緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

49 / 133
まずは主人公視点から!


47話<決別~絶望の果てに~>

ジャッカル男を一人追いかけた氷牙がたどり着いたのは・・・一隻の巨大な潜水艦だった

 

「この潜水艦・・・見たことがあるな・・・」

確か『ボストーク』1979年に進水直後に行方不明になった超アクラ級原子力潜水艦だ・・・それに・・・でかでかと書いてあるあの文字・・・

 

伊U・・・

 

イ・ウー・・・

 

間違いない・・・この潜水艦・・・ここは・・・奴らの本拠地だ!

「まさか潜水艦が根城なんて・・・そりゃ見つからないわけだ・・・」

 

「来たか・・・氷牙君・・・」

やがて潜水艦から一人の男が出てきた

あの人は・・・見覚えがある・・・腰まで伸びた髪に中性的な端正な顔、そしてどことなくキンジに似た雰囲気・・・間違いない・・・あの人は・・・

 

「アンタ・・・まさか金一さんか!?生きていたのか!?」

「ほう・・・記憶喪失になったと聞いたが・・・俺の事は思い出していたんだな・・・」

「・・・名前と顔はな・・・アンタがどんな人かと聞かれれば答えられないよ、それに・・・どうやら敵対してる立場ってのもなんとなくわかったよ・・・」

「そうか・・・なら話は早いな・・・悪いがこれ以上君に介入されるわけにはいかない!おとなしく帰ってもらうぞ!」

 

そう言うと金一の正面でカメラのフラッシュのような光が一閃した

 

金一の特技『不可視の銃弾』・・・原理はHSSによる超速の早撃ちだ、一度放てば例え金一本人でも防ぐことは出来ない・・・

 

――パァン、キィン――

 

だが氷牙は刀で銃弾を難なく弾いた

「何ッ!?」

「ん?一発だけか?その銃コルトSAAだろ?ならあと五発は撃てるだろ?」

「まさかこれを防ぐとは・・・記憶は失くしても腕は鈍っていないようだな・・・」

「俺に早撃ちを当てたいならどこぞの戦姉妹みたいに数か所同時撃ちの隠し弾混ぜて撃ちこんで来い」

こんなの・・・あかりの十弩に比べりゃ止まって見えるんだよ

 

「いいだろう・・・ならば手加減はしない!」

「ああ、今度はこっちから行くぞ・・・」

氷牙が刀を構えた瞬間

「待ちたまえ」

後ろのドアの向こうから声が聞こえてきた

「・・・なんだ『教授』?」

「ここは僕が対応しよう。君はもう行った方がいい」

「いいのか?あなたが出てくるようなことでは・・・」

「構わないよ、君は弟君の相手をしなくてはならないんだろう?」

「わかった・・・ならここは任せたよ『教授』」

そう言うと金一さんは甲板から飛び降りて砂の船に乗って行ってしまった

そして入れ替わるように甲板に出てきたのはまだ若い20そこらの青年だった

「初めまして君の事は彼やワイルド・ドッグやファングから聞いてるよ」

 

「――ッ!!そんな!?あ、あんたは・・・」

 

氷牙は驚愕した・・・なぜならそこから出てきた青年・・・氷牙はこの人を知っている。いや・・・氷牙はおろか武偵ならこの人を知らない人間はいない・・・なぜならこの人物は・・・

 

「シャーロック・・・ホームズ・・・」

シャーロック・ホームズ1世、アリアの曾祖父で世界最強の名探偵なのだから・・・

 

「ああ、改めて名乗ろう僕はシャーロック・ホームズ、イ・ウーのナンバー1で『教授』だ」

この展開には流石に氷牙は頭を抱えた

「・・・ははっ・・・突っ込みどころが多すぎて処理が追いつかねえよ・・・」

「ふむ・・・例えば・・・どうして武偵の祖先である私が無法者のリーダーをしているのか?、どうしてとっくに100歳は超えているはずなのにこんな若い顔つきをして生きているのか?とかかい?」

「本当に・・・アンタはシャーロック・ホームズなのか?アリアの曾祖父なのか?」

「ああ、残念だがこれが真実だ」

 

「ハッ、ははははは・・・」

氷牙はそのまま笑い出した

「笑い話にもならないな!世界中の武偵の憧れが今は人間辞めて世界屈指の犯罪組織のトップだなんてよ!」

「幻滅したかい?」

「いや?人間、何がきっかけで人生変わるかなんて誰にも分らないからな、現に俺もそうだ、最強最悪の傭兵が武偵になってんだから笑っちまうよ」

「そうだね、君、武偵、九狂氷牙にも傭兵、マッド・ファングと過去の名があるように僕、イ・ウーのリーダー、『教授』にも名探偵、シャーロック・ホームズと過去の名前がある。人の人生はいつどう変わるかは僕の推理力をもってしても分からない・・・だからこそ・・・人生は面白い・・・」

