それでも月に最低2話は頑張りたい・・・
凜香との話が終わり屋上から降りて昇降口に差し掛かると
「あら?氷牙?」
ちょうど登校してきたアリアとレキがいた
アリアも首の傷は絆創膏を貼って隠して登校してきたようだ、まあ強襲科ならあんなの一つや二つあっても誰も気にしないだろうな
「何だアリア、結局登校してきたのか?」
「まあ・・・痕もだいぶ小さくなったし、さすがに次の時間は欠席するわけにはいかないしね・・・」
「氷牙さんはこれから体育館へ行くところですか?」
「ああ・・・さっきまで屋上で話し合いしてたんだ・・・こいつとな・・・」
そう言って曲がり角の死角から凛香が出てくると
「「―――っ!?」」
アリアとレキは同時に目を見開いた
「こんにちわ、今日から転校してきた姫神凛香です」
「あ、アンタまさか!?」
「貴女は・・・どうしてここに!?」
「・・・おいおい・・・レキやキンジもそうだったけど・・・やっぱアリアもこいつを知ってたか・・・」
そう聞くとアリアとレキは頷いて
アリアはブラドの死闘の際に氷牙を止めるのに手を貸してくれたこと、レキはイ・ウーの潜水艦で自分に手当てをしてくれたことを話した
「お前達もこいつに助けられたんだな・・・」
「正確にはあんたのためにあたし達を助けてくれたみたいだけどね・・・それで・・・なんであんたが氷牙と一緒にここにいるの!?」
「・・・それを説明する前に相談があるんだが・・・こいつをバスカービルに加えてくれないか?」
「はぁ!?どういう意味よ!?」
「そのままの意味だよ・・・こいつは衛生科のSランクだ。おまけにレキには敵わないが狙撃の腕も立つ。サポートとしては申し分ないぞ」
「・・・確かに衛生科Sランクを引き込めるのは魅力的だけど今更チームに追加登録は出来ないわよ?」
「わかってる、だからチーム専属の衛生兵として加える」
「契約金は誰が出すのよ?あんた?衛生科ってたとえBランクでも強襲科Sランクの数倍高いのよ?ましてやSランクならさらに十数倍の額は・・・」
「それなら大丈夫だよ。貴方たちが私を迎えてくれるなら私は彼のドレイになる。そうしたら彼のドレイとして無償でバスカービルをサポートさせてもらうよ」
「はぁ!?氷牙のドレイに!?ちょっと氷牙!!どういうことよ!?」
「氷牙さん!?どういう事ですか!?事と次第によっては・・・私は貴方を撃ちます・・・」
そういうとレキはドラグノフを俺に向けた
「一から説明するから銃下ろせ・・・それと誓って浮気とかじゃないから安心しろ・・・」
時を遡ること屋上、
いきなり凛香にドレイにしてくださいと宣言され唖然とした氷牙は
「ええと・・・ちょっと待て・・・それはどっちの意味で言ってるんだ?」
「どっち?どっちていうのは?」
「日本語の奴隷って意味か?それともアリア語のドレイって意味か?って聞いてるんだよ」
ちなみに日本語なら
奴隷=人間としての名誉、権利・自由を認められず、他人の所有物として取り扱われる人
アリア語なら
ドレイ=仲間・友達
になる
「え、ええと・・・そのアリア語って何なのかよくわからないけど・・・日本語の方かな・・・」
「・・・確かに俺、敵なら女だろうが容赦なく殴れるけど・・・そうでもない奴を所有物扱いして束縛して虐めたり辱めたり慰み物にしたりしろってか?」
そういうと凛香は顔を真っ赤にして俯くと
「わ、私もそんな意味で言ったんじゃないけど・・・で、でも君がそれを望むなら別に・・・・・・」
と恥ずかしそうに答えた
「望んでない!そもそもなんで奴隷になりたいなんて血迷ってるとしか思えない事抜かしてるんだ?何度も言うがそれが償いとかって理由ならお断りだぞ。俺はお前に恨みなんか微塵も無い。償う必要なんかどこにも無い」
「奴隷になりたいって言ったのは・・・君の傍にいるにはそれが一番最適かなって思ったからだね・・・私はただ君が幸せに生きることを願っている。そのためなら私は何だってするし、それを君の傍で見届けられるなら私は何でも構わない、例え奴隷でも、友人でも、愛人でも、姉でも、妹でも、部下でも、敵でも、仇でも、他人でも構わない。君に傍にいられるなら私は何でも構わない。君が幸せなら私はそれで構わないんだ」
「・・・なんとも立派なまでの自己犠牲精神だな・・・だったら尚更お断りだ。そんな勝手なエゴで傍にいられても手助けされても迷惑なだけだ。」
てか奴隷にするなんてハナからお断りだ!いや・・・たとえどうあっても俺はこいつを傍に置く訳にはいかない・・・何とか理由を付けて断ろうとすると
「君ならそういうと思ったよ・・・ならこういうのはどう?話が変わるけど君のチーム、医師がいないでしょ?」
何故か凛香は話を変えて俺に尋ねてきた
「・・・まあそうだけど・・・なんでそんなこと聞く?」
「私、衛生科、それもSランク、治療もできるし戦闘もそれなりにできるから戦力になるよ?」
と言って今度は自分をバスカービルに売り込んできた
「・・・お前Sランクかよ・・・てことは戦闘もできるのか?」
安全で清潔な設備の揃った病院で患者を待ち治療する救護武偵とは違い、衛生武偵は怪我人がいればそこが弾丸の飛び交う戦場であろうとこちらから駆けつけ、ありあわせの医療道具で治療し救助して、時には自らも前線に出て戦う事があるため医療知識と共に高い戦闘能力も求められる・・・
凜香は衛生科Sランクというが医療知識の方はともかく戦闘能力はどうなのだろうか?
