元社会人、異世界にTS召喚される。   作:名無しの投稿者

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のほほん日和(白目)

 

 

 

 

 見知らぬ土地での生活が一週間ほど、牢獄で生活させられたのち。

 私と少女は、牢から出されて救出してくれた金髪の厳つい顔の男に引き取られた。

 

 正直何を言っているのかさっぱりだし、少女も口数は少ないようであまり話さない。そして、話したとしても何を言っているのかさっぱりわからない。一応、英語や他国語も多少知ってはいるが、そのどの言語にも当てはまらない全てが未知の言語。

 

 牢から出されて向かったのは、金髪の厳つい顔の男が住んでいると思われる結構立派な屋敷。

 広い庭に、素人目で見てもわかるほどお金の掛かっていそうな噴水や、こまめに手入れのされているであろう綺麗な花々。結構階級の高い人なのではないだろうか。

 

「────。────―?」

「……?」

「……。──―。──────────」

 

 話しかけられても、私には彼がなんと言っているのかわからない。そして、彼の従者っぽいひとから何か言われても、私は何を言っているのかさっぱりだ。

 何か言われても首を傾げるだけの私に、従者っぽい人は頭を抱えている。

 

「……? ──、────―?」

「……」

 

 ……ごめんね。私は、君が何を言っているのかもわからないんだ。

 でも、ここにいる人たちが私たちに危害を加える気がないことはなんとなくわかるから。そんなに気を張らなくても良いんだよ。

 ここまで来る間に色々チラッと見ては見たが、言語そのものに対する理解がない。書いてある文字も読めないし、何を言っているのかもわからない。

 

 そんな私を見かねてか、一人の従者が私の前に出てきて耳を塞ぐ。そして何かを呟いき、私の耳から手を離す。

 

「──────────―?」

「……?」

「……────────」

 

 何やら私にやってみたが、それは失敗したらしい。

 

 ……そうだ。ボディーランゲージなら通じるかもしれない。あれは結構幅広く通じるし、意外となんとかなったり。

 

 とりあえず両耳を手で塞いで、口をパクパク動かして頭を振る。とりあえず聞こえていない。わからない事をアピールしよう。伝わるかはわからないけど……。

 お? 通じたか? 

 

「──────。──────────────」

 

 どうやら通じていないっぽい。悲しい。

 

「…………ゔぇ、ら、る、ど、る、ふ」

「……?」

「ゔぇ、ら、る、ど、る、ふ」

「……?」

 

 なんだって? 口元を指して、ゔぇ、ら、る、ど、る、ふ。と言っている。……真似しろってことか? 

 何か危険な単語だったりしないよな? 

 

 ……ええい! 一か八か。ここで潰えるならそれも運命。でもそれで少女の幸せのための一歩になるならそれで構わない! 

 

「……ゔぇ、ら、る、ど、る、ゲホッ! ふ」

 

 音が喉につっかえて咳き込んでしまったが、なんとか言えた。

 

「ゔぇらるどるふ」

「……ゔぇらエッホ! ゲホゲホ! ──ゔぇらるど、ゲホッ! ゲホッ! ゔぇらる「──」?」

「────。ヴェラルドルフ」

 

 金髪の厳つい顔の人が自分の顔を指さして自分の胸元を軽く叩く。……この、ヴェラルドルフというのは彼の名前なのか? 

 指を指す。のは、マナー違反かもしれないので、金髪の厳つい顔の人。仮称、ヴェラルドルフをまっすぐ見て名前を呼んでみる。

 

「……ゔぇら、ゲッホ。ゔぇらる、ど、……るふ」

「──、──―」

「……ゔぇらる、どゲホゲホ」

 

 ダメだ。完全には発音しきれない。全部言葉がつっかえているような。音が喉で突っかかって咳き込んでしまう。

 

「──────。……──―、────。────────────────」

 

 何やら慌ただしくなる現場。何かやっちゃいましたかね。私。

 横目に少女の方を見ると、特に何か気にしているような素振りは見せない。でも、私の事を心配そうに見ている。

 

「────。──―?」

「…………?」

 

 ごめん。やっぱり、何を言ってるのかわからないから、首を傾げてわからないと伝え続けるしかないんだ。

 

 

 

 しばらくすると、場も落ち着き。中に入るように少女と一緒に手を引かれて屋敷の中に連れていかれた。

 外観からわかるように屋敷は広くて、私と少女はその屋敷の奥にある小さな部屋に案内された。

 

 メイド服を着たお姉様に優しい微笑みをもらいながら何か話かけられ続けたけど、少女は言葉を返す様子もないし、私はメイド服のお姉様が何を言っているのかさっぱりなのでてきとうに返事をするのも憚られて首を傾げるだけの人間。

 でも、困惑しているような顔もしていたけど。とても優しそうな人だった。

 

 小さな部屋には、タンスとベッドが二つ置かれており。クローゼットも存在しているようだ。……探索したい。しても良いよね? 

