ゲットしないと喉笛噛みちぎっちゃうぞ   作:イトシキイタダキ

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8章「気持ち悪いよー。もう無理ー」

 


 

 白衣を着た赤と青のツートンカラー髪の女が、雪原のピークに立つ。彼女は何やら端末を持ち、その端末に無数の状況が表示される。一部のデジタルメーターが振り切れている。

 

 視線の先には輪郭がぼやけた白い巨大獣が雪原を蹂躙している。

 

「これは元になったポケモンはとんでもないな。擬人化の亜種みたいなものか」

 

 彼女は手に光を収束させる。

 

 ユキメノコを口に入れようとするそれに手からエネルギーを放つ。軌跡となる雪原が融解して線を描く。

 

 巨大獣のシルエットは弾け、ユキメノコが吹き飛ぶ。

 

「まあ、一部が暴走しているだけだな。まったくソウスケのやつは無茶をするなあ」

 

 彼女は地肌を一部剥き出しにした峰のピークでそう独り言をした。

 


 

 それは青天の霹靂であった。

 

 洞窟の入り口に白衣の女がばーん、と立つ。

 

「やあ、ソウスケとそのポケモン諸君。元気かな?」

 

 狐耳の少女がたくさんの尻尾にソウスケを巻き込みつつ歯を剥き出しにした。

 

「誰よあんた」

 

 キュウコンの尻尾をかき分け、ソウスケが飛び上がるように起きた。

 

「ホリゼ教授!? なんでこんなところに。危ないので早く下山しましょう!」

 

「私は准教授だが。ああ、後もう心配無い。おそらく気にしているのはこの子だろ?」

 

 彼女は背中に乗せていたユキメノコを下ろす。

 

「あなた達、良かった……」

 

 それはワラコの声で喋った。

 

「ああ、なんか暴走して弾けたらしいよ。恐ろしいね。ワラコさんから話聞いてレポートにまとめなさいね、じゃ!」

 

 

 

 ローカル線の鉄道の中、ほかに誰もいない車内でソウスケが連絡している。誰もいなければ許されるはずだ。そうに違いない。

 

「ふむふむ、行き倒れた人が最期に見たい人に化けたかった故の擬人化か」

 

 通話相手はカイン。何かをぶちまけなければソウスケのメンタルは持ちそうに無い。

 

「お前からすると、どうだ?」

 

「おれのマホイップの例と照らし合わせると。もしかすると、マイナスの感情での擬人化か。あり得るか分からん」

 

「ああ、ある意味好意だが、初めからかなり歪んでいたらしい。擬人化ユキメノコから聞いたよ」

 

「それは嫌だなあ。そんな事例を引いてしまったか、良い報告にはなるなあ」

 

 鉄道は揺れる。

 

 ソウスケのメールに通知が。ソウスケは思わずクリックして見てしまう。

 

 差出人不明。件名で。

 

「研究をやめろ、死ぬぞ」

 

 とあった。

 

 本文は無かった。

 

 

 

 ソウスケは分岐点の駅で乗り換えのために降りる。島式ホーム二つと駅舎前のホームがある、そこそこ大きな駅だ。

 

 電車が走り去ってから、誰もいない中で人間姿のイナホがゴージャスボールから出てくる。

 

「いやあ、タダ乗りは最高ね」

 

「ポケモンの利点を謳歌してんな」

 

 ソウスケは乗り換える電車を待っていた。列車が迫るとき。

 

 ソウスケは後ろから柔らかく、しかし力強い衝撃を感じた。景色がスローモーションになるのも感じる。

 

 ソウスケはホームに落ちていく。イナホが反応出来ていない。

 

 おじいちゃん、最後になんて言っていたかな。

 

 思うより遥かに速く迫る列車の前、リーフェを出すのも間に合わない。

 

「カナ、お願い!」

 

 叫び声と共に迫る電車の前に銀色の光が降り立った。

 

 銀色の甲冑に銀髪の凛々しい姿。

 

