緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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112話<逃げるが勝ち>

これまでの経緯を聞くと空に浮かぶ火の玉を見上げながらキンジは唖然として

 

「お前、ついに衛星まで撃ち落としたのかよ・・・」

「流石に俺一人じゃ無理だぞ?レキと凛香のサポートがあって初めてできる芸当だからな。それに・・・」

氷牙はディストルを取り出し電気を流したが機構は作動せず代わりに火花と電気が漏れ出すばかりであった。

「限界超えた出力で撃ったから銃身が焼けて機構が壊れちまった。修理に出さないとな。ホントお前等に付き合ってると苦労も出費も絶えなくてうんざりするよ」

 

愚痴っているとGⅢが声をかけてきた

「で?お前は喧嘩を買いに来たんだな?いいぜ?偶然落したもんだがそれもまた立派な招待状だ。やるってんならまとめて相手になるぜ?」

「いや?売られた喧嘩を買うつもりだったが・・・まだお前等の兄弟喧嘩が終わってないなら手は出さねえよ」

「あ?」

氷牙はレッドクイーンを背もたれ代わりにしてランチャーの上に腰かけ

「まだ兄弟喧嘩の途中だろ?なら時間もねえしさっさとケリ付けろ。俺との喧嘩はここからおさらばするまでお預けだ。それにもう余計なヤジも茶々も無えんだ、お前等の好きなようにやれるだろ?」

高みの見物決め込む気満々でいるとキンジとGⅢは氷牙をジト目になり

「・・・本当にどこまでも自分のやりたいようにやりたい放題生きている奴だな」

「ああ、だが氷牙の言う通りだな・・・」

周りを見渡せばいつの間にか炎上が広がっておりあちこちで小規模の爆発が起きている。このままではいずれ機体全体に火が回る。そうなれば墜落する前に大爆発だ。

 

「この機体もいつまで持つかわからない。さっさと決着を付けよう」

「ああ、次で決めるぜ!!」

そう言って仕切り直すとGⅢは紙みたいなものを出して口の中に張り付けた。

「それは・・・ひょっとしなくてもドーピングか?」

「ああ、成分は聞かないほうがいいぜ?ロスアラモスじゃ命に関わるから投薬中止になったぐらいだ」 

GⅢの殺気がもう一段強くなり腰を落として拳を引いた構えを取った。あれは・・・桜花!?

 

キンジの桜花、全身の筋肉を使い音速を超える一撃を放つ必殺技。やはりあいつも使えるのか・・・

ならばとキンジも腰を落として重心を体の中心に据えると両手をつき出した。

 

この構えは遠山家秘中の秘技、絶牢(ぜつろう)

 

受けた攻撃をそのまま相手に返すカウンター技で見せた相手は絶対に殺せと言われる程に秘密にされているが・・・GⅢは兄弟だし大丈夫だろう。問題は・・・

「その構え・・・絶牢だな?」

「なんだ?知っていたのか?」

「ああ、迷ってるようだから言っておくがやめとけ。俺の流星(メテオ)の前じゃそんな技無意味だ」

「あいにくだが俺が気にしてるのはそういう事じゃねえよ」

キンジは氷牙に目線を向けた。流石にあいつに見られるのは色々とマズい。見られたからといって殺す気は毛頭無いがあいつなら一度見ただけで「暴走する10tトラック相手に試しにやってみたらなんかできた」とかふざけた事を冗談抜きでやりかねない・・・

 

「氷牙、悪いがちょっと――」

離れていてもらおうと声をかけたが・・・

 

「え?」

先程まで氷牙が腰かけていた場所に氷牙はいなかった。

いや、氷牙だけじゃない。ミサイルランチャーまでもが消えている・・・

アニメなら、きっとピコンピコンッという音と共にシルエットが点滅しているだろう。

 

「あいつどこ行った?」

「・・・ランチャーがあった場所に大穴が開いてやがるな。大方爆発に巻き込まれて下に落ちたか。それとも吹っ飛ばされて真っ逆さまに落ちたかだな」

「また巻き込まれたのかよ・・・あいつ本当に運が無いな・・・まあいい、少し違う形だがこれで心配事は消えた」

問題が解決するとキンジは再び気を取り直して構えた。

「俺が言うのもなんだが薄情だな?真っ逆さまに落ちたかもしれねえんだぞ?あいつの心配はしねえのか?」

「これくらいで死ぬような奴じゃねえよ。ほっといても明日のHRには出席してるさ」

「そうかよ・・・ならもう一度言うがそれはやめとけ?そいつで俺の流星を捌き切るのは不可能だ。逆にお前の腕が吹っ飛ぶだけだぜ?」

「どうかな?どんな事にだって必ず突破口はあるもんだぞ?」

「そうかよ・・・じゃあ証明してみせろよぉ!!!!」

GⅢが目を見開くと渾身の力で流星を放った。

 

