装備科棟、地下2階B201作業室
その平仮名で「ひらがあや」とかいてある表札のついた扉を誰かがノックした
「はーい!開いてますのだ!」
平賀ちゃんがそう叫ぶと扉が開く
「平賀さん、遠山だけど頼んでいた物・・・」
キンジは言葉を止めた、なぜならそこには
「あれ?キンジ?」
すでに氷牙が来ていたのだから
「おお―!遠山君も来たのだ!今日はお得意さんがよく来られるのだ―!」
「お前何でここに来た?てっきり今頃女子たちに一方的にズダボロにされてさらし首にでもされてるのかと思ったのに」
「・・・死に物狂いで何とか逃げ切ったよ・・・」
「そりゃお疲れさん、まあ明日からも大変だと思うが頑張れよ?」
恐らく明日からは女子からは今日の覗きで追い回され、男子からは何が見えたのかを根掘り葉掘り問い詰められるだろうな・・・
「お前・・・誰のせいだと思ってるんだよ・・・」
そう問い詰めると
「あ?なんだって?ちょっとあの中国娘に首絞めれれてから耳が遠くなってな・・・誰かさんが早く助けてくれればこんな事にはならなかったんだけどな・・・」
と再び嫌味もかねて返してきた
「う・・・」
流石にそう言われてはキンジもぐうの音も出なかった・・・
諦めて平賀ちゃんの方を向くと
「・・・で?平賀さん?頼んだもの出来てる?」
と聞いた
「ばっちりなのだ!あややに不可能は無いのだ!」
そう言って部品のジャングルと化した部屋の一角に頭から突っ込むと
「ふぬー!もうちょっとで届くのだー!」
と言ってしばらくもぞもぞと動いてると、やがてずるずると出てきた
「これ西洋刀剣なのに超一流の日本刀とも張れる大業物なのだ!遠山君もいいもの持ってるのだ!」
平賀ちゃんが持っていたのはそれ自体が発光しているように鋭く輝く両刃剣だった
「え!?お前・・・それってもしかして・・・」
「ああ、シャーロックが持っていた剣だ。あの時奪ったのをそのまま持ってきてな・・・切れ味がいいからこのまま使おうと思って俺の手に合うようにグリップ変えてもらったんだ」
「それとあっちも出来てるのだ!」
と言って今度は棚の上に手を伸ばすが
「ぬぅー!届かないのだー!」
といってぴょんぴょん飛び上がっているが一向に届かない・・・
「ハァ・・・」
氷牙は部品のジャングルをかき分けると
「えーと・・・この黒いデザートイーグル?」
「おおー!それなのだー!」
平賀ちゃんの代わりにとってそれをキンジに渡した
「弾倉排出を速くして三点バーストとフルオート機能も付けておいたのだ!ここまで魔改造ができるのはあややだけなのだ!!」
「ああ、ありがとう」
「おいおい・・・お前マグナム弾のフルオートって・・・ゾウでも仕留めるのか?そんなもん人間に使ったら挽肉になっちまうぞ・・・」
「言われなくてもこんなの人間には使わねえよ・・・ただ・・・これからは人間辞めた奴とも対峙するかもしれないからな・・・だから武装を強化しておこうと父さんの形見のこの銃を引っ張り出してきたんだ。ま、俺が撃つにはデカすぎる銃だからこいつが撃てるのはなった時だけだな・・・」
「そうか・・・ま、確かに無いよりはずっといいな・・・」
「まあな、でだ・・・お前は何でここに来たんだ?」
「ああ、それはいつも使ってる特注の弾丸の受け取りと・・・平賀ちゃん?先月頼んだ物の方はどうなってるの?」
そう言うと平賀ちゃんは顔色を変えて
「それがなのだ・・・これを見て欲しいのだ・・・」
平賀ちゃんが作業台に置いたのは・・・
半分に折れた刀と3分の1ほど刃先が折れて無くなっている刀、俺が今まで使っていて先のシャーロックとの死闘で折れてしまった刀
・・・ではなく白銀に輝く折れた長刀の刀身を置いた
「あれ?何これ?それに俺はあの刀を溶かして作り直してくれって頼んだはずだけど・・・」
「これがそうなのだ・・・あの刀を溶かそうと炉に入れてみたら表面の皮鉄(刀身の表面を覆う刃の部分にもなる柔らかい鉄)が溶け落ちてこの刀身が出てきたのだ・・・」
「え?どうゆうこと?」
「多分・・・氷牙君が使っていた二振りの刀は元は一振りの長刀だったのだ・・・それが何かの理由で折れて、その後折れた刀身を芯に皮鉄を被せて二振りの刀に仕立てていたのだ・・・その証拠に見てみるのだ」
平賀ちゃんは刀の折れた部分をもう片方の刀の折れた部分を合わせてみると・・・その継ぎ目は刀の波紋を含め見事に一致した
「・・・そしてこの刀身・・・いくら焼いても叩いてもちっとも溶解も変形しなかったのだ・・・たぶんこの刀、鋼や鉄なんかで作ったただの刀じゃないのだ・・・もしかしたら妖刀かもしれないのだ・・・」
そう聞いて氷牙もキンジも目を見開いた
「妖刀!?マジかよ・・・こいつそんな物騒な物だったのか・・・」
