半月前、氷牙がブラドの屋敷に潜入に出かけてから数日経ったある日
――ピン・・・ポーン――
ハイマキのブラッシングをしているとドアのインターホンが控えめに鳴りました
この鳴らし方は・・・白雪さん?
『えっと・・・レキさんいる?氷牙君に頼まれてきたんだけど・・・』
そう言われ私はドアを開け出ました
「あ、やっぱりいた。こんにちはレキさん」
「こんにちは、生憎ですが氷牙さんは出掛けています」
「うん、クエストで出かけてるんでしょ?知ってるよ。私が用があるのはレキさんだよ」
「私ですか?」
「氷牙君にレキさんがちゃんとご飯食べてるかチェックしてくれって頼まれたんだよ」
「え?」
「「レキの奴まだちゃんとした食生活ってもんが分かってないだろうから頃合を見て抜き打ちでチェックして必要があれば食育を施してやってくれ」ってね。レキさん心配されてるんだね」
「氷牙さん・・・・」
「というわけでお邪魔するよ」
と言って白雪さんは家に上がりまずはキッチンを見渡しました
その間に私はリビングの片隅に座り込んでいるとやがて白雪さんがリビングに来て・・・
「レキさん・・・正直に言いなさい・・・今日は何を食べましたか?」
と聞かれたので私は・・・
「カロリーメイトです」
と正直に言いました
「昨日は?」
「カロリーメイトです」
「・・・一昨日は?」
「カロリーメイトです」
白雪さんはため息をついて
「・・・・・道理で・・・氷牙くんが私にこんな事頼むわけだね・・・・」
と言いました
「白雪さん?」
「却下です!毎食カロリーメイトなんてそんなの食事とすら言えません!今日からレキさんの食生活、氷牙くんに代わって私がきっちり指導させてもらいます!」
そう言ってゴミ袋を差し出して
「まずは掃除から!ほら!空箱散らかして!ちゃんとゴミも捨てなきゃダメだよ!」
そう言われ白雪さんと部屋の掃除をしていると・・・
「ん?」
やがて白雪さんは机に置かれた書類に目が行ってました
「え?これ・・・どうしたの!?」
そう言って白雪さんが机の書類を掴むと問い詰めました
そこに書かれていたものは・・・何度見ても変わりません・・・
【ランク考察試験結果 レキ 狙撃科 Eランク】
と書かれていました
「レキさん・・・確か狙撃科のSランクだよね!?」
「はい・・・ですが氷牙さんが出かけている間に受けた狙撃科ランク考察試験で・・・私は一発もまともに当てることはできず・・・Eランクに降格しました・・・」
そう言うと私は俯いて空箱を黙々と袋に入れていきました
それを見た白雪さんは私の真正面にしゃがみ込み
「・・・ねえ?何があったの?よかったら聞かせてよ?」
と心配そうに聞いてきました
「・・・・・・・・」
私はしばし考えましたが・・・やがて口を開き話し始めました
「・・・わかりません・・・自分が・・・わからないんです・・・」
「・・・自分が?」
「試験の時もそうでした・・・私は・・・一発の銃弾・・・銃弾は心を持たない・・・そうあるべきなのに・・・そう思えば思うほど・・・それを否定する自分がいるんです・・・」
「自分を・・・否定する自分?」
「・・・『心が無いならどうして私は泣いたりしたんでしょうか?』と・・・その声が響くたびに・・・手が震え・・・視界がぼやけ・・・まともに当てる事はできませんでした・・・」
「泣いたりした?どういうこと?」
「アドシアードの時・・・すべてが終わったあと相変わらず無茶ばかりして傷だらけになった氷牙さんを見て・・・そして手負いの故に共に戦うことができなかった自分を思っていると・・・気がつけば・・・私は自分でも無意識なまま・・・泣いていました・・・」
「え・・・それって・・・」
「そして・・・どうして私は泣いたのか・・・その答えもわからないまま・・・私はEランクに降格してもう氷牙さんと肩を並べることもできなくなりました・・・今の私では氷牙さんの足を引っ張ってしまう・・・氷牙さんと一緒にいられなくなってしまう・・・そう思うと・・・胸が苦しいんです・・・」
「レキさん・・・もしかして・・・」
