緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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回想終了です。
再び現在に戻ります

連休・・・さっぱり筆が進まなかった・・・



39話<虚ろな二人>

 

「「・・・・・・・・・・・」」

氷牙が自分とキンジの過去を語った後、アリアとキンジは何も言えずに立ちすくんでいた

「これが俺の中にある遠山キンジについての記憶だ・・・どうだ?違ってるか?」

 

「キンジ・・・今の話・・・本当なの?」

「・・・・・・・・・・・・・」

キンジは何も言わない・・・だが・・・

「沈黙は肯定を示す・・・間違いないようだな・・・」

「・・・・・そんなことがあったのね・・・」

「ああ、これが・・・キンジがコンビを抜けた理由・・・そしてキンジが武偵をやめようとする・・・全てから目を背けて逃げ続ける理由だ・・・」

 

金一さんはいくら頑張っても命をかけても誰にも認められなかった・・・キンジはそんな武偵に・・・世間に絶望して閉じこもってしまったのだ

 

「・・・・・っ、ならわかっただろ!だから俺は―――」

「くだらねえ・・・兄さんが死んだ?兄さん共々世間から非難された?悲劇のヒロイン気取ってりゃ逃げても許されると思ったのか?」

「―――っ!それは・・・」

「命かけても報われない?じゃお前の兄は無駄死にか?遠山金一は本当に無能な武偵だったのか?」

「――っ!違う!!兄さんは立派な武偵だった!報われないのは世間がおかしいからだ!俺はそんな世間に嫌気が差したんだ!あんな奴らのために命を懸けるなんて真っ平だ!だから武偵を辞めるんだ!」

「じゃあなんでお前はここにいる?本気で武偵辞めたいなら銃を捨てればいい、さっさと武偵校から出て行けばいい、余計なことに首を突っ込まなければいい、なのにお前は銃を捨てない、ここに居続ける、こうやって首を突っ込み続ける」

「それは・・・手続きがあるからまだ武偵は辞められないし銃は捨てれない・・・それに・・・こんな違法行為まだ武偵である以上放っておけないだろ・・・だから仕方なく・・・」

「そうやって自分からも逃げるんだな・・・」

「・・・え?」

「誰かの・・・何かのせいにして自分の意思もそっちのけだ・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「キンジ、自分が立ち止まったり目を背けてるのを誰かのせいにするな、自分の道くらい自分で決めろ、お前のゆく道を阻む奴がいるなら俺が全部蹴散らしてやる・・・だからお前はお前の行きたいように・・・悔いのないようにしろ・・・それでも武偵を辞めるってゆうなら俺はもう止めないさ・・・」

そう言って氷牙は出口へと向かっていった

 

「ちょっ!?どこ行くのよ?」

「白けたし俺は帰る・・・悪いがこれで終わりにしてくれ…」

 

そしてドアの前で一度立ち止まって

「キンジ・・・・辞めるんだ詐欺なら・・・俺は聞きたくない・・・」

最後にそう言い残して出て行った・・・

 

「――――ッ!!俺は!!自分の意志で!!絶対に武偵を辞めるんだ!!」

そんな氷牙の背中に向かってキンジはそう叫んだが氷牙は何も答えなかった

そしてレキも俺たちに一礼していくと氷牙の後を付いていった

 

氷牙が出ていくと緊張の糸が切れたのかアリアは膝を折って

――ガクッ――

地面に手をついた

「アリア!?」

キンジが慌ててアリアを抱き起すが

「大丈夫か!?すぐ救護科に――」

「心配しないで…!!これくらい大したことないわ…」

「馬鹿言うな!あれだけの強烈な殺気に晒された激戦の挙句、近距離でマグナム弾を喰らったんだぞ!すぐに救護科に行くぞ!」

そう言ってアリアを救護科に連れて行こうと闘技場を出ようとすると

 

「オラ!ガキ共!試合は終いや!さっさと解散せい!」

周りの観客を追い出しつつ蘭豹が入ってきた

 

