「ステルス爆撃機!?ずっと海中にいたのか!?」
爆撃機が見上げる高さまで上がるとそこに滞空して船底のハッチが開きキンジの前に階段が降りてきた。
「来いよキンジ。ここには俺しかいねえ。操縦士も不要な自動操縦だ」
「・・・・・・」
キンジは招待を受ける様に階段を上り
「キンジ!!私達も・・・」
アリア達も起き上がり後を追おうとするが
――バァンッ――!!
アリアの足元に銃弾が着弾し
「招待状のねえ奴はお断りだ!!勿論お前等もな!!」
「「「「―――ッ!!」」」」
アリアを止めると、後追おうとする
狐耳の少女
筋骨粒々とした白人
顔に包帯を巻いた黒人
左右の目の色が違う少女
GⅢの仲間であろう連中も睨み付けた。
「なりませぬ!!本日は凶日で御座ります!!」
「こんな奴、サード様の手を煩わせるまでもありませんッ」
「あたしが片付けるわ!!」
仲間達が異議を唱えるが
「お前ら俺の言う事が聞けねえのか!?」
「「「「―――っ!!」」」」
GⅢが一喝すると全員直立不動のまま沈黙した。
キンジもアリアの方を振り返ると
「アリア、これは俺達遠山家の問題だ。俺の手で決着を付けさせてくれ」
そう言われるとアリアもその場に立ち止まり
「・・・必ず帰ってきなさいよ」
「その返事は帰ってからにしよう。氷牙の言葉を借りるなら・・・それで必ず帰るって言ったら死亡フラグだからな」
そしてキンジは背を向け爆撃機に乗り込むとハッチが閉じられ爆撃機はゆっくりと上昇していった。
「静かだな、意外と広いし揺れもほとんどない」
中に入りハッチが閉じられると外の音はほとんど聞こえず掛かって来る重力で上昇している事だけは感じられた。
「おめぇは何にでも驚くんだな。こいつは磁気推進繊盾と同じ先端科学兵装の象徴だぜ。甲板に来いよ。ここじゃあやりたくねえ」
GⅢは背を向け甲板に向かおうとするが
「だがその前に・・・ちょっと重量オーバーだな」
GⅢはハッチを蹴り開けると
「重量オーバーだ」
「何で2度言ったんだよ?」
「うるせえ」
GⅢはドル紙幣の札束をハッチからばら撒き
最後はINGOT(金塊)と書いてある木箱を爆弾でも投下するように投げ捨てた。
「おし、これでいい」
などと聞こえよがしに言うと奥へと向かっていった。
キンジも後をついて奥に向かうと、そこには本来武器や爆撃機を格納するはずの広い格納庫には武器の代わりに絵画や彫像、そして巨大なスピーカーが置かれていた。
何だこれはと周りを見渡すとキンジのHHSの脳は瞬時に詳細を叩き出した。
まて・・・あれは・・・まさかこいつも・・・
キンジは絵画の一つを指し
「GⅢ、あれってピカソだよな?それも20年ぐらい前に美術館から盗難にあって今もインターポールが血眼で探してる・・・」
「らしいな?俺は探し始めて3日で見つけたぜ?」
「こっちも二次大戦の時に消息不明になったレンブラントの名画じゃねえか?」
「ああそれか?闇オークションで見つけたから開始と同時に1億ドルで落札したぜ」
「この黄金像も確かナショナルギャラリーから盗まれて未だ行方不明って聞いた気がするんだが・・・」
「それも、盗まれた二日後には犯人特定してその日の夕方には取り返したな」
どれもこれも現在行方不明になっている国宝級の美術品ばかりであった。
どうしてこんな物がここに?そう思っていたが答えは向こうから語り出した。
「俺はHSSになるための性的興奮に女じゃ効果が無いんだ。その代わり美術品とか音楽とかでなることができる。先日聞いた氷牙達のライブ、あの時も一発でなっちまったぜ」
「そうか・・・そう言えばあの時も来ていたんだな」
「ああ、あの時のライブ映像もちゃんと大事に保管してあるぜ。ありゃたまんねえよ今でもあの音を聞くだけで一発でなれる」
「盗撮は禁止されてたはずだぞ?氷牙が聞いたら怒るだろうな・・・」
「安心しろ。ちゃんと軽音楽部の連中から買い取った。あいつら裏で販売してやがったぜ。買った半日後にはサイトごと閉鎖されてやがったがな」