「そして・・・今はただ・・・寒いんです」
「寒い?」
「氷牙さんがいないだけであんなに温かかった部屋がこんなにも寒いんです・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「わからないんです・・・自分はどうしてしまったのか・・・そして・・どうしてこんなことを・・・白雪さんに打ち明けたのか・・・でも・・・どうしてか・・・誰かに聞いて欲しかったんです・・・」
そして白雪さんは一息入れて
「・・・それじゃあ・・・聞き直すよ?レキさんは・・・どうしたいの?」
と聞き返してきました
「私は・・・どうしたい?」
「うん、どうしたのじゃなくて・・・レキさんはこれからどうしたい?」
私は・・・これからどうしたいか・・・そんなこと考えてもいませんでした・・・
私は・・・どうすればいいのでしょうか・・・そう考えていたら・・・
――自分で考えて自分でしたいように決めろ――
いつか氷牙さんが言った言葉が頭に浮かびました・・・
私がこれからしたいこと・・・それは何か・・・いくら考えても答えは一つしかありませんでした・・・
「今の私はEランクです・・・それでも・・・氷牙さんの力になりたい・・・氷牙さんの味方でいたい・・・氷牙さんの・・・そばにいたいです・・・」
それを聞くと白雪さんは優しく微笑んで
「レキさん・・・氷牙くんのことが大好きなんだね・・・」
そう聞くと私は流石に驚いてに顔を上げました
「好き・・・?私が・・・氷牙さんを・・・?」
「だって自分よりその人のことを大事に思えるんでしょ?それって本当に大好きな人じゃないとできないことだよ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
私は自分の胸に手を当て
「・・・・・・・これが・・・好き・・・誰かを好きになるということは・・・こんなにも苦しいことなんですね・・・」
「うん・・・でも・・・どんなに苦しくても・・・その想い・・・絶対に手放したくないんでしょ?」
「・・・はい・・・」
「そして・・・氷牙くんに振り向いてもらいたくて・・・仕方ないんでしょ?」
「・・・・・・・・・はい・・・」
白雪さんにそう言われやっと分かりました・・・ああ・・・これはもう間違いありません・・・私は・・・
「わかっています・・・私は・・・氷牙さんのことが・・・」
「だったら後はどうするか・・・わかってるんでしょ!?」
「はい・・・氷牙さんにこの気持ちを伝えたいです・・・上手く言えるか・・・想いが届くかもわかりません・・・ですが・・・それでも伝えたいです・・・」
「そこまでわかっているのに・・・どうして・・・何も言わずに・・・」
そう尋ねるとレキは首を横に振り
「昨日の夜の事…覚えていますか?」
「昨日の夜?」
「はい・・・その時に――――」
再び遡って前日
祭りから帰って部屋に戻るとカジノ警備当日に着る制服が届いたので全員でキンジの部屋でサイズ確認もかねて一度着てみることにしたのだ
キンジはIT企業の若手社長で氷牙はそのボディーガードという設定でカジノに入ってもらうらしい・・・しかし・・・
「何ともやる気のなさそうな社長だな」
氷牙が我ながら思っていたことをそのまま突っ込んできた
「お前はその傷も相まって風格がすごいぞ…」
氷牙は元々ワイルド系の顔立ちに白髪で真っ赤な目をしており、その上ブラドにやられた時にできた傷はよく見れば非常にサマになっていてワイルドさを余計に引き立ててあるもんだから本当にガードマンというかSP・・・あるいはヒットマンと言われても信じてしまいそうなほど黒スーツが似合っていた・・・
「なら眼帯した方がいいか?」
「・・・それはそれで凄みが出そうだが・・・そっちの方がいいか・・・」
そんなやり取りをしてると
『な・・・なによ・・・これ・・・』
『・・・・・・・・・・』
「「ん?」」
隣の部屋で着替えてるアリアが何か深刻そうなうめき声をあげたので
「アリア?レキ?どうした?何か問題があったか?」
