緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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32話<狂牙の目覚め>

 

 

 

時間を少し遡ってキンジ視点へ

「氷牙!」

キンジとアリアがすかさず氷牙に駆け寄る

「私のせいで・・・しっかりして!」

「あ・・・ぐ・・・」

アリアは刀を置いて容態を確かめる

呼びかけても反応がない!意識がはっきりしてない!

ブラドの爪で引き裂かれたのか顔の左側に大きな裂傷がついてる!

頭からも流血している!目の焦点も定まっていないし呂律も回っていない!

体も骨折はしていないようだが微動だにしない!

心臓もかろうじて動いているが・・・

「まずいわ!!呼吸が弱まってる!昏睡してるわ!」

「・・・仕方ない・・・『Razzo』だ!」

『Razzo』はアドレナリンとモルヒネを組み合わせ凝縮した気付けと鎮痛を兼ねた強烈な興奮作用もある復活薬だ

キンジは武偵手帳から『Razzo』を取り出し

「行くぞ氷牙!自分を見失うなよ!!」

そしてキンジは注射器を

――ドスッ――

氷牙の心臓に思いきり突き刺し注入した

 

 

 

 

 

 

 

――ドクンッ――

 

「ぐっ!がはっ!」

注入した直後、氷牙は上半身を跳ね起こすように飛び起きた

 

――ドクンッ――

 

「がはっ!はぁっ!」

荒く不規則な呼吸をしながらも氷牙は自分で心臓に刺さった注射器を抜いた

 

――ドクンッ――

 

「氷牙、大丈夫?」

「氷牙!俺の声が聞こえるか!?」

 

――ドクンッ――

 

「はぁっ!はぁっ・・・」

 

 

――ドクンッ――

 

なんだこれは・・・心臓が一鼓動打つたびに・・・感覚が冴え渡る・・・戦意が昂ぶる・・・不思議と笑えてくるほどだ・・・

 

――ドクンッ――

 

心臓の音が響くたび・・・気分が高揚する・・・自分が自分じゃなくなるみたいだ・・・まるで・・・頭の中が書き換えられるようだ・・・

 

――ドクンッ――

 

「・・・・・・・・・・・・・」

「氷牙、聞こえる!?」

「氷牙!返事をしろ!自分をしっかり持て!」

 

――ドクンッ――

 

「・・・・・・・うるせぇよ・・・喚くんじゃねぇ・・・」

氷牙はアリアの刀を拾い立ち上がった

「ちょっ?氷牙!?」

「アリア・・・刀・・・借りるぞ・・・それと・・・理子・・・ブラドの4つ目の魔臓・・・何処だ?」

 

――ドクンッ――

 

理子は何を言って・・・と思ったが・・・

「・・・口の中・・・舌だよ・・・」

と全てを託すように答えた

 

――ドクンッ――

 

「おい!?氷牙!?お前まさか――」

「・・・後は・・・任せろ・・・俺が終わらせてやる・・・」

そう言って俺はブラドと向き合った

 

――ドクンッ――

 

その時俺の顔を見たアリアの

「ねえ、氷牙・・・あんた・・・なんで・・・笑ってるの?」

そんな質問に答えることもなく・・・

 

――ドクンッ――

 

「ガハハ!死に損ないが!まだ来るか?」

 

――ドクンッ――

 

「・・・ブラド・・・雑種の底力・・・見せてやるよ・・・」

そう言って刀を構え目を閉じた

 

――ドクンッ――

 

ああクソッ・・・気分は笑えるくらいに高揚してるのに・・・体調は最悪だ・・・身体は全身・・・特に顔の左側が痛ぇ・・・左目の視界が真っ赤でよく見えねぇ・・・耳鳴りがして音もはっきりと聞こえない・・・考えもまとまらないし・・・意識が今にも途切れそうだ・・・

 

けど・・・

 

――ドクンッ――

 

けど・・・それがどうした?

体はまだ動く!まだ右目が見える!もう何も聞く必要は無い!もう何も考える必要は無い!

 

――今、俺が考える事は一つだけだ!

