宵月庵バッセSSまとめ   作:宵月ハインド

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同じ原案を元に私とアフロダイB(https://syosetu.org/user/409916/)さんが、
それぞれでSSを書きました。(私の方は後で完成しました)
こちらが先に完成された作品で、一部こちらを意識した内容になっております。
https://syosetu.org/novel/356370/34.html


人違い誘拐事件

ダーザインから《小鳥遊日和見惑星》と呼ばれており、

世界相はT=/M-に該当し、《第三惑星世界》に技術・文化面で類似している世界。

諜報部が政府に持ち掛けてダーザイン支部を設置しているが、

大規模な変異体や界賊案件が発生してなかった事もあり、ダーザインに対し懐疑的な連中が多いのが実情だった。

 

そこで現地ダーザイン支部長およびクリムゾンストーム考案による、

異世界人が存在する事の証明と活動内容の理解、更に資金援助を目的としたパーティーを現地の高級ホテルにて行われる事になった。

 

「それにしてもパーティーかぁ。

 それなら、もう少しそれっぽい恰好でもした方がよかったんじゃ?」

ドットはいかにもなパーティーにも拘らず代理ヒーローとしての普段通りの格好でいる事に戸惑いながらパーティー会場である大広間の扉の前に着いた。

 

「今回は我々が明らかに異世界人である事を証明する事が目的の一つだ。

 あえて、普段通りの恰好である事の方が都合がいい。」

次に到着したゴルドーは珍しく人間態の状態ではあるが、それでも普段通りの恰好だった。

 

「アタシも普段通りだよー。

 前に《オルレアン》ってところでも、その方が良かったみたいだしー。」

「そういえば、アイヴィーさんは別の世界でこういうパーティーに行った事あったんですね!」

普段通りにヘラヘラとするアイヴィーのそばにいるマリィも普段通りだった。

 

「しかし、俺までもここに呼ぶことはないだろう……。」

ヴィクターは変身前の状態で不貞腐れていた。

 

「いいから、さっさと会場に入ろうぜ!

 既に他の部隊が入ってるんだろう?」

最後に現れたワンダースケアが扉を開けた。

 

 

「やぁ、君達が宵月庵か。

 これでようやくバースセイバーは揃ったみたいだね?」

白いスーツに身を包んだ男性が金髪碧眼の男性に声をかけた。

 

「ええ、これでバースセイバーの出席者は"全員"揃いました。」

声をかけられた男性、ヴィクトールは宵月庵の面々を確認しながら全員を壇上に集まるよう促していた。

 

「マリィ、今ヴィクトールと話していた男が例の支部長だ。」

「はい、わかりました。」

ゴルドーはマリィに耳打ちしながら宵月庵の面々を率先して誘導した。

 

 

 

「本日はお招きいただきありがとうございます。

 このような盛大な場を設けて頂き心より御礼を申し上げます。」

海賊風のジャケットの下に巫女の恰好をしているクリムゾンストームのユカリが挨拶すると同時に、

他の面々がそれぞれ頭を下げたり棒立ちする中、先程の白服の男性が前に出てきた。

 

「どうも、この度彼ら"バースセイバー"をまとめる組織、

 "ダーザイン"の支部を任される事になった九条玲司(くじょうれいじ)と申します。

 ダーザインそのものについては以前、説明させていただきましたが、

 今回は実際に働いている者達をこの場に招待させていただきましたので、

 ぜひ歓談を通して、その実態を知って頂きたいと思います。」

九条玲司と名乗った男性はバースセイバーの面々を紹介しながら、この場での目的を語っていた。

 

 

ユカリ、そして九条玲司の挨拶の後、

パーティー開始となり、全員が思い思いに過ごしていた。

 

「にしても、宵月庵のゴルドー様とマリィ様はずっと九条玲司に付きっ切りですね。」

ユカリはゴルドーとマリィが九条玲司のそばにいる事に気付いた。

 

「そうか、君は知らなかったのだな。」

先程までパーティー客の輪の中にいたヴィクトールがしれっとユカリのそばにいる事に、

当の本人は気にしていなかったが、その発言には耳を傾けていた。

 

「彼、九条玲司は、

 この世界有数の巨大財閥『九条グループ』の次期総裁候補……だった男さ。」

「だった、と言いますと?」

「なんでも、海外リゾート開発での資金隠しをしたとかで、

 致命傷ではないが、現総裁である父親から『後継者としては危うい』と判断されて、

 次期総裁候補の座から転落した。

 同じ頃に政府高官からダーザインをまとめる人脈にツテを求められた際、自分の息子を……。」

「不祥事をしでかした息子にせめてもの挽回のチャンスを与えるのと同時に、

 ここで何かあれば正式に切る、と。」

ユカリは呆れながらも、この世界のダーザイン支部長の事情を概ね理解した。

 

「そして、ゴルドーは隊長から"極秘任務"を受けてきたそうだ。」

「極秘任務……?」

「このパーティーに参加するにあたって、

 宵月庵の隊長は彼について色々と調べていたそうだが、

 支部長に相応しい能力を持っている為、

 なんとしてもその座に座ってもらいたいそうだ。」

「それなら別に」

「ただ、彼の性格上、

 ダーザインの支部長にいる気はなく適当な口実で抜けて、

 別の手段で次期総裁候補の座に返り咲こうと考えてもおかしくない。

 その為にも、彼の人となりを詳しく知るのが一番。

 そう考えたらしい。」

「なるほど、あなたはそれを前もって聞いていたと。」

「ゴルドー本人からね。

 かつて組織の長だった経験もあるし、

 マリィという感情を読み取る力を使って、

 現在の立場に対する心情……心を読んで、

 少しでも人心掌握に繋がる情報を得ようって事らしい。」

「宵月庵の隊長はそれなりのやり手というのは理解できたけど、

 それなら彼もまた現場に来ればよかったのに。」

「まぁ、彼らなりのやり方ってわけだろう。

 我々には《オルレアン》の時と同様の立ち回りを求めているそうだよ。」

「なら、私達もその立ち回りをするべきでしょうね。」

ユカリは視界に愚弟のジェラルドが虫の居所が悪い女性にビンタされているのが見えて呆れつつも、

ヴィクトールから差し出される手をスルーしてパーティー客の元へ向かった。

 

 

「スネよ!不審者の弱点はスネに決まっているの!!」

パーティー客の女の子がワンダースケアのスネに目掛けて執拗に蹴っていた。

「流石、スネ狩りのエリちゃん!

