少し時を遡り。装備科、平賀ちゃんの工房内にて
「お待たせなのだー!ディストルの修理完了なのだー!!」
「ああ、中身が完全に焼き切れたのにこんな早く修理してもらって助かるよ」
「かまわないのだー!これくらい酷使してくれた方がデータもたくさん取れるのだー!!おかげで例の物も完成間近なのだー!!」
「そうか、そりゃありがたい。そろそろ修学旅行Ⅱも近いからなそれまでにできるとありがたいよ」
「お任せなのだー!!それまでには余裕で間に合わせてみせるのだー!!そういえば氷牙君、バスカービルは行き先は決めたのだ?」
「いや、まだだ。この後帰ったらみんなと話し合ってそれで決めると・・・」
そこで氷牙の携帯が鳴った。レキから?
「もしもし?」
『氷牙さん?そろそろこちらに戻ってくれますか?』
「ああ、用事は終わったからもう帰るよ」
『帰ったらキンジさんがバスカービル全員で打ち合わせをするそうです』
「ああ、内容はわかるよ。修学旅行Ⅱについてだろう?」
『はい、修学旅行Ⅱの行き先は中国にするそうです。その打ち合わせだと』
「そうか、中国か・・・・・・中国?中国地方じゃなくて中国か?チャイナとも言う?」
『はい』
「確か京都で散々迷惑かけてきた奴らの本拠地の?」
『はい』
「眷属でもある、奴らのいる場所へ?」
『はい』
「俺達はそこに行くのか?」
『はい』
「・・・・・・・・・・・・・」
しばしの沈黙、
『・・・?・・・氷牙さん?聞こえますか?・・・急に電波が悪くなりました?』
氷牙の頭の中ではこの情報についていくつもの議論が飛び交った。
俺達は修学旅行Ⅱで中国へ行く?それも他ならぬキンジの指示で?
ああ、つまりあれだな。こうしてはいられない!!
考えがまとまると電話を切り
「平賀ちゃん!!追加注文だ!!武器庫を開けろ!!」
「ハイなのだ。どんなのがご所望なのだ?」
「全部だ!!隠し倉庫のも出せ!!」
「り、了解なのだ。好きに持って行くのだ」
氷牙は平賀ちゃんの倉庫に入ると更にその奥、ロッカーの裏に隠された隠し倉庫に入りそこから手当たり次第に重火器を持ち出した。
制服の上からアリスクリップを着るとそこに手榴弾を下げられるだけぶら下げ、ベルトリンク給弾状態で留められたグレネード弾を前でクロスするように両肩にたすき掛けすると背中に7.62x51mm NATO弾がゆうに1万発は入った弾薬ケースを背負い。
左手にM134ミニガン、右手にM75グレネードランチャーを持ち
「代金はつけといてくれ」
そう言って武器庫を後にした。
「ま、毎度有りなのだ」
ちなみに装備科棟を出る途中で通ったエントランスホールで談笑している生徒達がいたが
「それでさ―――――」「んでよ――――」「でね――――」「じつは―――」「そこに―――」
重火器武装した氷牙を見た途端、全員が唖然として目と口を全開にして硬直し手に持っていたペットボトルやら紙コップやら空き缶を次々と落として床を水びだしにした。
氷牙はそんな連中を無視してホールを素通りしてゆき
数分経って皆が我に返ると
「お、おい!?今の九狂だよな!?」「あいつ最近見ないと思ったらいきなりあんな重装備して現れて今度は何しでかす気だよ!?」「左手一本でミニガン持ってたぞ!?」「それだけじゃねえよ!!右手にグレネードランチャーまで持ってたぞ!!」「しかもあんなに手榴弾と榴弾ぶら下げて人間爆弾かよ!?」「あいつ、一人で世界大戦でもする気かよ!?」「とにかくこのことをすぐに通達しろ!!特に遠山には最優先で返事が来るまで何度でも伝えろ!!」
と、氷牙が重火器武装して装備科棟から出てきたことで武偵校一帯が蜂の巣をつついたような大騒ぎになったのはもう少し後の話だ。
時を戻して現在
キンジ達が電話に出ると同時に
『キンジ!!大変だ!!氷牙が―――』
「キンジィ!!!」
氷牙がドアを開けて帰ってきて
「ああ氷牙、やっと帰って――」
氷牙の姿を見るなりキンジ達は唖然として携帯を落とした。
「お、お前・・・その格好は何だ!?」
「ひ、ひょーたん?両さんなら40年分の有休使って長い旅にでたよ?」
落とした携帯からは
『氷牙の奴が重火器武装して装備科棟から出てきたんだ!!!おかげで武偵校一帯は蜂の巣をつついたような大騒ぎだ!!あいつ今度は何しでかす気だ!?』
氷牙はキンジの前に立ち満面の笑みを浮かべると
「キンジ!!お前の事、ヘタレで根性無しで女たらしなどうしようもない奴だと思っていたがやっぱりやるときはやるんだな!!信じてたぞ!!さあ、オーダーを言ってくれ!!ハルマゲドンでもテンペストでもセカンドインパクトでも大沈下でも起こしてやる!!掃討でも駆逐でも虐殺でも殲滅でも殺戮でも断罪でもお望みのままにやるぞ!!!」