「おい遠山・・・なかなかオモロイ事になっとると思ったら余計な水差しおって・・・おかげで白けてもうたやろ!」

「なっ!?ふざけるな!危うく殺されるところだっただろがっ!!」

「このアホが・・・お前・・・強襲科抜けて・・・ホンマに昼行灯の腑抜けになりおったな・・・」

「え?」

「違うわ…戦ってるあいつに・・・本気の殺気なんてまるで無かったわ・・・あいつは多分・・・アンタを挑発しただけよ・・・」

「俺を…挑発?」

「アイツは初めっからアンタが横入れしてくるのを待っていたのよ・・・だからアタシに殺意を向けて追い詰めて・・・アンタを焚き付けたのよ・・・」

「でもあれだけ銃撃を受けて腹部にマグナム弾を喰らって・・・最初なんて首を切られそうになったんだぞ!」

「まともに当たった攻撃なんて一つもないわ・・・それにほら・・・見なさい・・」

そういってアリアは自分のツインテールを見せてきた

「アタシはアイツの刀を頭を下に下げて躱した・・・なら髪の毛はごっそり持っていかれたはずよ・・・」

確かにアリアのツインテールは相変わらず膝下まで伸びていた

「・・・アイツ・・・峰打ちで斬りかかったのか・・・」

「最後の銃撃だって・・・ちゃんと防弾制服なのを見越して・・・急所も逸らして当てている・・・」

「じゃあ・・・全部・・・俺を焚き付ける芝居だったっていうのかよ・・・」

 

「ようやくわかりおったか…ったくあんな中途半端な余計な水差しおって・・・あのまま戦わせときゃあガキどもの教育にも酒の肴にもなったっちゅうのに・・・モノホンの殺気があったら・・・とうにウチが殺っとるわ」

そう言って蘭豹は出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・蘭豹!待ってくれ!」

だがキンジは見逃さなかった・・・その時の蘭豹の顔は・・・珍しく難しく険しい表情をしていたということを・・・

蘭豹がそんな顔するなんて・・・ただ事じゃない・・・あいつは・・・何かを知っている!

 

「・・・なんや?」

「一つだけ教えてくれ・・・今のあいつは何なんだ・・・」

「今のアイツ?どういう意味よ?」

「俺の知っている氷牙は・・・自衛以外では私利私欲で戦ったりはしない・・・誰かのために戦う男だ・・・けど・・・今の氷牙は・・・今朝の襲撃犯と戦っていた氷牙は・・・アリアと戦っていた時の氷牙は・・・俺の知っている氷牙とは別人だった・・・まるで・・・純粋に戦うことを楽しんでいる・・・そんな感じがしたんだ・・・」

 

蘭豹はニヤリと笑うと

「ほう・・・それだけは気付いてたんか・・・」

「答えてくれ!あんた・・・何か知っているのか!?」

「そうやな・・・遠山、神崎、それに・・・そこにいるんやろ?出てこいや!」

 

 

 

 

 

 

 

「あらー、バレてました?」

と言って出てきたのは・・・

 

「「理子!?」」

 

「やっほー!キー君!アリア!おひさー」

峰・理子・リュパン4世、ブラドとの戦い以来姿をくらませていた武偵だった

「あんた今までどこに!?どうしてまたあれから姿を消してたの?」

「うちがコイツに命令したんや、当面はナリ潜めてろやってな」

「え?どうして?」

「・・・ひょーたんのためだよ・・・」

「氷牙の・・・ため?」

「今、理子がひょーたんに接触すれば・・・もしかしたらひょーたんはブラドと戦った時の事を思い出しちゃうかもしれない・・・そうなったらひょーたん・・・どうなっちゃうか想像もつかないから・・・」

 

どうやら理子は氷牙の事を考えて姿をくらませていたらしい

だが・・・

「・・・あんた・・・氷牙のこと嫌ってるんじゃないの?」

曲がりなりにも理子は氷牙に心身共に散々な目に遭わされているのだ・・・

恨みや殺意さえあれど感謝など無い筈だが・・・

「当たり前だよ!理子ひょーたん大っ嫌い!ひょーたんのおかげで理子のプライドはズダボロだよ!・・・でも・・・理子を助けてくれたことには感謝してる・・・だから受けた借りはきっちり返すよ・・・仕返しするのはその後だよ!」