 そこにシビれる、あこがれるゥ!!」

「やめろ、このクソガキ共ォ!!」

ワンダースケアが怒ると女の子と取り巻きの子供達は真っ先に逃げていった。

 

「それにしても、このパーティーは子供が多いねー。」

太刀花双輪華の凛は子供達が群がっているのを少し離れたところで料理を食べながら見ていた。

 

「ハウンドチェンジ……。」

「「「かっけっえええええ!!!」」」

ヴィクターは渋々クリムゾンハウンドの恰好に変身すると、

男児や少年達が群がっていき、注目の的になっていた。

 

「お姉ちゃんもヒーローなの?」

「あ、うん、代理ヒーローなんだけど」

「なんか見た目が安っぽいねー。」

「うっ!?」

ドットは別の子供の辛辣な発言にショックを受け、

 

「やめてーそんなに迫らないで、蹴らないで、むしり取らないでー!」

アフロが残りの子供達から文字通りもみくちゃにされていた。

 

 

「あー凛だ。」

凛が子供に群がられるバースセイバー達を見ていると、アイヴィーがやってきた。

 

「あんたも暇になった感じ?」

「凛は藍達みたいな事しなくていいのー?」

「あたしも先にやったよ。

 でもみーんなお金持ちばかりだってのに、

 どいつもこいつも藍や杏樹ばっかりなんだよ。

 那由多も比較的人気あるっぽいけどさ。」

「そうなんだー。」

「そういう事。」

凛は自分達以外のメンバーに目を向けると、

藍は率先してパーティー客に話しかけ、杏樹は子供を中心に人が集まっており、

那由多は自ら男性のパーティー客に話しかけている様子だった。

アフロは先程の子供達にもみくちゃにされて疲れ果てていた。

 

 

その時、扉がバンと乱暴に開く音が響いた。

その場にいた全員が注目すると、扉を開けたのは少女一人だった。

 

「まったく、道路が混雑して遅れてしまうなんて思いもしなかったわ。」

二つに結んだツインテールの髪をした少女が豪華なドレスを纏って、ずかずかとパーティー会場の真ん中を歩き出した。

「美玲、今回我々は呼ばれた身だが、決して主役でない事を忘れるな。」

そして、父親と思わしき男性も美玲と呼ぶ少女に注意しながら現れた。

 

 

「すまない、玲司君遅くなってしまった。」

「ああ、天城会長、お越しいただきありがとうございます。」

九条玲司と男性が握手していると、

「ご機嫌よう。」

藍が後から現れたパーティ客にも挨拶しようと近づいた途端、

「あら?」

「え?」

美玲と藍はお互いの顔を見合わせて、驚いていた。

 

「これは……。」

「ええ、私も最初見た時は驚きました。」

天城会長と呼ばれた男に九条玲司が追従するように感想を述べていた。

 

そう、藍と美玲は服の違い以外で見分けがつかない程、瓜二つの外見だった。

 

「まさか《オルレアン》の他でもこんな事があるなんてね。」

ユカリはポツリと漏らしていた。

 

「へー。」

「あ、あの……。」

美玲は藍を面白そうな様子で周りながら見て、当の藍は困惑していた。

 

「面白いじゃない。私のコピー?」

と藍に対し、軽口を叩いていた。

 

「美玲!」

天城会長は注意しようとしたが、美玲はどこ吹く風で飲み物を取りにその場を去っていった。

 

「君、うちの娘が申し訳ない事を。」

「いえ、お気になさらず……。」

藍は天城会長の謝罪を気にせず、笑顔で流そうとしていた。

 

「《オルレアン》の件は話に聞いてはいたけど、

 まさかここでも藍とそっくりな子が出てくるなんてね……。

 世界でそっくりな人は3人いるとは聞くけど、世界をまたぐとは。」

凛は一部始終を見ながらぼんやりと呟いていた。

 

「美玲ってやつは、マリーよりもわがままだねー。」

「へーそうなんだ……。」

「ゴルドーが言ってたけど、

 天城ホールディングスってのは、

 九条財閥とは競合関係にある巨大コングロマリットで、

 軍需・宇宙開発・医療・バイオ系に強いんだってさー。

 つまり、美玲はものすごい令嬢ってことなんだよー!」

「へー、それはちょっと興味深いね。」

「それで美玲は、

 自己演出過剰で、パーティーで着替えを複数用意してるし、

 何より『退屈』が嫌いで、

 超が付くほどわがままでかなり有名なんだってさ。」

「……ワンチャン、たかろうと思ったけど、

 それ以前に面倒臭さの方が勝つわね。

 にしても、ゴルドーも良く調べておくものだね。」

「今回の任務に関係ありそうなら、大体調べているみたいだねー。」

「ふーん……ねぇこれあげるからさ、アフロをどかしてくれない?」

一瞬だけ美玲に興味が沸いたがすぐに失せてしまった凛はスマホを取り出しながら、

アイヴィーに自分がまだ手を付けてない料理を渡す代わりにアフロをパーティー会場からどかす様頼んだ。

 