確かにGⅢの言う通り俺で言う桜花、流星を絶牢だけで捌き切るのは無理だ。逆に俺の腕が吹っ飛ぶのがオチだろう。

 

けどな・・・

 

あいにく・・・俺の辞書に、無理って言う文字には風穴開けられてるんだよ!!

 

キンジはまず流星に対して逆ベクトルに桜花を放つ技、名付けて橘花(きっか)による減速防御で相手の衝撃を殺しながら受け。絶牢で攻防を入れ替えると桜花で自損しない程度に再加速をかけて渾身の蹴りをGⅢの右肩へと叩き込み

 

――バガァンッ――!!!

 

「うガァァァァッ!!」

 

その衝撃でGⅢの右腕が吹っ飛んだ。

だがその腕からは金属片ばかりが飛び散るだけで血は一滴も無い・・・

「お前・・・右腕義手だったのか・・・」

「ンな事どうでもいい!!まだ決着は――ッ!!」

機体からひときわ大きな爆発が響くとその衝撃でGⅢは膝を着いた。

 

「よせ、もう時間切れだ。これ以上は本当に機体が持たない。それにお前もう立ってるのがやっとだろ?命に係わるほど強力なドーピングなら効果時間が短いし反動も相当なはずだ。だから今の一撃、流星に全てを込めたんだ。しくじれば最後、もう勝機は無いって分かってたからな」

「ほざけっ!!俺はまだ―――」

「おい?兄弟喧嘩は終わったか?終わってなくてももう切り上げろ」

氷牙がミサイルを担いで割って入ってきた。

 

「氷牙!?お前どこ行ってたんだ!?しかもあちこち傷だらけだぞ?」

「爆発でミサイルランチャーごと下に落ちた。全身打つわ瓦礫の下敷きになるわで散々だったよ。それよりもヤバいぞ?火災が内部にまで広がってる。このままじゃあと数分で大爆発だ。さっさと爆撃機からおさらばするぞ」

「なっ!?本当か!?ちょっと待ってくれ!一度中に戻ってパラシュートを――」

「んなもんいるかよ。地上への直行便に乗っていくぞ」

「直行便?」

氷牙はキンジの首根っこを掴むとミサイルに何やら電気を流してジェットを点火させた。

 

「―――ッ!!!」

それを見てキンジの頭には一つの推測が浮かんだ。まさか直行便って・・・

 

いや・・・そんなまさか・・・ありえない!馬鹿げてる!!考えつくだけでも正気の沙汰じゃない!!常識的に出来るものか!!血迷ってるとしか思えない!!

 

のだが・・・

 

更に考えればこいつは・・・ありえない事こそあり得なくて、伝説的な馬鹿で、狂気的な思考してて、非常識の塊で・・・年中無休で血迷ってる男だ・・・

 

そもそもこいつは・・・どうやってここに来たんだ?

 

ここまで揃えばむしろやらない方が異常であった・・・

 

 

「行くぞキンジ!!漏らすんじゃねえぞ!!」

キンジを担いだまま脱出しようとすると

 

「んだよテメェら!!逃げんのかぁ!?」

GⅢが膝を着いたまま怒鳴りかけてきた。

 

「こんなところで死ぬのはまっぴらだからな?何だったら追いかけて来いよ?それなら延長戦受けて立つぜ?まあ、嫌でも追ってくると思うけどな」

「あ!?どういう意味だそりゃ?」

「さあな?けどこういう時のお約束で言い残しておくぜ!!」

「お約束?・・・なんだ?」

 

氷牙はミサイルを放り投げると右手をビッと敬礼を取るように上げると

 

「あばよぉとっつあん!!」

 

そして爆撃機からジャンプして飛び降り

 

――ガンッ――!!