 

「────────―。──────、────────────」

「……」

 

 あ、珍しく少女が頷いた。何かを言われて了承したのかもしれない。

 少女はそそくさとダンスの方へ行き、下の引き出しを引っ張り出して中を確認する。それを私も一緒に確認する。

 

 そこには、女児用と思わしき服が入っていた。……男児用はないんだろうか。

 

 ああ、そうそう。

 

 私この世界に来る時に性別が変わってしまった。

 この世界に来てしばらく経ったとき。気がついたんだけど。……元々股間についていた棒と玉がなくなっていて泣いた。涙なんて出なかったけどさ。悲しいよ。

 

「────────―?」

「……」

「──、──────―」

「……」

 

 少女がメイドのお姉様と少し話をし。メイドのお姉様が先導して、少女が私の手を引く。ごめんね。力になりたいとは言ったけど、かなり力不足だ。

 

 廊下を少女に手を引かれて歩く中、廊下を観察する。

 廊下には、花が飾ってあったり、小さな絵が飾ってある。高価そうなモノはあまり置いていない。

 

「──────―?」

「……?」

「……────―。────、──────────」

「……???」

 

 何やらメイドのお姉様に話しかけられた。まあ、何を言っているのかわからないので、首を傾げるだけで終わってしまうのだけど。

 何やらメイドのお姉様は会話を諦めたようで、そのまま前を歩き続ける。

 

 

 

 

 少し歩くと、メイドのお姉様が扉の前で止まり。扉を開ける。──そこには、浴室があった。珍しい。

 

 西洋文化にはお湯に入って体を清めると言った文化はあまり見られない。温泉もそうだ。

 しかし、ここはそうでもないのかもしれない。

 

「──―、────────」

「……」

「……?」

「……。──────────。────―、────」

「……!」

 

 扉を開けて、立ち止まるメイドのお姉様に私と少女を掴まれて浴室に連れ込まれた。

 もちろん私は抵抗した。私は、私は湯船が苦手なんだ。特に、白乳色の湯船なんて嫌だ! 透き通った水以外怖くて入りたくない! はーなーせー! 

 

 私がいくら抵抗しても、メイドのお姉様は離してくれない。そのまま引きづられるように連れ込まれた。少女ちゃん。そんな目で私を見ないでくれ! どうしても、どうしても水は苦手なんだ! 

 

「────」

「──ッ!」

「──。──────────────」

 

 抵抗虚しく服を脱がされて、白乳色の湯船に入れられた。お水怖い。私は目を開けたくない。

 

「……──────────────」

「……」

「……」

 

 お湯に突っ込まれて目を閉じているので私は何も見えません。見たくありません。水は怖いので視界に入れたくありません。

 

 何やら頭をポンポンと撫でられいる気がする。……手の大きさ的に少女ちゃんのかな。辛いのは君も一緒だろうに、なんて優しい子だ。やはり、私が守らないと。

 

「……〜♪」

「────―」

「……」

「──―、──────?」

「……」

「……──────、────」

 

 少女ちゃんの鼻歌と、メイドのお姉様の声がするが、やっぱり何を言っているのかわからない。

 少女ちゃんの鼻歌が少しだけ心地いい。時々調子が外れたり、音程が合っていないような感じがするけど。安心する。

 

 意を決して目を開けると、私の隣には傷だらけの体の少女ちゃんがいた。小さな体に切り傷がかなりの量存在し、治りかけの傷もちらほら見られる。……見ていて痛々しい。恐る恐る少女ちゃんの傷に手を伸ばして触れる。

 少女ちゃんは、少し怖がったけど、私の手を受け入れて傷に触れさせてくれた。治っていても、治っていなくても、少女ちゃんが辛かったことに代わりわない。適切な処置をされない傷は完全に治らない。傷痕となって傷ついた者について回る忌々しい呪い。

 

「──いあ いあ ふるぐるい ふるぐぬふ いあ しゃる・はなす いあ ふたぐん むぐるなふ うる むくるな なる とぅめーる 。──ゴホッ、ゲホッ!」

 

 気がつけば口からでていた文言。文言を唱え終えると咳き込んでしまい、口を押さえていた手のひらがぴちゃりと濡れた。

 

「! ──────!」

「……────」

 

 手のひらを見ると、鉄の匂いがする赤い体液。血がついている。それと同時に、私は幻視した。

 

 瞬く星々とそれを抱擁し、締め潰す星雲のような姿に、触手で形作られた人の腕を模したようなモノ。星雲のには無数の目玉がついており、悍ましく冒涜的な姿を、私は幻視した。

 ……いや、だからと言ってなんとも思わないけど。あの存在がなんなのかはなんとなくわかる。というか、知っている。

 

 なぜその姿を幻視したのかもなんとなく察してはいるけど──

 

「────!」

「──! ────!」

「……」

 

