「この・・・・・・大馬鹿野郎が!!!!!!!!!!!!」
そう叫びながら氷牙はキンジを思いきり殴り飛ばし
「グガッ!?」
キンジは吹っ飛んでリビングのソファーとテーブルも巻き込みテーブルに乗っていた大量の酒瓶を周りに飛び散らせながら壁に叩きつけられた
「何でアリアが巻き込まれてるんだ!!お前が傍に居ながら何やってんだ!!お前が責任とるんじゃなかったのかよ!!」
氷牙は激怒してキンジを罵倒しているがそれも当然だった
あの後氷牙はレキを連れて空き地島を脱出し連中から逃げ切った
だがキンジの方はそうもいかなかったのだ・・・
氷牙とレキがキンジの部屋につくとなぜかリビングにはキンジの他にジャンヌ、狐耳の少女、玉藻そして大剣を背負ったシスター、メーヤがいて・・・
寝室を見ればべッドの上にはアリアがぐったりとして横たわっていた
それを見て俺は何があったかを問いただすとキンジの傍にいたあの狐耳の少女、玉藻が順を追って説明してくれた
逃げようとした矢先にこっそりキンジの後を付けていたアリアが闘争に巻き込まれその際にアリアはヒルダに体内にある緋弾、緋緋色金。その緋弾を封印し制御する殻金七星と呼ばれる殻金が破られて抜き取られてしまい、そのせいで緋弾を押さえていた封印が綻び始めて、このままではアリアは緋緋神と呼ばれる闘争心と恋心を荒ぶらす祟り神になってしまうと言うのだ・・・
そして万が一そうなった時は・・・取り返しがつかなくなる前にアリアを殺すしかない・・・
そう玉藻から聞いた直後、氷牙はブチ切れてキンジを殴り飛ばしたのだ
そしてキンジを一発殴り飛ばしても氷牙の怒りは一向に収まらずキンジにつかみかかろうとしたが
「よせ!落ち着くんだ九狂!」
「よさんか!遠山を責めたところで何も解決せぬ!!」
「ダメです!九狂さん!!」
「氷牙さん!落ち着いてください!」
後ろからはジャンヌ、左右からは玉藻とメーヤが、そして前からはレキが俺を押さえつけていた
「落ち着けるか!今度はアリアが巻き込まれたんだぞ!!アリアが死ぬかもしれないんだぞ!!」
「だから落ち着かんか!!誰も今すぐとは言っておらん!!」
「あ!?」
「幸いにも抜き取られた7つのうち2つはその場で取り戻してアリアに戻す事ができた!そのおかげで最低限の封印は保っておる!!今日明日にも緋緋神にはなったりはせぬ!!」
「・・・てことは一時しのぎはしているが危ういことに変わりはないじゃねえか・・・今日明日じゃなくてもいつかはなるんだろ!?いつだ!?止めるにはどうすればいい!?」
「・・・確かにこのままでは一時的に時間の引き延ばしただけに過ぎん・・・持って数年というところじゃ・・・再び封印を施すには7つの殻金全てをアリアの体内に戻さなくてはならんが、奪われた残り5つは『眷属』の連中にバラバラに持ち逃げされてしもうた・・・」
「・・・持って行ったのはどいつか分かってるのか?」
「持って行った奴は分かっとる、ヒルダ、諸葛、バビ、カツェ、パトラの5人じゃ」
「・・・あいつ等か・・・諸葛は中国として・・・他の奴らは何処にいる!?」
「残念じゃが詳しくは分からん・・・そもそも聞いてどうする気じゃ?」
玉藻が尋ねると
「決まってんだろ・・・取り返しに行く!まずは中国だ!!2度もこんなふざけだ真似してくれた礼もしてやる!!」
と今すぐにでも殴り込みに行くと叫んだ
「止めんか!!藍幇だけにしてもお主一人で行くなど自殺行為じゃ!!それにお主はこの戦役において自分がどれだけ大きな存在か分かっておらん!!もしお主がそんなことをすれば他の眷属の連中が黙っておらんぞ!!」
「だから何だ!!アリアがやられたんだぞ!!なのに黙ってられるほど俺は甘くないぞ!!」
「・・・・・・・・・分かってるよ・・・お前は仲間がやられて黙ってるような奴じゃない・・・それこそ・・・見境が無くなるくらいにブチ切れるほどにな・・・」
キンジはふらふらと立ち上がり
「だから・・・落とし前は俺が付ける・・・氷牙・・・1年・・いや半年でいい、俺に時間をくれ・・・」
