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唱和が終わり俺達が困惑している中、ジャンヌは構わず言葉をつづけた
「初顔の者もいるので序言しておこう。かつて我々には、諸国の闇に自分達を秘しつつ、各々の武術・知略を伝承し、求める物を巡り、奪い合って来た。イ・ウーの隆盛と共にその争いは休止されたが・・・・・・イ・ウーの崩壊と共に、今また、砲火を開こうとしている」
イ・ウー・・・まさかまたその名を聞く事になるとはな・・・こいつもそれ絡みってわけかよ・・・
そう思っていると
「皆さん、あの戦乱の時代に戻らない道は無いのですか」
と白い法衣に身を包んだ大剣を背負ったシスターが前に出て全員に語りかけた
「バチカンはイ・ウーを必要悪として許容しておりました。高い戦力を有しているからこそ誰もがイ・ウーを敵にすることを恐れて手が出せず。結果として、長きに渡る休戦が実現できたのです。その尊い平和を保ちたいと思いませんか」
シスターはそう言って、胸の前で十字架を握りしめた
だが、
「できるわけねえだろメーヤ、この偽善者が」
逆卍、ナチス軍の紋章の付いた眼帯を付けた黒いローブを着た少女が吐き捨てた
「おめェら、ちっとも休戦してなかったろーが。デュッセルドルフじゃアタシの使い魔を襲いやがった癖に。平和だァ?どの口でほざきやがる」
「黙りなさいカツェ=グラッセ。この汚らわしい不快害虫」
カツェと呼ばれたチビ魔女の言葉にあのシスター、メーヤは先ほどとはガラリと変わったドスのきいた口調でまくし立てた
「お前達魔性の者共は別です。存在そのものが地上の害悪。殲滅し、絶滅させる事に何のためらいもありません。生存させておく理由が、聖書のどこにも見当たりません。祭日に聖火で黒焼きにし、屍を八つ折にして、それを別々の川に流す予定を立ててやっているのですから―――ありがとうと良いなさい、ありがとうと。ほら、言いなさい!ありがとうと!ありがとうと!」
さっきとは打って変わって・・・もはや金一さんとカナみたいな2重人格のレベルだ・・・
「ぎゃははは!おうよ、戦争だ!待ちに待ったお前らとの戦争だ!こんな絶好のチャンスを逃せるかってんだ!なあヒルダ!!」
だがカツェは物怖じ一つせずに笑いながら別の女、金髪ツインテールに漆黒のゴシックローリタ調の服、背中には蝙蝠のような翼を生やした少女に共感を求めた
「そうね、私も戦争、大好きよ。いい血が飲み放題になるし」
そう告げるヒルダと呼ばれた少女の太股には白い目玉の刺青模様が見えた。あれは・・・間違いない・・・ブラドと同じ・・・魔臓の目印だ・・・彼女もまたブラドと同じ吸血鬼か・・・
「ヒルダ・・・・・・一度首を落としてやったのに、あなたもしぶといですすね」
「首を落としたくらいで竜悴公姫が死ぬとでも?相変わらずバチカンはおめでたいわね。お父様が話して下さった何百年前も昔の様子と、何も変わらない」
竜悴公姫・・・やっぱりか・・・あいつブラドの娘だな・・・ま、確かに首落しただけじゃ死なないだろうな・・・お前等殺すなら魔臓全部潰してから心臓と頭潰さなきゃな・・・
後分かったことが一つあるがカツェとヒルダはメーヤに対して凄く仲が悪いようだ・・・
そして先程の中国民族衣装を着込んだ細目の男が前に出て
「和平、とおっしゃりましたがメーヤさん、それは非現実的と言う物でしょう。元々我々には長江のように永きに亙り、黄河のように入り組んだ因縁や同盟のよしみがあったのですから。ねえ」
そう言って、見上げた先にいるレキやその下にいる氷牙を、細い目で睨みつけた。
「はぁ?何が因縁だよ?そっちが売ってきたケンカだろうが!何なら今ここでその因縁にケリ付けてもいいんだぞ!?」
男の言葉を受けて藍幇にはレキの事で恨みしかない氷牙は喧嘩腰でくってかかったが
「よせ九狂、私怨があるのは分かるが今は抑えろ」
ジャンヌが再び口を開いた
「私も、できれば戦いたくはない。しかし、いつかはこの時が来る事は前から判っていた。シャーロックの薨去と共にイ・ウーが崩壊し、我々が再び乱世に陥る事はな。だからこの『宣戦会議』の開催も、彼が存命の内に取りきめられていた。大使達よ、我々は戦いを避けられない。我々は、そう言う風にできているのだ」