「いや・・・だからお前何言ってるんだ!?というかそんな恰好で何やらかすつもりだ!?」
「何言ってるんだ!!修学旅行Ⅱは中国に行くんだろ!!ならやることは一つじゃねえか!!そのためにはこれでも足りないくらいだぞ!!後、核ミサイルの5,6発は欲しいところだ!!」
「お前・・・中国大陸を焦土にでもする気か!? 」
「焦土がお望みか?何なら大陸全部海の底に沈めて地球上から消してやっても「くぉら九狂!!!!お前今度は何やらかす気やぁ!!!!」
直後、蘭豹含めた教務科の方々が雪崩れ込んできた。
十数分後・・・
「納得いかねえ・・・やられたらやり返すのが武偵だろ?なんでそう教えてきた奴らに止められるんだよ・・・」
氷牙は武装解除して椅子の上でレキと凜香に宥められながらもふてくされていた。
あの後、氷牙は駆け付けた教務科やキンジ達の前で「戦争です!!藍幇を中国大陸ごと焦土にしてきます!!」と堂々と宣言して当然だがこっぴどく説教され、先ほどの武器は全部没収された。レキと凜香が大人しく従うよう説得してくれなかったら危うく藍幇との戦争になる前に教務科との戦争になるところだった・・・
「キンジ・・・やっぱり早まったんじゃない?」
「・・・そうかもしれないがせっかく次に会う時には殻金を無条件で渡してくれるって言ってるんだ。逃す手はないだろ?それに万が一戦いになっても戦うなら今が絶好の好機なんだ。玉藻や凜香が言うにあの孫悟空は力が不安定で不完全な状態らしい。倒すなら今しかない」
「けどひょーたんがレキュの事で藍幇にどれだけ恨みを持ってるかはあたしたちが一番よくわかってるでしょ?冗談抜きで核弾頭送り込むようなもんじゃない?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
キンジも改めて氷牙を中国に連れて行って藍幇と戦争になった場合を想像してみる・・・
『百倍返しの時間だ!!!!!』
目についた敵は全て血祭りにあげ・・・・
『今日がお前らの命日だ!!!!』
邪魔な建造物は全て瓦礫へと変貌させ・・・
『万死でも足りねえ!!たった一回死んだくらいで楽にさせねえぞ!!』
幹部クラスの構成員は全員見せしめに処刑という拷問にかけ・・・
『雑魚一匹だろうと逃がさねえ!!根こそぎぶっ潰す!!』
藍幇の末端構成員最後の一人を潰すまで戦いの限り、破壊の限り、暴虐の限りを尽くして尽くし・・・
『血の一滴もこの世に残ると思うな!!!』
藍幇はラクーンシティの傘の如く街ごと地球上から消失・・・
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
「そこまで出来るかはわからんが期待に沿えるよう最善と全力を尽くそう」
「「「「しなくていい!!!」」」」
後、人の心を読むな!!
「だからわかりやすいんだよ。お前の場合」
「なあ氷牙・・・何度も言うが俺達は戦争をしに行くわけじゃないんだ。あいつらが大人しく殻金を渡してくれるならそれで穏便に済ませたい・・・・頼むからここは抑えてくれ・・・」
「保証しかねる。あいつらが仕掛けてきたら俺は全力で対応してやる」
「レキ、凜香・・・中国では絶対に氷牙から目を離さないようにしてくれ・・・万が一のことがあればお前たち二人が最後の砦だ・・・」
「・・・うん、氷牙の事は私とレキで見張っておくよ」
「てかお前こそ俺の心配よりも自分の心配をしたらどうだ?中国に行くにしたってお前中国語分かるのか?」
「そ、そういうお前はどうなんだよ?」
「你叫什么名字?」
「・・・え?」
「今のが中国語だ「あなたの名前は何ですか?」だよ。会話は問題ない。さすがに字は書くのは少し難しいが読むのはできる」
「・・・・・・・・・・・・」
「言い返すようだがアリア達もキンジから目を離すなよ?こりゃ迷子になったら2度と帰ってこれないぞ?」
「ええ・・・要するに今回の旅行も・・・」
「前途は多難、幸先は不安・・・ってことだねー」
「何事も無ければいいんだけど・・・まあ無理だよね・・・経験上・・・」
「ホントにあんたは変わらないわね・・・潜入捜査でとはいえせっかく一般高校に行ったんだから少しは自重と常識を学んでくるよう願ってみたけど・・・戻ってきて早々これじゃ願うだけ無意味だったみたいね・・・」
「そんなもの半月足らずの一般高校生活で学べるわけがないだろ。むしろ大人しくしてた分、フラストレーション溜まり続けたよ」
「あれで大人しくかよ・・・初日から派手に目立ってたじゃねぇか・・・」
「そもそも・・・」
「そもそも?」
「願うだけで解決するなら神も悪魔もいらんだろ」
いやそれお前が言っちゃダメじゃね!?