元社会人、異世界にTS召喚される。 作:名無しの投稿者
UAが3000に到達していました。ありがとうございます。
「おイシーですカ?」
「……ん」
「それはヨカッタ。ダーリン、美味しいっテ」
「よかったね、ヨヨイ」
「ハーイ。ジュラも、美味しイ?」
「ああ、美味しいよ。だから、そうソワソワするんじゃないよ」
「よかったデース」
……本当にカエンタケ入れてないよね? 怖くて安心して食べれないんだけど。ジュラさんは普通に食べてるし……。味は普通なんだけどさ。
「採っテ来た茸。オイシーデース。美味しク出来まシタ」
「何のキノコを入れたんだい?」
「トドロタケニ、ヒラマイタケ。トドタケを入れマーシタ。これは、ワタしのデース」
そう言って採って見せたのは、赤くて食べられないことは明白なカエンタケ。よし、入れてないな。
これで安心して飲める。……うむ、キノコシチューだ。水分量が多い気もするけど。
「……平和」
「ミミクリースライムがここまで来た以外はね」
「普段ハ、ここまで来ないノデースが。とても寂しそうデジタ」
何かを探していた。というか、自分の主人。あるいは、召喚者を探していたんだろう。
召喚者に捨てられたのか。それとも、召喚した時にはもう召喚者は死んでいたのか。
まあ、何にせよ。今の私にできることはない。せいぜい、効くかもわからない退散の呪文を唱えるぐらいだ。
「ルナーラ。お前さん、あの魔物に覚えがあるんじゃないのかい」
「……?」
「お前さん。さっき、魔術使ってただろう。何かしらの対策とか、対処のためのものだと思ってね」
思念の伝達は確かに使った。
思念の伝達は、どうやら一定の範囲で効くモノのようで。使用者の近くにいる存在に、私の思考や意思が伝わるというモノ。
しかし、元々テレパシー能力のない種族には、不思議な音しか聞こえないようで、ヴェラルドルフさんやジュラさん。使用人の方々を混乱させてしまったこともある。一度、屋敷内が大騒ぎになったっけ。かなり怒られたと記憶している。
「…………知る、べき。ではない」
「ほう? それはどうしてだい」
「……アレ、は。人が知る、べき。ではない」
アレは。ショゴスを含めた神話生物は人が知るべきではない。
外の神格に目をつけられればおしまいだ。死ぬまでおもちゃにしてくる。
奴らはそういう存在だ。
「……目を、つけられる。と、おしまい。おもちゃ、に、される」
「お前さんが語る事はできない、と」
「……ん」
私が語るべきではない。知りたいなら自力の方がいい。
でも、そう言う本は今持ってないし。……鍵を使って
発狂されると非常に困る。私では対処不能だ。
──たすけて。
「?」
「どうしたんだい。ルナーラ」
……声が、聞こえた。アストラの声だ。
「……アストラ。呼んだ」
「何を言ってるんだい。ここにアストラは居ないよ」
アストラが私を呼んだ。確かに呼ばれた。「たすけて」と。
「……行か、なきゃ」
「お前さん、何処にいくつもりだい」
何処にだって? もちろん、そんなの決まっている。
「……ア、ストラの。いる場所」
なんとなく。本当になんとなくだけど、アストラのいる場所がわかる。
いや、私がアストラのいる場所を知っているのは当然だ。私は、アストラのためだけの存在なんだから。
「そうかい。でもだ、少し待ちな。どうやって行く気なんだい。エリシュ・トゥリスまで、馬車だから大した時間がかかっていないだけで、ヒト種が走っても一晩以上かかっちまう。今から馬車を呼んで行けば深夜には着くだろうがね」
「……そんな、に。待てない」
今から馬車を呼んで数時間。そこから十時間近くかけて戻るなんて、そんな時間はない。
「そんなに待てないって言ったって、お前さんはロクな魔術が使えないし、
「……でも、そんな、待てない」
