つまり物語上のキンジの回想終了ってとこかな?
バスジャック事件の後日、俺はアリアの病室に見舞いに来た
「よう・・・アリア・・・」
「氷牙・・・あんたも来たの・・・」
「ああ、すまない・・・肝心な時にいてやれなくて・・・そのせいでお前は・・・」
アリアは命に別場こそなかったが額に掠めた銃弾によって出来た傷が今後も消えずに残ってしまうそうだ
そのキズを隠すためかアリアの前髪は額を隠すようになっていた
「いいわよ・・・あんたがあそこでファングを食い止めてくれなかったら私たちはあそこにたどり着けなかったわ・・・」
「そうか・・・なあ、アリア・・・今後も武偵殺しを追うなら俺も――」
アリアは首を横に振って
「ありがと・・・もういいわ・・・」
「え?」
「キンジとあんたとの契約は終わりよ・・・もうあんたも武偵殺しを追わなくてもいいわ・・・」
そんな信じられない言葉を言った
「なんだよ・・・それ・・・いいのかよ!だってお前が武偵殺しを・・・いや、イ・ウーを追いかけてるのは――」
「やめて!言わないで!」
「ッ!?アリア?」
「お願い・・・出てって・・・」
「アリア・・・」
「・・・・・・」
そして俺は悟ってしまった
もう・・・手遅れなんだと・・・
もう・・・俺の声はアリアには届かないんだと・・・
そして俺は無言で病室を出ていった・・・
そして病院を出ると携帯が鳴った
着信は・・・平賀ちゃんからか・・・
俺は電話に出ると
「はい、もしもし?」
『氷河君、頼まれた改造済んだのだ〜』
なんてお気楽な声が聞こえてきた・・・
「ああ・・・すぐ行くよ」
そう言って俺は電話を切ると装備科へと向かった
装備科、平賀の作業室にて
「氷牙君、改造終わってるのだ!」
平賀が刀を差し出してくる。
無論これはファングから渡された刀である
「言われた通りに改造しておいたのだ」
「ああ、ありがとう」
そして刀を持ってみると刀身が熱くなっていた
氷牙が平賀に依頼したのは刀に高周波機能をつけてもらうことだった
高周波で切れ味を増すと共に発熱により斬ると同時に傷口を焼いて止血を行う、
そうすれば少なくとも出血多量で死ぬことはない
「それと頼まれた弾薬も出来たのだ。」
そう言って平賀は部屋の隅にある弾薬ケースを指す
「助かるよ」
これは平賀ちゃん特製の非殺傷弾、
貫通性を完全にゼロにして衝撃だけを与える代物だ
これならいくら撃ち込もうが(よほど当たり所が悪くなければ)致命傷になることはない、まあ至近距離で当たれは目くらいは潰せるしよくて骨折・悪けりゃ内蔵破裂することもあるけど・・・
氷牙は弾を確認するとポケットから札束を出して平賀に投げ渡した
「じゃあこれ代金、わざわざありがとね」
それを受け取った平賀は札を数えながら疑問に思ったことを言った。
「氷牙くんも変わりものなのだ、なんでこんな相手に情けをかけるような改造ばかりしているのだ?」
「・・・それはね・・・俺が武偵でいるためさ・・・」
こうでもしなければ俺は・・・やがて武偵ではいられなくなってしまうかもしれない・・・
――牙は取り戻したな――
あの時ファングに言われた一言・・・あれが今でも俺の頭から離れない
この刀を握った時から俺は破壊衝動に煽られて仕方がない・・・
戦意と殺意が昂ったまま一向に収まる気配がない・・・
正直、このままじゃ自分を抑えられる自信がない、いつどんなことをするか・・・十分でも想像もつかない・・・
そして氷牙は装備科を後にした。
そして数日後、氷牙の予想は見事に悪い方向に当たっていた
教室にて武藤と不知火がキンジの元に詰め寄って来た
「おいキンジ!氷牙の奴どうしちまったんだよ!」
「遠山くん・・・九狂君、ここ最近随分荒んでいるけど・・・何があったんだい?」
「それは・・・」
ここ数日、アリアが入院してからというもの氷牙は荒れていた
強襲系の依頼を詰め込むように受けては犯人を無惨な状態にしているのだ・・・
特に仲間に危害を加えたものには一切の容赦がなかった
「あいつ、先日なんて俺にイチャモンつけて殴りかかってきたヤンキーを顔がメチャクチャになるまで殴り続けたんだぞ!」
「ボクと武藤くんが止めなかったら・・・危うく殴り殺してしまうほどだったよ・・・」
