緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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116話<第二の我が家>

「転校初日からひどい目にあったな・・・」

「ホント、あの担任いざ関わると仕事が早かったな。むしろあの不良相手にするよりも担任の保身話に付き合う方が疲れた」

 

事情徴収からようやく解放さた俺達は萌と別れて帰路についていた。

まあ事情徴収と言っても最初は萌が事情を説明しては担任がそれを自分の都合のいいように解釈して、また萌が違うと説明するのいたちごっこであり、最後には埒が明かないので面倒になった俺達が「大した怪我もありませんので大事にするつもりはありません」と言うと担任はあっさりと俺達を解放してくれた。

実際、担任も何度も「大したことないよな?」とか「大丈夫だよな?」とか俺達を洗脳でもしたいのかと思わんばかりに連呼してきたのでもはや事情徴収というよりも大事にしないための隠蔽工作と言った方が正しいだろう・・・

 

「それよりも明日からどうする?あんな派手な立ち回りしたんだ。明日には学校中の話題になってるだろうな」

「まあ、いいんじゃねえの?元々俺達の仕事は構成員を燻りだす事だ。あれだけ派手にやれば俺達の事に気付いただろうし、そのまま鏡高組、そして藍幇にも報告が行くだろ?どうあれエサは撒いたんだ、後は向こうがどう出るかだな」

「・・・だな。こうなった以上なるようにしかならないか・・・」

氷牙の言葉を借りるならこういう時は開き直りが肝心だ。それに冷たい事を言うようだが潜入捜査が終わればすぐに武偵校へ戻ってあの学校ともおさらばだ。そんな短い付き合いでしかない人間からの風評など気にしても仕方無い。

 

そして潜入期間の宿泊先、キンジの実家に到着すると

「ばっかもーん!!!!お前はご近所付き合いというものがわかっとらん!!向こう三件両隣隅々まで掃除せんか―!!」

そこの玄関からキンジの祖父、遠山鐵の怒声が響くと同時に、箒を持ったロック歌手みたいな派手な服装の男性が勢いよく飛び出して俺達の前に転がった。てかこいつ・・・

 

「あれ?お前GⅢ?まだ生きてたのか?」

「じ、GⅢ!?」

GⅢだけじゃない塀に登って庭にある柿に手を伸ばしてるのは・・・

「いいキャラメル色の柿だぁ」

かなめであった

 

「よう兄貴、チッ・・・氷牙も来たのかよ」

「あ、お兄ちゃんお帰り」

「お前等・・・二人そろって何してんだよ・・・」

「お兄ちゃん非合理的ぃー。ここはあたし達のお爺ちゃんの家でもあるんだよ?」

「俺はホームスティだ。ここでならいい修行にもなるからな」

「修行?そんな暇あるのか?お前もう長くないんじゃなかったのか?」

「それならもう解決した。それに絶対にお前をぶっ殺してあの世に送るまでは死ねねえからなぁ!!」

「へぇ?俺をぶっ殺すか?けどそうなるとまず地獄の門をこじ開けとかないと俺、門前払いにされてまたこの世に帰って来るぜ?」

「はっ!!そうなったらまた何度でも送り込んでやるだけだ!!何ならここでいっぺん――」

「こりゃ金三!何サボっとる!さっさと掃除せんか!!」

「・・・チッ、わかったよ!!」

再び鐵さんの怒声が聞こえるとGⅢは舌打ちしながら箒を持ち直しながら掃除へと戻っていった。

「金三?ああ成程、GⅢだから金三か、いい名前じゃねえか」

「俺をその名前で呼ぶな!!マジでぶっ殺すぞ!!」

 

掃除をしながらもこちらを睨みながら怒鳴りつけるGⅢ改め金三を無視して門をくぐると鐵さんに迎えられ

 

「久しぶり爺ちゃん」

「鐵さん、お久しぶりです」

「ん、話は聞いておる。二人共よく帰った。まあ入れ。もうすぐ夕飯じゃ」

「ああ。ただいま」

「はい。お邪魔します」

鐵さんに続くように2人で玄関をくぐろうとしたが

 

「ばっかも―ん!!!!」

 

三度、鐵さんの怒声が響いた。

 

「キンジはええ。だが氷牙、お主はやり直しじゃ!!」

「?俺がですか?」

「お主らもうちで暮らすなら家族の一員になるという事!!なればここはお主らの家でもあるんじゃ!!自分の家に帰るのにお邪魔しますとはなんじゃ!!やり直せ!!」

そうどやされると氷牙もふっと笑うと

「ええ、そうですね・・・ただいま」

そう嬉しそうに言い直した。

「ああ、それでよい。はよあがれ。もう皆来ておるぞ」

「皆?てかさっきお主らって言いましたけどどういう意味です?」

だがその問いに答えることなく鐵さんは居間へと向かってしまったので俺達もやたら靴の多い玄関をくぐり居間に向かった。

 

そして先程の鐵さんの言葉の意味がようやく分かった

「おやキンジ、氷牙君もおかえり」

台所では夕食の支度をしているキンジの祖母、セツさんに・・・

 

「あ、二人共お帰り」

「氷牙さん、キンジさんもお帰りなさい」

その手伝いをしている凛香とレキまでもいた。

「お前等・・・二人そろって何してんだよ・・・」

その光景に先程キンジが言った言葉を今度は俺が言う羽目になった・・・

 

 

 

 

 

 

 

