に、突如として膨大な情報が流れ込んできた。それはカイトが転生前の記憶として蓄積していた、この世界の未来に関する全ての知識。

 

 薔薇、会長選挙、暗黒大陸、自らの本来の運命——愛する人と共に静かに死を迎える最期。

 

 そして、カイトの思い。

 

 荒れ狂う爆炎と衝撃波は領域の中に封じ込められ、その毒は、反転術式により中和され、完全に無害化される。

 

 薔薇は花を咲かせなかった。

 

    ◇ ◆ ◇

 

 東ゴルトー共和国 総帥による大虐殺"未遂"から数ヶ月。

 

 小さな少女を抱いた一人の人間と四人の「新種の魔獣」が並んでいた。

 

「ああ!この方こそメルエム様とコムギ様の命の恩人の生まれ変わり!!奇跡のご令妹様!!!」

 

「うるせェぞプフ!妹様が起きちまうじゃねェか!!」

 

「ユピーこそ声がでかいニャ!それにしてもまさかこんなに可愛い姿になっちゃうなんてニャ〜」

 

「お優すそうなお顔がメルエム様……メルエムにそっくりです!」

 

「まだ呼びなれぬか、コムギ」

 

 あの者の意思を継ぎ、皆を救う——

 

 それは無数にそそり立つ釘の中から正解を導き出し、正確に鋼球を貫き通し、その先の入賞口に入れるが如く。

 

 その作業は難事なれど、やってみせよう!!余には叶う!!

 

 だが今はまず——

 

 メルエムは、すやすやと眠る小さな妹に向かって、優しく語りかけた。その子は幼い体に似合わない大きすぎる青いハンチング帽を被り、安らかな寝息を立てている。

 

「起きろカイト!打つぞ!!」

 





最後のこのネタをやりたいがために書き始めたところあれよあれよと言う間に沢山の方に感想や評価をいただき、いまだに驚きと感謝が止まりません。

ちなみに最後にTS転生を果たしますが、

> ※「転生」「憑依」「性転換」については、原作で転生・憑依・性転換しているキャラクターの場合は設定不要
https://syosetu.org/?mode=readme_view&fid=17

に従ってタグはつけませんことをご了承ください。

お読みいただき誠にありがとうございました!


20250916_前書き追加、後書き微修正、地の文内の王、メルエム表記を修正
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