「自分の身を守るくらいには戦えるよ?そうじゃなきゃ衛生武偵なんて出来ないよ。狙撃だって君の奥さんには敵わないけど腕は立つ方だと思うしね」
「狙撃?ってことはだ・・・ブラドを殺しかけたときに止めてくれたのも・・・」
「うん、私だよ?ちなみに銃はSR-25」
「闇夜で風も強い中で1キロ先から銃弾撃ちか・・・確かに腕は立つみたいだな・・・」
「どう?私をドレイにするってことは超能力も使えて狙撃の腕も立つ衛生科武偵一人、無償で手に入るんだよ?こんないい話2度とないよ?」
確かに俺達のチームには医療の専門家はいない・・・俺や白雪やレキも応急処置や簡単な治療ができる程度の医学はあるがこれからも波乱万丈な闘いの日々が続くのであれば専門知識のある武偵が仲間に欲しい・・・
だがすでにチーム申請は締め切ってしまい、殉職や退任が出るなど欠員が出ない限りは入れ替えたり追加したりは出来ない、かといって外部から雇用となればそれに見合った報酬を払う義務がある・・・しかし衛生武偵は需要が高いためその額はとんでもなく高く気軽に雇える存在ではないので俺達も踏み出せずにいたのだ・・・
なのに凛香はほぼ無期限、それも無償で俺達の専属衛生武偵になってくれるというのだ・・・衛生科Sランクにして弾丸を狙撃できる程の腕なら確かに後方援護としても申し分ない・・・おまけに超能力も使えるという超が3つもつく程の優良物件・・・逃すにはあまりにも惜しすぎる・・・
「それに私、悪魔についても当然詳しいよ。君の体も検診できるし悪魔について知りたいこともがあるなら教えられるよ?」
「う・・・・・・・・・」
凛香は俺の目を見据えたまま次々と自分を引き入れるメリットをアピールして攻め続ける
こいつ・・・交渉術ってもんが分かってやがる・・・断る理由が微塵もない・・・それに・・・
氷牙はため息をつくと
「経験上・・・そういう目をした奴はテコでも絶対に動かないしな・・・」
「え?」
目を見れば分かる・・・強い信念と決意のもとで頼み込んでいるんだ・・・こういう目をした奴は絶対譲らない・・・
「・・・俺にお前をチームに加えられる権限はない。でもアリア達に紹介くらいはしてやる・・・あいつ等がお前を迎え入れるっていうなら俺はもう何も言わないよ」
「―――ッ!!」
そういうと凛香はまた俺に思いきり抱き着いた
「うわっ・・っておい・・・」
「ありがとう!精一杯サポートするから!!」
「分かったから離れろ・・・俺嫁いるんだぞ・・・浮気になっちまうだろ・・・」
「あ、ごめん・・・」
そういうと凛香は残念そうに離れた
「・・・・・・それと水を差すようで悪いがまだ決まったわけじゃないし俺がしてやれるのは紹介までだ。それで駄目ならきっぱり諦めてもらうぞ?何度も言うが俺はお前を奴隷にするなんて絶対お断りなんだからよ」
「うん、じゃあさっそくお願いできる?」
そういうと俺は頷き、二人で屋上を後にした
「てなわけで一階まで下りてお前らと鉢合わせて今に至るわけだ」
「・・・結局あんたが圧し負けてるだけじゃない!!どっちがドレイよ!?」
「弁明の余地もない・・・」
「・・・・・・・・・」
レキはドラグノフこそ肩に戻したが無言で氷牙をジッと見つめ問いかけた
「では浮気ではないんですね?」
「それは誓って―――」
無いと言おうとしたところで
「あら九狂君?姫神さんを学校案内してるの?今朝も出会っていきなり抱きついちゃうくらいなんだからホント仲が良い顔見知りだったのね」
通りかかった高天原先生が最悪なタイミングで最悪に余計な事を仰ってくださった・・・
「「・・・・・・・・・・・・・」」
「・・・抱きついたんですね?」
「ご、ごめんね・・・会えたのが嬉しくてつい・・・」
凛香が謝罪するがレキは氷牙を見据えてやがてこちらに寄ってきた
これ・・・怒ってるよな・・・
「制裁は受ける・・・でも、せめて言い分の一つくらいは聞いてくれな―――ッ!?」
――グィッ――
レキは足元にいたハイマキを踏み台にすると氷牙の首に抱き着き
――ガブッ――
そのまま首に噛みついてきた
「ち、ちょっとレキ!?」
「あ、あの・・・レキ?歯、立って地味に痛いんだが・・・」
もしかしてあれか?レキなりのヤキモチってやつか?マーキングでもしようってか?
