紅鳴館に潜入してからというもの・・・
幸先不安なことこの上なかった・・・
例えば・・・
屋敷に行くため理子と合流すれば・・・
なんでよりにもよって・・・
「何でカナに変装してんだよ!」
「だって理子ブラドに顔割れてるからさー、万が一帰ってきたらヤバイでしょ?」
「だからって何でその顔なんだよ!」
理子はカナさんに変装していた・・・
キンジの”兄”であるカナさんに・・・
「カナちゃんは美人だからねー、それにキーくんの好きな人の顔で応援しようってわけですよ?怒った?」
「いちいち怒るほどガキじゃない・・・行くぞ・・・」
「本心じゃ喜んでるくせにぃー」
とゆうより見るからに悔しそうだった
「な、何?キンジ、急にどうしたの?理子が化けてるの誰の顔なの?ねえキンジ、氷牙、理子!誰なのそれ?カナって誰よっ!」
「・・・・・・・・・・・」
キンジは黙る。そりゃどう見ても女性にしか見えずそれどころか美人だ
そんなのを兄だなんて言えるわけがないだろう・・・
「ねぇキンジ!誰なの!?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「キンジ!答えてよ!」
「・・・キンジの家族だよ」
「なっ!?おい氷牙!!」
見てられずに俺が代弁することにした
「このまま黙っててもこじれるだけだろ!」
「だけど―――」
キンジは止めようとしたが寸前で止めた、アリアからは死角で見えなかったが氷牙が手でサインを送っていたのが見えたからだ
(マカセロ)
「家族?」
「ああキンジの家族で・・・立派な武偵”だった”人だ・・・わかったか?」
「―――!!」
それを聞いてアリアは察してくれたようだ・・・キンジにとって都合がいい方向に・・・
それに・・・嘘は言ってない
「・・・そう・・・わかったわ・・・教えてくれてありがと・・・」
「ああ・・・」
「氷牙・・・悪い・・・」
これで今は少なくともこれ以上追求されることはないだろう
「いいさ・・・ほら、行こうぜ」
先は長いからな・・・厄介事はできるだけ未然に早めに片付けよう・・・
そして紅鳴館に着いてその門を叩き
「本日よりこちらで家事のお手伝いをさせて頂く、ハウスキーパー3名を連れてまいりました」
と理子が引きつった顔で挨拶をした相手は・・・
「はい、お待ちして―――」
そう言って出迎えてくれたのは・・・
「「「・・・え?」」」
武偵校非常勤講師―――小夜鳴、だった・・・
いきなりミッション失敗じゃねえのか?まだ始まってもいないけどよ・・・
「いやーまさか武偵校の方に来てもらえるとは」
「私も驚いています・・・まさか偶然とは言え学校の生徒と先生なんて」
さすがの理子もこれは予想外だったらしく平静を装いつつも困惑気味だ
「ここは小夜鳴先生の家なんですか?」
「いえいえ、私はこの屋敷の・・・まあ管理人みたいなものですね。管理人をする代わりにこの屋敷の研究施設を借りているんです、ただ・・・研究に没頭して屋敷の管理が疎かになると不審者が入ってくる危険もありますからハウスキーパーさんが必要だったんです」
「主人が戻ってきたらいい話の種になりますね。まあ・・・期間中に戻れば・・・ですが」
理子のやつ・・・それとなく探り入れてやがるな・・・
「いや、彼はとても遠くにいてしばらく帰ってこないんですよ。私も彼とは親しいのですが・・・直接お会いしたことはないんです」
――?親しいのに会ったことがない?何か矛盾してないか?と言うかそんな人間に自分の屋敷を任せていいもんなのか?