(話題作りの為にこのパーティーに参加したはいいけど、

 みんな私のコピーを始めとした"異世界人"とやらに集まってて、

 気に入らないわね……ちょっとふっかけてやろうかしら。)

美玲は自身への注目度が下がっている事に不満を抱いていたが、悪だくみを浮かべていた。

 

 

「あ、いた。」

美玲はドリンクの入ったグラスを手に藍に近づいた。

 

「あ、どうも。」

藍は美玲に軽く会釈しようとした途端、

美玲はグラスを軽く傾けて、藍に目掛けてドリンクをわざとこぼすはずだった

 

「アフロシュート!」

 

「わああああああああぁあああああああっ!?」

 

アイヴィーの掛け声と同時に何かが転がる音に気付いた藍と美玲が視線を向けた途端、

アイヴィーが蹴ったアフロが2人に目掛けて転がり込んできた。

 

「えっ!?」

 

「うわあああ、藍ちゃんにあたるぅっ!?」

 

アフロは制御不能になりつつある軌道を辛うじてそらす事に成功し、2人への直撃は避けられた。

 

しかし、アフロに呆気にとられた美玲のグラスに入ってたドリンクは、いつの間にか藍がとっさに美玲を庇った際に全部藍の服のシミとなっていた。

 

「ケガはありませんでしたか?」

「ええ、平気だけど……っていけない!?

 いつの間にこんな……シミがひどくなる前にこっちへ!」

「えっ、あのっ!?」

美玲は自分を心配してくれた藍の腕を掴んでそのままどこかへと連れだしていった。

 

ちなみにアフロは那由多がとっさに開けたドアに挟まったが、アイヴィーが追い打ちと言わんばかりにドアの中へ蹴り入れた。

 

 

 

「まさか、このホテルの部屋を取ってあるなんて思いもしませんでした。」

藍は美玲がパーティーに参加する為にわざわざスイートルームを予約していた事に驚きを隠せずにいる中、

「服はとりあえず、ここのクリーニングが何とかしてくれるとして、

 その間に着る服は……これがいいわね。」

美玲は汚れてしまった藍の服の代わりになるものを自分の服からトランクケースから物色していた。

 

「はい、服がきれいになるまでの間、これを着て頂戴。」

美玲が藍に手渡したのは美玲が着ているものに色違いの高級ドレスだった。

 

「いえ、そんな高価な物なんて。」

「お詫びよ。」

美玲は遠慮しようとする藍に有無を言わさずに着せようとする。

 

「わかりました、着ますので。」

藍は渋々ながらドレスに身を包んだ。

 

 

「じゃあ私は先に戻りますので。」

「あら、別にこんなパーティーぐらい少しくらいサボっても」

「いえ、そういうわけには行きませんので。

 ではこのドレスをしばらくお借りします。」

藍は美玲に頭を下げながらスイートルームから出た。

 

(やっと会場の近くまで戻って来れた。)

藍は慣れないホテルの中をエレベーターと階段で右往左往しながら、

ようやくパーティー会場の入り口近くにたどり着いたが、

 

「天城美玲だな。」

 

黒づくめの男達に拳銃を突き付けられていた。

 

「パーティー会場の中央に爆弾を仕掛けた。

 この場で爆発されたくなければ、大人しく我々についていってもらおうか?」

 

「……わかりました。」

藍は手持ちに武器がない事、

そして爆弾によってパーティー会場そのものが人質にされている以上、

犯人達の言葉に従うと視界の中にアフロがいる事に気付いた。

 

「なんだありゃ?」

「よくわからないが、変なオブジェだな。」

幸いにも犯人達はアフロの事をただの"置物"と勘違いしており、そのまま藍を連れ出していった。

 

(なんてことだ……藍ちゃんがまたしても誘拐だって!?)

アフロは子供達にもみくちゃにされ、

アイヴィーに蹴飛ばされた後、そのまま疲れ果てていたが、

藍が誘拐される一部始終をしっかり耳にしていた。

 

 

(とにかく、誰かに伝えなくちゃ!)

誘拐した犯人達の様子から会場の中に仲間がいてもおかしくはない。

アフロは今回、パーティーには客人として迎えられているとはいえ、

今からパーティーの中に入って、誰かに声をかけるのは得策ではない。

このタイミングでパーティー会場から誰かが出てくるのを待つべきかと思った矢先、

 

「派手に蹴飛ばしましたね?」

「いくらあたしのキックでも、流石に伸びているとは考えにくいなー。」

「まぁ、子供達にもみくちゃにされてたから疲れ果ててもおかしくないだろ。」

「それにしても藍ちゃんをあれから見てねぇけど、あのお嬢様に絡まれているんだろか?」

「うーん、ありえるかもしれないね……。」

 

(この声はっ!)

アフロは那由多、アイヴィー、ワンダースケア達が雑談しながら自分を、

そして良平と美咲が藍を探しに来たことに気付いた。

 

「みんな、いいところに!」

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

アフロはすぐさま起き上がって声のする方向へ向かった途端、良平と美咲が真っ先に驚いた。

 

「あれ、どうかしたの?」

「何かあったー?」

そこにドットと凛、

 

「君達、そこで何を騒いでる?」

「何か、あったのでしょうか?」

「……まさかな。」

更に九条玲司、マリィ、そしてゴルドーが現れた。

 

 

パーティー会場の舞台裏になっている物置に場所を移した全員はアフロから藍が誘拐される一部始終を目撃した事を聞いた。

 

「そ、そちらのエージェントが天城美玲に間違われて誘拐だと!?」

「面倒なことになったな。」

九条玲司は困惑している中、ゴルドーは冷静に事態の把握に努めていた。

 