 それは剣を持ち、その剣腹で、電車を押しとどめる。

 

 電車は凄まじい金属音を奏で、それごと進む。すでに落下して、動く間もなかったソウスケにそれが当たる。コツンという音を立てて。

 

「大丈夫でしたか? ソウスケさん!」

 

 これまた凛々しい美少女の顔が言った。

 

 電車の窓を開けてホームに飛び出してきた影があった。

 

「ありがとう、カナちゃん」

 

「えへへ、それほどでも」

 

 甲冑美少女がはにかみながら言う。

 

 リーフェがボールから飛び出す。

 

「マスター! 良かった! ところであなたはあのときのボスゴドラ?」

 

「あ、そうです! トルーネンちゃんにやられちゃいましたけどね」

 

 飛び出してきたJKの影、アンリが逆光からその姿を現す。

 

「やっと見つけたわ。ふざけたマネをしてくれる。殺してやるぞ、殺してやるぞ」

 

 イナホは手持ち二匹とベンチのテーブルにどこからか取り出した紅茶を飲んでいる。一応、ソウスケが助かったのを見てから並べ始めたらしい。

 

 どっから用意したんだよ。

 

「ソウスケも大変ねえ」

 

 アンリが続ける。

 

「殺してやるわ、イナホ」

 

 イナホは紅茶を吹き出した。

 

 ドータクン神主が言った。

 

「妥当」

 

 頭が真っ白だ。しかし、死にかけた気がするが、今はなんかすごく面白いことになっているな。

 

 開いた電車の扉から緑の龍、フライゴンに乗ったカインが飛び出す。

 

「おい、ソウスケ! アンリちゃんはほっといて、追うぞ!」

 

 カイは綿々な白竜ホロビを出しつつ飛び降りて乗り換える。

 

 フライゴンは線路に落ちていたソウスケをその首でそのまま拾い上げる。

 

「よし、ありがとう」

 

 ソウスケはそう言うと、上昇する。

 

 駅舎から近隣の建物に飛び移っていく影がある。

 

「そいつか!」

 


 

「久しぶりに切れちまったよ、イナホ、田舎だからその辺にバトル場がある。そこに行こうぜ」

 

 もはや男口調で話す女子高生アンリ。その様は少年誌のバトル漫画である。

 

「アンリ、あんたどうしたの」

 

 イナホは半笑いで聞いた。

 

 駅舎の隣の線だけ引いた広場。簡易スタジアムである。たまたま試合している人こそいないが、地元の草ポケモンバトルチームの名前が書いてある。

 

「さて、アンリ、あんたが私に本気で勝てると思っているの?」

 

「勝つつもりよ。さあ、ボールを同時に行くわ」

 

「ルナちゃん!」

 

「ユタカ、行きなさい」

 

 出てきたのは紫髪ブレザー制服姿のムウマージ。まるで魔法学校の生徒である。一方で何百年前からの伝統を守り続けているような狩衣姿のドータクン。

 

「行くよ」

 

 その生徒の自分に言い聞かせるような表明に対してドータクン神主ことユタカがぼやく。

 

「イナホ様のご学友を相手したくは無いのですが」

 

「どっちも偽物よ」

 

 決意じみた力を込めた台詞と共にルナが力を溜め始める姿勢を取る。

 

「ええい、ままよ、ラスターカノン!」

 

 ユタカの幣からノータイムで激烈な光がルナに放たれる。

 

 ルナは構えを解き、避けもせず、両手を広げその攻撃に身を晒す。爽やかにアンに言う。

 

「アンリ、勝ってね」

 

 ルナはそのまま光に貫通され、その余波で吹き飛ばされる。あまりにも圧倒的な差。その儚いHPは瞬時に消え去った。

 

 しかし。

 

「ありがとう、ルナちゃん」

 

 アンリのねぎらいの言葉を受けながら赤い光になりボールに戻ろうとするルナ。それから禍々しい煙が這い出てユタカを襲う。その手で払いのけようと、回転しようとそれは彼の魂を直接掴む。

