一夜明け、悪夢のような時間はようやく終わった
レキはすぐさま武偵病院へ搬送され検査を受けた、
幸い大事には至らなかったが右腕にはヒビが入っており当分安静のことらしい
氷牙は昨日から教務科で事情聴取を受けてから未だに帰ってこない
どうやら防衛庁のお偉方から米軍の将校まで来て今回の事件について未だに揉めているらしい・・・あいつ何やらかしたんだ?
「武偵殺し」こと、峰理子は逃亡してからというものその後の足取りは掴めなかった
抜け目のない奴だから悠々と逃げ果せたんだとは思うが・・・
そして・・・キンジとアリア、二人はベランダで語り合っていた。
「ママの公判が延びたわ。『武偵殺し』の件は冤罪だと証明できたから。年単位の延長みたい」
「……そうか」
「ねえ・・・なんであんた私を助けに来たの?」
「・・・分かんねえよ・・・そんなの・・・」
「私分かったんだ・・・なんでパートナーが必要なのか・・・
あたし一人じゃ何もできなかったから・・・あんたがいなかったら・・・」
「・・・・・・・」
「・・・だから・・・今日はキンジにお別れを言いに来たの」
「・・・お別れ?」
「一回だけって約束したでしょ」
俺が強襲科に戻って一回だけアリアと組む。それが約束だった。だからキンジはわざわざ飛行機に乗り込んでまで約束を果たしてくれた。
「・・・キンジ。あんたは立派な武偵よ。もう・・・奴隷なんて呼ばない。だから・・・もしあんたにその気があれば・・・あたしの、パートナーに・・・」
「・・・・・・・悪い」
「い、いいのよ。あんたにその気がないなら。あたし・・・どうせまだまだ、独唱曲だから・・・」
「・・・・・・」
「じゃあ、そろそろ行くわ」
「約束でもあるのか」
「うん。お迎えが来るのよ。ロンドン武偵局よ。ヘリで送ってくれるんだって」
「そっか・・・見つかるといいな。お前の、パートナー」
「うん。きっと見つかるわ」
「じゃあね、バイバイ」
そして玄関のドアが閉まり・・・アリアはこの部屋から出ていった・・・
そして玄関前で――
「・・・ひっく・・・ひっく・・・えぐっ・・・うぅ・・・」
「見つからないよ・・・いないよ・・・あんたみたいなヤツ・・・絶対いない・・・。もう、見つかりっこない・・・よ・・・」
アリアは泣いていた・・・
・・・玄関のドアは氷牙がぶっ壊してから防音性が無くなっている・・・
つまり、先程のアリアの声は・・・キンジの耳に痛いほどに伝わっていた・・・
それでも・・・俺は何もすることができなかった・・・
「・・・これでいいんだ・・・俺は・・・武偵を辞めるんだから・・・」
・・・氷牙の言う通り・・・俺は周りを傷つけるだけの半端者だから・・・
俺はソファーに身を沈めて、額を押さえて自分に言い聞かせた
これでいいんだ・・・と
武偵をやめて、思い描いた通りに平凡な人生を送るんだ・・・と
そう。これでいい・・・これで――
「――いいわけ・・・ねえだろ・・・」
キンジは顔を上げ
「クソッ!やっぱり俺は半端者だよ!」
そして部屋を駆け出していった。
キンジは女子寮の階段をガンガンと登ってゆく。
(行かせない! お前を独奏曲のままで行かせない!)
そして屋上に着くと既にヘリは飛び立とうとしていた。
だがそれでもキンジは叫ぶ
「アリアー!!」
叫ぶ!