「理子・・・」

「お前ら積もる話は後にせいや!お前らが知りたいこと・・・九狂氷牙という男について教えたる・・・」

「氷牙について!?」

「・・・お前らには話しとく・・・せやけどこれは他言無用や!ええな!?」

珍しく真剣な顔に俺たちは頷くと蘭豹は氷牙の過去について語り始めた

 

「まず・・・アイツには本当は名前はあらへん・・・九狂氷牙っちゅう名前は・・・ここに入学する際あいつが適当に自分につけた名前や・・・コードネーム:マッド・ファング・・・それがアイツにあった唯一の名称や・・・」

「やっぱり・・・そうだったのね・・・」

「なっ!?マッド・ファングって・・・ワイルド・ドッグの弟子で数年前に忽然と姿を消した最強最悪とも言われた少年傭兵のことじゃないか!」

「せや、VSSEのエージェントにワイルド・ドッグが倒された際・・・奴らのアジトの牢獄にいたのを捕獲されたんや・・・その時のあいつは・・・ただ目標を殲滅するだけの・・・戦闘マシンだったそうや・・・」

「だけど・・・どうしてそんなヤツが武偵に?」

「アイツは・・・最低の失敗作とも呼ばれとったんや・・・しばらく監視を続けて判明したがあいつには人の感情があった・・・それがリミッターになってあいつは人を傷つけることがあっても人を殺すという一線を越えることはあらへんかった・・・人を殺せん戦闘マシンなんぞ奴らにとっちゃ最低の失敗作やからな」

「最低の失敗作!?でもアイツは最強最悪の・・・」

「そこなんや・・・アイツは最強最悪の名を欲しいままにしとった・・・お前らもわかるやろ!?相手を殺さずに無力化するのは・・・殺す何倍も難しいんや!なのにアイツはそれを当たり前にやってのけていた・・・アイツは戦闘技術に関しては類希とも言える最高の逸材やったんや・・・その才能を見込んだVSSEはアイツに司法取引をもちかけたんや・・・情報の提供・・・そして武偵になるのなら・・・これまでの罪は問わんとな・・・」

「そして俺たちに出会って今に至るってわけか・・・」

 

「で、ここからが本題や・・・お前らに一つ忠告したる・・・」

「忠告?」

「ええか?あいつは失った記憶を取り返そうとはしとるが・・・完全に思い出すまではあいつから目を離すな!常に警戒しとけ!」

「え?どうしてですか?」

「今のあいつはどっちでもない・・・どっちにでもなれる危険な存在やからや・・・」

「――ッ!そうだわ!確かに今の氷牙の人格がマッド・ファングと呼ばれていた頃にまで戻っているのだとしたら・・・」

「せや・・・このまま・・・マッド・ファングとして生きてゆくこともできるっちゅうことや…そして、もしアイツがマッド・ファングとして生きることを選んだとすれば・・・」

「最強最悪の傭兵が復活しちまうってか・・・」

「それだけじゃ済まされへん・・・人格は昔に戻っとるが・・・体はそうもいかん・・・戦闘技術は2年前とは比べ物にならんほどに成長しとる!現に先日の大暴れがその証や!もしアイツがあのまま暴れ続けてたら…この学園島もどうなっていたか想像もつかへん・・・」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・」」」

 

それだけでも恐ろしい事なのに蘭豹はだが・・・と言葉をつづけた

 

 

 

「それよりも一番最悪なのは・・・アイツが間違っても人を殺してしまうことや…」

 

「「「―――ッ!!」」」

 

「あいつは人を殺したことはあらへん・・・せやからこそあいつは超えてはアカン一線の一歩手前で踏みとどまっとる・・・せやけど・・・もし間違ってでもホンマに人を殺してまえば・・・あいつは・・・超えたらアカン一線を超えてまう・・・そうなればタガが外れたあいつはもう止まらん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「間違いなく・・・人類史上最悪の殺人マシンになってまうで・・・」

 

 

その言葉の重さに・・・俺たちは黙って俯く他なかった・・・

 

それもそのはずだ…もし氷牙が今日みたいに断片的に記憶を取り戻してブラドとの戦いの事を中途半端に思い出せば・・・蘭豹の言う・・・最悪の結末が待っているのだから…

 




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