「何?」
「半年でアリアの殻金を取り返す!絶対に全て取り返す!!だから半年でいい、その殴り込み・・・待ってくれないか?」
そう言ってキンジが氷牙を止めようとすると
「・・・九狂、私からも頼む・・・」
ずっと無言だったジャンヌも共に頼み込んできた
そしてジャンヌは氷牙の前に立つと・・・
その場で正座して両手と頭を地面につけ土下座した
「お、おい?ジャンヌ!?」
「・・・何の真似だ?」
「まずは謝罪させてくれ、アリアを守れなかった事を・・・そしてお前たちを巻き込んだ事を・・・思えば私はお前たちを殺そうとして巻き込んで・・・捕まっても司法取引でのうのうと罪から逃げて・・・なのにお前達には責任をとれと一方的に押し付けて・・・確かに九狂の言う通り・・・自分勝手にもほどがある・・・」
「それで?頭一つ下げたくらいで済まそうってか?もしそうならすぐに頭上げろ、じゃなきゃその頭蹴り上げて今度は天井拝ませるぞ・・・」
そう言うとジャンヌは頭を上げて
「今後、私ジャンヌ・ダルク30世はバスカービルの指揮下に入り極東戦役期間は無償・無条件でバスカービルに絶対服従することを誓う。これは私なりの・・・お前たちを巻き込んだ落とし前だ!」
氷牙に向けてそう宣言した
「お前・・・本気か?自分がなに言ってるのかわかってるのか?」
つまりジャンヌは俺達をこの戦役に巻き込んだ責任として、アリア流で言う、バスカービルの奴隷になると言っているのだ
「無論だ、冗談でこんな事だ言えるわけがないだろう」
「なら俺が今ここで死ねとか『眷属』連中と刺し違えて来いとか言えば従うのか?」
「お前がそう命じるのであればな・・・だから頼む!半年でいい!今は抑えてくれ!!」
「氷牙・・・頼む・・・もし出来なかったら・・・その時は俺もお前と一緒に殴り込みをかける!だから頼む!!俺に時間をくれ!!」
「・・・・・・その言葉・・・二言は無いな?」
「「無い!!」」
キンジもジャンヌも即答すると氷牙は再び口元を歪めて
「いいぜ・・・そう言う事なら待ってやる!ただしその時になれば容赦なくこき使ってやるからな!派手な殴り込みになりそうだ!!今から来年が楽しみで待ちきれねえ!!」
そう嬉しそうに言いながらも氷牙の顔は目は見開き、口元はニィィッと恐怖さえ感じる笑みを浮かべ玄関に向かっていった
「おいどこ行くんだ!?」
「・・・今後は何時何処にいても襲われる危険があるんだろ?眷属の連中が潜伏してるかもしれねえからな・・・この辺りを見回ってくる・・・もしいたら・・・捕まえて締め上げて・・・奴らの居場所聞き出してやる・・・」
「ならば儂も行こう、付き追うぞ」
「・・・好きにしろ・・・レキはここにいろ。狙撃手なら見回るよりもここで見張ってる方が適役だからな・・・」
そう言って氷牙と玉藻は部屋から出て行った
そしてドアが閉まるとキンジとジャンヌは俯き口を閉ざすばかりだが
「・・・氷牙さん・・・本当に素直じゃありませんね・・・」
とレキは苦笑してため息をついた
「「え?」」
「その時になれば・・・つまりその時までは何もしないということです。もしも殻金を全て取り返せずにキンジさんと氷牙さんとジャンヌさんが半年後に殴り込みをかける事になってしまうその時まで・・・」
「「あ・・・」」
てことはあいつ・・・また俺を焚き付けたのか・・・
「キンジさん・・・氷牙さんはキンジさんを信じています・・・だからお願いします。氷牙さんを裏切らないであげてください・・・」
「ああ・・・わかってる・・・」
アリア、ジャンヌ、氷牙、そして・・・俺、この4人の未来は俺に委ねられた・・・
それに・・・氷牙は本気だ・・・もし半年後に殻金を全て取り返せなかったら・・・きっと氷牙は手段を選ばない・・・下手をすれば眷属の奴らを皆殺しにする・・・
(させるかよ・・・お前に殺しなんて・・・それこそ死んでもさせねえぞ・・・)
猶予は半年・・・アリアのためにも氷牙のためにも・・・この半年で必ず全て取り戻す!!