・・・戦いたくないね・・・どの口が言ってんだか・・・
「では、古の作法に則り、まず3つの協定を復唱する。
第1項、いつ何時、誰が誰に挑戦する事も許される。戦いは決闘に準ずるものとするが、不意打ち、闇討ち、密偵、奇術の使用、侮辱は許される。
第2項、際限無き殺戮を避けるため、決闘に値せぬ雑兵の戦用を禁じる。これは第1項より優先する。
第3項、戦いは主に『師団』と『眷属』の双方の連盟に別れて行う。この往古の盟名は歴代の烈士達を敬う上、永代改めぬものとする。またどちらに所属するかはこの場の宣言にて決めてもらうが無所属・黙秘・宣言後の鞍替えも許される。ただしその場合それに応じた扱いを受けることも心得よ」
ああ・・・つまりは二つに分かれたら代表者だけを出し合ってのルール無用、何でもありの戦いをしろってことかよ・・・
そうだとわかると俺は・・・
「続けて、連盟の宣言を募るが、まず私達イ・ウー研鑽派残党は『師団』となる事を宣言させてもらう。バチカンの聖女メーヤは『師団』。魔女連隊のカツェ=グラッセ、それと竜悴公姫・ヒルダは『眷属』。よもや鞍替えは無いな?」
そして3人は間違い無いと言うかのように頷いた
「イ・ウー主戦派は『眷属』ぢゃ。あー・・・・・・お前はどうするんぢゃ、カナ?」
「創世記41章11、『同じ夜に私達はそれぞれ夢を見たが、そのどちらにも意味が隠されていた』。私は個人でここに来たけど、そうね『無所属』とさせてもらうわ」
「玉藻は?」
「儂は今回、『師団』じゃ」
玉藻と呼ばれた狐耳の幼女はそう言った
「リバティー・メイソンは『無所属』だ。暫くは様子を見させてもらう」
次にコートを着た優男はそう言った
「LOO・・・」
3メートル近い身の丈に全身から武装を突き出した歩行戦車のような人物はLOOとしか言わないため『黙秘』とみなされた
「ハビ・・・『眷属』・・・なる!!」
額から2本の角を生やしたトラジマ模様の毛皮を着た10歳くらいの少女は自身の数倍はあろうかと言う巨大な斧を片手で軽々と操りながらそう叫んだ。あいつも人間じゃねえな・・・
「・・・魔剣教団・・・『眷属』に所属する・・・」
顔はフードを被り分からなかったが精緻な装飾が入った真っ白な司祭のような服を着た男がそう宣言した
「ウルスは『師団』につく事を代理宣言させてもらいます、ただし私個人はバスカービルの一員でウルスのとは別の立場の人間になりますが、私が大使代理となる事は既にウルスの許諾を得ています」
レキは風車の上に座ったまま静かな声でそう宣言した
「藍幇大使、諸葛静幻が宣言しましょう。私達は『眷属』。ウルスの蕾姫とその主人には、先日ビジネスを阻害された借りがありますからね」
中国民族衣装を着込んだ細目の男、諸葛静幻はそう宣言した
そしてジャンヌが周りの連中に『師団』か『眷属』どちらの所属かを問いただす中
「九狂、お前はイ・ウー研鑽派かイ・ウー主戦派どちらにつくのだ?」
何故か氷牙にだけは違う2択を問いただした
「・・・・・・・・・・・・」
だが氷牙は腕を組んで風車に寄り掛かったまま顔を俯かせて何も言わない
「おい九狂?聞いているのか?まさか『黙秘』だとでも言うつもりか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・おい?氷牙?」
キンジが顔を覗き込むと氷牙は・・・
「Zzzzzzzzzzz・・・・」
立ったまま爆睡していた・・・
先程の協定を聞いたあたりから氷牙は付き合い切れずに寝ることにしたのだ
「ね・・・寝てやがる・・・」
お前・・・この状況でよく居眠りなんてできるな・・・その図太すぎる精神と根性、分けてほしいよ・・・
「・・・遠山・・・叩き起こせ・・・」
ジャンヌに呆れながらもそう言われるとキンジは氷牙の肩をゆすり起こそうとした
「おい氷牙!起きろ!」
そしたら氷牙も目をうっすらと開け
「んあ?もう終わったのか?じゃあ帰るか」
「何も終わってねえよ!周りの状況見ろ!寝てる場合じゃないだろ!!」
そう聞くとまだ会議の途中であるとわかると
