緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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時間が夜じゃなくて朝になってるけど出来るだけ原作に沿いつつ上手く不自然にならない様にします・・・


61話<見えぬ敵、這い寄る死>

俺達は旅館を出て森に入るとレキを先頭にひたすらに突き進んでゆく

その動きは迷いがなくまるで明確な目的をもって歩いてるようだった

「なあ?レキはどこに向かってるんだ?」

「まずは先程の狙撃地点を元に、相手の現在位置を推測しながら狙撃に適した場所を探します」

「場所か・・・」

狙撃手同士の戦いは陣取りで決まると言ってもいい・・・自分は見つかりにくく、相手を探しやすい、そんな場所を先に取った方が圧倒的に有利に立てるのだ

 

「だけどこんな濃霧の中でよく見えるな?GPSとかはジャミングされて使えないはずだろ?」

森の中は湿度が高いせいか朝霧も濃く出ていて視界が悪く10メートル先も真っ白で見えない。だというのにレキは迷うことなく進んでゆく

「このあたりの地形は頭に入ってます」

「いつの間に!?」

「ここに来る途中でバスから地形を見ていました」

「さすがSランク武偵だな・・・」

「今はEランクです」

「・・・そうだったな・・・でも、どうやって相手を探すんだ?こんな濃霧の中じゃ目の前もまともに見えない・・・このままじゃまた後手に回っちまうぞ?」

キンジがそう言うとレキは足を止めた

 

「?レキ?どうした?」

「来ます・・・」

「・・・残念だが俺達は完全に後手に回ってるようだ・・・」

「え?」

氷牙とレキが警戒を向けハイマキがグルルルとうなり声を上げる先からは・・・

 

「ガルルルル・・・・・」

 

大きな黒い犬が現れた

 

「あれは・・・」

「シャー・ペイ、軍用犬や猟犬にも使われる獰猛な種類です」

「どう見ても敵だな・・・」

シャー・ペイはこちらにある程度近づいてくると止まりこちらに向けて低いうなり声を上げながら威嚇してきた

「やる気か・・・なら来いよ!」

氷牙が銃を構えるとキンジとレキも銃を構えた

 

「ガルルルルル・・・・・・・」

 

だがシャー・ペイはこちらを威嚇するだけで襲ってはこない

なんでだ?どうしてかかってこない?・・・まさか・・・

 

「――――ッ!!レキ!!」

氷牙は咄嗟にレキを抱き寄せ背中を山岳部に向けた

 

――ビシッ――‼‼

 

その直後ライフル弾が背中のケースに被弾した

「狙撃!?さっきの奴か!!」

「見つかった!!隠れろ!!」

スナイパーに見つかり俺達は近くにあった大きなクスノキの根元に隠れる他なかった

そして隠れた後、シャー・ペイは手のひらを反すように逃げていった

「クソッ・・・あいつ最初からこれが目的だったのか・・・」

氷牙はケースを見ると・・・被弾した場所にはライフル弾が刺さっていた

「お前・・・そのケース防弾製か・・・」

「ああ、イザってときは盾にもなるぜ?片腕の俺には無用の長物かと思っていたが・・・案外役に立ったな・・・」

そう言って氷牙はケースを脇に置くと

「やられたな・・・あの犬・・・初めから俺達の居場所を知らせるのが目的だったんだ・・・」

「ええ・・・首輪にマイクと発信機が付いていました。おそらく私達を発見したらうなり声を上げて知らせるように訓練されていたんです」

「それにこんな濃霧の中にいる俺達を的確に撃ってきた・・・多分暗視スコープ使っているな・・・」

 

「どこまでも後手に回っちまったってわけか・・・これからどうする?」

キンジがそう問いかけると氷牙は

「・・・・・・・・・・・」

しばらく考えたのち

「相手は2キロ先から狙撃してくるんだ、そんな相手に攻撃できるとしたらレキだけ・・・なら俺達はどうするか分かるだろ?」

と、「そんな事聞くまでも無いだろ」と言わんばかりの返答を寄越した

「・・・囮になって相手の攪乱と位置の特定・・・レキのサポートって事か・・・」

「そういうことだ・・・さっきのラジコンヘリや犬がまた来ないとも限らないしな・・・」

「ですが私たちの位置は既にバレています。恐らく二人はすぐに撃たれる事は無いでしょうが私は飛び出した瞬間に撃たれる可能性が高いです」

「まあ、この状況ならスナイパーから叩くのは基本だな・・・」

 