そうキンジは心に固く誓った
一方、部屋を出た氷牙と玉藻は
「九狂の?お主も中々捻くれとるな?」
「あ?何の話だ?」
「あれでおぬしなりに遠山に喝を入れたつもりなのじゃろう?わしにはお見通しじゃ」
と全て分かっていると俺の腹のうちを読み明かしてきた
「チッ・・・バレてたのかよ・・・ま、殴り込むのは本気だがな・・・キンジには黙っとけよ?バカにつけるにはちょうどいい薬だ」
「無論じゃ、あやつにはあれくらいがちょうどええ」
そう言って、かっかっかっと憎たらしいくらいの高笑いをしてる玉藻に
「そういやよ、玉藻?あいつはどうした?」
俺は聞きそびれていたことを聞く事にした
「あいつ?誰の事じゃ?」
「あの時お前の後ろにいた桜髪の女だよ。知らないとは言わせねえぞ?」
「ああ、あやつか、あやつならもう帰りおった。これからの準備もあるそうなのでな」
「なんだよ・・・逃げないって言ったくせに・・・話をしに来たんじゃないのかよ・・・」
「・・・そう言った場合こう言えとあやつから伝言があるわ、「今日はまだ始まったばかりでしょ?すぐに会えるから心配しないで」だそうじゃ」
「すぐに?何考えてんだあいつ・・・」
「分からぬ、あの神姫はどうも感情的に動きよるでな・・・」
「神姫?」
「あやつの事じゃよ、神姫・・・その名のとおり神族の姫、あやつは人と神の間に生まれた神の血を引く者じゃ」
「魔族に続いて神族と来たか・・・ま、悪魔が実在すんなら神も実在するって思うしかないよな・・・」
てか・・・目の前にいるこんなのでも一応神らしいし・・・
「でも待てよ?神と悪魔なんて対照的っていうか敵同士もいいところだろ?なのに・・・なんであいつ俺達の力になるなんて言ってたんだ?それに・・・」
どうして俺に望むような力を与えて、悪魔にして、この世界に転生させたのか?
そう言おうとしたが寸前でやめた。今ここでこいつに話すのはハイリスクになりかねないからだ
「それに?なんじゃ?」
「いや・・・なんでも無い、すぐに会えるからってどうやって会いに来る気かと思ってな・・・」
「それも分からぬ、本人に聞くほかあるまい・・・それと説明しておくが神と悪魔は確かに対照的な関係ではあるが決して相容れぬ存在と言うわけではない、一部では殺し合ったりしておる所もあるが、中には協定を結んでおる所だって存在しておる。わしら神とて一枚岩と言うわけではないのじゃ」
「あんたらも人間と同じようにいろいろ複雑なんだな・・・」
「だからこそ人間が必要なのじゃよ。神と悪魔の間を取り持つ役目としての。お主とあの娘がそのいい例じゃろう?お主の存在こそ人と悪魔が共に生きた証、そしてあの娘は人と神が共に生きた証じゃ」
「人間は神と悪魔を結ぶ架け橋って事か・・・なら人間が入ってない神と悪魔の子も存在するのか?」
「・・・聞いた話では純粋な神と悪魔の子がどこかに存在すると噂で聞いたこともあるが・・・わしも詳しくは知らぬ・・・」
「そうか・・・もしいればこの戦役に巻き込まれてもおかしくないはずだが・・・もしいるならいずれ分かる事か・・・」
「なんにせよあやつは今日のうちにまたお主らに会いに来るはずじゃ、今は待つしかなかろう」
「なら仕方ねえか・・・玉藻、お前はアリアの傍にいてくれ・・・今夜は念のため交代でアリアの見張りをした方がいい、俺は眷属の連中が潜伏してないか念のため見回ってみる」
「いや、それについては安心せい、眷属どもは全員海や空の向こうに引き上げていきおった。それにこのあたり一帯には式神を放っておるから眷属どもがこの島に入ればすぐにわかる、お前たちはゆっくり休んで体力を温存しておくがいい」