「いや、何を冷静に。」

「安心してください、彼女はダーザインの中でもSランクにいる実力者です。

 むしろ、我々が初動を誤ればそれこそ危ない。

 向こうが天城美玲と間違えられて誘拐されている以上、

 十中八九、身代金による営利誘拐を目的にしているはず。

 それにアフロが聞いた爆弾は無視できないが、

 下手に探すようなそぶりをこのパーティー会場に隠れている誘拐犯の仲間に気付かれてもアウトだ。」

「このパーティーの最中に犯行声明を出せば、

 天城美玲の親だけでなく、

 他のパーティ客に対しては爆弾の件で2重の脅しも出来るってわけか。

 面倒な事をしてくれるぜ。」

ゴルドーが試案を巡らせる中、ワンダースケアも自分の考えを語っていた。

 

「那由多、藍の現在位置は?」

「幸いにも、

 誘拐犯達に発信機は気付かれてないみたいで、

 ここから少し離れた廃ビルにいるみたいです。」

那由多はゴルドーからの質問に対し、携帯端末の画面を確認しながら答えた。

 

「そこが奴らのアジトと見ていいな。」

「本当なら、さっさと突入して藍を救出するのが手っ取り早いが」

「爆弾の事もある、

 下手に突入すれば起爆スイッチを押されるか、

 それを盾に藍と一緒に逃げられるのがオチだ。」

「だよなぁ。」

「以前、藍さんが誘拐されたときはどうなさったんですか?」

ワンダースケアとゴルドーの問答を尻目に、マリィが質問を投げかけた。

 

「あ、そういやゴルドーが支援したんだっけ?」

ドットは後で聞いて知った別世界での藍の誘拐事件で、ゴルドーが通信上でアイヴィー達を支援してた事を思い出した。

 

「あの時は《オルレアン》の人々の注意を引き付ける為に、バンドを……。」

ゴルドーが話しながら、この場に良平と美咲がいる事に気付いて、視線をゆっくりと向けていた。

 

「ま、まさか。」

「や、やっぱり……。」

2人はお互いに顔を見合わせていた。

 

「よし、今回もその作戦は使えそうだな。

 サプライズでのバンド演奏なら、パーティ会場にいる誘拐犯の仲間にも効果は得られる。

 というわけで。」

ゴルドーは迷わず携帯端末を操作すると、

良平と美咲の手元にベースとギターが転送された。

 

「やっぱりそうなるべ。」

「うん、そう……だよね。」

2人はがっくりと肩を落としながらも、楽器をしっかりと握っていた。

 

「ただ、今回の俺は爆弾の捜索と解体、

 とまではいかずとも無力化をしなければならないから、

 そっちまで手が回らない……ワンダースケア。」

「俺様に任せな!

 ここに来てから子供達にウケは良くなかったが、

 俺様のボーカルと"新ワンダーガジェット"によるバックアップでパーティ会場を湧いてみせてやるぜ!!」

ワンダースケアはどこからかマイクを取り出し、那由他に視線を向けていた。

 

「えっ!?」

「ちょうどいい、美咲だけじゃ手が足りねぇ、と思ってた。

 お前にはキーボードをやってもらうぜ!!」

「え、ええっ!?」

那由多はワンダースケアに突然指名されて困惑していた。

「あ、あの、私キーボードなんて。」

「安心しろ、今回俺様が持ち込んだ"新ワンダーガジェット"、

 全自動演奏機能搭載電子ピアノを使わせてやる!

 ただ、演奏してるっぽく、振舞うだけでいい優れモノさ!」

「ええー。」

那由多は更に困惑していた。

 

「それだったら、あたしがやりたいんだけどー。」

「あっ、でしたら」

凛が手を上げると、那由多は譲ろうとしたが、

「凛がやってもいいんだが、

 パーティ客は那由多の方が人気あるっぽいからな。

 那由多が前に出た方が、パーティ客もそっちに集まりやすい。」

ワンダースケアが人選の理由を語っていた。

 

「わ、わかりました……そういう事なら。」

那由多は渋々、ワンダースケアの提案に承諾するしかなかった。

 

「バンドの方は任せるとして、

 藍の救出に向けて、更なる情報収集が欲しい。

 ……ドット、そして凛。

 2人には時間稼ぎと情報収集を頼みたい。」

 

「あ、はい。」

「えー、あたし?」

ドットが返答する横で、凛は自分が名指しされた事に驚いていた。

 

「詳細は後で説明するが、バンド演奏程ではないにしろ多少目立つ仕事だ。」

「……そういう事ならちゃんと聞かせてね?」

ゴルドーの発言に凛は興味を示した。

 

「先に藍の救出メンバーだが。」

「まずアタシー!」

ゴルドーが口を開ききる前に、アイヴィーが名乗った。

「そうだな、敵の戦力が未知数である以上、お前には出てもらおう。

 そしてアフロ、君にも救出に回ってもらおう。」

 

「アフロとしても、藍ちゃんをこの手で助けたいと思っていたんだ。」

アフロはきりっとした顔で言っていた。

 

「うちの隊長も戦力になると思うっス。」

「そうだな、君達の隊長……ジェラルドなら活躍が期待できる、

 前回と同様にアイヴィーが上手く連れ出してくれれば周りの人達に怪しまれずに連れてこれるだろう。」

ゴルドーは良平の提案に賛同した。

 

「俺を抜きに何の話をしている?」

「うわっ!?」

九条玲司が驚きながら背後を振り返ると、ヴィクターがいつの間に立っていた。

 

「ちょうどいい、実は」

「太刀花藍が誘拐されたのだろう?