 

「・・・・・・だからこそ突破口もある」

 

「「え?」」

 

人が起こす事にならどんな事にも必ず手がかりも突破口もある・・・昨日俺が杉野に教えてやった言葉だ・・・

「相手は単独であれ複数であれ間違いなくレキを第一目標にしている・・・なら俺達はその次・・・つまりレキがいる限り俺達は眼中に無いと言ってもいい」

「てことは俺達囮にもならないじゃねえか・・・」

「だからこそいいんだよ・・・眼中に無いってことは何をしても取るに足らないってことだ・・・ならそこに付け込む隙がある!!」

「いや・・・だからどうするんだよ!?」

「氷牙さん?もしかして何か策があるのですか?」

レキがそう聞くと氷牙はニヤリと笑いケースから大剣を出した

「ああ・・・でも相手が集音気を使っている可能性も踏まえて内容は言わない・・・だから指示だけを聞いてそれに従ってくれ・・・」

そう言って氷牙は情報の攪乱も兼ねてか口頭、筆談、マバタキ、ハンド、読唇を織り交ぜてあらゆる偽情報を流しつつ本命の指示をキンジ達に伝えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

 

キンジは木の陰からあれこれ投げ飛ばしてゆく

 

土を入れたカロリーメイトの空き箱、空になったマガジン、枝に巻いたスカーフ、腕時計、投げれるものは手当たり次第に投げる

 

――ビシュ――!!

 

だが、その全てはことごとく撃ち抜かれていった

まるで「お前らもこうなるんだ」というメッセージのように

 

だが何度も狙撃していれば自分の位置は次第に特定されてゆく、狙撃手が居場所を知られることは死にも等しい事だと言うのに・・・相手はよほどの自信家なのか、それとも舐められているのか・・・位置がバレても勝てると思っているようだ・・・

 

 

 

 

そして・・・

 

 

 

(位置が特定できました!相手は拠点を作ってそこから動いていません!)

(よし!作戦開始だ!!)

レキが相手の位置を特定しキンジがまた囮を投げ飛ばすとその直後、氷牙とハイマキが飛び出した

 

 

――ビシュ――!!

 

まずは囮が撃ち抜かれる

 

(よしっ!第一関門は超えた!)

レミントンM700はボルトアクションライフル、一発撃てば次弾装填して再び狙いを定めて2キロ先まで飛ばすまで最低でも4秒近くは必要だ!!

 

その4秒の間に氷牙とハイマキは走る

 

 

「ガルッ!!」

「グォフッ!!」

途中先程のジャー・ペイが立ちはだかったがハイマキが応戦し氷牙はその横を通り抜け走り出す

 

 

 

出来るだけ遠くに全速力で走り続け銃撃から3秒経つと

 

「シャァアア!!」

 

手に持っていた大剣を水平に振り、体ごと回した回転切りをする

当然森の中でそんな事をすれば木に当たり弾かれるのがオチだ・・・が

 

――ズドォォォォォォン――‼‼‼‼‼

 

「うおおおッ!!??」

 

木に当たる直前、剣の峰の部分から爆炎が噴き出しそのまま周りの木々を全て薙ぎ払いながらスピードを加速させていった

「ははっ・・・こいつはすげえな・・・」

初めてこの機能を使ってみたが・・・まさかこれほどとはな・・・

そう思いながら俺は平賀ちゃんにこの武器の説明をしてもらった時の事を思い出す

 

 

『この剣は峰の部分には推進剤噴射機構が搭載してあって攻撃に合わせて噴射すれば威力や速度を上げたりゼロ距離からでも叩き斬る事が出来るのだー!』

 

 

確かに一撃で周りの木々全部薙ぎ払ってるんだ・・・威力は思っていた以上に出鱈目なまでに上がるな・・・けど・・・

 

 

『でも威力があり過ぎて噴射すると爆炎が上がるのだー!それに出力を上げすぎると反動で肩がもげるから上げ過ぎには気を付けるのだー!』

 

さらっと言ってたおっかない欠点も思ってた以上のものだ・・・反動を抑えるために体を回して負荷を分散させても肩に相当な負荷がかかった・・・危うく肩外れるかと思ったよ・・・

(あまり出力は上げられないし・・・連発は出来ないな・・・無理に使えば本当に肩が持っていかれっちまう・・・)

頭の片隅でそう思っているうちに銃撃から4秒が経過し相手の次段装填が完了し、いつ撃たれてもおかしくない状態になった

そんな状況で氷牙は剣を手放すと今度は背中に背負っていた剣を入れていたケースを盾のようにしてスナイパーのいる山岳方面へと向けた

 

――ビシュ――!!