「・・・断る・・・付き合ってられるか・・・終わるまで起こすな、もしくは今すぐ帰らせろ」
と言うと氷牙は再び目を閉じて眠りについた
「だから寝るな!頼むから真面目にやれ!今はふざけてる場合じゃないだろ!!」
キンジが必死に呼び起こそうとすると氷牙はあからさまに機嫌が悪そうな顔をして
「・・・レキが目覚めのキスしてくれるなら起きる・・・」
と、何と言おうと起きる気が無いことを主張した
キンジは頭を抱えると
「レキ・・・俺には無理だ・・・頼む・・・」
匙を投げてレキに押し付けた
「・・・・・・・・・・・・」
するとレキも立ち上がりワイヤーで風車から降りてきて
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
氷牙と向き合うと・・・
――ポカッ――
ドラグノフの銃床とキスをさせた・・・
「痛い・・・」
そして氷牙も文句を言いながらも目を開けた
「相手にしたくない気持ちは分かりますが今はそうも言ってられない状況です。ちゃんと起きていてください」
「・・・ハァ・・・メンドクサイ・・・」
本音を漏らしながらも渋々言うことに従おうとしたら
「それと・・・」
「ん?それと?な――!?」
レキは背伸びをして氷牙にキスをして離れると
「して欲しいなら毎朝でもしてあげます・・・」
とだけ言って顔を赤くしながら目を逸らした
「あ・・・うん・・・」
この反撃には氷牙も耐えられなかったようで照れくさそうに頭を掻いた
そんな二人を見て・・・
「おい、二人共・・・人の恋路を邪魔するのは忍びないが今はこちらの質問に答えてくれないか・・・」
ジャンヌも額に青筋を浮かべてデュランダルを握る手に力を込めてゆく
「・・・この数百年、幾多の戦役を見届けてきたが・・・宣戦会議で居眠りをかました挙句に女と惚気る奴など・・・あやつが初めてじゃ・・・」
「本当に・・・君はいつだって君の思うがままだね・・・」
玉藻とその後ろにいたあの少女も呆れてものが言えなかった
その他の連中もほとんどが呆れてものが言えないか、初めから無視しているかのどちらかで何も言ってこなかった
そして当の氷牙は
「あー、はいはい。で?俺に何を聞きたいの?」
ジャンヌに先ほどの質問をもう一度聞いた、どうやら本当に聞いていなかったようだ・・・
「まったく・・・では改めて聞くぞ?九狂、お前はイ・ウー研鑽派かイ・ウー主戦派どちらにつくのだ?」
その質問を今度は真面目に聞いた氷牙は
「・・・質問の意図が分からねえな?なんで俺に聞く?てかなんでその2択だ?」
答える前に疑問に思うことを問いただした
「お前もかつてはイ・ウーのナンバー2だろう?」
数時間だけのな・・・そもそも・・・
「何言ってんだお前?ナンバー2だったのは傭兵マッド・ファングだろ。そしてマッド・ファングはイ・ウー壊滅の際にシャーロックと刺し違えて死んだはずだろ?」
そう言うとジャンヌはため息をついて
「・・・そうだったな・・・ならばなぜお前個人に聞いたのか説明しよう・・・まずお前が悪魔の末裔だというのはすでに知れている。それも相当上位の悪魔のな・・・そしてその魔族の血を濃く継ぎウルスの璃巫女と契約までしているお前は世界で唯一、璃璃色金の影響を受けない超能力者だ。はっきり言ってこの場にお前を警戒していない者などいない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言われて周りを見れば・・・確かに皆俺に視線を集中させていた・・・俺がどちらにつくのかと警戒していたのだ
「分かったなら改めて聞き直そう・・・九狂氷牙は『師団』か『眷属』どちらにつくのだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ・・・」
今度は俺がため息をつき
「・・・どっちにもつかねえよ。俺は『バスカービル』の遊撃手だ。いつだろうと『バスカービル』につくに決まってんだろ」
そう答えるとジャンヌは「そうか・・・」といった顔をすると今度はキンジを見て
「・・・ならば遠山、『バスカービル』はどっちにつくのだ?」
「な、何で俺に振るんだよ、ジャンヌ?」