それだけではない武偵の悪口言った通りすがりの一般人を半殺しにするし、クラスメイトからカバンひったくろうとした奴を無警告でフルオート射撃を撃ち込み全身の骨を砕くし、挙句の果てには武偵数人に軽傷負わせた拳銃持った立てこもり犯人の手足を容赦なく切り落とした
ここ最近氷牙は多少のことですぐにブチ切れては普段の狂牙モードなんて比べ物にならないほどいくらなんでもやりすぎな程に攻撃的になっているのだ
今はまだ死人こそ出てはいないが死んだ方がマシな状態にされている者だっている・・・
こんな状態が続けばさすがの教務科も黙っていない、ただでさえ数ヶ月前に何人もの記者を病院送りにして武偵の評判を貶めてくれた張本人なのだ。
「ホントに氷牙の奴・・・どうしちまったんだよ!?」
「もしかして・・・こうなったのも・・・やっぱり神崎さんのことかい?」
「・・・・・・」
キンジは黙る。
だがこれで不知火は確信を得た
「こういう時、沈黙は肯定を意味するんだよ?尋問の基本じゃないか。」
「くっ・・・・・」
「アリアの奴この前のバスジャックで重症負ったからな・・・」
「ああ・・・俺なんかには荷が重すぎたんだ・・・そのせいでアリアの足を引張ちまった・・・」
「神崎さん、確かロンドンに帰るんだってね・・・引き止めたりしないのかい?」
「俺に止める義理はない・・・」
「キンジ・・・お前それでいいのかよ・・・」
「・・・もうあいつとの契約は済んだんだ・・・所詮俺とアイツは一時的に組んでいただけのことだ・・・」
「遠山君・・・」
「すまん・・・俺は帰る・・・一人にしてくれ・・・」
そう言ってキンジは寮へと帰っていった。
ピンポーン
寮に戻った後、俺は何もする気になれず自室のソファーで寝転がっていると誰かインターホンを鳴らす
(出る気分じゃない・・・)
そう思い居留守を決め込もうと瞼を閉じる
ピンポーン
ピンポーン
(しつこいな・・・)
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
(いい加減にしてくれ・・・今は誰にも会いたくないんだ・・・)
ピンポーン
ピンポーン
……
(ようやく諦めたか・・・)
そう思い瞼を上げた途端
ドゴォォォン
突然の轟音と共に玄関のドアがリビングまで吹っ飛んできた。
「キンジ!居るんだろ!」
「なっ!氷牙か!?」
氷牙はドアを蹴破って入ってきた
「なんの用だ・・・後、お前最近性格荒れているぞ、不知火たちも心配してた。」
「誰のせいだと思ってんだ・・・聞いたぜ、アリア・・・ロンドンに帰るんだってな・・・」
「ああ、聞いたよ・・・」
「お前・・・それでいいのか?」
「・・・・・・」
「アリア・・・泣いてたんだぞ・・・」
「・・・・・・」
「いいのかよ!?こんな中途半端に終わって!」
氷牙はキンジの胸ぐらをつかみ立ち上がらせる。
「関わるなら最後まで関わりぬけ!何度俺を失望させれば気が済むんだ!このヘタレが!このままじゃアリアはずっと独唱曲のままだ!お前が一番わかってんだろ!?」
キンジは顔を俯かせながら弱々しく答えた
「・・・悪い・・・やっぱり俺は・・・武偵を辞めるよ・・・もうアリアや強襲科には一切関わらないし・・・クエストも受けない・・・」
「本当に・・・そんなんでいいのかよ・・・」
「え?」
「クソッ!」
氷牙はキンジをソファーへと突き飛ばし
「アリアは今夜ロンドンに立つ・・・これが最後のチャンスだ・・・ヘタレなまま何もかも忘れて武偵を辞めるか、覚悟決めてあの子と関わり抜いて武偵続けるか、せいぜい悔いのないように決めるんだな」
そう言って氷牙は部屋を去っていった。
「・・・・・・」
再び訪れた静寂、だがキンジには先ほどの氷牙の言葉が耳から離れなかった。
『このままじゃアリアはずっと独唱曲のままだ!お前が一番わかってんだろ!?』
「・・・・・・」
『いいのかよ!?こんな中途半端に終わって!』
いいんだこれで・・・俺は武偵を辞める、アリアとはこれできっぱり縁を切る、
これで・・・いい・・・はずなのに・・・なんで・・・こんなにも苦しいんだ・・・
チクショウ!俺は一体どうしたいんだ!?
