元社会人、異世界にTS召喚される。 作:名無しの投稿者
可愛い可愛いあの子が登場しますね。
作者はコイツに何度も殺されてるので嫌いです。
人の離れた農村(ほぼ廃村)、テケリ。
なぜその名前になったのかと言うと、開拓する頃から。時折『テケリ』と音が聞こえることが頻繁にあったからだとか。
農地として森を拓き、開拓されてからも聞こえるその音は、とても不気味でありながら寂しそうな音を鳴らしていると言う。そして、今でもその音は度々聞こえるのだとか。
そんな音のよく聞こえる森の中は、植物資源が豊富で、山菜やキノコが自生し、珍しい薬草なども生えていることもあるのだとか。
「コレとコレが食べらレルやつデース。アっ! あそこノも食ベレマースヨ」
「……ん。わか、り。ました」
ジュラさん曰く、ただ何もせず、試練までここに居るだけでいい。そう言われたが、何もしないのも悪いし、居心地が悪かった。
そんな時、ヨヨイさんが山菜採りに誘ってくれたのだ。
森のことなら妖魔、樹林族である自分が手に取るようにわかるし、森の外から何か危険が迫ってきても、余程のことがなければ風が教えてくれる。
一定の安全も保証できるし、山菜に対する知識も得られる。私に野草知識をつけるのに丁度いい機会だろうということで、ジュラさんからは送り出された。
「……ヨヨ、イ。さん。これ」
「ソレも食べれマース。美味しいデース」
食べられるモノとそうでないモノを訊ねながら籠に摘んでいく。
……なんとなく見れば。警戒色がないものならまだ安全だろうし。ヨヨイさんは植物に詳しいらしいから変なものはカゴに入れたりしないだろう。
「ワーオ。コレ、珍しイやつネ。とてもオイシいーのヨ」
「……」
ヨヨイさんが見つけて採ったのは、赤くいくつも枝分かれしたような姿をした植物。……前の世界で見たことがある。と言うか、見ればわかる。それは食べたらヤバいものだ。
「コレ、カエンタケ言うデース。苦いケド、オイシーヨ」
「……」
カエンタケって、前世界の知識で言ったらやばいキノコじゃないですか。手に持っても危険とか言う劇物キノコを食えと言うのか。
「あ、デモ。ヒト種は食べれマセーンでしたネ。ワタしが食べるネ」
「……」
妖魔族は食べれるんだ。それ。
……ご機嫌だしいっか。私もジュラさんも食べないし、食べさせにはこないだろう。
「オや? 風たチがナニカ見タみたいデース。ふむふむ、なるホド。今日ハ奥までハ行けマセんネ」
「……なにか、あり、ました?」
「こノ森にハ、ミミクリースライムの外来種ガいマス」
「……外、来種?」
「ハァーイ。その外来種ハ、基本大人しク、こちラヘ危害は加えてキまセン。でも、タマニですガ、森の奥でアバれていたりしマース」
「運が悪イト、中腹アタリまで来まスヨ。今日ハ気が立ってイルみたいデースネ」……なるほど。
にしても、外来種か。この世界の外からヒト種が来ることはあるみたいだけど、魔物的な存在が迷い込むこともあるのかな。
──
ふと頭を過ぎる覚えのある鳴き声。しかも、なにやら言葉として聞こえた。いや、これは……幻視とか、電波を受信しただけ?
それとも、テレパシーが聞こえる範囲に居たりするのか?