「お前が『バスカービル』リーダーだろう。この宣戦会議にはお前達の連盟宣言が不可欠だ。お前達はシャーロックを倒し、イ・ウーを壊滅させ、私達を再び戦わせる口火を切った張本人なのだからな」
「あれはほとんど成り行きみたいなもんじゃねーか!大体最終的に倒したっつーか刺し違えたのは氷牙だぞ!?」
「成り行きであろうがどうであろうが、遠山、九狂、お前たちはやったのだ。やったならその責任をとれ。男だろう」
とジャンヌは有無を言わせぬ口調で言った
だが・・・
「くだらねえな・・・」
氷牙のその一言でそれは崩れた
「何?」
「さっきから聞いてりゃくだらねえ・・・何が次へと進む為にだよ・・・要はお前等猿山のボス猿がいなくなったから自由になった隙にやりたいようにケンカしたいだけじゃねえか・・・」
「なっ!?お前、この闘争そのものを侮辱する気か!?そんな低能な争いと一緒にするな!!」
「何が違うんだ?お前らその気になればいつだって戦えたんだろ?でもシャーロックがいたから戦えなかった、シャーロックに屈してたってことじゃねえかよ」
そう言うと周りの連中が氷牙に視線を向ける
中には今すぐにでも殺しにかかろかうと殺意を向けている者さえいた
だが氷牙はそんな状況でも構わず言葉を発し続ける
「大体責任とれっていうけどよ?イ・ウーを潰したのが俺達なら、その俺達を巻き込んだのはイ・ウー研鑽派、つまりジャンヌ、お前だってこと忘れてねえよな?」
「そ、それは・・・」
「ならジャンヌ?お前は俺達を巻き込んだ責任をどう取る気か聞かせてもらえるよな?まさかとは思うが『私は女だから』なんてくだらない理由で責任逃れなんてしないよな?」
そう正論を言われてしまうとジャンヌは返す言葉が出ずにたじろいだ
「自分の責任も取れないくせに何が責任とれだよ、自分勝手なこと抜かしてんじゃねえよ」
そういうと氷牙は踵を返した
「待て!どこに行く気だ!?」
「帰る、こんな茶番付き合ってられるか・・・」
そう聞いてキンジは氷牙の意図を理解した
成程・・・氷牙の奴・・・上手い事に責任転換して逃げるつもりか・・・けどよ・・・
「ホラ、キンジ、レキ、帰る―――」
「『師団』だ・・・」
「・・・あ?」
「バスカービルは・・・『師団』につく」
そうキンジは連盟宣言をした
「なっ!?お前、なに言ってやがる!?こんな茶番付き合う義理なんかないんだぞ!?」
「それでもだ・・・成り行きだろうがこうなった原因が俺達なら自分のケツくらいは拭くさ・・・」
「ふざけんな!お前はそれでいいかもしれねえさ!けどお前の勝手なエゴで俺達を巻き込むんじゃねえ!!」
「氷牙、黙れ!バスカービルのリーダーとして命じる!口を閉じろ!!」
「――――ッ!!」
「リーダーの名において宣言する!バスカービルはこの戦いに参加する!どんなことになろうとも俺が責任を取る!!もしも本当に取り返しのつかないことになった時は・・・俺を追放するも殺すも好きにしてくれて構わない!!それに・・・お前だって本当は分かってんだろ・・・どうあがこうと、もう逃げられない事なんてよ・・・」
・・・そんな事分かってる・・・たとえ無関係と言い張り続けてもあいつ等は俺達を逃がす気なんかない・・・無理やりにでも巻き込むだろう・・・それこそ・・・ココ達のようにな・・・
「・・・クソッ!・・・わかったよ・・・だが最後のこれだけは言うぞ、お前らがどこでどう争おうが勝手だ、猿山奪い合うなり勝手にやれ!だがな・・・俺の大切なものに手を出したら・・・誰だろうと容赦しねえぞ!!!」
そう言って氷牙は下がり口を閉ざした
「・・・話を戻すぞ、それで?バスカービルは『師団』でいいんだな?」
「ああ・・・バスカービルは『師団』だ。先日やり合ったばかりの藍幇やブラドの娘とじゃ共同戦線なんて張れないだろうし、ジャンヌやレキ・・・ウルスもいるからな・・・」
「なら私も『師団』につくよ。君たちの力になる。そのために私はここにいるんだから・・・」
桜色の髪の少女はそう宣言した
「・・・・・・・・・・・・・」
氷牙は少女を睨んだまま何も言わないが・・・
「安心して・・・今日は君とも話をしに来たんだ・・・逃げたりしないよ」
「あと残っているのは・・・お前だけだぞ?」