 

――ドクンッ――

 

心臓の鼓動が響くたび氷牙の狂気と殺気が凄まじく濃くなっていく・・・

普段の狂牙モードとは比べ物にならないほどに濃く強烈なほど・・・

 

――ドクンッ――

 

そして氷牙の心は次第に冷たく空っぽに・・・何も考えない・・・ただの冷徹な人形のように空っぽになっていき・・・残ったのは異常なまでの高揚感と殺意と狂気に彩られた・・・たった一つの目的だけだった・・・

 

――ドクンッ――

 

――俺の考える事・・・俺ノ目的――ソれハ――

 

――ドクンッ――

 

 ブ ラ ド ヲ――

 

――ドクンッ――

 

 ―― コ ロ シ テ ヤ ル !!

 

氷牙は目を見開き――――

「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!!!!」

 

雄叫びをあげ赤く光る目が軌跡を残しながらブラドへ突っ込んでいった

「バカが!これで終わりだ!」

ブラドが大砲のような拳を繰り出す

それは氷牙の顔面に吸い込まれるように突き進んで拳が当たる寸前

 

ニィ―――

 

氷牙の口元が笑ったかのように引きつった

 

 

 

 

 

――同時刻

「目覚めたね」

遠くからこの戦いを一部始終傍観している人物がいた

「九狂氷牙・・・またの名をコードネーム:マッド・ファング・・・最低の失敗作にして最高の逸材と呼ばれた男・・・」

かつて人の感情を持ってしまい一時的に感情を押し殺す狂牙モードでも本気で人を殺しにかかる事が出来ず、出来て手足を切り落とすのが関の山だった氷牙は戦闘マシンとしては最低の失敗作であった

しかし戦闘スキルのみを評価するのであれば・・・それはまさにキンジやアリアをも上回るかもしれない最高の逸材だといえる人物なのだ。

「私たちがそうなるように仕組んだとは言え・・・なんとも面白い人生になったものだね・・・狂牙の力・・・戦意と殺意を向上させる力・・・それだけでもなかなか面白いけど・・・その力はそんなものじゃない・・・それに・・・君の本当の力はもっと世界を書き換えるほどの巨大な力だよ・・・本気を出すことを・・・恐れないで・・・」

氷牙は基本、全力で戦おうとは絶対にしない・・・氷牙の力は人には大きすぎる力、もしも本気で戦えば・・・相手を本当に殺しかねないからだ・・・武偵である以上はそれは最大の禁忌・・・そんな感情がリミッターとなり全力で戦うことを無意識下で抑えているのだ・・・

だが・・・もしもそんな無意識レベルの感情を上書きするほどの感情が沸き起こり、その戦闘スキルを遠慮なしに100%発揮できれば・・・・

しかし、もしそうなったらそれは最強にして最悪の戦闘マシンになるということだ、戦闘マシンのやることはただ一つ、敵を殲滅することだ。当然容赦や情けなんて物はあるはずが無い、もしも下手をすれば―――

「第一の蓋は開いた!さあ!すべてのしがらみを捨てて・・・まずは狂牙の真の力・・・思う存分振るう時だよ!」

 

 

 

 

 

 

ニィ―――

 

「グァ!?」

拳が当たる寸前、氷牙はブラドの腕を転がるように回転して攻撃を流しブラドの腕を切り裂きながら目前まで近づいた

――ドシュ、ブシュ――

そして右手の刀をブラドの左肩の魔臓に左手の刀を下顎から舌の魔臓を貫く様に突き刺した

右手の刀は左肩を貫通し・・・左手の刀も・・・下顎を貫通し脳天から刀身が突き抜けた

「グブャァァア!?」

ブラドもたまらず悲鳴を上げがむしゃらに腕を振った。

それに伴い氷牙も刀を突き刺したまま手を離し一度離されたが着地すると同時に背中の刀を抜いて再び突っ込んでいった

 

「――ッ!!ちょっと!!あれ・・・9条破り!!」

今の技・・・9条破りの技・・・殺しの技だ!ブラドじゃなければとっくにあの世行きだ・・・なのに氷牙はそれをなんの躊躇もなくやった・・・

「マズイぞ!氷牙の奴――」

 

