闘技場は壮絶な場になった
それもその筈だ中で戦っているのは・・・
片やイギリス最強の名探偵の血を引くSランク武偵
片や100人相手に無双をこなす問題児武偵
アリアと氷牙、強襲科最強の二人が人類頂上決戦を行なっている真っ最中でなのだから・・・
その上出入り口は破壊され内側しか開けられなくなっている
もはやそこには外部の人間が付け入る隙など微塵もありはしなかった
「オラオラァ!」
氷牙が近くにあったコンテナや瓦礫をアリアめがけて次々と蹴り飛ばす
「甘いわよ!」
アリアはそれを空中でひらりひらりと躱し最後に飛んできたコンテナを避けると同時に銃を構えるが・・・
(――!?氷牙がいない!?)
コンテナが飛んでくる直前まで氷牙がいた場所には誰もいなくなっていた
(この状況・・・そうだわ!!)
「――ッ!!そこね!」
そう言って後ろを振り向くと先ほど躱したコンテナの影にいた氷牙に向けて発砲した
「チッ!!」
――バチ、バチ、バチィ――
氷牙はアリアの撃った弾を撃ち落とすと距離をとった
「蹴り飛ばしたコンテナをすぐさま追いかけてその影に潜んで背後に回る・・・言うのは簡単だけどホント実行するにはふざけた発想よね・・・」
「驚いた・・・よく見抜いたな・・・これ初見で見破れる奴そういないんだぞ?」
「ええ・・・流石にこんな常識外れの技、アタシも初見じゃ見抜けなかったわ・・・でもアンタ・・・覚えてないでしょうけどその技、アタシに一度見せてるのよ」
そう・・・氷牙は覚えていないがこの技はあの日・・・アリアと初めて会った日に披露していたのだ
「なるほど・・・そりゃ盲点だったな・・・なら・・・下手な小細工は抜きで行くか・・・」
「すげぇ・・・今の見たか?」
「ああ・・・神崎・・・空中であんな自在に動けるのかよ・・・」
「九狂の奴・・・自分で蹴り飛ばしたコンテナを追いかけるって・・・そんなデタラメなことまで出来んのかよ・・・」
「それに・・・神崎も九狂の技を見破った・・・」
「そして・・・九狂の奴・・・弾丸を撃ち落とした・・・」
「これがSランク同士の戦いなのか・・・」
「神崎対九狂の最強カード対決・・・ハイレベルな勝負になるのは予想はしてたけどまさかここまで・・・」
「なぁ・・・どっちが勝つと思う?」
「わからねぇ・・・どっちが勝ってもおかしくねぇ・・・」
「どっちが勝ってもどっちかの無敗伝説もこれで終わるのか・・・」
「見ろよ・・・九狂の奴・・・この状況で笑ってるぞ・・・」
「Sランク同士にとっちゃこんなの馴れ合いにも等しいってのか?」
・・・違う・・・氷牙の奴・・・命のやり取りを・・・ただ楽しんでいるんだ・・・
・・・これじゃあの時と一緒だ・・・ブラドの戦いの時と・・・このままじゃあいつまた・・・
「アリア!くそっ!やめろ氷牙!」
キンジは防弾ガラスを叩くが二人は聞く耳を持たず
扉もロック解除の端末を破壊され外側からは開けられなくなっていた
そしてアリアや氷牙、観客も興奮が最高潮になりかけた時
「なんやぁ?騒がしいと思うたら随分おもろい事になっとるやないかぁ?」
蘭豹が瓢箪片手に入ってきた
「蘭豹!!いいところに!アリアと氷牙が防具も無しに戦ってるんだ!早く止めさせ「オラ邪魔や!かぶりつきで見せろや!」
キンジは蘭豹に二人を止めさせるようにと叫ぶが蘭豹は聞く耳持たずに防弾ガラスの衝立に張り付いてる生徒を数人蹴散らすと
「オラ!もっとヤレや!どっちかが死ぬまで殺し合えや!」
防弾ガラスをガンガン蹴りながらヤジを飛ばした
「何言ってんだ!早く二人を止めろ!どう見たってこれは違法だろ!このままじゃ死人が出るぞ!」
「あ!?ええやないか!死ね死ね!教育のために大観衆の前で華々しく死んでみせろや!」
そう言ってひょうたんに入った酒を勢いよく煽る
(クソッ!酔ってやがる!)