 なら、俺も突入班に入ろう。」

「話が早くて助かる。」

ゴルドーはヴィクターに事態の全容を説明せずに済んで安心していた。

 

「美咲、"今回"も杏樹に協力してもらうのでこれを。」

「はい、任せてください。」

美咲はゴルドーから小型通信機を受け取った。

 

「あの私は?」

マリィが手を上げていた。

 

「マリィ、大丈夫だとは思うが、

 念の為、お前は九条玲司と一緒にいてくれ。」

「はい、任せてください!」

ゴルドーは唯一残ったマリィに指示を下した。

 

「まずはドットと凛の仕事だ。」

ゴルドーは2人に向き合って、作戦を話し始めた。

 

 

 

「みんなーちゅうもぉ~~く!」

杏樹がパーティ会場の窓の近くで視線を独り占めしながらパーティ客に声をかけていた。

 

「今回は特別に、別世界の乗り物『ハウンドベア』について紹介しようと思いま~す!」

その間、アイヴィーがジェラルドの腕を掴んで強引に連れて行った。

 

「もしかして……。」

「何かあった……って事ですね。」

ユカリの横でヴィクトールも自身の予感を語っていた。

「わかっていると思うけど」

「ええ、ここでも私達は交流を深める事に集中、ですね。」

「そういう事。」

ヴィクトールはユカリを連れて、パーティ客に合わせて窓側に集まっていった。

 

「『ハウンドベア』、

 それはある世界の代理ヒーローという町の平和を守る存在が使う乗り物の事で、

 このように陸上を走るだけでなく。」

「やっほー!」

杏樹が解説する中ドットがハウンドベアで走り、ゴーグルを装着した凛がパーティ客に手を振りながらドットの後ろに乗っていた。

 

ハウンドベアが加速しながら、お尻にあたるノズルからジェット噴射されて、飛んで行った。

 

「「「飛んだぁ~~~!」」」

パーティ当初、ドットを馬鹿にしていた子供達が目を輝かせていた。

 

「こんな風に飛ぶことができま~す!」

杏樹の解説の後、一斉に拍手が鳴り響いていた。

 

 

『ねぇ、言われた通りにゴーグルを通してホテルを見たけど、

 データ取れてる?』

「問題ない、

 アイヴィーから借りた万能探知ゴーグルから爆弾の位置を確認出来た。

 にしても、シャンデリアの根本と会場の地下か……。

 とりあえず爆弾は俺が何とかする。

 2人はこのまま発信機を頼りに藍のいる場所へ近づいて、正確な居場所を頼む。

 ワンダースケア、そっちの首尾は?」

凛からの通信にゴルドーは応対していると、

 

『こっちも突入班が揃ったから、

 揚陸艇代わりのバルーンを完成させた。』

「お前ならホテルにあるものでうまく作れると思っていたよ。」

『うるせー、俺様はもうバンドに回るぞ!』

「わかった、そっちは任せた。」

ワンダースケアの方の通信にも返答していた。

 

「では支部長、俺は向かいます。」

「ああ、その……。」

ゴルドーは営業スマイルを浮かべながら、九条玲司に話しかけた。

 

(もし、ここでうまくいかなかったら、

 そこでの責任を負って辞められるというシナリオが成立するな!)

九条玲司は半ば自棄になりつつも、

「思いっきりやってくれ、ここでの責任は私が取る。」

ゴルドーに対し、毅然とした態度で託した。

 

「……感謝します。」

ゴルドーは九条玲司に対し、軽く頭を下げながらその場を後にした。

 

「さぁ、次はサプライズでのバンド演奏だよ!」

杏樹の掛け声と同時に、

ステージには良平、美咲、那由多が既に準備を整えていた。

 

「さぁ、俺様達の歌を聞けぇ!!」

そして、先程杏樹によって開けられた窓からワンダースケアがフックショットでスイングしながら、

ステージに着地するとパーティ会場は盛り上がりだした。

 

 

『こちら凛、このゴーグルによると藍は廃ビルの最上階にいるみたい。』

「了解、そろそろこっちも動くねー!」

アイヴィーが通信を終えると、

自らワンダースケアによって作られたバルーンの高さまで飛んだ。

 

「ねぇ、なんでアフロがバルーンになってるわけ?」

「それはねージェラルドとヴィクターが掴んでいる縄はしごに気付かせないためだよー。」

「それは百歩譲ってわかるよ、

 そして縄はしごをアフロ毎隠すためにベットシーツで覆って、

 てるてる坊主みたいになるのもまだわかる。

 でもさ、この発煙筒に意味はあるのかなぁ?」

アフロは自身のこめかみに当たる箇所に発煙筒が埋め込まれている事に疑問を隠せずにいた。

「これはワンダースケアのアイデアだからねー。

 アタシだったら、爆弾をアフロに仕込んで突撃させるんだけど。」

「ヒッ!?」

アフロは以前藍を救出した際、陽動の為にアイヴィーによって爆弾を埋め込まれた事を思い出していた。

「さぁ、そんなことよりも突入の時間だよ!!」

アイヴィーはその間に発煙筒に火をつけて、煙を噴かせた状態の巨大なてるてる坊主を自ら押し出していった。

 

 

「ボス、どうやら向こうではサプライズのバンド演奏をやってたみたいです。」

「ふん、人騒がせな連中だな。

 まぁいい、向こうにいる奴からの手筈は?」

「いつでも、こちらからの映像は流せます。

 ただ、全員バンド演奏のせいでステージに集まっているので爆弾から離れてますが」

「構わん、そろそろ1曲終わる頃だろうからそれに合わせて流すぞ。」

 

「さぁ、次の曲は……あっ!?」

ワンダースケアが次の曲を演奏しようとした矢先、スクリーンが勝手に降りて来た。

 