 

だが銃弾が着弾したのは先程まで隠れていたクスノキの根元の方であった

 

そしてクスノキの方を見れば霧越しに武偵校の女子制服を着た小柄な人影が倒れるのが見えた

 

その光景を見て俺は・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やはり俺は眼中に無かったか・・・」

 

 

 

勝った・・・俺は勝利を確信した

 

 

 

向こうからは集音機や暗視スコープを使いこちらの位置や会話は筒抜けだっただろうがこちらは霧の中にいるため向こうの姿はまるで見えない状態だった

だが先程の爆炎を伴う薙ぎ払いで氷牙の周辺は周りの木々はおろか岩や・・・朝霧さえも全てを薙ぎ払い、吹き飛ばし・・・文字通り何もない状態になっていたのだ

これでようやく視界は互角・・・いや、銃の装填作業がある分こちらの方が速い・・・その上相手は氷牙よりもクスノキの根元に隠れているレキの方に注意が向いていた、その時点で相手はさらに出遅れるだろう・・・なぜなら・・・

 

 

 

 

 

――バンッ――!

 

 

前に構えたケースが開き・・・中から下着姿のレキが飛び出した

レキはずっと・・・クスノキの根元にではなく氷牙が背負っていたケースの中に隠れていたのだ!

 

 

 

2キロの距離があれば発射してから着弾までだけでも2秒近くはかかる、そしてその間にも当然相手は動くのだから移動先を読んで撃たないと当たらない、物陰から出てくる所を撃つのなら完全に出てくる前に撃たなければならない。

そして暗視スコープ越しなら色は白黒にしか見えない上に画質が荒れる。ならレキの服を着た人のような物が飛び出せばそれをレキと見間違えて反射的に撃つんじゃないかと睨んで木と枝で作った即席の人形にレキの服を被せて身代わりを作りタイミングを見計らってキンジに外へ放り出してもらったのだ。

(肉眼で見ていれば見破れたかもしれないが・・・機械に頼り過ぎたのが仇になったな!!)

相手は完全に俺達の策にかかり身代わりをレキと間違えて撃ってしまった、ついに先手後手が逆転した

 

「ここは暗闇の中、一筋の光の道がある光の外には何も見えず、何もない。私は光の中を駆ける者―――」

 

――バァン――!

 

そしてレキが発砲し

 

――ギィイイイイイイイイイイイイン――‼‼‼

 

向こうの山岳からここまで響いてくるような甲高い轟音が響いた

(これは・・・音響弾か!!)

レキの初撃は武偵弾・音響弾、集音機を着けている状態でそんなものを喰らえばただでは済まない、今ごろは相手は耳を押さえて苦しんでいるだろう

 

そしてレキはその隙を逃すことなく再び狙いをつけ

 

――バァン――!

 

次の狙撃により相手の銃を破壊した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・相手の銃を破壊しました・・・もう大丈夫です・・・」

「ああ!作戦成功だ!!」

「やったな!!氷牙!レキ!」

そう言いながらキンジはレキの制服を持ってこっちに走ってきた

「・・・増援が来ないとも限りません・・・早くここから離れてください・・・」

「ああ、でもその前にお前は服を着―――」

 

 

――ガシャン――

 

 

レキは両手をだらりと下げドラグノフを落とした

「・・・レキ?」

氷牙が呼びかけるがレキは・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

どさり、と返事することもなくそのまま膝を着いて倒れた

 

 

「レキ!?どうした!?」

 

氷牙はレキに駆け寄り抱き起そうとすると・・・

 

――べちゃり――

 

と手に生暖かい液体が付いた

 

「え?」

そして手を見ると掌が真っ赤になっていた

どうしてなのか・・・この時ばかりはレキの脇腹から際限なく流れ出ている何度も見慣れているそれを何なのかすぐには認識できなかった・・・

いや・・・頭の底で否定していたんだ・・・認識したくなかったんだ!