 

放り投げたミサイルの上に着地し

 

「イィィィィィィィハァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!」

 

ミサイルをまるでアクアボードのように操り大空を飛び回った。

それも慣れたように乗り回していてどう見ても初めてって感じじゃない。

てことは――

 

「お前やっぱりミサイルに乗ってきたのかぁぁぁ!!」

「あ?今頃気付いたのか?てかGⅢがぶっ放したミサイルな、危うく俺達に当たる所だったんだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前、

氷牙はレキと共に凛香が操縦するヘリに乗ってキンジ達の乗った爆撃機を追いかけていた。

 

「高度800m、爆撃機、加速開始。ロストまであと30秒!!」

「了解!それじゃあ手はず通り準備頼む!!」

「うん、でも本当にやるの?」

「やるしかないだろ?どのみちこのままじゃ速度が違い過ぎて追いつけないんだ」

 

氷牙が立ち上がると爆撃機の甲板で一瞬強い光が放たれレーダーから警報音が鳴った。

 

「――ッ!?どうした!?」

「レーダーに反応・・・3時の方向からミサイル!!」

「マジかよ!?すぐに迎撃して―――」

「ダメです。目視で確認しましたがあれはスティンガーミサイル。最高速はマッハ2になります。ディストルが使えない今では迎撃しようにも速すぎます」

 

レキがドアを開けると反対側のドアを指し

 

「氷牙さん、すぐにそちらのドアも開けてください。凜香さん、方角そのままで高度804mを時速213キロで飛んでください」

「え?あ、ああ・・・」

「う、うん。わかった」

 

氷牙も凜香もよくわからないまま言われた通りにドアを開けて指定された高度と時速にして

 

「――ッ!!ミサイル来るよ!!」

 

その直後ミサイルとの距離は0になり

 

――ゴォォォォォォォォッッッーーー――!!!

 

ミサイルは開いたドアをくぐりヘリの中を通り抜けて反対方向へと過ぎ去っていった。

 

「・・・映画ではよく見る回避方法だが・・・実際にやった奴はそういないだろうな」

「軌道から見てホーミング式ですね。ですが私達を狙ったようではありません。偶然軌道上に居合わせてしまったのでしょう」

「え?じゃああのミサイル誰を狙ってるの?」

「決まってんだろ。見ろ」

 

ミサイルは大きく円を描くように爆撃機へと戻ると左翼下方で爆発した。

 

「あのミサイル、GⅢがキンジに向けて撃ったんだ」

「えっ!?でもそんな事したらGⅢだって無事じゃ・・・」

「勿論済まないだろうな。けどGⅢにとってはそんなこと知った事じゃないんだ。死に急ぐ人間は自分の命なんてどうでもよくなるからな」

 

認めるよアンガスさん・・・本当にアイツ・・・俺にそっくりだな。

そう思っていると再び爆撃機の甲板で強い光が放たれレーダーから警報音が鳴った。

 

「――ッ!!第2射来るよ!!」

「またかよ!!いや待てよ・・・レキ!さっきのもう一度できるか?」

「出来ますが・・・まさか氷牙さん、あれに乗る気ですか?」

「え?氷牙本気?せっかくこっちのミサイルから信管抜いたのに」

「悪いが計画変更だ。どのみちもう一発喰らったらあの爆撃機、持たないぞ。それに直接乗り込んでやれば電気信号ハックして止められる」

「・・・分かりました。凜香さん、次の地点、高度781m、速度197キロで飛んでください」

「了解!!」

 

そしてミサイルは先程と同じようにドアをくぐり、それと同時に氷牙はミサイルに飛び乗り爆撃機へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て感じでな!コツは最初の騎乗で掴んだからな!!だからこんな事だってできるぜ!?」

 

そう言って氷牙はすぐには地上に向かわずジグザグに動いたり、360度のターンを決めたり、螺旋を描いたりと完全に楽しんでいた。

 

「どうだ?楽しいだろキンジ?」

「楽しくねぇぇぇぇ!!早くおろせぇぇぇぇ!!」

 

流石のキンジも早く下ろせと叫び続けた。

 

「何だよノリが悪いな?ミサイルをボードにするなんて貴重な体験滅多に味わえないぜ?」

「味わいたくねえよぉぉぉぉぉ!!!!いいからおろせぇぇぇぇ!!!!」

「ったくしょうがねえな・・・じゃあ降りるぜ?」

 

そう言ってミサイルを真下に向け

「は?」

海面に向かって一直線に落ちていった。

 

「だぁぁぁぁぁ!!!馬鹿野郎ぉぉぉ!!!このミサイルには爆薬搭載してんだぞぉぉぉぉぉ!!!!」

 