「確かこの刀お前がマッド・ファングと呼ばれてた頃から使っていたやつだよな?」
「ああ・・・だが俺もこの刀の銘は知らない・・・物心着いた時にはこの刀が手元にあった・・・ずっと使っていたんだが・・・まさかこんなものが隠されていたなんてな・・・」
「とにかくこれはあややの手には負えないのだ・・・力になれなくて申し訳ないのだ・・・」
「いや・・・この刀の姿が分かっただけでも十分さ・・・」
俺は平賀ちゃんに礼を言うと折れた刀身を受け取り一応根元側の方には元通りに柄を取り付けてもらって背中に収めた
「でもよ?お前・・・その折れた妖刀、これからどうするんだ?」
「そうだな・・・もしかしたらこの妖刀は・・・俺の素性の手掛かりになるかもしれないんだ・・・ならこの刀について調べるべきだな・・・妖刀となればその筋の人間・・・超能力者に聞くのが一番なんだが・・・」
あいにく白雪は京都の星伽分社に出かけていて不在、ジャンヌも長期クエストで出かけていて不在ときた・・・
「二人とも帰りはいつになるかわからないって言ってたしな・・・」
「ならひとまず帰ってくるまではこの話は置いておくしかないか・・・」
「それならこちらから会いに行けばいいのだ?」
「「え?」」
「お忘れなのだ?2週間後は・・・」
「「あ!」」
そうだった、2週間後は『修学旅行Ⅰ』チーム編成の・・・9月末までに登録しなければならないチームの最終調整に京都へ旅行に行くのだ。
だがチーム編成と軽く言うがこのチームは後国際武偵連盟にも登録される将来的にもたとえ進路が分かれても組織や国境すらも超えて最優先される協力関係を結ぶものであり一般校のように仲良しこよしで組んでいいものではない、戦略的に優れた編成を考えなくてはならないのだ・・・
「それに・・・次この黒の制服を着る時は・・・チーム編成を決める時だったしな・・・」
「でも二人共もうチームは決まっているのだ?」
「ああ、夏休みに入院している時にいつの間にかアリアが勝手に決めていた」
そう言って氷牙はいつの間にかアリアが勝手に決めていた現時点でのメンバー名と編成の書かれたメモ用紙を出した
そこには・・・
チーム名
『バスカービル』
メンバー
・遠山キンジ(リーダー)
・神崎・H・アリア(副リーダー)
・九狂氷牙
・レキ
・峰理子
・星伽白雪
と書かれていた
「しかしこの乗り物っつーか必殺技みたいなチーム名なんだ?」
キンジがそう尋ねると
「知らないのか?バスカービル、デヴォン州ダートムアにあるホームズ家の所有してる土地の名前だよ」
「え!?アイツ土地持ってたのか!?」
「まあ土地と言っても今はほとんど荒地で価値は0だし、元々はシャーロックがその土地で起きた事件を解決した後、その土地を買収して事件の名前をそのままつけたものを相続したらしいがな」
「アリア・・・マジで貴族だったんだな・・・」
「ていうかよ・・・仮にもシャーロックを殺そうとして刺し違えた俺がそんな名前の・・・しかもその曾孫が所属するチームに引き入れるって・・・ホントにアイツ気は確かかよ・・・」
そう尋ねるとキンジは
「理子も同じことアリアに聞いてたよ・・・「仮にも怪盗リュパンの曾孫でキンジやアリアを殺そうとしたあたしをそんな名前のチームに引き込むなんて気は確かか!?」ってな、そしたら「アンタ以外の誰かにアタシやキンジが殺されたら許さないんでしょ?だったら他の誰かにやられない様に一緒のチームになって近くにいなさい!」って言って強引に引き込んだらしいぞ・・・」
「それで理子の奴承諾したのかよ・・・」
「「勝手にしろ・・・せいぜいあたしに寝首を書かれないように気を付けるんだな!」って言って承諾したらしい・・・」
「アイツも素直じゃないな・・・」
「ちなみにお前もいつか殺してやるそうだ。てかお前だってアリアにもう尋ねたんだろ?」
「ああ、そうしたらアイツ「アタシはアンタの相手が誰であろうと自分の意思を貫いて立ち向かってゆくその信念、何よりも仲間のためにどんな修羅場にも臆せず乗り越えてゆくその心の強さを買いたいのよ!!それに、アンタみたいな凶暴な問題児武偵、まともに付き合えるのはアタシたちくらいよ!!」ってシャーロックと刺し違えたことなんざ軽く流しやがったよ・・・」
「だろうな・・・けどホントにアイツらしいだろ?」
「まあな・・・悩んでた自分が馬鹿らしくなるくらいだよ・・・けどアリア達とチームを組むとなると・・・平賀ちゃん・・・とりあえず早急になんとかしてもらわなきゃいけない問題が一つある」
「何なのだ?」
「俺、近接武器が無い・・・」
「「あ・・・」」
「確かにな・・・1年の時はほとんど体術だけで何だかんだで乗り切ってたけど・・・今はそうもいかないだろ?」