「ぼのブァキがァ!」

ブラドが舌を刺されて上手く発音できない声で叫びながらまずは下顎に刺さった刀を抜き捨てる

「ラァ゛!」

「グガァ!?」

そして刀を抜いた直後、氷牙の蹴り上げでブラドの体が浮いた

魔臓に刺さった刀をすぐに抜こうとしたのがあいつのミスだ

そのおかげで僅かな時間だがブラドにスキが出来た

そして今の氷牙にならたとえそのスキが1秒もない程度だったとしても逆転するには十分だった

そしてブラドが空中に浮いた状態で

「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」

氷牙の姿が突然消え、ブラドの身体のあちこちが切り刻まれてゆく。

 

――ザガッガッザガッザッザッガッザガガッザッザガッザッザッガッ

――

 

氷牙はもはや肉眼では捉えきれない速度で前から後ろから右から左から上から下から全方向からブラドを切りつけた

キンジのヒステリアモードの眼力をもってしても見えたのは赤い光が軌跡を残しながらブラドの周りを横切り、切り刻み続ける光景だけだった

(ッ速い!速すぎてブラドも再生が追いついてこれてない!)

「・・・なによ・・・あの動き・・・あれは・・・氷牙なの・・・?」

アリアが立ち上がり歩み寄ろうとする

「アリア!近づくな!」

キンジはアリアの肩を掴み引き寄せた

「え・・・?」

「氷牙は・・・アリア以上に薬が効きやすいんだ・・・『Razzo』の興奮作用が過剰に効いて・・・完全に暴走してる・・・今のあいつには・・・周りの人間は敵かそうじゃないかしか認識されてない・・・無闇に近づけば敵と認識される・・・そうすれば容赦なく斬られるぞ!」

 

 

 

そしてブラドは再生を上回る斬撃を全身に受けたあと・・・

氷牙はブラドの目前に突然現れ

「ラア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!」

 

――ザガガガガガガガガガガガガガガガガッ――

 

「ガァァァァアア!?」

両手の刀でメッタ斬りにしてそのまま

 

 

「ラア゛ァ゛!!!」

蹴りつけて地面に叩きつけ

 

――ドゴォン――

 

跳ね返ったと同時に

 

――ザシュ、ドシュ――

 

ブラドの右肩と右脇腹の魔臓に刀を突き刺し手放すと

 

「ドラア゛ァ゛!!!」

渾身の蹴りで吹っ飛ばして近くのアンテナに叩きつけた

 

「ガハッ!?」

 

アンテナに叩きつけたブラドが跳ね返りこちらに倒れてくる

 

そんな中、氷牙はパイソンを抜いてブラドの口の中の紋様に向けて

 

――ドゥン――

 

引き金を引いて最後の魔臓を打ち抜き

ブラドは再び吹っ飛ばされ仰向けに倒れた

そして刀が突き刺さり、撃ち抜かれた魔臓から・・・

ブラドが何百年集め続けた血が・・・流れ落ちていった・・・

それを見届けた理子は

「ブラド・・・ざまーみろ・・・」

積年の思いを吐き捨てるように呟いた

「氷牙・・・やったのよ・・・ね・・・?・・・私たち・・・勝ったの・・・?」

アリアもまた自分たちの勝利を確かめるべくそう言った

だがキンジは

「アリア!理子!まだ終わってない!氷牙を止めろ!!」

二人にそう叫んだ

「「・・・え?」」

 

 

――コ・・・ス・・・――

 

「・・・・・・・」

「グ、ウ・・・」

ブラドは力をすべて失いうめき声を上げる他なかった

 

――・・・ロス・・・――

 

氷牙はそんなブラドを見てニィッと口元を歪ませると近くに落ちていたアリアの刀を拾い逆手に持ちブラドに歩み寄る

「氷牙?もう―――」

 

――コロス・・・――

 

そして手を上にあげブラドの心臓に勢いよく突き刺した

「ブァ!?」

「なっ!?ひょーたん!?」

「ちょっ!?氷牙!?あんた何して――」

 

――コロス!――

 

そして氷牙はパイソンをブラドの頭につきつけ

「止めろぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

ニイィィィィ――――

 

 

大きく口を歪ませて

 

 

 

――ドゥン――

 

 

ブラドの頭に向けて発砲した

 

 




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