この下は海だがこのスピードでは地面にぶつかるのとさほど衝撃は変わらない、このままでは海面に着いた瞬間爆発だ。

 

「早く向きを変えろぉぉぉぉ!!!!!」

「いや・・・まだだ・・・ギリギリまで待つ・・・」

「バッ!?何言ってんだぁぁぁ!!お前心中する気かぁぁぁぁ!!!!」

「うるせえな・・」

 

――ポイッ――

 

何をトチ狂ったのかキンジを空中に投げ捨てた。

 

「なっ!?あああああああああああああああ!!!!????」

 

そしてキンジは重力に従い落ちてゆくが

 

「先に行ってるぜキンジ。受け止めるから安心しろ?」

 

氷牙はミサイルのジェットで先に下へと加速して落ちていった。

 

「ふざけんなぁぁぁぁ!!お前俺を殺すのか助けんのかどっちかにしろぉぉぉぉ!!!」

 

 

そして海面はもう目の前にまで迫っている。

 

海面衝突まであと100m・・・

 

「おぃぃぃ!!!」

「まだだ・・・まだ・・・」

 

すぐに変えてはつまらない・・・だがしくじれば海面にぶつかり死ぬ。

海面すれすれまで耐えてこそ最高に決まるんだ!!

 

 

まだ遠い・・・まだ耐えるんだ・・・

 

 

 

 

 

あと80m・・・

 

 

 

 

60m・・・

 

 

 

 

40m・・・

 

 

 

 

20m・・・

 

 

 

 

10m・・・

 

 

 

――5m

 

「今だ!!」

 

――ドガッ――!!

 

ミサイルのケツを蹴り、向きを無理矢理変え

 

――ザァァァァァァァッッッ――!!!!

 

海面ギリギリ、わずが数センチ上を水飛沫を上げながら横ばいに飛び

 

――ガシッ――!!

 

落ちてきたキンジをキャッチした。

 

「っしゃあ!!どうだキンジ!!金メダルレベルのトリックだぜ!!」

「お前は金メダルどころかギネスレベルの大バカだぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、爆撃機に残ったGⅢは

 

「誰がとっつあんだよ・・・」

 

と、突っ込みながらもよろよろと立ち上がり機内に戻っていった。

 

「まあいい・・・俺もやる事やっておかねえとな・・・」

 

GⅢのやるべきこと。それは爆撃機に積んである美術品コレクションを運び出す事だ。たとえ自分が死んでもこの美術品たちは後世にまで残さなければ死んでも死にきれない。

それにこの格納庫の美術品は有事の際はボタン一つですべての美術品をパラシュートと浮き具、GPSの付いたコンテナへと収納して脱出させるようにできている。

ここからコンテナごと放り出した後はパラシュートで着水させ後で海上から回収すればいい。

 

そして美術室の扉を開いた。

 

 

 

 

だが・・・

 

 

 

「は?」

 

何も無い・・・ピカソもゴッホもダヴィンチもレンブラントも一枚も無い・・・モーツァルトやベートーヴェンのレコードコレクションさえも一枚も無い・・・

アニメなら、きっとここでもピコンピコンッという音と共にシルエットが点滅しているだろう。

 

どういう事だ!?どうして全部なくなっている!?コンテナごと消えているという事は既に脱出させたのか?いったい誰が―――

 

周りを見渡すとやがて格納庫の中央に何にか落ちていた。

 

「あ?こいつは・・・」

 

それは武偵校の軽音楽部が無断で販売した氷牙達の学祭ライブDVDであった。

ただしディスクは真っ二つに叩き折られ完全に再生できない状態にされ、その下には書置きが残されていた。

 

『返してほしけりゃ取り返しに来い。でもこれは不認可なので削除する』

 

そして急速にまとまるGⅢの憶測

 

先程氷牙が言ってたこと、

 

『嫌でも追ってくると思うけどな』

『あばよぉとっつあん!!』

 

まさか・・・まさかまさか!!

 

GⅢ様!!奴は大変なものを盗んでいきました!!

 

あなたの美術品コレクションです!!

 

「ふ、ざけんなっ!!!!ゴラァぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!!!!!!!!!」

 

GⅢのワラキアの魔笛の如く怒声が何も無くなった室内に広く響き渡り。

 

そして数分後、爆撃機は空中で大爆発を起こして海上へと墜落したがその時には誰一人として爆撃機には残ってはいなかった。

 




次回でGⅢ編も決着です。
年内には上げたい・・・
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