『どのような目的で集まったか知らないが、

 極秘のパーティにお集まりの皆様、ごきげんよう。』

スクリーンには覆面の男達が両手を縛られた藍を囲っている様子が映っていた。

 

「なっ!?」

天城会長はスクリーンを食い入るように見ていた。

 

『ご覧の通り、我々は天城ホールディングスのご令嬢、天城美玲の身柄を預かっている。』

覆面の男が指示を出すと、藍の顔がよく映るようにカメラがズームされた。

 

「あら、これは一体どういうことですの?」

突然の発言にパーティ会場はもちろん、スクリーンの方でも沈黙が走った。

 

その発言の主こそ天城美玲本人だったのだ。

 

「あ……。」

天城会長は目の前にいる自分の娘と、スクリーンに映っている娘だと思っていた少女を交互に見ていた。

 

「美玲、ここにいたのか。」

「ええ、ずっとホテルの部屋にいたけど、流石に飽きて今、戻って来たところよ。」

 

(おいおい、マジかよ!?)

ワンダースケアは想像以上のイレギュラーに困惑していた。

 

「おい、どうなってるんだ?

 まさか、影武者だっていうのか?」

「し、しかし、ここまでそっくりだなんて。」

「ボス、何か……本物の天城美玲だとわかる方法は?」

「そんなもの、顔さえ間違ってなければと思って、顔写真しかないぞ!」

誘拐犯達もまさかここまで美玲にそっくりな人間がいた事を想定しなかったのか、困惑していた。

 

『ワンダースケア』

「ゴルドー、そっちは?」

『今、爆弾の起爆装置を2つとも使えないようにした。

 これで起爆スイッチを押しても、何も反応しなくなる。

 念の為全部終わったら、爆発物処理班を手配する必要はあるがな。』

「こっちは面倒な事になってる。」

『ああ、そっちの様子はわかってる。』

「まぁ、そろそろ突入するはずだ。」

ワンダースケアはゴルドーからの通信に返答していると、

 

 

「ボスぅうううううううううっ!!?」

廃ビルにて、覆面の一人が慌てた様子でやって来た。

「どうした?」

「何か……デカいてるてる坊主が煙を噴きながらこっちにやってきてます!!?」

覆面の一人は一瞬飲み込むかのような挙動を見せながら、リーダーに報告した。

 

「はぁ!?

 何を言って…………本当だぁああああああああ!?」

リーダーの目に巨大なてるてる坊主がこめかみに当たる所から煙を噴きながらこちらに突っ込んできてる光景が映っていた。

 

「ど、どうしましょう、ボス!?」

「う、撃て、撃つんだぁ!!?」

リーダーの合図を機に、覆面の男達は全員、巨大なてるてる坊主に目掛けて拳銃を発砲しだした。

 

「か、皮が捲れてきましたよ!?」

「だったら、効いてるんだ!撃ち続けろぉ!!」

覆面の男達の発砲が巨大なてるてる坊主に命中し、白い皮が剥がれ落ちて、ピンクの肉がむき出しになっていた。

否、それはアフロの素顔だった。

 

「うおおおおおおお、藍ちゃあああああああああんっ!!?」

アフロは後ろからアイヴィーに押されて、銃弾と空気圧に晒されながら藍の名前を叫ぶしか出来なかった。

藍は両手を縛られた状態でその光景を困惑しながら見守るしか出来なかった。

 

「もうダメだっ!?」

拳銃の弾を使い果たし、迎撃が間に合わないと判断した覆面の男達は後ろに向って飛び込んだ。

 

アフロが廃ビルに衝突した際、多くの覆面の男達が吹っ飛ぶ中、

藍は覆面の男の一人が持っていたナイフが落ちるのを見逃さず、両手を縛っていたナイフを斬り解くことに成功した。

 

その時、アフロに刺さっていた発煙筒が地面に落ち、さらに赤い影も一緒に降りて行った。

 

「突撃!」

凛の掛け声と同時にアフロが上昇すると同時にハウンドベアに乗ったドットと凛が突撃し、

「藍!」

「ありがとうございます、お姉様!」

凛が刀を投げると、藍はキャッチしその勢いのまま抜刀し、覆面の男2名にみねうちを叩きこんだ。

 

「藍ちゃん、無事でよかった!」

ドットはハウンドベアに乗ったまま覆面の男を1人跳ね飛ばすと、ハウンドベアから降りて剣を抜いた。

 

「俺も助けに来たよ!!」

上昇したアフロにつけていた縄はしごからジェラルドは廃ビルに飛び降りて、サーベルを構えた。

 

「くそぉ、お前らやっちまぇ!!」

リーダーの合図に覆面の男達はナイフや鉄パイプを構えて突っ込んできた。

 

「素人がぁ!」

ジェラルドが鉄パイプを弾き飛ばし、

「このっ!!」

ドットも剣で応戦する。

 

「このまま、はっ!?」

藍も応戦しようとしたが、目の前にいる虚無僧に違和感を覚えた。

 

「先生、出番ですよ!」

リーダーが先生と呼ぶ用心棒に藍の相手を任せようとしていた。

 

(この感覚、ただものじゃない!?)