「面白いなら人間辞めてんじゃねえよ・・・何にせよリーダ直々に来てくれて助かったよ、探す手間が省けた。大人しく投降しろ!」

氷牙はシャーロックに銃を向けるが

「・・・氷牙君・・・単刀直入に言おう、武偵を辞めてイ・ウーに入る気はないかい?僕は君をイ・ウーのナンバー2として迎えたいんだ」

「・・・寝言は寝てから言え・・・それともボケてんのか?外見は青年でも中身は100歳超えた爺さんか・・・」

「分からないのかい?君はいま人生が変わるかどうかの分岐点にいるんだよ」

「はぁ?」

「今の君の前には二つの道がある、一つはこのまま武偵校で武偵として生きていく道、そしてもう一つは武偵を辞めてイ・ウーで傭兵として生きる道」

「・・・・・・・・・」

「今の君には武偵にはさほど未練はないだろう。そしてイ・ウーでならその力でいくら人を傷つけても殺しても誰も責めたりはしない、その力を存分に振るっていけば君は世界に名を轟かす最強の傭兵になれる、もう誰も君を人形や失敗作なんて呼ばない、自分を認めさせることができる、君は今まで自分を見下してきた連中を見返そうとは思わないのかい?」

「・・・さあな?俺がどう生きるかはまずは記憶を取り戻してから決めるさ。だが今の俺は武偵だ!だからシャーロック・ホームズ1世!俺は今は武偵としてアンタを逮捕する!」

 

「記憶をか・・・氷牙君、君はどうして自分が記憶喪失になったか考えたりはしなかったのかい?」

「何?」

「何事にも必ずそうなる理由はある。君が記憶喪失になったのにも必ずそうなった理由があるはずだ。君はそれを探そうとはしなかったのかい?」

「え・・・・・・・?」

・・・確かにそう言われてみれば俺は記憶を失くした原因を知らない・・・キンジもアリアも・・・どうして記憶を失くしたのかは教えてくれなかった・・・記憶を失ったとき俺は何かのクエストをやって負傷したと聞いて・・・そのケガが記憶を失くした原因だと思っていたが・・・実際のところ誰も何一つとしてそのクエストについては語ろうとしなかった・・・あの時あそこで何があったのか・・・俺は知らない・・・俺の記憶を取り戻す一番の手掛かりかもしれないのに・・・誰も・・・何も・・・知らない・・・語らない・・・そして・・・俺自身・・・今シャーロックに言われるまで触れようとも気付こうともしなかった・・・・・・どうしてだ?どうして気付かなかった?これじゃあまるで・・・

「それと一つ教えてあげよう、記憶喪失なんて言うが本来、人の記憶は消えたりはしない、無意識下でも必ず脳は、体は、これまで見てきたもの、聞いてきたもの、培ってきたもの全てを残さず包み隠さず覚えている、それを思い出せないのは君が思い出すことを拒んでいるからだ」

 

「俺・・・が・・・思い出すことを・・・拒んで・・・?」

 

「さあ・・・心をからっぽにして落ち着くんだ。そしてゆっくりと考えるんだ・・・君は今でも本当はあの日あの場所で何があったのか覚えている。ただ今は無意識下でそれを思い出さないようにしてるだけだ」

シャーロックはまるで子供をあやすように氷牙に呼びかけ記憶を強制的に掘り返させていった。これは・・・氷牙が殺気でカジノ店長を気絶させた時と同じだ・・・一度入り込んでしまえば最後、思考を支配され、意識を支配する・・・

 

「俺・・・は・・・初めから・・・全部・・・知ってた・・・?記憶を・・・封じたの・・・は・・・俺?」

 

「さあ、もう一度思い出してごらん、あの日あそこで何があったのか、あそこで何をしたのか、君は最初から全部知っている。最初から全部覚えている。」

 

「お・・・俺は・・・」

 

そしてシャーロックの暗示により氷牙の記憶が掘り返されてゆく・・・記憶の鍵をこじ開け・・・箱をひっくり返したかのように封じていた記憶が流れ込んできた・・・そして・・・あの日の記憶が・・・氷牙が記憶を失ったあのクエストの記憶が・・・

「言ってごらん?君はあそこで何があった?そして・・・何をした?」

 

「あの時・・・俺・・・は・・・」

 

【「「まずいわ!!呼吸が弱まってる!昏睡してるわ!」】

【「・・・仕方ない・・・『Razzo』だ!」】

 

「キ・・・ンジに・・・『Razzo』を・・・打たれ・・・て・・・」

 

【心臓の音が響くたび・・・気分が高揚する・・・自分が自分じゃなくなるみたいだ・・・まるで・・・頭の中が書き換えられるようだ・・・】

 

