侵入者、来訪者、襲撃者と来て次はオーク族……どうしてこう次から次へと問題が出てくるのだろうか?
旧代官邸を取り巻く不穏な状況と、それとは別にエリオン・アンダマンが目的の為に施した細工と
奇しくもリアンノン・アンダマンが危惧した通り、今やそれらは思わぬ形で
その事実を彼自身も痛感しながら、かと言ってここで役割を放棄してイズーダンへ引き返す気持ちは毛頭無い。
尽きぬ疑問に蓋をして、エリオンは次なる一手を模索していた。
◇◇◇
会議を終えたエリオンが本館の
「失礼します」
「エリオン! 丁度良かった」
「お待たせしました。 そちらの御仁は……」
「私の
「お初にお目にかかります」
アリシアの紹介を受けたその男性は帽子を上げてエリオンに挨拶をした。
アリシア・アンダマン、ウィル・オーデンに続く一行の三人目。
「エリオン・アンダマンだ。 宜しく頼む。
ところで叔母上、お時間を頂戴できますか? 相談したい事が有るんです」
エリオンがそれと無く目線を
「では、私は失礼いたします」
フラムが席を外して部屋を出た後、背後のスヴェンセンがエリオンに聴こえるか聴こえないかという
「
◇◇◇
「
「こっちこそ、
「これからマリオとアリエルに会いに行きます」
「じゃあ、あの子を治療出来る魔道具を探しに行くのね?」
エリオンは頷いた。
倉庫棟と本館の全室を
そもそもの予定では、補佐役としての権限を
しかしながら当初の
さすがに相続権を持つ遺族の目の前で叔父の遺産を物色する訳にもいかず、次の手として今度は叔母上一行を旧代官邸から
加えて、先ほどルシャス・アンダマンが重傷を負った。
こうして結果的に、これらの高貴な招かれざる客人達を穏便に送り返すことは極めて難しくなってしまったわけだが、同時に
アンダマン家の一員の命を救う為に、この地に所蔵されている治癒の魔道具を使用したとして、誰が文句を言えよう?
無論故人の遺産を使用することは問題があるが、
そもエリオン・アンダマンが
ルシャスには悪いが、彼が死に掛けているお
「マリオとアリエル二人には昨晩から起こった事を改めて……隠さずに話そうと考えています。
癒しの魔道具とルシャスの状態と、御御許可頂ければ 叔母上の事も」
「私のこと?」
「はい。 その、叔母上の魔法使いとしての能力と認可の話です」
「ああ、それね」
「御許可頂けますか?」
「? 別にいいわよ」
何故そんな事を?とでも言わんばかりの表情を浮かべてアリシアが言った。
それはエリオン・アンダマンが彼女に抱いた最初の印象……貴族としての型にはまらない不思議な人物……と同時に昨晩ウィル・オーデンが語った
アリシア・アンダマンは未認可の魔導師。 それも、恐らく魔導師級の力を持つ者の中でも最高位の水準にある。
同時に、それほど優秀な魔法使いが魔法適性を
これが帝国司法省に
「有り難うございます」
「いいのよ。 じゃあ準備して来るわね」
「叔母上も一緒に来て頂けるのですか?」
「え? もちろんそのつもりだったけど……どうかしら、
「いや、そんな事は」
先ほどのマリオの態度を言っているのだろう。
マリオは必要と思えば誰が相手であっても
その外見と態度の
「信用して貰えないかしら?」
マリオに対するアリシアの
「叔母上の人となりと実力を知れば、マリオは分かってくれます。 彼は見た目よりずっと……
「そうよね! 着替えてくるわ。 待っててちょうだい」
◇◇◇
アリシアが隣室で準備をするあいだ、エリオンは
近寄って目を凝らすと、そこには真珠が埋め込まれた黒い腕輪が置いてあった。
アリシア・アンダマンが身に付けていた首飾りと同じ、輝く黒い結晶で作られている。
「駄目よ」
首飾りの放つ奇妙な魅力に抗えずゆっくりと手を伸ばしていたその時、背後から飛んできたアリシア・アンダマンの声にエリオンはびくりと身を
「叔母上……これは、その」
教師に
「なあに?」
アリシア・アンダマンは非難するでも無く、薄っすらと微笑みながらエリオンの返事を
思考を回転させ、言葉を
「
「どうして?」
「いえ、何となく。 ……ただ、叔母上の首飾りと同じ
細工もよく似てますから同じ工房の
「合ってるわ。 観察眼の持ち主は魔法使い向きよ」
「
「じゃあ、ついでにもう一つ問題。 あなたがそれを触ろうとしたのを止めた理由はなんでしょう?」
「……
「ふふ、良いわねそれ。 でもハズレよ。
正解は罠が仕掛けられてるから……
「冗談ですよね」
彼の緊張をほぐす様に口元でニヤと笑ってからアリシアが答える。
「ええ。 でも嘘じゃないわ。
魔導師の持ち物は全部そうだけど……魔精の憑代ともなれば、確実に盗難防止の仕掛けが施されていると考えた方がいいわよ」
「知りませんでした」
「冗談はよして。 あなたの持っている封筒も……あの子を燃やした
開封した人間を攻撃する典型的な魔法罠じゃない」
「実のところよく分からないんです。
「あらそう……勘違いだったら良いんだけど……」
「? 何でしょうか」
「あの封筒はピアルノーの遺言状じゃなくって?」
「どうでしょう。 そうかも知れませんが分かりません。
ピアルノー・アンダマンの遺言状に付された呪いと焔の魔精の関係。
魔法の焔は、遺言を守る番人として魔導師本人が
アーロンとルシャスは不運にも
触れる者を無差別に害するこの危険な呪いと、私の知る叔父とが結び付かないのだ。
どう頭を捻っても、魔法に
そこでふと、エリオンは昨晩ウィル・オーデンがアリシアについて言っていた事を思い出した。
◆◆◆
「まさか……いや、……可能性は……すり替えが
◆◆◆
アリシア・アンダマンは例の
そこに、
「……少なくとも私宛の遺言状では無いと思います」
「まさかあなた、自分で
「はい。 やはり読む以前に燃えてしまいましたが」
「身体は大丈夫なの?」
「ご覧の通りどうにか焼かれずに済みました」
……
「なるほどね……さ 準備できたわ。
行きましょうか?」
あらためて、