酔ったこいつには何を言っても無駄だ・・・そう思ったキンジは蘭豹に止めさせるのは諦めほかの手段を探すことにした
だが出入り口は端末を破壊されこっち側からは開けられない・・・修理してる時間もない・・・
二人を止めるには・・・どうすれば・・・
キンジはどうにかして二人を止める方法を必死に探す・・・
だが方法を探している間も二人の戦いは激化する一方だった
「オラァ!!」
「ハッ!」
何度かの攻防
――バラララッ、バララララララッ――
――バッ、ババババッ――
そして度重なる銃撃の末
――ガキン、ガキン――
何度目かの交錯の直後、二人の銃が同時にスライドオープンした
((――!!弾切れ!))
だがその交錯のおかげでアリアは氷牙の背後に回ることに成功した
リロードしてる暇はない!アリアは銃を捨てると刀を抜いて氷牙に斬りかかろうとするが・・・
「惜しかったな」
「なっ!?」
既に氷牙の右脇から・・・コルトパイソンの銃口がアリアを捉えていた
氷牙は多対1の戦闘の・・・スタンドプレイの達人だ
なら当然・・・背後からの攻撃だって想定している・・・
氷牙の戦闘スタイルは・・・全方向に対応できるスタイルなのだ・・・
アリアが銃を捨てた際、氷牙もMP5Kを捨てコルトパイソンを抜き、脇から背後に銃口を向けていたのだ
――ドゥン――
「がっ!?」
そしてほぼ0距離で腹部にコルトパイソンの一撃を食らったアリアは吹っ飛ばされ・・・
――ドサッ――
地面にうつ伏せに倒れた
それを見た観客がわぁっと騒ぎ立てる
「神崎が倒れたぞ!」
「勝負あったか!?」
「いや!まだだ!神崎まだやる気だ!」
アリアは地面に手を付きながらも顔を上げその目は未だに諦めていなかった
ダメだ!これ以上続けたらさすがのアリアも危ない!
そう思ったキンジは天井を見上げ
「こうなったら・・・イチかバチかか・・・」
そう呟いた
アリアはよろよろと立ち上がりながら話しかけてきた
「がはっ!はぁ・・・はぁ・・・やっぱり・・・間違いないわ・・・」
「・・・・・あ?」
「ねえ氷牙・・・あんたは・・・誰?」
「俺は誰?それ・・・記憶喪失の人間に聞く質問じゃねえぞ?なにせ自分が誰かなんて俺が一番知りたい程なんだからな」
「直接戦ってみてやっと確信が持てた・・・アタシ・・・あんたと同じ戦い方をする奴を見た事がある・・・」
アリアは話を続けた
「3年くらい前かしら・・・貴族の社交パーティーに参加してたことがあったの・・・その時会場に一人の人間が襲撃してきた・・・顔はマスクをしててよく分からなかったけどあんたと同じ白髪赤目で2振りの刀とサブマシンガンを持っていたアタシとそんなに変わらない少年だった・・・会場にいた手練のガードマンやSPまでもが一斉に銃を抜いてそいつを取り押さえようとした・・・けどそいつはホールを縦横無尽に駆け巡りガードマンたちを斬りつけたり射撃を打ち込んだりして的確に無力化して次々と薙ぎ倒していった・・・そして・・・最終的には増援も駆けつけて100人近い人数になったガードマン達をそいつはたった一人で壊滅に追い込んだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そして壊滅に追い込んだ後そいつは突然手のひらを返すように逃げていった・・・後から判明したことだったけどそいつは単なる陽動で他の連中が金庫を破るまでの間ホールで暴れて時間稼ぎと注意を引くのが目的だったみたい・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「結局そいつはガードマンやSPだけでも100人近い重傷者を出した・・・なのに死者は一人もいなかった・・・みんなは「奇跡的に死者がいなかったのは不幸中の幸いでした」と言っていたけど・・・もしあれが奇跡とか偶然じゃなくて狙ってやったものだとしたら・・・殺さないように手を抜いていたんだとしたら・・・大勢の手練相手にそんな芸当できるんだとしたら・・・もし・・・あいつが本気で殺す気で戦っていたとしたら・・・そう考えたらアタシは身震いしたわ・・・あいつが本気で戦ったら・・・絶対に敵わないって思い知らされたから・・・」