「・・・・・・・・・・・(ガブガブ)」
そしてレキは氷牙の首に噛みついたまま凛香を見つめた
その目は「氷牙さんの本妻は私です」と言っていた・・・
「大丈夫だよ。そんな目で見なくても彼を奪う気はないよ、そもそも好かれようなんて初めから考えてないしね」
「・・・・・・・(ガブ)?」
「私はただ彼の傍で彼の力になりたい、そのためならなんだってする。彼が望むことは全て叶えてあげたい。彼が誰かを愛してるなら私はそれを精一杯応援するし祝福する。もしも私を求めるなら私はその全てに応じる。身も心も捧げろと言うなら私は喜んでその全てを捧げる。でもそれが報われようとか彼に振り向いてもらおうって気は無い。私はただ彼が幸せに生きてくれればそれで十分なんだ」
そう言うとレキは氷牙から口を離し
「・・・氷牙さんのために自分さえも犠牲にして・・・なのに貴女には報われようとも好かれようとも思う気は一切無いと。そう言いたいんですか?」
「うん、だからお願い・・・私をあなた達バスカービルの専属衛生武偵にして!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう頼み込まれるとレキは何か考えついた顔をして氷牙から離れるとドラグノフを構え
「氷牙さん、アリアさん・・・凜香さんの実力・・・私に試させてもらえませんか?」
「・・・レキにか?」
「はい、バスカービルの専属武偵になるということはこの先の戦乱に巻き込まれていくという事、生半可な実力では足手まといになるだけです。なので彼女の実力が本物かどうか・・・私に試させてください」
「・・・それは確かにその通りだが・・・でも休み時間もあと10分もないぞ?どうする気だ?続きは放課後に持ち越すのか?」
「すぐに済みます問題ありません」
「レキ?あんた何する気よ?」
アリアがそう聞くとレキは凛香を見て
「簡単です、休み時間が終わるまであと7分、私はこれからあなたを7回襲います。その間に1度でも1分以上私の攻撃から逃げ切れたらあなたを認めます」
成程ね・・・『放し』をやろうってわけか・・・
レキがそう言うと凛香は
「・・・いいよ、受けて立つよ」
と言って右手に銃を左手には幅の広い短剣を取り出した
「H&K USPに・・・それもしかしてマインゴーシュか?」
「うん、銃は当てるのは得意だけど接近戦は守りに徹する方だね」
「でもあんた勝算あるの?確かレキの絶対半径って2051mよね?」
「いいえ、最近2714mまで記録を伸ばしました。もっとも魔弾を使えばその3倍の距離でも射貫いて見せますが安心してください、悪魔の力は使いません。まあそれでもどこに逃げようと私の矢は貴方を射抜きます」
その言葉に流石のアリアも言葉を失った
「ちょっと氷牙!大丈夫なの!?この子に勝算あるの!?」
「・・・俺も凜香の実力が実際どれほどかは分からないけど・・・はっきり言ってレキの狙撃から逃げ切れた奴は・・・この武偵校には一人もいない・・・」
「なら何が何でも私がその一人目になる。君の傍にいるためなら・・・私はどんな障害でも越えてみせるよ!」
そう言って凛香もレキを見据えた。
ダメだ・・・こりゃお互い絶対に譲らないぞ・・・
「仕方ないか・・・アリア、手は出すな。俺達もこの勝負で凛香の実力を見定めるぞ・・・」
「・・・わかったわ・・・」
「・・・それとレキも・・・装填してる弾丸、装甲貫通弾だろ?その弾丸じゃ防弾制服なんて普通の布切れみたいに貫通するから急所には当てるなよ!代わりに寸止めでも服を掠めても当たったことにする!凛香も構わないな?」
そういうとレキと凛香はこくりとうなずき
「・・・決まりですね。では凜香さん、1分後には撃ちますのでどこに逃げるなり隠れるなり好きなようにしてください」
それだけ言うとドラグノフのスコープに凛香を捉えたまま何も言わなくなった
だが凜香は・・・
「ううん?逃げないし隠れないよ。貴方相手ならそんなことしても無駄なことは分かってるしね・・・」
そう言ってレキの前に立ったまま一歩も動こうとしなかった
「ちょっ!?何言ってんのよ!?あんた早く逃げ「アリア!口を出すな!」―――ッ!!」
アリアの呼びかけを氷牙が一喝するとそれを最後に4人は何も言わなくなり・・・
瞬く間に1分が経ち・・・最初の銃撃の時間が来た
そしてレキは
「始めます」
とだけ言って
――バァン――
凛香に向けて発砲した
久しぶりの戦闘入ります