藍は目の前にいる虚無僧と睨みあう羽目になってしまった。

 

「藍ちゃん!?」

ドットは敵の武器を弾き飛ばしつつ藍の救援に向かおうとしたが、

「どう見てもこの世界の人間じゃない上に、

 あれは只者じゃない……あんたが突っ込むと却って藍の邪魔になる。」

凛が止めた。

 

「くっ、藍ちゃんを助けたいのにこいつらが邪魔だ!」

ジェラルドも蹴りを入り交えて対処していると、

「みんな、どいてー!」

アイヴィーの声に全員が視線を向けると、アフロが飛んできた。

 

「うわああああああああああぁあああああああっ!!?」

アフロが叫びながら転がり込んできて、

藍と虚無僧以外全員が、飛び込むようにして避けた。

 

しかし、リーダー以外の覆面の男達は全員アフロの捨て身の攻撃に避け切れず直撃し、壁に叩きつけられていた。

正確にはアフロの捨て身の攻撃ではなく、アイヴィーがボウリングの要領で放り投げただけに過ぎなかった。

 

 

「「………………。」」

 

そんな中、藍と虚無僧が睨みあいの中、それぞれが刀を抜こうとした。

 

 

「残りはどこだぁ!!」

 

下のフロアからヴィクターがクリムゾンハウンドの状態で敵を蹴散らしながら、上がって来た。

 

「ッ!?」

虚無僧がわずかにヴィクターに視線を向けた隙に、藍が真っ先に抜刀を始めた。

 

虚無僧も藍に向き直って抜刀を始めたが、

藍にあと一歩届く前に藍の刀によるみねうちが虚無僧の袈裟目掛けて打ち込まれた。

 

「ま、まさか先生までも、くそおぅ!」

敗北を悟ったリーダーは逃げ出そうとしたが、

 

「スネ狩りっ!」

「ぎゃあああっ!?」

凛の蹴りがリーダーのスネに直撃しノックアウトした。

 

 

 

一方パーティ会場にて、

覆面の男達によって流されたスクリーンで逆にバースセイバーの活躍を見る事になったが、

「これほどまでの電撃的な作戦、警察どころか軍でもできなかっただろうな。」

「代理ヒーローと言ってたが、武器を持った相手にあそこまで無力化出来るとは。」

「あの子、我々に一生懸命飲み物を注いでた女の子だったが、見事な居合だったな。」

「あの海賊の坊や、あそこまで凄かったなんて……ナンパされてうざかったとはいえ、ビンタはやりすぎたわ。」

「アフロすげぇ。」

「ハウンドベアすげぇ。」

「やっぱヒーローかっけぇ。」

「最後のあのお姉ちゃんのスネ狩り見事だったわ。」

と次々と称賛する声と拍手があふれていった。

 

「皆様。」

突然、マイクで呼びかけられたパーティ客は全員、ゴルドーに注目した。

 

「今回はイレギュラーな事件による人質救出作戦を、

 パーティの裏で行う事になりましたが、

 我々だけでは成し得る事が出来ませんでした。」

ゴルドーはそういい終えると、マリィによって九条玲司が引っ張り出された。

「彼、ダーザインの支部長である九条玲司が、

 責任を持ってくれたからこそ、作戦を最後まで実行する事が出来ました。

 どうか、彼にも盛大なる拍手をお願い致します。」

 

「おお、そうだったのか!」

「そうか、名ばかりの責任者じゃなかったのか。」

「流石は財閥の後を継ぐだけの男だ、彼らの能力を見通した上で口出しは最小限に抑えるとは!」

「こりゃ、組織運営に力を貸すべきだな。」

「私の方でも使えそうな人材を探してみようかな。」

「俺の方でも資金代わりの物資を提供するか。」

 

「え、ああ……あはは。」

九条玲司は力なくただ笑っていた。

 

 

「これって……。」

「《オルレアン》での反省を踏まえて現地側の体面を守りつつ、

 九条玲司を支部長の座から逃がさないようにしたって所だね。」

ユカリに答え合わせするかのようにヴィクトールはゴルドーの狙いを語っていた。

 

「とは言え、今回の誘拐事件自体、イレギュラーだから、

 よくここまで、うまく結びつけたものだ。」

「まさか宵月庵の隊長はここまでを?」

「それは違うと思うけど……ただ"こういう事"が起きても、

 ゴルドーを始めとした"我々"ならうまくやってくれると考えていたんじゃないかな?」

「はぁ……。」

ヴィクトールが笑いながら九条玲司の様子を眺めているのをユカリは呆れていた。

 

 

 

そして現場の方では、

発煙筒による煙と発砲音による通報で駆け付けた警察に包囲されていた。

 

「貴様らは完全に包囲されているぞ!」

 

「俺達、藍ちゃんを助けに来たってのに。」

ジェラルドが前に出ようとしたが

 

「なんだその剣はっ!!?」

警察官の一人がジェラルドが持つサーベルに目が付いて、拳銃を構えていた。

 

「このままじゃ、私達捕まっちゃうよ。」

ドットが困惑していると

 

「お待ちなさい。」

突然、藍が刀を凛に渡した上で、堂々とした態度で出てきた。

 

「き、君は?」

 

「私は天城ホールディングス会長の娘、天城美玲です。」

「な、なんだってー!」

藍が天城美玲に成りすますと、警察官達は信じ込んでしまった。

 

「彼らは九条玲司による私設部隊であり、私を救出してくれました。」

藍がドット達を見ながら、無実である事を語っていた。

 

「し、しかし……ん?」

警察官の一人が突然鳴り響く無線に出ると、

「え、警察署長!?

 彼らは通していい?

 し、しかし……りょ、了解であります!!」

「警察署長の命令だ!