 慌てるこの二人を宥めないと。私は軽く微笑みを浮かべて二人の手を握った。私は大丈夫。ただ、運良く発動したモノの代償を払っただけ。

 

 少女に視線をやると、傷痕も治りかけの傷もほとんど消えていた。

 

 

 

 

 

 その後、私と少女はメイドのお姉様と別のメイドさんと共に食事を食べさせられた。

 少女はがっついて食べ、私はちまちまと食べた。

 

 不思議なことに、味はあまり感じないし、食欲もない。食欲がないのはこの世界に来てからずっとだ。味覚に関してもそうだ。味をうまく感じられない。

 ……何か理由があるのかな。色々考察していかないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 執務室。

 ここは、この屋敷の主人であり。ランベルト領の領主である。ヴェラルドルフ・ランベルトの執務室だ。

 

 金髪をオールバックにした厳つい顔の男。ヴェラルドルフは、執務室で書類を片付けながら溜め息をついた。

 

 目を通している書類は、この屋敷の使用人であり、幼馴染のフローラの証言とランベルト家で預かることにした二人の少女の体のことだ。

 

 フローラ曰く、言葉を話せず、理解できない少女が『謎の文言を発した後、咳き込んで吐血した』と。

 そして、ランベルト家お抱えの医療者曰く。『言葉を理解する方の少女の体についた虐待痕の大半は完治している』と。

 

 ヴェラルドルフは魔法や魔術に詳しくない。魔法や魔術というのは生まれ持った素質と才が物を言う世界。

 しかし、治療系。癒し系の魔法や魔術が高度な技術であることに違いはない。使い手は限られているし、古い傷痕の治療などそんな高度な物は魔術ではなく、魔法に分類される。子供がおいそれと扱えて良いものではない。

 そして、その代償としてか、喉に傷を負い吐血したと見られる。医療者としての見解はそうだった。

 

「面倒な者を拾ってしまったものだ」

 

 ヴェラルドルフは厳つい顔をしているが、厳しくも領民に優しい領主だ。

 そして、子供好きでもある。

 

 領民の安全のために、領地内の邪教集団の殲滅に乗り出し。自分の信頼していた貴族の家をいくつも潰した。心苦しかったが、そうでもしないと犠牲者が出てしまうから。

 

 その邪教集団に属する貴族の隠し子の中で、貴族の子供であること以外はわかっていない、生贄にされそうになっていた少女たちを拾い、自分の養子としたが先が思いやられる。

 

「……まあ、いいさ。話せない方もあの少女も元気に育ち、独り立ちできるようになるなら今は堪える時」

 

 戦でもそうだ。どれだけ辛くても、一つの小さな希望に賭けて突き進むしかない。子育てもきっとそういうものなのだ。

 しかし、一つ不便なことがある。

 

 二人にはまだ名前がない。片や名付けをされないまま育ち、生贄にされ。片や言語すら覚えられずに育ってしまい、名前の意味すら理解していない。

 

 名前がないと言うのは不便だし、新しい自分という存在を受け入れるのに良いだろう。

 

 ヴェラルドルフは、少女たちを呼ぶように使用人を遣わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しして、少女たちが入ってくる。

 拾った時は薄汚れたような灰色っぽい髪色だったが、綺麗にすれば元の色であろう銀色の髪に戻り、鮮血のような赤い目。二人とも双子のように似た姿をしているが、目元にある泣きぼくろの位置が違う。そんな些細な違いしかない少女たちを一人ずつ前に歩み出るようにいい、まずは会話が出来る方の少女の頭に手を乗せて撫でる。

 

「オレの。……我が養子。お前は今日からアストラだ。アストラ・ランドルフと名乗れ」

「……?」

 

 次に、言語を理解していない方の少女の頭に手を乗せて撫でる。

 

「お前は、今日からルナーラだ。ルナーラ・ランドルフを名乗れ」

「? る。るなー、ら。らゲホゲホ」

「あまり無理をして話そうとしなくても良い。喉を痛めているんだろう」

 

 この日、ヴェラルドルフは、二人の少女にアストラ(星々)ルナーラ()の名を与えた。

 どっちが姉なのか、妹なのかはわからないが。その辺は少女たちが決めていくだろう。

 

「お前たちは、今日からオレの子だ。武に励み、魔導を行け。そして、己が力をこの国のために。良き未来のために鍛えよ」

「「……?」」

「……まあ、今はわからなくても良い。用事は以上だ。下がれ」

 

 ヴェラルドルフは立ち上がって自分の執務席に戻る。

 キョトン? とする双子は、使用人に連れられて出て行った。

 二人は貴族の血を引く者。これからは、哀れな贄ではなく、一人の高貴な人間として育てていかなければならない。

 

「……習い事の教師を探さねばな。ゲーテ、求人を頼む」

「かしこまりました」

 

 マナー教師や貴族令嬢としての講師を探すように使用人に命令し、ヴェラルドルフは書類仕事に戻った。

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