「ああ・・・片腕失くして弱くなったのは否めない・・・アリアといればこの先何度も波乱も修羅場も戦争も起こる・・・そうなれば武器は必要だ・・・けど生半可な代物じゃこの先持たないだろうし・・・かと言ってそれなりの業物なんてそう簡単に調達できるものじゃないだろ・・・」
「ならこれ使うか?」
キンジは先程受け取った両刃剣を出した
「え?でもそれはお前が使うんだろ?」
「そうだけどお前が丸腰じゃ世話無いだろ?一応持っとけよ?」
「・・・じゃあ・・・そうするか・・・」
そう言ってキンジから剣を受け取ろうとすると
「う!?」
剣を握った瞬間、突然気分が悪くなり・・・気付けば剣を落とし膝を着いていた
「お、おい!?どうした!?」
「氷牙君!?大丈夫なのだ!?」
「あ、ああ・・・大丈夫だ・・・」
そして氷牙はゆっくりと立ち上がると
「よくわからないけど・・・俺にはこの剣は使えない・・・」
「え?」
「何となくだけど・・・俺はこの剣に拒まれている・・・そんな気がするんだ・・・」
「剣が・・・氷牙を拒んだ?」
「ああ・・・とにかくこの剣は俺には使えない・・・やっぱりお前が使ってくれ・・・」
氷牙がそう言うとキンジは剣を拾いながら
「だけどそれじゃあ結局お前武器どうすんだよ?」
と尋ねた
「それなんだよな・・・」
「ちょっと待つのだ!ならいいものがあるのだ!」
平賀ちゃんは頭の上に見えない豆電球を点すと再び部品のジャングルに突っ込み
「ふぬー!重いのだ―!」
両手で何か柄のようなものを引っ張っていた
再びそれを見かねた氷牙は
「ええと・・・これ引っぱり出せばいいの?」
そう言って柄を握ると
「おおー!そのまま引っ張ってくれなのだ!」
と言われたので俺は柄を平賀ちゃんごと引っぱりあげた
そして出てきたのは・・・・
「お、おい・・・平賀さん・・・なんだそれ・・」
形はとても大きく、刀身だけでもゆうに1メートルは超える程の大きさで、刃の側面には赤いパーツに金色で綺麗な模様が施された装飾が付いている分厚い曲刀だった
「あややが作った試作品なのだ―!ちょうどモニタリングしてくれる人が欲しかったから持っていってくれなのだ―!」
「あのなあ平賀ちゃん・・・俺は片腕だぞ?これ・・・どう見ても片手で振り回す代物じゃねえだろ・・・」
「とか言いつつ片手で平賀さんごと軽々と持ち上げて言ってるお前が言うと説得力無いけどな・・・」
「大丈夫なのだ―!これは元から片手で使うことを前提に作ってあるのだ―!それにちょっとした隠し機能もあるのだー!」
と平賀ちゃんは柄に鉄棒の様にぶら下がりながら両目を不等式の記号(><)のようにしながら武器について説明を始めた
――そして・・・二人が装備科棟から出ると
「で?結局それ使うのか?」
キンジは氷牙が背中に背負っている先程平賀さんから受け取った大剣を指して聞いた
「まあ見た目よりは軽いから片手で振り回せるしな、それにさっきの機能聞いた限りじゃなかなか面白そうだ」
「大丈夫かよ・・・平賀さん・・・腕は確かなんだけどぼったくる上に魔改造品や試作品は必ずどこか欠陥があるんだぞ?」
「そうか?俺が今まで依頼した物じゃそんな事まずなかったぞ?それによく割引や割り増しもしてくれたり特急の依頼にも応じてくれたりするからホントにいい子だぞ?」
そう聞くとキンジは冗談だろ!?って顔をした
「え!?嘘だろ?平賀さんが割引や割り増しなんてサービスしてくれるって・・・お前平賀さんに何したんだ?」
「別に?よく差し入れに食事持って行ったり、作り過ぎて余った菓子とか分けてやってるくらいだが?以前も弾薬を2日後までに100ダースって少し無茶な注文した時なんか「ショートケーキ作ってくれたら出来る気がするのだ!」て言うから1ホール作って持っていたら次の日には注文通りに納品された、それもイロ着けて120ダース追加料金なしで」
「・・・お前・・・胃袋しっかりつかんでるじゃねえか・・・」
「かもな?俺も一度気になって「いくら何でもサービスしすぎだろ?採算取れてるの?」って聞いたら「心配ご無用なのだ!氷牙君以外の所からがっぽり頂いてるのだ!今後とも大いにサービスするから氷牙君はこれからもあややにたくさん注文してたくさん差し入れを作るのだ!!」って言ってた」
「おい・・・それって・・・」
まさか平賀さんがぼったくる理由って・・・
「割引もぼったくりも全て自分が得をするように計算してやってるんだ・・・ホント無邪気な顔して末恐ろしいよ・・・平賀ちゃんは・・・」
氷牙はそうため息をつくと寮へと戻っていった
次回からは修学旅行Ⅰ編に突入予定です
ちょっとこじつけなところもあったかな?