『死柄木弔』という名の災害者   作:伽華 竜魅

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俺はただ壊す。それだけさ。





人の姿をしたノイズ

 

 

 

 

黒いコート、黒いTシャツ、黒いズボン。

全身を黒で包み、足だけ赤い靴で彩る。

顔には──本物の手で作られた「手だけの装飾」を付けている。

 

俺は指を伸ばし、目の前の壁に触れた。

瞬間、乾いた音を立てて亀裂が走り、石造りの壁は細かな塵となり消え去った。

 

「……はは、便利だよな。元々はオーバーホールの“個性”だった……けどな、先生。これはもう俺の“個性”だ」

 

ビルを、壁を、街を壊す。

それが俺の戦い方で、俺の存在理由だ。

 

だが──俺は結局、(ヴィラン)

最後まで「壊すために」しか戦えない存在。

この世界に来ても、俺はやっぱり否定される側だった。

 

この世界には“個性”が存在しない。

代わりにいたのは、かつて「人類共通の脅威」とされた化け物──ノイズだ。

 

大群で人間だけを襲い、触れた者を自分ごと炭素の塊に変える。

自壊を伴って殺すという点では、俺の崩壊に似ている。

脳無とは別種の、とんでもない化け物だ。

 

けど、もう存在しねぇ。

「フロンティア事変」の後、ノイズは姿を消した。

利用できなくなったのは惜しいが、まぁいい。

 

俺自身が“崩壊”を撒ける。

気に入らねぇもんを、全部ぶっ壊すことができる。

先生の教えだって、全部じゃねぇが俺の中に残ってる。

利用できるものは、とことん利用する。

 

「錬金術師……か。ファンタジーじみた奴が本当にいたとはな。おい」

 

瓦礫の山に、一人の人間が倒れていた。

鎧ともローブともつかない格好──まるでゲームやヒーローショーから抜け出したような姿。

その瞳は俺を、バケモノを見るように睨んでいた。

 

……まあ当然だ。

この世界に“個性持ち”なんて、俺以外にはいねぇんだからな。

 

「なぁ、死にたくなきゃ俺の言うこと聞け」

 

「……な、何が目的、だ……」

 

情報収集の結果、こいつは「ファウスト何とか」とかいう兵器を生み出せると聞いた。

武器を欲していた俺には、うってつけの相手だ。

 

「女しか使えない? ……関係ねぇよ。お前なら男でも使えるようにできんだろ?」

 

「……出来ない。女は……男よりも“上位”の存在なんだ。それに……聖遺物が必要だ……」

 

「聖遺物……ね。欠片でもいいんだろ? ならその機能だけでも引き出せねぇか?」

 

「……不可能だ」

 

「そうか。なら用済みだ」

 

俺は五指をその顔に触れ、男を塵へと変えた。

 

……また失敗か。

けど、この世界に来た時から持っていた、この“欠片”。

詳細のわからない謎の破片。これがカギかもしれねぇ。

 

この世界に訳も分からず来たのは、今から二か月前だ。

緑谷出久との最後の戦いで、俺は消滅した。

最後にはおばあちゃんと、『OFA』の継承者たちと、緑谷出久と一緒に先生を打ち砕いた。

 

んで緑谷出久にスピナーへの遺言を託して、俺は今度こそ魂が消滅した。

はずなんだけどなぁ……。

 

「まぁ考えても分かんねぇしどうしようもない。今を生きて、気に入らねぇもの、全部壊すだけだ」

 

だって俺は、(ヴィラン)だからな。

 

「あぁそうだ。いくつか残ってんだ。このアイテムは全部貰ってくぜ? 俺が有利に使ってやるよ」

 

瓦礫に埋もれているが、見える範囲で変わった結晶を集める。

 

「動くな! これは貴様の仕業だな!?」

 

銃声。横をかすめる弾丸。

現れたのは、この世界の“警察”だった。

 

ヒーローも“個性”もないこの世でも、警察は存在する。

まあ、あっちでもヒーローが成り立つ前からあったしな……面倒だ。

 

俺は距離を詰め、警官の体を掴んだ。

触れた瞬間、声もなく塵となる。

 

「死体も残らず消える……やっぱ楽だな」

 

次の錬金術師は協力してくれるといいんだが……金も飯も足りねぇ。

利用するしかねぇんだ。連合もいねぇ、この世界で一人で生き抜くには。

 

その時、ヘリの音がして、見上げれば空から光に包まれた人影が降りてきて──着地した。

 

「……歌いながら変身? なんだコイツら……」

 

赤、青、黄色。派手な露出の戦闘服。

剣に、銃に、生身……信号機のコスプレか?

 

だが、奴らは真剣な目で俺を見据えていた。

 

「止まれ! この衝動は貴様の仕業だな!? 一人で何故ここまでの被害を!」

 

「抵抗せずに大人しくしろ!!」

 

青い女と赤い女が、剣と銃を向ける。

ただし、敵意はまだ抑えられている。説得で降参させるつもりらしい。

 

「素直に従う馬鹿がいるかよ。お前らヒーロー気取りか? その恥ずかしい格好で」

 

「なっ…! テメェ、そこ指摘するか!?」

 

「自覚あるのか……だったら、わかってての露出ってことか」

 

赤い奴と言い合っていると、黄色の奴が一歩前に出てきた。

 

「あなたの目的を聞かせてください! なんでこんなことを……何か理由があるなら!」

 

……何言ってんだコイツは。

 

「どんな理由があっても、人を殺すことは悪いことです! でも……その理由が、私たちに納得できるものなら……私たちはきっと、あなたを助けられるはずです!」

 

……。

 

「協力することだってできる! 私たちは、手を取り合えるんです! だって──あなたは、人だから!!」

 

……緑谷出久を思い出すな。こいつ。

 

「はっ! 分かり合える? 手を取り合える? 笑わせんな!! そんな簡単に分かり合えるなら、この世の理不尽はとっくになくなってる!」

 

しかも“人”だから、だと?

じゃあ“人じゃねぇ奴”は切り捨てるってことか?

俺の世界にもあったよ、異形への差別がな。

 

「……それでも! きっと!!」

 

「もういい。塵になれ」

 

俺は指先を開く。

撒き散らせば……あぁ、出てきやがった。

 

「なっ、アルカ・ノイズ!? 錬金術師を狙っていたのはこれを……!」

 

赤い奴が銃を変形させ、ガトリングのように撃ち込む。

ノイズは倒れていく……だが俺には関係ねぇ。触れれば同じだ。

 

……青い奴が消えた?

 

「抵抗するなら容赦せん!」

 

いや、後ろか。遅ぇな。

まだヒーローの方が、緑谷出久の方が速ぇ。

それに……

 

「――俺に武器は通じねぇ」

 

剣を掴んだ瞬間、触れた部分から崩れ去る。

 

「なっ……!? アームドギアが!!?」

 

青い奴が剣を捨てて下がる。他の二人も驚愕する。

俺は黄色い奴に笑ってみせた。

 

「手を取り合う、だっけ? 俺は触れたものを全て塵にする。お前らの言う“ノイズ”と同じだ」

 

黄色い奴の表情が凍る。

 

「なぁ──」

 

俺は一歩踏み出し、低く呟いた。

 

「――人の姿をしたノイズと、お前は分かり合えるのか?」

 

そうだ。

この世界での俺は、人の形をしたノイズ。

そしてあの世界で果たせなかった望みを、この世界で叶えてやる。

 

それが――死柄木弔(おれ)なのだから。

 

 

 

 





死柄木弔はって、普通にシンフォギア世界の敵サイドにいてもおかしくないって思うんですよ。



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