この時キンジは気づいていなかった。
自分の不甲斐なさとは言えアリアを傷つけてしまった事
そしてそのせいでアリアはロンドンに帰りキンジとは二度と関わることはない。
つまりキンジにとってはアリアを失うという事
つまりは完全にではないがヒステリア・レガルメンテが発動していたという事に
キンジの頭は急激に冴え「武偵殺し」について推論を立て始めていった。今回のチャリジャック事件、バスジャック事件、先ほどの氷牙からの話、そして―――
そしてその推理は次第に一本の線になりその線は・・・
―――最悪な結末に繋がっていた
――ヤバイぞ!
今すぐ、動かなければ!
そう考えるよりも先にキンジは部屋を飛び出し、羽田へと向かった
「武偵だ!緊急事態だ!通してくれ!」
羽田、俺は武偵手帳を提示しゲート、検問全てを通過してアリアの乗る600便へと向かっていた
そして搭乗口に差し掛かったところで
「ようやく来たか」
搭乗口通路に氷牙がいた
「氷牙!?どうしてここに!?」
氷牙は通路に立つと俺にMP5Kを向けた。
「なっ!?」
「覚悟は決まったのか?キンジ?」
氷牙は問いかけてきた
「・・・・・・」
「ここから先に行けばもう後には戻れないぞ!」
「・・・・・・」
「キンジ、本気で武偵を辞めるつもりなら引き返せ!そのときは後始末くらいなら俺がやってやる」
「俺は・・・」
「もう一度聞くぞ、最後までアリアと関わり抜く覚悟は出来たか?」
「俺は―――」
キンジは氷牙を見据えて言った。
「正直・・・まだどうしたいのかは自分でも答えは出ていない・・・だけど俺はまだ武偵だ、一度受けた依頼は・・・裏の裏まで・・・最後まで完遂する!」
それを聞いて氷牙は目を伏せて息を吐いた。
「・・・まあ、及第点か・・・」
氷牙は銃を下ろし道を開けた。
「行け・・・今度こそ・・・アリアを守ってやれよ!じゃなきゃ俺が殺すからな!」
「ああ・・・今度こそ・・・アリアは俺が守る!」
そう言ってキンジは飛行機へと乗り込んでいった。
だが乗り込んだところでハッと気づく
「って、氷牙!?お前は来ないのかよ!?」
だが気づいた時には氷牙はロビーへと戻っていった
どういうことだ?なんであいつ一緒に来ない?
だが腐っても1年以上の付き合いがあるキンジにはすぐに理解できた
アイツはいつも一番危険なポジションを進んで引き受ける男だ。
てことは今回も・・・
「氷牙・・・恩に着る・・・」
そして、空港に残った氷牙は無線を耳に当てた
「さてと・・・レキ!準備はいいか?」
『はい、いつでもいけます』
すると何かが白煙を巻きながら飛んできた。氷牙の足元に落ちたそれは・・・スモークグレネードだった
『前方下階ロビーに複数、後続部隊も次々ときます』
「来たか・・・随分と荒っぽい見送りだな」
やってきたのは武偵殺しの・・・正確にはファングの子飼いの駒、離陸寸前に600便になだれ込んでハイジャックする手はずの駒たちだ
流石にこれだけの数が乗り込んでくると面倒になるのでここで相手してお引き取り願うとしよう。
『この状況・・・あの時と同じですね』
「ああ、本当にあの時と同じだ。アリアと初めて会ったあの日とな」
ならきっと今日こそが本当の始まりの日になるだろう。
「ホント・・・あの日よりもすっと最低最悪な始まりだよ・・・」
だが内心嬉しくもある。本当に・・・らしすぎる幕開けなのだから・・・
『援護はお任せ下さい』
「ああ頼んだぞ」
氷牙は吹き抜けから下階を見下ろすとファングの駒たちに言った
「テメエら・・・こっちは数日前からどういうわけかメチャクチャ機嫌が悪くてな・・・もう容赦なんかしねえぞ・・・」
そして狂牙モードへと切り替わり両手にMP5Kを構え、
「来いよ・・・俺の銃弾は・・・」
階下へと飛び降りると同時に叫んだ
「生き地獄への片道切符だ!」
4000文字なんて初めて書けた・・・