「なんにせよありがたい事かもしれません。元を含むSランク武偵が3人もいてくれるんです。これなら何も心配せずに研究に没頭できます」
どうやら災い転じてだ、むしろ心強いと俺たちを雇ってくれるようだ
・・・俺たちがその不審者なのにな・・・
「では皆さんは2階の部屋を使ってください。制服はクローゼットにいくつかあるので適当に選んでください。仕事内容は前のハウスキーパーさんが簡単なマニュアルを作っていったのでそれを読んでやってください。あ、この屋敷には遊戯室があります。私は地下の研究室に篭りきりなのでみなさんの相手をする時間はあまりとれませんが暇なときは自由に使って構いませんよ」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃあ研究で忙しいのでこれで失礼します。食事の時間になりましたら教えてくださいねー」
そう言うと小夜鳴は螺旋階段を降りて地下室に篭ってしまった
研究か・・・確か品種改良だか遺伝子工学だったかな・・・
血統にばかりこだわる・・・俺からすれば理解に苦しむ研究だな・・・雑種だって雑種なりの良さがあるもんなのにな・・・
そして用意された部屋に入るとキンジは燕尾服を取り出し着替える
「しかし・・・我ながら違和感なく合っているな・・・」
アリアとの奴隷生活から染み付いたのか・・・どうも俺は人に使われる立場ってのがしっくりくるらしい・・・元からその素質はあったのかもしれんが・・・
「キンジ?着替えたか?」
氷牙が入ってくる
「あれ?氷牙それ・・・」
氷牙の制服は・・・どう見ても燕尾服ではなくコック服だった
「俺は厨房担当だ・・・台所周りは俺が受け持つよ・・・」
「そうか・・・まあ適任だな・・・けどお前・・・やっぱりこの仕事・・・乗り気じゃないんだな・・・」
「当たり前だ・・・前払いで報酬もらってなけりゃ・・・アイツからの・・・しかもこんな仕事・・・誰が引き受けるか・・・」
「氷牙・・・」
それも当然だ・・・依頼とは言え武偵が犯罪の片棒を担がされるんだから・・・それに・・・コイツは未だに理子を許せないでいる・・・それも仕方がないが・・・今は仕事だと氷牙は割り切ってるようで不機嫌ながらも受けた依頼はこなす気なようだ・・・
「じゃあとりあえず、すぐに使うところからの清掃から始めよう。俺は先に言ってるからアリア着替え終わったら一緒に食堂まで連れて来てくれ」
「ああ、わかった」
そう言って氷牙は一足先に食堂へ向かっていくが
「・・・言っておくがアリアのメイド姿に我慢できずに遅れたとか抜かしたら怒るからな・・・そうゆうのは仕事終わった夜中にやれよ」
途中で足を止めてそう言った
「んなわけあるか!」
そしてキンジはアリアの部屋のドアをノックして
「アリアー?氷牙が着替えたら食堂に来るように言ってるが準備できたか?」
そう呼びかける
・・・だが返事は来ない
「おい?入るぞ?」
部屋に入ると・・・
「う〜〜・・・・・・」
アリアはメイド服に着替えた自分に赤面になりながらも俺が入ってきた事に気づかないくらい全身鏡に映った自分を凝視していた
その姿は・・・ヤバい・・・かなりいいぞ・・・カワイイ・・・可愛すぎる・・・
正直目が離れん・・・
「ま、まあ・・・たまにはこうゆう庶民の服もいいわね・・・」
どうやらデザインや素材がお眼鏡にかなったらしい、アリアはメイド服を着てすっかり夢中になっていた
そして鏡に向かいニコッと作り笑いをしながら、くるりんっと
スカートをひらめかせながらエナメルの靴を鳴らしてその場で一回転した
そして一瞬、釘付けになっていた俺と目があった
顔は笑顔のまま
そしてもう一回転
今度は笑っていない
更にもう一回転
俺と正面向きで止まった
仁王立ち、顔は真っ赤で鬼の形相と最凶コンボで・・・
ずん、ずん、と床を踏み抜きそうな歩き方で俺に迫ったアリアは・・・
「あ、いや・・・呼んでも反応なかったかおうっ!?」
いきなりジャンプすると俺の顔面を両足で挟み込んだ
「で?ご用件はなんですか?ご主人様?」
怒りが行くところまで行ってアリアはもはや冷静になっていた・・・
「用ってほどの事じゃないんだが・・・できれば殺さないでほしい・・・」
「次覗いたら――脳天風穴地獄ッ!」
そしてアリアが体を思いっきり後ろに反らせるとキンジの体の上下が入れ替わり
――ドガン――