「・・・・・で?そいつと俺の戦い方が似てるからなんだっていうんだ?」
「アタシも気になってそいつの事を調べたり足取りを追ったりしたの・・・でもどんなに探しても今から2年くらい前に消息が途絶えて、死んだんじゃないかと断定されて以降のそいつの足取りは掴めなかった・・・ただわかったことは・・・もし生きているとしたら歳はアタシと同い年か少し上・・・そしてそいつは・・・マッド・ファングってコードネームで呼ばれていたこと・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「それに・・・あんたと初めて会ったとき・・・アタシはキンジと一緒にあんたの経歴も調べたの・・・でも・・・どれだけ調べても・・・武偵校入学以前のあんたの経歴は分からなかった・・・まるで・・・初めから無かったんじゃないかとすら思えるくらいに・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「そして・・・マッド・ファングの消息が途絶えた時期と・・・九狂氷牙の経歴が不明になっている時期は・・・ほぼ一致しているのよ・・・」
「・・・・・・・・」
「ねえ氷牙・・・あんた・・・もしかして・・・」
「・・・俺は誰でもないよ・・・」
「え?」
「マッド・ファングはとっくに死んだ・・・そして九狂氷牙という人間は・・・この世に存在しない人間だ・・・存在しない人間の経歴を調べたって出てくるわけがない・・・なにせ本当に無いんだからな・・・」
「それじゃあ・・・あんた―――」
「話は終わりだ!これで決めてやるよ!」
「―――――ッ!!」
氷牙は刀を構えアリアに斬りかかりそれを見たアリアも最後の力を振り絞り刀を構え氷牙に斬りかかった
「シャァアアアアアアア!!」
「ハァアアアアアアア!!」
「二人共・・・次で決まるぞ!!」
「オラ行けや!さっさとトドメ刺さんかい!」
「なっ!?おい上見ろ!!」
「ち、くしょぉおおおおおおおおおおお!!!!!」
突如上からキンジが二人の間に割って入り
――ガキィィン!!
着地と同時に氷牙の刀をベレッタで、アリアの刀をバタフライナイフで受け止めた
「ああ?」
「なっ!?キンジ!?」
「くぉらァ遠山ァ!余計な水差すなァ!脳ミソブチまけられたいんかゴラァ!」
「あんたどうやってここに!?ドアは開けられないはず・・・」
氷牙は天井を見上げ
「なるほど・・・天井の梁を伝ってこの真上から飛び降りたのか・・・」
「氷牙!止めろ!」
「なんで止める?お前には関係ないだろ?」
「そんな事どうでもいいだろ!こんな決闘どう見ても違法だろ!下手したら死ぬぞ!」
それを聞いた氷牙は失望した顔で
「・・・・・・お前は・・・本当に武偵を辞めるのか?」
とキンジに問いかけた
「え?」
「・・・・・・自分から厄介事に首突っ込みやがって・・・キンジ・・・お前は本当に武偵を辞めるつもりでいるのか?」
「なんで知って・・・!?お前まさか記憶が・・・」
「少しだけ戻った・・・どうしてキンジが武偵を辞めるのか・・・そこだけは思い出したよ・・・残りは未だ不鮮明なままだがな・・・」
「氷牙!?何か思い出してたの!?それにキンジが武偵を辞める理由って・・・」
「・・・アリア、いい機会だ・・・教えてやるよ」
「え?」
「どうしてキンジが武偵を辞めるのか・・・その理由をな・・・」
そして氷牙は語り始めた・・・自分の記憶の断片を・・・武偵校最強コンビが解散した理由を・・・キンジが不抜けた理由を・・・
気づいてると思いますがカナとの戦闘の代わりにこの戦闘ブチ込んでます・・・
ちなみにキンジは既にカナと会っていることにしてます