元社会人、異世界にTS召喚される。 作:名無しの投稿者
ヴェラルドルフさん達の話し合いが終わり、やはりというべきか。私は収穫祭に行けなくなった。
私に課せられた試練がどんなものかわからないため、都市に被害の行かないよう。来客や住民達への被害を抑えるために、私は一日目の夜中から隔離されている。
具体的には、部屋でアストラと寝ていると、フローラさんに起こされ、着替えることもなく。夜行馬車にジュラさんと乗せられて、ランベルト領の都市。エルキシュ王国の二番目に大きな商業都市エリシュ・トゥリスから離れた集落、テケリに移送された。
テケリは、ランベルト領内でもっとも小さく、特産品も特にない。今ではほぼ廃村同然であり、テケリの管理を任されているヨッター夫妻とその親戚が暮らしている。
なんでも、ヨッター夫人。ヨヨイ・ヨッターさんは、《風と旅のアエリウス》の預言者をしていたらしく。風の加護を受けているという。
風の加護があれば、旅をする風達から話を聞くことが出来るそうで、遠くの街で何が起こっているのか。何が起ころうとしているのかを知ることが出来るのだとか。
会話ってことは、言語だろうから
「──という感じさね」
「……は、あく」
「全く。ヴェラルドルフの坊も無茶を言う。こっちは年老いたババアだってのにさ。話はおしまい。不寝番してやるから、お前さんは寝なよ」
ジュラさんが溜息をつきながら私に毛布を投げ渡す。
素直に受け取るけど、……眠くないんだよね。と言うか、眠気は元々ない。
この世界に来てからだが、眠気を感じる事はあまりない。だから、夜はとりあえず目を閉じて横になっているか、暗い部屋の中でアストラの寝顔をぼーっと眺めていることが多い。夢を見たのも、寝たと言っていいのかわからないけど、寝れただろう経験も窮極の門へ行ったあの日以外存在しない。
……これを話してもいいけど、御者に聞かれるのは少しまずいのかもしれない。
この世界の言語で話すよりは発音しやすいし、ジュラさんには通じるから古代語でいいか。
『この世、界。来てから。眠気。感じない』
突然古代語を話す私に混乱したのか、手を前に出して私に少し待てと合図を送り、少し考える。
「いつからだい? まさか、二年前からずっと」
「……(頷く)」
この体は既存生命とは異なるモノらしく。食事も不要、睡眠も……おそらく不要。限界まで稼働し続けることが出来る体なんだろう。
寝なくても働けると言う嬉しいような嬉しくないような身体だ。ジュラさんがわざわざ不寝番をしなくても問題ないだろう。
「まさか、自分は寝なくてもいいから、アタシに寝ろって言うつもりじゃないだろうね」
「……(頷く)」
「あまりアタシを舐めるんじゃないよ。確かに、身体は老いたがこう言う時のための薬だってあるんだ。中身がどうであれ、お前さんはまだまだ子供。それに、試練がいつ訪れるかわからないんだ。心穏やかな内に寝な。若いうちからちゃんと寝ておかないと、アタシぐらいの歳まで生きれないよ」
「……ジュラ、さんが。寝るべき」
いや、薬でどうにかするとかじゃなくて、歳なんだから寝て欲しい。
「ガキに気を遣われるほどアタシは弱くないよ。いいから横になりな」
私は寝ないのに。
まあ、体裁とかもあるんだろう。ジュラさんはかなり有名な人みたいだし、子供を起こして自分が寝ていたなんてことは避けたいんだろう。
「……私、も起きる。番する。だ、から。ジュラさ、ん。も、寝る」
「はいはい。アタシを寝かせたいのはわかったから。交代の時間になったら呼んでやるから、先に寝な」
「……(頷く)」
とりあえず横になって目を閉じる。でも耳は閉じない。耳を澄ませて警戒するぐらい許してくれるだろう。
……とはいっても、暇だ。やることがない。とりあえず、魔素を練って魔力でも──
「ルナーラ。お前さん、練魔するなら少しずつやりな。馬が怯えちまう」
「……」
少量ずつ練って取り込むしかないらしい。まあ、暇つぶしには良いか。
それはそうと、私の魔力許容量ってどれだけなんだろう。限界まで取り込んだことないからわからないけど、許容量が近づくと胸や腹が張るような不快感があるらしい。感覚としては、満腹感に近いのだとか。
二年前に限界まで入れようとしたことがあったけど、ジュラさんに止められた。
総量がジュラさんの蓄えてある魔力量を超えてしまった為に、暴発させた時に抑えられる人がいなかった。その為、それ以上は安全を保証できないとして蓄えないように言われた。
そして、蓄えたものは体外へ排出し、魔素に戻して霧散させた。それはそれで怒られたけど。転化系の魔術が扱えれば、水にしたり、火にしたりと出来た……。でも、こればっかりは適性がなさ過ぎて出来なかった。
蓄えられる量は限界まで蓄え、消費する。蓄え、消費するを繰り返すことにより増加していく。
成長期であれば飛躍的に増えて行くものなのだという。
一応人間で言うところの成長期であるが、人外であるらしい私にそれが適応されるのかはわからない。
「あと、限界まで蓄えようとかも考えるんじゃないよ。アタシがカバー出来るだけにしておいてくれ」
「……」
……大人しくしておこう。
しばらくして、ジュラさんの声が耳に入った。