「そうか・・・ありがとよ」
「礼は形で示せ、情報料もかねての、ほれ」
そう言って背負った木箱を前に出した
ジャラジャラとなるコインの音・・・それ、賽銭箱か・・・
「ほれ、早う入れろ」
「・・・・・・・・・・・・」
そう言われて自分が悪魔だからか・・・どちらかと言えば神が嫌いな氷牙は・・・
――バチィーン――
玉藻の額に思いっきり500円玉を投げつけてやった
「ぐおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
そして玉藻は額を抑えながら床を転がり500円玉はそのまま賽銭箱へ落ちていった
言っておくがこいつの銭投げは当たるととんでもなく痛い・・・
以前氷牙が銭投げを行った時は・・・10円玉をコンクリートの壁に潜り込ませた事もあった・・・
――ガチャッ――
「・・・?氷牙さん?何があったんですか?」
「あら?玉藻様?そんなところで寝たら汚れますし風邪をひきますよ?」
そしてちょうど部屋から出てきたレキとメーヤが転げまわる玉藻を見て何があったのか尋ねてきた
「ああ、賽銭入れようと思ったら手が滑った」
「嘘をつけ!どう見ても狙ったじゃろうが!この罰当たりが!!」
流石の玉藻も額を押さえながら涙目で怒るが
「っと、そう言えばよ?もう一つ気になってたけどリビングにあったあの大量の酒瓶、ありゃなんだったんだ?」
と玉藻の事など無視して最後に気になったことを尋ねた
「あ、それは私が飲んだ物です。私のような1種超能力者は自分の体を削って力を使うので使用した後は消費した分を補給しないと体がもたないのです。消費する物は人それぞれですが私の場合はアルコールですね」
「ふーん、でも俺やレキは力を使った後は何も補給なんてしてないぞ?」
「悪魔である九狂さんはどちらかと言えば2種超能力者です、私たちのように自分の体を削って魔力の代わりするのではなく魔力そのものを体に有していますから身を削ることが無いので補給する必要もないんです。そしてレキさんは九狂さんから契約によって供給される魔力を使って力を振るっています。こちらも言わずもがなですね」
「なるほどね・・・俺はどこもまでも人外な存在ってわけか・・・ならもう一つ聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「・・・お前達バチカンは魔性の者は存在そのものが地上の害悪なんだよな?なら悪魔の血を引く俺とその契約者のレキも殲滅の対象か?もしそうならば・・・俺は今ここでお前と戦う事になるぞ・・・」
そう言うと氷牙はレキを庇いつつも銃を手にしてレキも空気を察してドラグノフを構えメーヤに向けた
だがメーヤは首を横に振り
「いいえ、私が討つのは魔の血を引く者ではなく魔性の心を持つ者だけです。それに・・・」
「それに?なんだ?」
「九狂さんの人柄を見ればわかります。九狂さんは盟友のためにどんな危機にも臆せず立ち向かう勇姿、そして自らを汚して犠牲にしてでも大切な人を守ろうとする強き信念を持つ方です。たとえその身がどれだけ汚れていようと貴方の心は一点の曇りなく誇り高く輝いています。これを正義の心と呼ばずして何が正義と言えましょう?」
と氷牙を殲滅するどころか称賛の言葉を贈ってきた
「・・・・・・・正義・・・か」
だが氷牙は小さく苦笑しながら武器をしまい警戒を解くと
「・・・こんな血塗れな俺が正義なら・・・一体何が悪なんだろうな?」
そう言って自室の部屋へと帰っていった
主人公にはどちらかと言えばダークヒーローでいてほしい・・・