 

 

レキが撃たれ・・・出血して死にかけているなんて!!

 

 

「レキ!?お前撃たれたのか!?」

「・・・すみません・・・脇腹に・・・被弾しました・・・音響弾が着弾する直前に苦し紛れに撃ったらしく・・・狙いがずれて急所からは外れていますが・・・」

「マズいぞ!!防弾制服を着ていなかったからまともに入ってる!!」

「弾も貫通してない・・・このままじゃ危険だ!!」

氷牙は応急処置をするが出血が止まらない・・・

「携帯は・・・クソッ!まだジャミングされてやがる!!圏内までレキを連れて走るしかない!!」

「レキ!絶対に助けてやる・・・だから諦めるなよ!!」

 

「・・・はい・・・何だか・・・笑いたくなってしまう程・・・不思議ですね・・・」

「え?」

「少し前までは・・・足手まといになるくらいなら・・・死ぬのが当たり前だと思っていました・・・でも・・・今は・・・頭の中は・・・死にたくないという思いでいっぱいです・・・」

「・・・そんなの当たり前だろ・・・誰だって本当は死にたくないに決まってる・・・かつての俺だって・・・そうだったんだからよ・・・」

「・・・あなたに会っていなければ・・・私はとっくに諦めていたでしょうね・・・本当に・・・貴方は・・・私を変えてくれた・・・貴方に会えて・・・本当によかった・・・」

「なら俺もだ・・・レキがいたから・・・俺も変われたんだ・・・レキと会えて・・・本当によかったよ・・・」

「はい・・・だから・・・諦めません・・・貴方と共に・・・生きてみせます・・・」

そう言うとレキは目を閉じて意識を失った

 

「氷牙!マズいぞ!!意識を失った!!早く病院に連れて行くんだ!!」

「言われなくても分かって―――ッ!!」

 

――ウォォォォォォォーン―――

 

遠くから遠吠えが聞こえる・・・

 

「この声・・・さっきのジャー・ペイか!?」

「マズいぞ・・・次々と聞こえる・・・少なくとも20匹はいるぞ・・・」

「クソッ・・・時間がないってのに・・・・」

そしたらハイマキが前に出て俺達に目線を送った

その目は「行け、ここはまかせろ」と言わんばかりだった

「・・・ありがとよハイマキ・・・帰ったら魚肉ソーセージ食い切れないほど買ってやるよ!!」

「氷牙!こっちだ!お前がさっき霧を吹き飛ばしてくれたおかげで向こうに道路が見えた!!」

「死なせるか・・・絶対に助けてやる・・・これで終わりなんてさせるかよ!!!」

氷牙はレキを抱えると森の中を走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方・・・少し離れた場所でこの出来事を傍観している者がいた

 

「にゅやっ!?これはいけませんねえ・・・彼には生徒を助けていただいた恩もありますし・・・ここは少し手助けをさせていただきますかねぇ・・・」

「それは契約に引っかかるんじゃないの?」

後ろから誰かの声が聞こえ振り返れば武偵校の女子制服を着た桜色の髪を肩まで伸ばした優しげな顔をした少女が現れた

「んにゅ?これはこれは・・・貴方も傍観者ですか?」

「今はまだね・・・それよりも彼らを助けるつもり?貴方は人前に出れる立場じゃないでしょう?ましてや彼らは武偵、そんな人物に直接接触しようものなら契約違反になるんじゃないの?」

「わかっています・・・私は彼らと直接会うことはできません・・・ですが間接的になら構わないでしょう?」

「貴方も頑固だね・・・別に貴方が助ける必要なんてないのに・・・」

「頑固にもなりますよ?今を逃せば私は彼らに恩を作ったままになってしまう・・・それでは教師として示しがつきません」

「しょうがないな・・・いいよ?私も彼らに何かあったら困るからね・・・でも・・・今回だけだからね?」

「ご心配せずとも承知しています・・・どの道・・・彼らを見るのもこれが最後になるでしょうから・・・」

声の主はそう言うと突然吹いた突風と共に姿を消していった

 

「本当に・・・貴方が手助けする必要なんてないんだよ・・・別にあなたが手助けしなくても・・・いざってときは私が絶対に助けるんだから・・・」

 

 




GW中にもう一話くらいは投降したい・・・
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