キンジが扉を開け中の様子を見た
そしてそこにいたのは・・・
「バ、バカキンジィ!の、ノックぐらいしなさいよ!見るなぁ!」
ぴょこんと頭の上に立つウサ耳
歩くたびに踵がカツンと鳴るピンヒール
足にピッタリと張り付いた網タイツ
恥ずかしさに震えてるのか毛玉みたいなシッポ
体に密着したハイレグカットの黒い水着みたいなエナメル生地のレオタード
バニーガールの服を着た・・・アリアとレキだった
アリアは両手で胸を隠して恥ずかしそうに背を向けてへたり込んでいるがレキは平然と直立不動で立っていた
そして氷牙とキンジはアリアの背中を見てあることに気が付いた
「ん?アリア・・・それって・・・」
アリアの背中には弾痕があった
「だいぶ古いな・・・具合から見て大体3年ってとこか・・・誰にやられたんだ?」
氷牙がそう尋ねるとアリアも「え?」という顔になって振り返り氷牙を見た
「あんた・・・知らないの?」
「え?」
「この弾痕・・・3年前にマッド・ファングがアタシも居合わせた社交パーティに襲撃に来たとき・・・撃たれたのよ・・・ただ・・・傷の具合がアイツの使った銃で撃った場合とは一致しなかったから別の人間に撃たれたんじゃないかって断定されたんだけど結局犯人はわからなかった・・・それに・・・不可解なことに貫通はしてないのにアタシの体内からは銃弾が見つからなかったのよ・・・」
「・・・あの時にか・・・」
「ねえ・・・アンタ・・・誰がアタシを撃ったのか心当たりは無い?あの時あそこには他に誰かいたの?」
「・・・済まないが俺も詳しいことは知らない・・・というより必要最低限以外は何も教えてはもらえなかった・・・あの時の俺は余計なことは考えず命令されたことをただこなすだけの人形に過ぎなかったんだ・・・」
「そう・・・アンタも知らないのね・・・」
「力になれなくて済まないな・・・・・・でだ・・・どうしたキンジ?アリアの事まじまじと見て?見惚れたのか?」
「え!?」
そう言われキンジを見てみれば・・・
「いや・・・何か違和感が・・・」
と言ってキンジは顎に手を当ててアリアを観察していた
(バニーガール姿になった(見た目幼女の)アリアをまじまじと鑑賞か・・・はたから見れば犯罪臭しかしないな・・・)
「って!だから見るなって言ってんでしょ!!このヘンタイ!エロキンジ!!チキンカンジ!!」
(最後のは・・・多分チカンキンジを噛んだんだろうな・・・)
そしてキンジは「ああそうか」と合点のいった顔をして
「ア――ずむっ――(リアお前とうとう胸の偽造に手を出したな詐欺罪で告発してやる)」
最初の一文字を言った時点で全てを察したアリアがキンジの腹部に前蹴りをいれた
(てかピンヒールで蹴り入れるなよ…あれマジで刺さるんだぞ…)
言っておくが冗談ではない・・・もしも掌をピンヒールで踏まれでもしたら勢い次第では本当に掌を貫通してもおかしくはない・・・
なのに・・・
「パッドはファッション!パッドは!オシャレ!パッ!ド!は!無!罪!」
地団駄を踏むように「!」一つにつき1回キンジの頭を踏み抜こうとしていた・・・
「ったく・・・死なない程度にしとけよ・・・ん?」
そう言って二人から目を外すと傍らで俺と同じように二人を傍観していた同じくバニー姿のレキが目についた
ちなみにレキは慎ましやかではあるがアリアより胸はあるためパッドは入れていないようだ
にしても・・・
(レキって・・・ホント肌白いよな・・・)
体にフイットする黒いエナメル生地のレオタードと網タイツがレキの肌の白さと体の細さを引き立てて・・・バニーっつうよりもフェアリーって感じで・・・すげえ可愛い・・・目が離れん・・・
「あの・・・氷牙さん?」
流石に凝視されていることに気付いたのかレキが問いかけてきた
「あ、ああ、すまん・・・見惚れてつい・・・」
と言いながらも氷牙の目はレキから離れていなかったが
「いえ・・・構いません・・・」
レキはそう言って少し俯いて氷牙から目を逸らした
そんな二人を見て