そんなに待っていられない。
それに、私には白銀の鍵がある。
──『汝、なんぞや』
──『示せ』
──『汝、なんぞや』
「とりあえずお待ちよ。ヨヨイ。風に聞いておくれ。ルナーラと同じ見た目の子供が攫われてないか。エリシュ・トゥリスで何か起こったのかをね」
「ハイ。わカーリましタ」
ヨヨイが目を閉じて室内に風が入ってくる。口が動いているのはわかるが、何を言っているのかはわからない。
時間にして五秒もかかっていないぐらいで風は止み、ヨヨイが目を開ける。
「ルナーラサマと同じ見タ目の子供が攫わレタ。大騒ぎ。霧、大きなクラゲ。と言っていマーシタ」
「……霧、大き、な、クラゲ」
──『汝、なんぞや』
──『示せ』
──『汝、なんぞや』
……ああ、なるほど。これが試練か。
ご丁寧に頭の中に声が響いている。
「霧にクラゲね。他に何か言っていたかい?」
「ゴメンナサーイ。わかラないんデース。風たちは、気分屋サン。聞けば教えテハくれマスが、バラバラ、ぐちゃぐちゃニ話しマースので。これ以上キイても、混乱するだけデース」
「そうかい。話し声とかは聞こえなかったのかい?」
「流石に、距離がアリすぎマースから。もう少シ近ケレば会話モ聞こエタのデースガ」
どちらにせよ。アストラが拐われたなら。
確かに助けを求めているのなら、私が向かわないわけには行かない。
「ルナーラサマ。旅神アエリウス様から、預かり言デース。『境界の試練は夜。頑張れ』と言っテイたとオ知らせシマース」
「……ん」
そんなふらっと預言なんて来るのか? まあ、いいか。……いまから行っても本番が夜だというなら。情報集めに行こうか。
エリシュ・トゥリスに戻ろう。ヴェラルドルフなら何か知っているだろうか。いや、知らないわけがないか。エリシュ・トゥリスは大騒ぎらしいし、その対応に追われているのかもしれない。
「待な、ルナーラ」
「……なに?」
「どうやっていくつもりだい」
「……これ、つか、う」
光沢を持たない白色の強い銀の鍵。
手に握り、行き先を思い祈ればその場所へと持ち主。或いは使用者をその地へ運ぶ摩訶不思議な鍵。
「ルナーラ。悪いことは言わない。そいつの事はよく知らないが、見ればわかる。使わない方がいい。使っちゃいけない類の物。そうなんだろう」
「……それでも、私、は」
「……」
それでも私は、アストラを助けに行きたい。
〝白銀の鍵〟。
本来は、行きたい場所へ行くためだけの外宇宙よりもたらされた
しかし、私が預かったコレは少し違う。
この
確かに、この鍵も銀の鍵と同様に使用者を行きたい場所へ移動させる効果はある。しかし、鍵。ヨグ=ソトースを世界に顕現させ、ヨグ=ソトースの体をルートとして伝って行きたい場所へ行くという何とも致命的な欠点がある。
ただ銀の鍵の様に、転移されるのではない。この鍵は近道のための道具であり、その近道はヨグの体。
召喚の呪文を唱えて使えば、彼方の者はここに招来し、見た者のSAN値をゴリゴリと削り取って近くにいる知的生命体は漏れなく精神死。良くて発狂することだろう。
「……使い、たくは、ない。でも、……方法、ない。なら、使う」
お世話になった人達を犠牲にしてでもアストラの救出が最優先だ。
──『なぜ?』
──『なぜ彼女が特別?』
──『汝、なぜ彼女なのか』
──『汝、なぜ彼女が特別なのか』
──『答えろ。汝、なんぞや』
ああ、五月蝿い。
「……私は、私」
──『なぜ?』
──『問おう。なぜ?』
「……私は。……わた、しは。……」
わからない。
私は、なぜアストラを優先する。わからない。
でも、私はアストラに望まれたからここへ来た。
──『汝、なんぞや』
──『汝が示せ』
──『他者に依らず、汝を示せ』
私は、アストラの──……なんだ?