床に脳天を叩きつけられ――いわゆるフランケンシュタイナーを食らって俺の意識は一度途切れ、戻ってきたのは2時間ほど生死の境を彷徨った後だった
「全く油断も隙もないわ!」
「すまん・・・何というか・・・見とれてた・・・」
意識が戻るなりキンジは謝罪した
それを聞くとアリアは
「――ッ!!ま、まあそうゆうことなら仕方無いわね・・・」
顔を赤くして明らかに嬉しそうな顔だった
一応アリアも少しやりすぎたと思ったらしくキンジが目を覚ますまでずっとそばにいたようだ
「で?あんた、あたしに何の用だったの?」
「あ!!」
それで用件を思い出しキンジは青ざめた
その後俺達は大慌てで食堂に向かう―――
「なんでそれを早く言わないのよ!」
「お前が言う前に気絶させたんだろうが!」
「――と、とにかく!一刻も早く食堂に急ぐわよ!」
「ああ!マズイぞ!もしもう清掃が終わっていたとしたらアイツ今頃激怒してるぞ!」
「大丈夫よ!あの食堂かなり広いから氷牙一人ならまだ清掃の途中なはずよ!あとは全部は私たちがやるって言えば・・・なんとか・・・」
「甘いぞ・・・あいつの家事スキルは・・・」
――バァン――
「氷牙!遅れてすまん!これには訳が――」
俺は食堂のドアを開けるとともに謝罪した
だがそこに氷牙の姿はなく、食堂は・・・
既に隅々まで綺麗に清掃されていた
そして綺麗になっている食堂を見てキンジは
「遅かった・・・」
と膝をついた
「うそ・・・この食堂全部アイツ一人でやったの?」
氷牙の家事スキルは・・・白雪に匹敵するほどの最高レベルなのだ・・・
10人以上が晩餐会をできそうな広い食堂を氷牙は一人で2時間足らずで清掃してしまっていた・・・
これ・・・俺とアリアいらなくね?
いや・・・それよりも・・・・
「それで・・・氷牙?何処?」
――・・・・こー、しゃー・・・・――
なにか聴こえてくる・・・
「何この音?」
「台所からか?」
そして俺とアリアが台所を覗き込むと・・・・
――しゃーこー、しゃーこー――
((――――――ッ!!))
氷牙が居た・・・ただしあいつの周りにはここの台所に置いてあったのだろう十数種類の包丁やナイフが並べてあり・・・氷牙はそれを・・・一本、一本研いでいた・・・
「キンジとアリア・・・遅いなぁ・・・」
――しゃーこー、しゃーこー――
「全然来ないおかげで俺が一人で食堂を清掃する羽目になったからなぁ・・・・」
――しゃーこー、しゃーこー――
「ただでさえここ最近、不幸続きで俺の機嫌は最悪だってのに・・・あいつらいい度胸してるなぁ・・・」
――しゃーこー、しゃーこー――
何でだろうか・・・声をかけた瞬間あのナイフは俺たちの喉に突き刺さる・・・そんなビジョンが見えて仕方が無かった・・・
(き、キンジ!早く声かけなさいよ!)
(出来るか!こうなったのもお前のせいだろ!)
(いいから行きなさい!風穴開けるわよ!)
(むしろそうしてくれ!あいつに刺し殺されるよりはよっぽどマシだ!)
なんて口論してると
――カツンッ――
アリアのエナメル靴がドアを蹴ってしまい音を立ててしまった
((――ッ!!ヤバっ!!))
「んん〜?」
そして氷牙がこちらを向き目が合うと
「おお!キンジィー!やっときたかぁー!」
と氷牙は笑顔で迎えてくれた・・・なのに・・・口調は恐ろしく冷たく・・・あいつの後ろには蒼炎を纏って大剣を持った魔人が見えた・・・
やばい・・・あれは激怒を一回転している・・・
ちなみにアリアは既に姿を消していた
(に、逃げやがったー!?)
「遅かったじゃないかぁー、もう食堂の清掃終わっちまったよぉー?」
俺は即効で頭を下げ
「すまん!遅れて本当にすまん!これには訳があってだな!」
氷牙は笑顔のまま
「言い分を聞こうか?」
と重く冷たい口調で言った
「え、えっとだな・・・・まずアリアの部屋に入ったらあいつのメイド服姿に見とれてそれで―――」
そこまで言ったところで
「よし!死ね!」
氷牙はジャンプすると俺の後頭部に当たるように回し蹴り―――延髄斬りを入れた
そして暗転する意識の中俺は・・・
(こんなんで・・・本当に大丈夫なんだろうか・・・)
と思いながら深い闇に沈んでいった
その後俺は・・・今度は3時間生死の境を彷徨うことになった・・・
今回はほぼ勢いのみの文章でした・・・
おかげでオリ主ちょいと壊れてる・・・
まあこの先でもっとぶっ壊すプランありますが・・・