「お、おい!お前ら二人だけの空気になってないでこの暴れウサギを止めろ!!」
と叫びながらもキンジはアリアの地団駄を躱していた
そしたら・・・
「キンちゃん!一体何の騒ぎ?」
と言っていつの間にか帰宅した白雪が部屋に入ってきた
それに気づいたアリアも一度止まり白雪を見た
そして白雪とアリアの目が合うと・・・
――ピシッ―――
という音と主に部屋の空気が凍った・・・
よし・・・状況を整理しよう
恐らく今の白雪の目には氷牙とレキは眼中にないだろうから除外
まず、床に仰向けに倒れる俺
その俺の頭を跨ぐ様な姿勢で立っているバニー姿のアリア
そしてその瞬間だけを目撃した白雪
・・・うん、完全に積んでいるな
「うふ・・・うふふふふ・・・」
そんな不気味な笑い声と共に白雪は顔を伏せ前髪で影を作ると目を隠すと・・・
さぁ―――っ、と星伽の武装巫女が流す氷牙の放つ狂気剥き出しの殺気とはまた違う例えようのない殺気が室内に張りつめていった
そして白雪が口を開く
「キンちゃん」
「・・・なんだ・・・?」
「ごめんなさい」
白雪が先払いで謝ってきた
「それは・・・何に対するごめんなさいだ?」
と聞いたところで
――がしゃん――
白雪の足元に何か重たい金属が落ちる音がした
そして白雪が袴の下から出したのは・・・
あれは・・・M60!!
「この泥棒猫・・・もとい泥棒ウサギ!そんなあられもない恰好でキンちゃん様と夜の大人の遊びに興じるなんて万死に値します!即ち!一万回死ぬべし!!」
「ま、待て!落ちつけ白雪!!お前またこの部屋ぶっ壊す気か!?」
「だからごめんなさいなんです!!」
そう言って白雪は右腕一本で腰だめに構えると袖から給弾ベルトを出して左手に乗せて給弾の構えを取った。お前はランボーか!?
「な、何なのよこの女!キンジ!何とかしなさいよ!!」
流石にこれは火力負けする!!アリアも銃を出そうともせず窓際まであとずさる
「そ、そうだ!おい氷牙!お前も何か言って――」
そう言ってキンジは氷牙の方を向くが・・・
すでに氷牙はレキと共に姿を消していた
「に、逃げやがったー!」
「くたばれ!神崎!H!アリア!これは天誅なのです!あはっ!あはははははははははははははは!!」
――ばりばりばりばりばりばりばりぃ――
そして白雪が掃射を始めるとアリアは天井裏へキンジはベランダから海へと飛び込んで逃げた・・・
一方、氷牙とレキは屋上まで逃げて白雪の暴走を文字通り高みの見物をしていた
『汚物は消毒!!泥棒ウサギは欠片も残さず排除!!!!あははははははははははははははははははは!!!!!!』
キンジの部屋からは白雪の奇声と銃声が鳴り響き窓からは絶えず銃弾が飛び出していた・・・
「うわー・・・ホントに襲撃されてるよ・・・」
そう言って苦笑しながら部屋を見ていると
「氷牙さん・・・」
レキが声を掛けていた
「ん?どうした?やっぱその恰好じゃ寒いか?」
バニー姿のまま連れ出してしまったので今は俺が着ていたスーツを羽織らせておいたが・・・さすがに7月とはいえまだ夜は冷える・・・
「いえ・・・どうして私もつれて逃げたんですか?」
そう尋ねられると氷牙は空を見上げながら
「・・・どうしてかな・・・気付いたら体勝手に動いて君を連れて窓から飛び出していた・・・自分でもよくわからないんだ・・・ただ・・・君は・・・君だけは・・・俺が絶対に守らなきゃいけない・・・そんな気がしたんだ・・・」
「・・・・・・・・・」
「なあ・・・レキ・・・君は俺にとって・・・俺は君にとって・・・何だったんだ?」
「え?」
「これまで取り戻した記憶、そして過去の記録から見れば君と俺はただのパートナー同士の間柄だけじゃないってことはもう察しがついてる・・・」
「・・・・・・・・・・」
「答えてくれ!俺と君は・・・本当はどんな間柄だったんだ!?」
そう聞かれレキは
「・・・貴方は・・・私の生まれた部族の・・・ウルスの掟に従った私の主です・・・そして私は・・・貴方の所有物です・・・」
と本当の事を答えた
「所有物!?君は俺の所有物なのか!?」