──
──
──
──
「マズいデース。運がナイネー。こんなトコロまで来ているナンテ」
「……ヨヨイ、さん」
「逃げマスよ。早く帰っテ、香を炊くデース」
「………………ん」
確かに、寂しそうな声だった。
彼らは、誰を探しているんだろうか。
──
「行キマすヨ。外来種のミミクリースライムは、強いデース。強い魔術、使イマース」
「……わかっ、た」
何者かを探しているミミクリースライムなる魔物。でも、この声は文面越し、言葉越しで何度か耳にしたことがある。
──
この世界に何故いるのかはわからない。でも、あの神話生物ならヒト種として迷い込んでしまっても仕方がない気がする。
漆黒の玉虫色に光る粘液状生物で表面に無数の目が浮いている。不定形で決まった姿を持たず、非常に高い可塑性と延性を持ち、必要に応じて自在に形態を変化させ、さまざまな器官を発生させることができる。タールでできたアメーバのような生物。
歯や目、耳や口、鼻。四肢に至る全てがぐちゃぐちゃで一つの肉の塊の様な姿をしているとされることもある。
とある伝承には、全てはこの存在が変化したモノだとされている。原始的な生物〝ショゴス〟。
──
寂しそうな声が、私の頭に木霊する。
……なんにせよ。どうにかしなければいけなさそうだ。
急いでルロイさんの家まで戻り、ヨヨイさんがその扉を力任せに押し開き、木製の扉はどこかは粉々に砕け散った。
「ダーリン! ミミクリースライムが出まシタ! 早く香ヲ」
「あ、ああ。でも、扉が」
「そんなコト、今は気にしちゃイケまセーン。そんなコトよリ、ルナーラサマを避難さセないト」
ああ、扉がバラバラに。私がどうのこうの言うものではいんだろうけど、ルロイさんが悲しそうな顔をしていらっしゃる。
「ああ、わかったよ。ルナーラちゃん。家で大人しくしていられるかい?」
「……ん」
「よし、いい子だ。……今から焚く香は匂いが強いから少し呼吸が苦しくなるかもしれないけど、我慢してほしい。大導師様、魔物避けの結界は張れますか?」
「アイツが相手なら気休めにしかならないとは思うけどね。必要かい?」
「はい。無いよりはマシでしょうから」
魔物避けの香は効いても、結界は意味をなさないのか。
……そう言えば、私試練中なんだよな。
私はミミクリースライム外来種こと、ショゴスのことを知っている。
ショゴスは何かを探している。
境界を定める。分けると言うっていたし、過去との折り合いというか、決別を求められているのかも?
……これが試練なのでは?
過去との決別のやり方。ショゴスへの対応の仕方なんて、退散を唱えるか。なんとかして倒すしか無い。
しかしながら、原始的な生物といっても人間より遥かに強い。そもそも人間が勝てる相手なんかじゃないけど。
私の過去と関わるやつなんて、こいつぐらいしかこの世界にはいないのではないだろうか。
ニャルラトホテップやヨグ=ソトースも遭遇したけど、あれは意識だけの状態で遭遇している筈だし……。
「はいよ。……どうしたんだい。ルナーラ」
そもそも、なんでショゴスがこんな場所に。南極で生き残ってるんじゃないのか。
「ルナーラ!」
「……! ……なに?」
「考え事してる中悪いけど、警戒を怠るんじゃないよ」
「……ん」
思考に集中しすぎた。
相手はショゴスだ。高い耐久力と高い攻撃力。移動が遅いだけで、腕の様なモノを作ったり、触手を素早く伸ばして貫いてきたりと距離があってもショゴスは対応してくる。
移動が遅いだけで俊敏に動いてくるのがショゴスだ。不意打ちされればこちらはほぼ確実に即死。
──
──
「……近くまで来てるのか」
「村の中まで来るなんて……。こんなの初めてだよ」
「……」
──
──
──
「……なにか話しているのか。それとも、ただの鳴き声なのか。どっちなんだい?」
「あのミミクリースライムから頻繁に鳴っているので、心臓の鼓動のようなモノではないかと」
「随分とうるさい鼓動だね」
「……」
テレパシーじゃない? ジュラさん達にはショゴスが何をいっているのかわからないのか?