「気分が・・・高揚・・・して・・・殺・・・意が・・・戦・・・意が・・・抑え・・・られなく・・・て・・・」

 

【「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」】

 

「傷・・・付ける・・・こと・・・が・・・戦う・・・こと・・・が・・・殺・・・す・・・こと・・・が・・・すご・・・く・・・楽しく・・・て・・・」

 

【ニイィィィィ――――】

【「止めろぉぉぉぉぉ!!!」】

 

「俺・・・は・・・ブ・・・ラドを・・・何の・・・躊躇も・・・なく・・・」

 

【――ドゥン――】

 

「笑・・・って・・・殺・・・し・・・たん・・・だ・・・」

 

 

 

 

「そうか・・・それが君が記憶を封じた理由か・・・君は・・・武偵として最大の禁忌を犯してしまったのか・・・」

 

氷牙の腕は力なく下がり手から銃が落ち

 

 

 

 

――ゴトン――

 

 

 

「あ・・・ああ・・・ああああ・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

 

銃が落ちた音が引き金となり膝を付き両手で頭を抱え絶叫をあげた

 

絶叫と共に崩れてゆく・・・何もかもが・・・全部崩れてゆく・・・今まで築き上げたものが・・・やっと手に入れたものが・・・やっと見つけた居場所が・・・全部崩れてゆく・・・

なんて救いようも無い話だ・・・この俺を唯一受け入れてくれた場所を・・・自分から捨てていたなんて・・・俺は・・・なんて救えないんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

そして氷牙は絶叫の後、膝を付いたまま項垂れていたらシャーロックが問いかけてきた 

「・・・氷牙君、これで君は記憶を取り戻した。改めて聞くが・・・君はこれからどうする?」

 

「・・・俺は・・・もう人殺しだ・・・武偵校には・・・もう・・・帰れない・・・マッド・ファングに戻って傭兵として生きて・・・やがては一人血だまりで野垂れ死ぬだけだ・・・もう俺を受け入れてくれる場所なんて無いさ・・・」

 

するとシャーロックは手を差し伸べ

「イ・ウーは門を叩く者は決して拒まない、君が門を叩くならば僕はいつでも受け入れよう。重ねて言うが僕は君をイ・ウーのナンバー2として迎え入れたいんだ」

氷牙は俯いたまま

「・・・・・・自分で・・・行く・・・今は・・・一人にしてくれ・・・」

「ああ、今は気持ちを整理するといい、皆にも君は敵ではないと伝えておこう。それとこれを渡しておくよ、ここの通信機だ、いつでも僕と連絡が取れるよ」

そう言って通信機を渡すとシャーロックは船内に戻っていった

 

だが今の氷牙にはそんな言葉は届かなかった

 

「・・・俺は・・・人を・・・殺した・・・俺は・・・・・・」

 

氷牙はかつての自分のしたことに放心していたのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間たったころ・・・ずっと浮上しててくれたのはシャーロックなりの気遣いだったのか空は明るくなり始めいつの間にか夜が明けようとしていた

 

「・・・・俺は・・・もう武偵じゃない・・・もう・・・戻れない・・・なら・・・」

俺は立ち上がると武偵手帳を取り出し・・・

 

 

 

 

 

――ドプン――

 

 

 

 

そのまま海に投げ捨てた

 

そして船内に入ろうとしたら

「氷牙君!!」

突然そう呼ばれ後ろを見ると・・・

軍勢を引き連れたラッシュがボートでこちらに向かってきていた

「・・・大尉?」

 

そしてラッシュ達が潜水艦に乗り移ると

「よかった無事だったか!」

「・・・ああ・・・でもどうしてここが?」

 

ラッシュは耳を指さし

「通信機だ、それのおかげで通話こそできなかったが位置だけは衛星越しに探知できた!そして君のおかげで・・・こうして奴らの本拠地も突き止めることができた!」

「ああ・・・そうか・・・」

「行こう!奴らはここに積んであるミサイルをアメリカ中に撃ちこむ気だ!」

「了解・・・俺は一度キンジ達に連絡する・・・先に行ってくれ・・・」

「ああ、遠山君達もこちらに向かっている!あと数分もすれば着くはずだが先に連絡して安心させるといい!」

そしてラッシュ達は潜水艦に入ってゆくと俺はキンジにではなくシャーロックに貰った通信機を取り出しシャーロックに連絡した

『氷牙君?どうした?』

「アメリカ軍の連中が侵入した・・・目的はミサイルの格納庫だとよ・・・」

『・・・そうか、なら折角の来訪だ、お望み通り格納庫でもてなすとしよう』

「なら・・・手加減しろよ?じゃないと着く前に・・・全滅するぞ?」

『分かっているよ、それじゃあまた』

 

そして通信は切れ俺はラッシュを追った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで・・・いい・・・これで・・・もう・・・これしか・・・」

 

 




次回キンジ視点で行きます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。