私はアストラの⬛︎⬛︎だ。ん? ⬛︎⬛︎?
……私は。……私は。誰だ?
──『汝、なんぞや』
──『隔てよ』
──『汝の全てを区別せよ』
──『汝が示せ』
わからない。私は誰だ。
私はルナーラ。ルナーラ・ランベルト。
──『然り』
──『問おう、なぜ?』
だって、私はヴェラルドルフに──
──『他者に依らず、汝を示せ』
──『汝、なんぞや』
私は、私は。
私は──
「ああ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙──────!」
誰だ。何だ。私は、私は、私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は────
「
精神の檻。
理性と知性を持って封ずる。──〝心獄【封牢】〟」
半透明の鎖が手足に絡みつく。邪魔だ。私は、わたしは。
行かなければ。
今なら行ける。全部、私が、アストラを、助けられる。
だから、止めるな!
……なんだ。脆いじゃないか。
「マジかい。神話の化け物を縛る鎖だよ」
「33、4.xe。邪魔=r.u。邪魔=r.u」
脆い。脆弱。邪魔をするな。下等種。
──邪魔だ。
「……」
いや、今こんな奴に構っている暇はない。
アストラを、アストラを助けなきゃ。助けなければ。私は、願われたんだから。
天井が邪魔だ。壊してしまおう。
触手を振るって天井を砕く。それを支える柱も、邪魔なモノを全部壊してしまおう。生命体は……殺さないでおこう。アストラが悲しむかもしれないから。
脆弱だ。全て振るうだけで砕け散ってしまう。やはり、所詮は夢。王の見る夢の残滓でしかない。
いえ、ここは違いましたか。ここは、独立した場所でしたね。
「……33、3rso。今行hto、待zww。3rso」
掃除したおかげで広くなった。行こう。
触手を変形、増殖させて翼を模したモノを形づくり、触手で地面を叩いて飛び上がってそのまま翼をはためかせ空を舞う。
待っていて、アストラ。わタシが、行くから。
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「……行っちまったか」
まったく。大暴れしおって。
半透明の何かを背中から放って小屋を吹き飛ばし、そのまま何処かへ飛んで行った教え子。
おそらくアストラのところだろう。何処にいるのかもわからないくせに、暴れて飛び出して行ってしまった。
「ヨヨイ、ルロイ。無事かい。生きてるなら返事しな」
「あ、ああ。何とか……助かったよ。ヨヨイ、ありがとう」
「いイエ。気にシナいデ。実体ノある攻撃力デよかったデース」
上手く凌いだみたいだね。
……にしても、あの姿が。
「境界の試練ってことは、あの姿がルナーラ本来の姿ってことかね」
境界の試練。
自分が定まらない者。定めようのない存在に課される事の多いもの。
試練を課せられる者の多くは兄弟が多い。或いは、双子や三子といった者達が課せられる。
その試練は最難関であり、この試練の最中にある者は大体の者は気を狂わせてそのまま自殺する。精神的苦行を強いられる。
原初から分たれた最初の神。
「あの子がねぇ。まったく、年寄り遣いの荒い子だよ」
あのままになるなら、アタシが手を下さなきゃね。あの感じだとヴェラルドルフには荷が重いだろう。
アタシにはまだ奥の手がある。あんな存在に通用するかはわからないが……いざという時は、殴って黙らせないとねぇ。
「ヨヨイ。アタシはルナーラを追う。すまないが、処理を任せるよ」
「ハーイ。お気ヲツケて」
「……ああ、行ってくるよ。〝フライト〟」
飛行は苦手なんだがね。
エリシュ・トゥリスの方向は……あそこか。
「待ってなよ。ルナーラ、アストラ」
アタシが行って何が出来るかはわからないが、住民の避難ぐらいは出来るだろう。
あんまり、ババアに手を焼かせるんじゃないよ。まったく。
読者の皆様、最近はいかがお過ごしでしょうか。作者は季節の変わり目に風邪を引いて38.0°の熱を出していました。
風邪にはお気をつけください。作者でした。