 彼らの指示に従え!!」

警察官の一人が全員に指示すると、慌ただしく動き出した。

 

「では、あの廃ビルの中および周辺で倒れている覆面の男達が誘拐の実行犯だ。

 ホテルの方にも奴の仲間が潜んでいる上、

 2か所爆弾も仕掛けられてあるので、そちらに関する手配も忘れないよう頼む。」

ヴィクターが警察官の一人に指示を送った。

「りょ、了解であります!」

「あと、その男だけは我々が身柄を預かる。」

「了解であります!!」

ヴィクターが虚無僧だけを自分達で連れていくことを話した。

 

 

「いいか、現場にいる連中の指示を聞けば、

 警察署長、あんたが奥さんに黙ってキャバクラに行ってた件は黙っててやるからな!」

九条玲司は電話で話し終えると、

「ふぅ……これでよかったのか?」

「ええ、十分です。

 まさか、いろんなネタを持っているとは話に聞いておりましたが、

 役に立つとは思いませんでした。」

ゴルドーは営業スマイルを浮かべながら、感謝していた。

「その気になれば警察署長も官僚も企業重役の弱みも使えるが、

 なんでそれを知ってるんだよ。」

九条玲司はバースセイバー、否ゴルドーに対し底知れぬ恐怖を覚えていた。

 

「じゃあ、藍ちゃ……お嬢様、

 一足先に、ホテルへ戻りましょう。」

ドットは藍の演技に合わせて、ハウンドベアに乗るよう促した。

「よろしく。」

藍は天城美玲っぽく振舞いながら、ドットの後ろに回る形でハウンドベアに乗るとゆっくりと上昇していった。

 

「みんなはアタシがアフロ毎けん引するから、縄はしごにしっかり捕まってねー。」

アイヴィーはアフロを掴むとハウンドベアを追いかけるように飛んで行った。

「今回もアフロはさんざんだったよ、

 藍ちゃんが無事だったのは何よりだったけど。」

「しかし、藍ちゃんのおかげで助かった。」

「今回の敵は歯応えがなかった……。」

「あたしとしてはあれくらいでちょうどいいんだけどね。」

「まさかあっしも連れていってもらえるとは。」

アフロ、ジェラルド、ヴィクター、凛が話しながら縄はしごに掴む中、虚無僧は戸惑いながらも縄はしごに掴んでいた。

 

「あんた、この世界の人間じゃないんでしょ?」

「ええ、武者修行の旅に出ていたら、

 妙な穴に落ちまして……あの男達に拾われたのでございやす。」

「じゃあ、遭難者だね。

 さっき通信したゴルドーやヴィクトールの話だと、

 あんたの出身世界はダーザイン既知の世界な上、

 ダーザイン支部も置かれているみたいだから、

 本部を通して帰還の手配が取れるようにしてくれるってさ。」

「ありがたい、

 しかしあのお嬢様にも命を助けられた上、

 このまま借りっぱなしなのは性に合わぬ。

 とはいえ、迷惑をかけてしまった身で何が出来るものか。」

虚無僧は凛の話にありがたい一方、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「まあ、そっちの世界でどういう対応を取るかわからないが、

 ゴルドーや俺もあんたがバースセイバーとして、戦えるよう口利きしてみるさ。」

「そうか、それはかたじけない。」

ジェラルドの申し出に虚無僧は感謝していた。

 

 

パーティ会場に戻った藍達を迎えたのは洗濯済みの藍の服を抱えた天城美玲だった。

 

 

「藍……その。」

本来の服に着替え終えた藍に向けて、美玲は何度も視線をずらしていたが、

 

「結果的に入れ替わった形だったとはいえ、

 あなたを危険な目に合わせてしまって……その、ごめんなさい。」

藍にむかって深々と頭を下げた。

 

 

「気にしないでください、

 決して珍しい事ではないですし、

 あなたが無事でよかった。」

藍は笑みを浮かべながら発言したが、美玲は大きく体をはねていた。

 

「そ、そんな…。」

美玲は自分の想像を超える藍の返答に困惑していた。

 

「悪いと思ってるなら高級なディナーでも」

それに対し凛はちゃっかりたかろうとしたが、藍に静かに頭を叩かれドットと那由他に脇を抱えられた。

 

「もうこんな事ではパーティもお開きでしょうし、私達はこれで。」

藍は美玲とずっとそばで見守っていた天城会長に頭を軽く下げると、この場を後にした。

他のみんなもそれぞれの礼をすると、藍に続く形でこの場を後にした。

 

「さて、今回の騒動で民間人に目撃されたが、

 金を貸してやってた映画監督にゲリラ撮影って事で話をつけられた……。」

「ねぇ。」

「なんだ?」

ボヤキながら事後処理をしていた九条玲司に、美玲が語り掛けた。

「あなた、あのパーティーの時何してたの?」

「ふん、主催者はだいたい何もしてない、

 責任を取るのが俺の仕事、そういうものだ。」

九条玲司は両手を広げながら、美玲に語っていた。

 

「ねぇ、私にもダーザイン、

 というかバースセイバーってなれるのかな?」

「はぁ、バースセイバーに?」

美玲の問いかけに九条玲司は聞き返した。

 

「私、今回の件で、

 守られる側なのが辛いって思った。」

 

「「……。」」

九条玲司と天城会長は黙って聞いていた。

 

「私、わがままだけど、

 それだけじゃなくて、力を持ちたいって思った。

 といっても、バースセイバーからすればその力も大したものじゃないだろうけど。」

 

「いいか、

 ゴルドー……バースセイバーの一人は、

 俺の力に着目して、活用しようとしていた。

 そのおかげであいつらはお前を助ける事が出来た。」

「えっ?」

美玲は九条玲司の言葉に目を見張った。

 

「お前に何ができるかは俺にもわからない。

 ただ、あんたの親達、

 学校の勉強もあるだろうから、

 それを全部どうにかできるなら、手伝いくらいは出来る。」

九条玲司は天城会長に軽く礼をすると立ち去って行った。

 

「美玲、これからの事は明日にでも話し合おう。

 今日はもう家に帰って、ゆっくり休むといい。」

「はい、お父様……。」

美玲は父親の言葉に頷きつつ、密かな決意を瞳に宿していた。

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