「行くな…アリアー!」
心の底から叫んだ
「俺がお前の・・・パートナーになってやる!」
するとヘリのドアが開く。
「遅いわよ!バカキンジ!!」
そう言ってアリアはヘリから飛び降りてきた。
「ちょッ・・・・・・おまっ!」
アリアはキンジの胸に落下する。
受け止めた際背中をフェンスにぶつけて金網をひしゃげさせてしまった。
「Aria What’re you doin’(アリア!何をやってるんだ)!」
ヘリからロンドン武偵局の役人が血相変えてなにか叫んでいる
「さっさと逃げるわよ!あいつらすぐに降りてくるわ!」
「了解だ!」
そうして俺はアリアを抱えたまま屋上のドアを破壊して開けなくしたあと
「悪りぃなアリア。今の俺にはこんなことしか思い付かねーんだ」
「?」
「アリア!お前は独唱曲だ!そうなんだろ!でもな――」
俺はひしゃげた金網をジャンプ台みたいにして、
「――――俺がBGMくらいにはなってやる!」
アリアを抱き抱えたまま屋上から飛び降りた。
そしてロンドン武偵局の役人を撒いてアリアを連れて部屋に戻ってみると
「あれ?ドアが直ってるぞ?」
氷牙に壊されたはずの玄関のドアはいつの間に綺麗に直っていた
不審に思いながらも扉を開けると
「おう、おかえりキンジ、アリア」
「おかえりなさいお二人共」
家に帰ると何故か氷牙とレキがいて机には料理が並べられていた
「何してんだお前ら・・・」
「見て分からないか?パーティーの準備だ」
「それはわかる・・・何でパーティーの準備してるんだ?」
「キンジとアリアのコンビ結成記念とキンジの復帰を祝ってだ!」
「あんたたち・・・別にそんなの―――」
「ももまんも作ったぞ。いっぱい食え!」
「キンジ!早く席に着くわよ!」
「ハァ・・・ま、いいか」
キンジもため息をつきながらも開き直りリビングに向かった
その途中ふと思い出した
「そういえば理子はアリアをオルメスって言ってたけどどういう意味だ?」
「あんた馬鹿?」
ももまんを持ったアリアが呆れ顔になる
「お前、気付いてなかったのか?」
「え?」
「オルメスはフランス語でHolmesつまりホームズです」
「え?それって・・・」
「そ、アリアの本名は、神崎・ホームズ・アリア」
つまりは・・・
「あたしはシャーロック・ホームズ4世よ!」
嘘だろ・・・こんな、桃まんが好物で。ことあるごとに拳銃ぶっぱなして。ポン刀ぶん回す。こんな・・・ちっこカワイイ・・・
――ありえん、こんなホームズ、ありえんだろ!
キンジはそう思い頭を抱えたが・・・
「キンジ、ここは武偵校だ」
すかさず氷牙が突っ込んできた
はいそうですね・・・そうでした・・・あと心を読むな!
「わかりやすいんだよお前の場合」
「覚悟しなさい!あんたはあたしのパートナー、J・H・ワトソンに決定したの!もう逃がさないからね!逃げようとしたら風穴開けるわよ!」
「勘弁してくれ・・・」
「まあよかったじゃねえかキンジ、いいパートナーが出来て。しかもお前の好みど真ん中の合法ロ――バキュン――・・・ゴメンナサイ」
ただすぐにガバメントをぶっぱなすのが玉に傷だけどな・・・
「うるさい・・・だいたいパートナーが出来たのはお前の方もだろ・・・」
「は?俺も?」
キンジは何言ってんだという顔をして尋ねた
「だってお前レキとパートナーになったんじゃないのか?」
「え?あんたたちパートナーになってるの!?」
続いてアリアも驚きの顔を見せる
「あーなんて言ったらいいのかな・・・」
まともに言っても意味不明だろうからここは当たり障りのない感じにまとめあげて・・・
そう言って頭の中で急ピッチで筋書きを構築していくが・・・
「違います。本当は私は、氷牙さんの所有物です」
レキの爆弾発言で全て意味がなくなりました・・・
「あ・・・」
「は?」
「はい?」
「ですが今は氷牙さんの希望で恋人同士です」
「へ・・・ふぇ・・そ、それって・・・」
アリアの顔が次第に真っ赤になってゆく
「おい・・・氷牙・・・」
キンジがジト目を向けてきた・・・
俺は額に手を当て
「・・・所有物にするよりはマシだ、それに・・・俺はまんざらじゃない」
こういう時は開き直りが肝心だ・・・
「タフだな・・・」
「お前ほどじゃないさ・・・」
「だ、だからって好きでもない相手と・・・」
「心配いりません」
「え?」
「私は少なからず氷牙さんに好意らしきものを抱いています」
再び爆弾投入きました・・・
「え?え?」
アリアはさらに混乱する
「どうゆうことだ?」
キンジが問いかけてくる
「・・・順を追って話すよ・・・」
といってもどこから話したものか・・・
なにせこうなったのは・・・つい数時間前の事なんだから・・・
もうヒロインは確定しましたね・・・