「はい・・・かつて・・・私は人質になり足を引っ張るくらいならと自ら命を絶とうとしました。あなたはそんな私を止めて助けて・・・その命は俺のものだと言ってくれたんです・・・」
「君の命は・・・俺の物?」
「はい・・・そして私はそれを承諾しました。私は貴方の所有物になり絶対服従を誓いました・・・」
(マジで何やらかしてんだよ俺・・・)
「そうか・・・ならそれも今日限りで解消だ・・・いつでも俺の元を去って構わないよ・・・」
「・・・え・・・?」
「当然だ・・・今の俺は君の事をほとんど何も知らない・・・たとえば・・・今まで俺は君をなんて呼んでいた?俺は君とどんな付き合いをしていた?俺は君をどんな風に見ていた?そもそも・・・俺と君は・・・本当に1年以上の付き合いがあったのか?今の俺にはそんな事さえもわからないんだ・・・もしかしたらこのままずっと君の事を思い出せないままかもしれない・・・今の俺は君の知っている九狂氷牙じゃない・・・君の知っている九狂氷牙はどこにもいない・・・」
「・・・・・・・・・」
「今の俺には君を留めておく権利も理由もない・・・俺の元を去りたいならそれで構わない・・・君の自由にして構わないよ・・・」
そう言って氷牙は俯いた
「・・・いいえ・・・私は・・・自分の意思でここにいます・・・自分の意思で・・・貴方がどうなろうと・・・貴方の味方であり続けたいと・・・共にありたいと願っています・・・」
「・・・俺は君に何も応えられないとしても・・・かい?」
「はい、構いません。私はただ・・・貴方と共にいられれば・・・それで十分です・・・」
「・・・どうしてだ?どうしてそんなことが言える?何も報われないと知りながら・・・何も応えられないと知りながら・・・どうして君はここに居続ける?どうして俺のそばに居続ける?」
「・・・その理由を話すのは・・・もう少し待っていただけませんか?」
「・・・え?」
「貴方がすべての記憶を取り戻した時・・・その時にはその理由を答えます・・・だからお願いです・・・今は何も聞かずに・・・そばにいさせてください・・・」
そう言ってレキは頭を下げた
「・・・ああ・・・君の・・・好きにするといいさ・・・」
そう言われ俺はそう答えるのが精一杯だった
この時・・・俺の中にはそばにいてくれると知って安心している自分がいた・・・ずっとそばにいてほしいと願っている自分がいたからだ・・・けど・・・なんでこんなことを願っているのか・・・分からなかった・・・どうしても・・・わからなかった・・・
「氷牙君にそんな事を・・・だからレキさん・・・」
「はい・・・だから今はダメなんです・・・・・・・今の氷牙さんは私の事を何も覚えてはいません・・・そして・・・私はかつての氷牙さんの事を何も知りません・・・私の知っている氷牙さんは・・・今はどこにもいないんです・・・」
「だからずっと待ち続けるの?氷牙君が記憶を全ての取り戻す・・・いつかも分からないその時が来るまでただひたすら・・・」
「はい・・・ですから心配しないでください・・・私にはもう何もありませんが・・・私はスナイパーです・・・待つのは・・・スナイパーの得意技です・・・ですから・・・大丈夫です・・・」
「大丈夫なわけないでしょ!!・・・・・・大丈夫なら・・・どうしてレキさんは泣いてるの!?」
「・・・え?」
そう言われてレキは自分の目元を拭うと・・・その指先は・・・濡れていた・・・
「また・・・泣いて・・・私は・・・どうして・・・泣いて・・・」
白雪はレキを優しく抱きしめた
「白雪・・・さん?」
「レキさん・・・我慢しなくていいんだよ・・・辛い時は・・・泣いたっていいんだよ・・・」
「・・・はい・・・」
私はこの気持ちにようやく気付くことができました・・・でも・・・気付いた時はすべて遅すぎました・・・
氷牙さんが・・・貴方がいなければ・・・この気持ちに気付いでも・・・何も意味がないんです・・・
「私は・・・氷牙さんが・・・好きなんです・・・」
次回はカジノに潜入です大雑把な計画じゃそこで色々と決着つけるつもりです