ジャンヌがそう言うと
「ケッ。くだらねェ」
再びそんな声が聞こえ
「おい氷牙!黙れって言っただろう!」
キンジは氷牙に怒鳴ったが
「俺じゃねえよ・・・あいつだ・・・」
そう言われ氷牙の目線の先を見れば
風車の上に顔中にフェイスペインティングを施し、ピエロのような派手な装いの男が立っていた。
そして男は手にしていた音楽プレーヤーを投げ捨て
「強ェ奴が集まるかと思って来てみりゃ、要は使いっ走りの集いって訳かよ。無駄足だったぜ」
と吐き捨てると
「おっ?気が合うな、お前も『付き合ってられねぇ帰りたい』ってクチか?」
氷牙も投げ捨てたプレーヤーをキャッチしながら共感した
「ああ、こんなつまらねえ集いのおかげで萎えっちまった、俺も眠たくて仕方がねえぜ」
「GⅢ。ここに集うのは確かに大使。使者として派遣された者達だ。確かにお前の望むような者達でない事は認めるが、良いのか、このままではお前は『無所属』と言う事になるぞ」
「関係ねえなァ」
GⅢはジャンヌの忠告に見向きすらせずに答えた
「私達は同じ物を求め、奪い合う限り、いずれ戦う事になる。その際『師団』か『眷属』についておけば、敵の数が減る事になるのだぞ?」
「敵だァ? 笑わせるな。今日はテメェ等の周りに強そうなのが出て来てるみてェだから様子見に来ただけだ。良いか、次は一番強ェ奴を連れて来い。そいつを全殺しにしてやる」
そう言うとGⅢは徐々に透明になり消えていこうとしたが
「おい?GⅢだっけか?ちょっと待てよ?」
氷牙に呼び止められこちらを振り返った
「この柔らかくも広い音程・・・これってもしかして音源レコードか?」
と先ほどGⅢが投げ捨てて行ったプレーヤーを聴きながら呼びかけた
だからお前・・・頼むから少しは空気読んでくれ・・・そんな質問してる状況じゃねえだろ・・・
「ほお?分かんのか?」
「ああ、もしよかったら今度貸してくれよ?」
「ハッ、ならちょうど聞き飽きたところだ、そのプレーヤーごとくれてやるよ」
そう言い残すとGⅢは今度こそ消えていった
GⅢ、なんだかアイツとは気が合いそうだ
それが分かったのが今日せめてもの収穫だな
そして全員が宣言を終えるとヒルダがジャンヌに問いかけた
「これで全員済んだみたいね。そうよね、ジャンヌ?」
「・・・・・・その通りだ。最後に、この闘争は宣戦会議の地域名を元に名付ける慣習に従い、『極東戦役』――FEWと呼ぶ事を定める。各位の参加に感謝と、武運の祈りを・・・・・・」
「じゃあ、いいのね?」
「・・・もう、か?」
「別にいいでしょ、もう始まったんだから」
「ぎゃははは! 開戦だ!派手にやるぜ!!」
「・・・本当に戦う事しか頭にない・・・哀れで害悪な者共ですね!」
何かを企んでいるヒルダと賛同するように歓喜するカツェ、その二人を憐れむように見下すメーヤと警戒しデュランダルに氷を纏わせて構えるジャンヌ
そいつ等にただならぬ悪寒を感じた二人は・・・
「おいキンジ・・・早速大喧嘩が始まりそうだぞ・・・しかもヒルダとジャンヌはこっちを見てやがるしカナさんやLOOとかいうデカブツもいつの間にか武器構えてやがる・・・なんとかしろよ・・・お前がケツ持つんだろ?・・・自分の発言には責任持てよ・・・」
「・・・三つ巴戦になる場合は敵同士だけで戦わせ合うのが一番だ・・・ここは逃げるぞ・・・逃げ切ったら俺の部屋で落ち合おう・・・」
「・・・結局逃げるのかよ・・・どうせなら「俺が殿を務める」くらい言えよな・・・」
すぐさま逃げる打ち合わせをした
そして・・・
「血を見なかった宣戦会議なんか、過去、無かったと言うし・・・ねぇ?」
ヒルダがそう言ってキバを見せて笑った瞬間、
ジャンヌは慌てて短縮マバタキ信号をキンジ達に送った。「逃げろ」と。言われなくても逃げるよ!
そしてヒルダが影の中に沈むと
「遠山、九狂、逃げろ! 30秒は縛る!」
ジャンヌがデュランダルを抜き放って氷魔法を展開すると影に投げつけて突き立て、影は動きを止めた。
どうやら縫い付けたようだ。
この隙にキンジは一目散に走りだし、氷牙もレキを抱えるとそのままキンジとは別方向に走り出した
そしてこれが・・・次なる波乱――『極東戦役』の幕開けとなった・・・