「……探し、てる」
「どういうことさ」
「……あの、魔物。誰か、さが、してる」
「あのミミクリースライムが何か言っているのかい」
「……(頷く)」
やっぱり、ジュラさん達にはショゴスが何を言っているのかわからないらしい。
「……〝
──「
──
──
「興奮してるみたいだね。……ルナーラ、あんたなんかやったのかい?」
「……」
──「
──
──
──「
ショゴスは知能が高く、残忍な性格を持つ神話生物。ヨヨイさんの話では、魔術を使える程の知性を持つ存在のはず。
それなのに攻撃性があまりなく、現に探している割には家屋が破壊される様な音は一切しない。何かが這いずるような音と、ショゴスの鳴き声が聞こえる程度だ。
──
──「
私が誰かなんて私が聞きたい。人間、間違いなくヒト種ではないらしいけど、かと言って魔人種でも亜人種でもない。魔種でもない全く未知のナニカ。
──「
「ルナーラ。聞いてるのかい」
──
──
誰かがショゴスを
「……ヨヨ、イ。さん」
「なァニ?」
「……ミミク、リースライ、ム。見たこと、ある?」
「ありマースヨ。そのトきは、機嫌がヨカッたのか。山菜採るオ手伝イしてくれたヨ」
非殺傷。極めて珍しい、攻撃性の殆どない個体なのか?
──
──
──
──「
──
帰りたい。地球にってことか? ……でも、ショゴスの主人である古のものはもう居ない。
それに、ショゴスは信用できない。
腹を貫かれたり、のしかかられて生きたまま食べられたり、頭を吹き飛ばされたり。ゲーム内でも何度もやられた。
「……」
鍵を使って異界に棄てる? それとも、私って
──
──
──
何かが引きずられる音が近くでする。しかし、踵を返す様に元来たであろう方向へと遠くなっていく。
──
──
──「
感情を会得。または模倣するショゴス。本当に悲しんでいるのかはわからないけど。
特異個体のショゴスか。正直、本家。
あらゆる角度から見た。生み出されたショゴスという存在は、一生命として存在しているのだとするなら、寂しがり屋な個体もいて当然と言うことだろうか。
「……行ったミタいデース」
「なんだったのさ。あれは」
「アレが、外来種のミミクリースライムデース。基本的に穏やかな性格なのデースが。……あの様によく音ノ聴こえル時は、気性ガ荒くなりマース」
……寂しいと攻撃性が出てくるのか。面倒だな。
「ルナーラ。考え事をしていたみたいだけど、アレについて何か知ってるのかい?」
「……(頷く)」
「……そうか。なら、お前さんと同じ様なやつってことかい?」
「……わから、ない」
人間がショゴスに関してわかることなんてない。わかっているのは、アレはただの人間にとっては脅威以外の何者でもないと言うこと。
「そうか。まあ、いいさ。脅威は去ったが、しばらく森に入るのはやめておいた方が良さそうだね」
「そうだね。僕も、あのミミクリースライムに関しては予測が出来ないんだ。だから、山菜採りは諦めて、今ある野菜で食事を作ろう。ヨヨイ、手伝ってくれるかい?」
食事? ……ああ、時間的にはもうお昼になるのか。
「……私、手伝い、たい」
「お前さんもアタシも客なんだから、座って待つのがマナーだよ」
「……わかっ、た」
えー。何もしないなんて申し訳ないんだけど。
「お前さんは、いつ試練が来るかわからないんだ。いつ来てもいい様に気を張って備えるのが大切なのさ」
「…………はい」
ショゴスは試練じゃなかったのか。……というか、ジュラさんは試練か否かがわかるんだろうか。
「……ジュラさ、んは、わかる?」
「いや。ただの勘だよ。試練だって言うなら、もっと酷い目に遭うからね」
ショゴスと遭遇するより酷い目に遭うのか。
外なる神と遭遇したりするんですかね。
魔物紹介
ミミクリースライム
体長50cmほどの黒い粘液を纏うスライム。取り込んだ生物の遺伝子情報を基に身体を作り替え、擬態することができる。
知能はたいして高くはないし、魔術も使わない。纏う黒い粘液は可燃性で、激しく燃えると言う性質を持つ。
生捕りにして粘液だけを採取し、松明や火炎瓶の材料になる。
火に弱いが、暖かい場所に寄ってくる習性を持つため、冷える夜に焚き火をしていると群れをなしてやってきて、引火し激しく燃え上がって絶命する。なんとも残念な魔物。
繁殖力が高く。間引いていないと爆発的に増殖し、山火事や人里が焼き払われる。
一定周期で大量発生しては、集団焼身自殺をすると言う不思議な生態をしている。