「つまり荷物を届けに来たらそのまま鐵さんに上がっていきなさいと連れ込まれて気が付けばセツさんと一緒に夕食の支度をしていたと?」

夕食の支度をセツさんに任せ、お茶と豆菓子が置かれたコタツを囲んで話を聞くとどうやら二人共鐵さんとセツさんにすっかり気に入られて、取り込まれてしまったらしい

「それだけじゃないんだ・・・なんなら毎日でも来て構わないって、泊まっていけるように私達の部屋も用意しておくって言われちゃって・・・」

「完全に通い妻じゃねえかよ・・・いいんですか?ただでさえ金三とかなめ、キンジまでいるのに俺だけじゃなくレキに凛香まで置いてくれるなんて・・・」

「構わん。家族は多い方がええ。部屋も余っとるから使えばええ」

「そもそも金三やかなめは自分の事なんて言ってここに来たんですか?まさかですけど『あなたの孫です』なんて言っていきなりやってきたんですか?もしそうなら俺だったらその場で叩き出しますよ?」

「2人共多くは言わせとらん。作り話をしようとしとったからの。じゃがうちの縁者だとは一目でわかったわい。兄は拳、妹は刀を主にしとるな」

「よくわかるね・・・見ただけで」

「お主らもじゃよ。こっちの二人は狙撃兵と衛生兵じゃな?二人共狙撃銃特有の火薬の匂いがしおる。消毒液と火薬の混じった衛生兵特有の匂いものう」

「・・・流石、鼻が利きますね」

「昔から狙撃兵はやりにくくて苦手じゃった。衛生兵も世話になる事は多かったが治療が荒っぽくてのう。傷を縫うのに針と糸が無くて焼けた火箸で止血させられたこともあったわい・・・それに氷牙もその眼帯と腕の下から禍々しい気配を感じおる・・・悪魔じゃな?」

「そこまでお見通しですか・・・俺も最近知りました。悪魔との混血だそうです」

氷牙は観念したように眼帯と義手カバーを外して左目と右腕と見せた。

「確信は無かったがの。戦時中に敵国の・・・さもなー?とか言ったかの?そやつらが呼び出した悪魔部隊と戦ったことがある。お主からはあやつらと似た気配がしおった。もっとも、氷牙の方がはるかに格上の気配がするがの」

「爺ちゃんも悪魔と戦ったのかよ・・・」

「あれは知性こそ無かったが全員が全員撃っても斬っても死ぬまで平然と向かってきてわしらで言う特攻隊の如くじゃった。陰陽兵の式神が援軍に来なければ危なかったわ」

「鐵さん・・・そんな経験もしてるんですね・・・てか陰陽兵って・・・そんな兵種あったんですか?」

 

やっぱ本物の戦争の経験者は俺達とは比べ物にならないな・・・洞察力もそうだがこうして卓を囲ってる間でも全然隙が無い。たとえ今の俺たちが全員でかかっても全然勝てる気がしない・・・

 

「じゃが、それ以上に2人もええ男になった。いくつもの壁と死線と修羅場を越えてきたようじゃな」

「まあ・・・色んな意味でね」

既に眼帯も右腕の義手カバーも外していた氷牙もその左目で腕をじっと眺め

「・・・この半年で本当にいろいろありましたからね。きっとこれからも――」

「多くは語らんでええ。キンジも立ち直ってええ顔になった。氷牙もじゃな。今は活力の溢れるええ顔しておる。半年前、キンジは金一を失って自分さえも見失い。氷牙も生き急いで死ばかり追いかけておったからの」

「ああ・・・さんざん寄り道しちまったけどもう腹は決めたよ」

「そうですね・・・そのせいで失ったものも多くありましたが俺もキンジと同じように土壇場で踏みとどまれました。そして本当に大事なものが何なのか気付けましたし得たものもありました。今こうなった事は何も後悔はありません」

「本当にええ男になったのう、それに氷牙」

「何ですか?」

 

 

 

 

 

「お主、そっちの意味でも男になったな?」

「はい?」

「最初の相手は誰じゃ?ミントちゃんか?それともサクラちゃんかの?」

「ミントにサクラって・・・もしかしなくても二人の事ですか?」

「うむ!ミントちゃんからは狙撃銃の火薬と共にミントの香りがしおった。サクラちゃんからは消毒液と火薬、そしてサクラの香りじゃ!!じゃがかすかに氷牙の匂いもしおった!その上お主からも二人の香りがする!!知らぬとは言わせんぞ!?」

レキは無表情だが凛香は顔を赤くして俯いて、氷牙はため息をつき

「鐵さん・・・ホント相変わらずですね・・・」

最後の最後でこれかよ・・・ホント筋金入りの助平爺だな・・・

「どっちじゃ?まさか初で二人同時か!?お主も隅に置けんのぉ?そこのところをじっくり抉り込むように聞かせぼふぉ!?」

音もなく背後に立ったセツさんのベリーショートパンチによって鐵さんは居間から縁側を越えて庭のブロック塀へと突っ込んで、最後は崩れたブロックの下敷きになった。

 

その光景を見ても

「キンジ?今のってただの寸勁ってわけじゃないよな?」

「ああ・・・確か『秋水』っていうパンチに余すことなく全体重を乗せる。遅いが重い一撃を放つ遠山家の奥義の一つで・・・俺も見るのは初めてだ」

2人してあの技、今の俺にできるだろうか・・・そんなことを考えて鐵さんの事など微塵も心配も気にもしていなかった。

 

 

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