「……起きな。交代だ。アタシは寝るよ」
「……ん」
ちゃんと声かけてくれるのね。
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「ハーイ。ようこソ、テケリへ」
「お待ちしていました。ルナーラちゃん」
早朝。
明け方に着いた集落、テケリ。
出迎えてくれたのは青草色の肌を持ち、体に蔦を這わせた妖魔族の女性。ヨヨイ・ヨッターさんと、如何にも農夫と言った風貌のおじいさん。全体的に白毛になったカールおじさんの様な見た目のルロイ・ヨッターさん。
貴族の生まれでありながら農夫として開拓の道を歩むことを決めた変わり者。
……というか、他種族と繁殖に至れる時点でかなりの変わり者だと思う。
「風タチから、ルナーラサマのことハ聞いてマース。大変デスねー。ココは人里離れたバショ。貴方ハ試練で人への危害を気にしなくてもイイ場所。試練のオワリまで、ごゆるりとドウゾー」
「……ん、よろし、く。おね……します」
「ハァーイ、コチラこそ。よろしくデース」
「にゅっ!」
強めに抱きつかれたせいで変な声が漏れてしまった。苦しい。ひぃ、全身に蔦が這ってきて気持ち悪い。
「フーン。ワタしには、普通のヒト種の幼体にし思エませんネー」
妖魔族。
魔人種の中でも魔種へ最も近い因子を持つ種族で、種族として一番まとまりのない姿をしている。
話を聞いた話だと、ヨヨイさんは妖魔族の仲でも、魔種の樹林族。
植物と会話できたり、ドライアドの血液は植物の成長を促進する効果があるとされている。実際のところ、成長促進作用を持つのはドライアドの血液ではなく、存在そのものなので、血液を蒔いても効果はないのだとか。
「ヨヨイ。久しぶりのお客さんが嬉しいのはわかるが、離してあげなさい。蔦で覆いすぎだよ」
「オーぅ、ゴメンナサーイ。嬉しくなってシマイました」
「……大、丈夫」
私に絡みついていた蔦が、ガサガサとヨヨイさんの体に戻って行く。まだ蔦が体を這う感覚がする。
「ルナーラちゃん。僕の妻が失礼したね。お詫びと言っては何だけど、さっき採れたばかりのボンバートウモロコシがあるんだ。食べるかい?」
「……ん。食べる」
「ハーイ、どーゾ。ワタしは生で食べルけド。まだ幼体のルナーラさまにハ、エグ味が強いデースから。焼きマースネ。アチチは苦手デースが、──鍬に灯る火ヨ 豊穣へ感謝ノ火を 〝焚き火〟。着火ファイアー、アチチのチデース。火傷、気をつけてネ」
「……あり、がとう」
魔術を使って焼かれたボンバートウモロコシなるモノを貰い、一口齧った。
「……──!」
「どーデス、美味しイでショー?」
「」
「夢中デースね」
美味い。焼いたトウモロコシの香ばしい匂いに、齧ると口いっぱいに広がる後味の引かないさっぱりとした甘さ。プチプチとした食感。
美味い。ずっと食べていたい。これを食べているだけで、幸せになれる気がする。アストラにも分けてあげたい。きっと、良い笑顔で食べてくれるだろう。
「大導師様もどうですか」
「アタシは要らないよ。あんな合法麻薬、年寄りにはもう刺激が強くてね」
「……え゙?」
合法麻薬? え、これ危ないやつ?
「……食べ、ちゃった」
食べちゃったよ。ペロリと丸々一本。
「ん? どうしたんだい、そんな顔して」
「…………麻薬。ダメ、お薬」
「ああ、あれは言葉のあやだよ。中毒成分があったりするわけじゃない。美味すぎて絶滅しかけの品種なのさね、この植物は」
ああ、危ないお薬とかではないのね。
「全く、生物ってのは不思議な進化の仕方をするものでね。美味しければ動物が食べる様になる。そして、食べられ、食べた存在を介して新たな地へ行き、繁殖する様になる。しかし、このボンバートウモロコシは、知能の高いヒト種や魔人種と言った種に品種改良がされてしまってね。子孫が残りにくくなってしまったのさ」
食べられる為においしく進化したら、美味しすぎて絶滅しかけたのか。そして、改良された結果それが加速したと……。うーむ、不思議植物だ。
と言うか、絶滅危惧種なら余計食べたらダメなのでは?
「ここにあるのは原種だからね。市場に出回っているのより味は落ちるけど、これはこれで良い味しているだろう?」
「……ん。美味しい」
「まだあるけど、食べるかい?」
「……アストラ、にお土産」
「ああ、たくさんあるから安心すると良い。帰る時は、好きなだけ持って行くと良いよ」
やったね。試練が終わったらアストラ達と食べよう。
美味しいって喜んでくれるかなー。
「こう言う時は、お前さん年相応なんだがねぇ」
一応、今は
「なにカあっテも。ワタしが風たちから色々キけマース。ナノデ、安心してネ、ルナーラサマの姉さまにナニかあっても、ワタしが素早くオツタエしマースネ」
「ルナーラの試練なら、アストラにも何かあるかもしれないからね。対策はしてあるから、大事にはならないはずさね」
「……わかった」
……そうか。なら、……何もないといいんだけど、そうもいかない様な気がしてならない。
──ドクンッ。
紐を通し、私の首から下げられた白銀の鍵が脈打つ様な。私を不安にする気配がした。
設定段階からなんですけど、この世界種族多くないですかね。