・・・そう言えば学祭が終わった数日後に軽音楽部の連中が何人か救護科送りにされる出来事があって。その後女生徒が一人、やたら分厚いクッションを肌身離さず持ち歩くようになっていたな・・・
キンジは呆れながらもGⅢに続くように甲板に上った。
そしてその先に広がった世界は・・・
既に雲よりも上に出ていたようで下は雲越しに地上が遠く見え、空を見上げれば既に日は落ちて星空の中に白い月がぼんやりと光っていた。
「さて、ここなら邪魔もいねえ。どれだけ暴れても巻き添えもねえ。武偵弾も好きなだけ使えるぜ。それと・・・」
GⅢは空を見上げ
「やったなキンジ、これでお前も有名人だ」
「有名人?誰かが見ているとでもいうのか?」
「ああ、この戦いは監視されてる。米軍の偵察衛星でな」
「成程・・・GⅢの戦闘能力でも探る気か」
「それだけじゃねえ。お前のデータも取る気だよ。叶う事なら氷牙、悪魔のデータもな。どうやらあいつは戦う気が無いようだがな」
のぞき見されるとはいい気分じゃないな
「フン」
キンジは空を向いて中指を立てた
「ぶっ、はははっ!!」
そうしたらGⅢが吹き出して大笑いした
「お前バカだな。いや、大バカだな」
「だろうな。氷牙曰く武偵校にはバカかアホか変態しかいないらしくてな。俺も例に漏れないようだ」
GⅢは拳銃を抜いた、H&K USP・・・凛香が使っているのと同じではあるがかなりカスタムされている。精度が高くあまりやり合いたくはない銃だ。
「それがお前の銃か?レーザーガンかレールガンでも出すかと思ったが銃は普通なんだな?」
「俺の専門は銃じゃねえからな、テメエ相手ならこれくらいの玩具がちょうどいい」
その言葉にキンジもフッと笑みを浮かべるとデザートイーグルを抜いた。
「そうか・・・お前やっぱり氷牙そっくりだな」
「・・・あ?」
「お前あいつそっくりだよ。バカでひねくれもので不器用な天邪鬼。けど中身は誰よりも真っ直ぐで仲間想いないい奴だ」
「・・・何言ってんだお前?何をどう考えればそんな結論になる?俺が仲間想いだぁ?フォースを殺した俺がか?」
「かなめは無事だ、というか致命傷なんてない、せいぜい切り傷と打撲くらいだな。傷を見て見惚れたぞ?刺したっていうよりも骨や筋肉、内臓の隙間を通したって感じの刺し傷だったからな。お前はわざとそうなるように刺したんだ。かなめが自分から完全に離れるようにすると同時に監視している連中にはかなめが死んだと思わせるために」
GⅢはこちらを睨むばかりで何も言い返してこない
「こういう時、沈黙は肯定を示す。当たりだな。そしてもう一つ、お前は俺に勝てると思ってない。むしろ負けると思っている。さっきばら撒いた金や金塊も部下たちへ送ったものだろ?自分がいなくなった後の当面の資金としてな」
本心がバレて恥じているのかGⅢは顔を赤くしてふさぎ込んでしまった。
本当にバレたリアクションも氷牙そっくりだな。
やがてGⅢは観念したのか顔を上げると
「その推測イイ線いってるぜ。けど一つだけ間違っているな。俺があいつらに金を渡して置いて行ったのはお前に負けると思っているからじゃねえ。お前に勝とうが俺はもう帰れねえからだよ」
「何?」
「放っておいても俺はもうじき死ぬ。俺達人工天才は万が一反逆された場合に備えて生まれたときから定期的に何かしらの成分を接種しないと死ぬように設定されているんだよ。フォース・・・かなめもよくキャラメル食っていただろ?けど俺は未だに判明してないんだよ」
「そう・・・だったのか。酷い話だな」
「同情なんていらねえよ。俺が自分の思うがままに生きてそうなった結果だ。何も後悔なんかねえよ」
「・・・そうか・・・なら、もう言葉はいらないな。来いよGⅢ。弟の面倒は兄がキッチリ見てやる!!」
「ああ、来いよキンジ!!どのみち、俺達は戦うしか能がねえんだからよぉ!!」
そして二人の間で銃弾がぶつかり合い遠山家の壮絶な兄弟喧嘩が幕を開けた。