氷牙は離れた場所まで行くとビルの屋上まで飛び移り傍観を決め込んでいた。
「ま、あれくらい自力でなんとかすんだろ、人の朝飯台無しにしやがっていい気味だ」
キンジには後で飯代請求するとして・・・今からならビル屋上を飛び移って近道すればギリギリ始業式には間に合うだろ。
去年に続いて今年まで始業式に欠席なんてしたら2度あることは3度だ来年も始業式に出れず俺は卒業するまでに校長の顔を見れないかもしれん。
ちなみに不思議なことに武藤や不知火に「校長ってどんな人なんだ?」と聞いても二人共「ええと・・・男で・・・」で終わってしまいそれ以降の特徴が聞けることはなかった。
なので俺は校長がどんな人か気になって仕方がないのだ。
「ほんと校長ってどういう――!?」
そして不意に後ろに気配を感じて振り向いた。
「・・・俺に何か用か?」
「相変わらず、腐れ縁のふたりですね」
そして物陰から少女が出てきた。
大きなヘッドホンをショートカットの髪に被せ、顔は美少女だが無表情、背中には
ドラグノフ狙撃銃がかけられていた。
「レキか、相変わらずの神出鬼没だな、なんでまたこんなところに?」
「風に導かれました、今日ここに来るように」
「風・・・ね」
相変わらず変な電波受信してるな・・・
ちなみに補足しておくが俺は風なんてものは全く信じていない、レキはいわゆる不思議系か電波系で風という何かを受信してると思い込んでいる中二病的な痛い子だと思っているのだ。
だからこそ直接指摘するのはやめてあげよう・・・これはいずれ自分で恥ずかしいと気づいて黒歴史として封印する以外に治療法はないんだから・・・だから今は遠まわしに指摘してあげよう・・・
「いつも風に従ってばかりだな・・・嫌になったりしないのか?」
「?」
レキは意味がわからないといった感じで小首をかしげて聞いてきた・・・
ほんとこの辺不思議なやつだよな・・・
「だって正体もわからない何かに自分の意志なんかおかまいなしに命令されるなんて、お前それでいいのか?俺だったらそんなのお断りだぞ」
そう聞くとレキは――
「――私は一発の銃弾、銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない。」
これはレキがいつも狙撃の際に唱えているまじないだ。
「・・・銃弾のようにただ目的に向かって飛ぶだけかのようにただ何も考えずに従うってわけか」
電波系も不思議系もここまでくれば立派なもんだ個性として売りにできるよ・・・
もうこのままでも大丈夫な気もしてくるくらいだ・・・
けど・・・なんか放っておけないんだよな・・・
「まあ、風に従うのもほどほどにしておけよ」
そう言って俺はレキの頭をポンポンと撫でた
「・・・あなたは他の女性にも同じことをするんですか?」
「え?そういえばこんなことするのはレキくらいだな・・・もしかして嫌だったか?」
「いえ、そういうわけではありません。ただ・・・不快ではありませんが何か不思議な気分です・・・」
「ああ、そうか・・・」
レキは変わらず無表情だがわずかに顔を俯かせて・・・なんだろう・・・不意に、可愛いと思えてしまった。
「?氷牙さん、あれは?」
レキの声に氷牙は正面のビル屋上を見た。
「ん?あれは――」
そしてほぼ同じタイミングでキンジもふと上を見上げていた
「ん?あれは…」
第1女子寮の屋上の縁に武偵高の制服姿をした女の子がいた。
長いピンクのツインテールをなびかせながら、彼女はその場に佇んでいた。
なんだ、あいつ何しようとしてんだ?
そう疑問に思った――
瞬間、その子は勢いよく飛び降りた
普通、空から女の子が降ってくるなんてありえない。
そう・・・普通は・・・
だが――いや・・・もう言わなくてもわかるだろう・・・
そして女の子はパラグライダーを展開してゆっくりとこちらに向かってくる。
「さっさと頭を下げなさい!!」
「うお!!」
キンジは咄嗟に頭を下げる。
その瞬間少女は二丁拳銃による射撃で、セグウェイを破壊した。
それを傍観していた氷牙は驚いた。
「やるなぁ!あの子何者――」
突如氷牙に頭痛が走った
あの子が何者かだって?そんなの知っていルジャナイカダッテアノコハ―――
「っく!はぁっ!」
俺は頭を振って頭痛をごまかす。
「氷牙さん!?」
「なんだ今のは・・・いや―――」
氷牙は少女を見つめ言った。
「そうか・・・あの子は―――」
「氷牙さん?大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ心配するな」
そうしているうちにキンジは少女に救助され自転車はある程度自走したあと転倒し爆発し、ふたりは・・・体育倉庫に突っ込んだ・・・
「って何してんだか・・・まあキンジは大丈夫として・・・あの子も・・・武偵なんだから大丈夫だろう、レキ、急ごう始業式に遅れ―――」
不意に一つ心配事が残った。
体育倉庫・・・いや・・・まさか・・・
「レキ・・・あの子がキンジに傷物にされていないか心配だ・・・ちょっと様子を――ん?」
レキが遠くを見ている
「どうした?」
「何か来ます」
レキの視線の先を見ると遠方からこっちに向かっている集団を見て氷河はさらに驚愕した
あれは―――
「おいおい・・・マジかよ!」