 

「流石です! アンリ殿、ルナ殿! 完璧なカードの使い方ですよ本当!」

 

 ユタカは諦め、幣ごと柏手を打ち、讃えつつ手を合わせる。生気を瞬時に煙に吸い付くされ、干からびて赤い光になる。

 

「まじ、か。これはまじで勝ちに来たわね。道連れでうちのユタカを落とすとか」

 

「まじよ」

 

 二人はボールを持ち替える。

 

「行きなさいミノル」

 

「カナちゃん任せた!」

 

 ソンブレロ伊達男が光から立ち上がる。

 

「暴力は反対です」

 

 もう一方で銀髪甲冑女騎士も甲冑をシャンと鳴らし、両手剣の刃を横向きからミノルと自身に向けるように切り替える。

 

「私も理由が無い暴力は反対ですよ、しかし、理由はおありでしょう?」

 

「ええ、仕方ありませんね。お覚悟を」

 

 女騎士が言う。

 

「尋常に手合わせ願いますよ、ミノルさん。あなたの本気を見てみたかった」

 

 伊達男の手にエネルギーが溜まる。その柔らかな仕草とは反する爆発するような、しかし、指向性の水の奔流が迸る。

 

「暴力は暴力を生む、だから嫌いなのです!」

 

 悲しそうに叫びながら。

 

 女騎士がそれを西洋剣で受け止めようとする。伊達男はその様子を悲しげに見やる。

 

 奔流の中、女騎士は立っている。その影をボロボロにしながら、流れの放出が終わる。

 

 女騎士がよろめく。

 

「これが、結末」

 

 伊達男が呟く。

 

「いや、違うわミノル」

 

 イナホが静かに言う。女騎士はよろめきながらも倒れていない。

 

「素晴らしいハイドロポンプですね! 意識が何度も飛びかけました!」

 

 女騎士は倒れる直前を保ち続け、ついに水流から現れる。

 

 そして、両手で剣をかざし、上段に構えた。銀色の光が、フィールドを照らし、剣の先端から天を突く。

 

「お返しします! メタルバースト!」

 

 振り下ろした剣から放たれる強烈な光がミノルを包む。ミノルは巨大な剣と化した光の筋に両断されていく。

 

「暴力は暴力を生む、ご覧くださいイナホ様、実例を!」

 

 一瞬考えた主人は首を傾けながら、感想を言う。

 

「微妙にニュアンス違わないかしらそれ……」

 

 ミノルは倒れた。カナも満身創痍。しかし、まだ立てている。

 

「やりましたよ! アンリ様」

 

 息も絶え絶えで、剣を地面に突き刺し、杖としてなんとか立っている。

 

「がんじょうの特性からのメタルバーストね。2連続で捨て身とか、うちの馬鹿も含めて流行っているのかしら。ところで、カナ、あんた前までいしあたまじゃなかった?特性カプセルでも使ったの?」

 

 銀色が煤けたカナからなお鋭い眼光がイナホに突き刺さる。

 

「ええ、変えたのですよ。先程散ったルナも、私達全員が戦っています。アンリ様のご友人であるあなたの喉元にこの牙を突き立てるために」

 

 そのとき、アンリの表情筋から力が抜けたのをイナホが見た。

 

「アンリあなた、全て演技だったのね。やるじゃない。だけど」

 

 人間姿のイナホはゆらりとトレーナーの円から踏みでて、女騎士に相対する。

 

「もしかしてなんて、万に一つも与えない」

 

 イナホの髪の毛から耳が、和服の背から9本の尻尾が生える。足元に虫眼鏡で収束したような光柱が現れ、瞬時にフィールド全体に拡大する。熱が波のように広がった。

 

「ッハアア! アイアンヘ――」

 

 荒い息と共に剣を振りかざした直後、カナの甲冑が横にジグザグに歪む。身体ごと捻じ曲げる超高レベルキュウコンの念動力の前、ボスゴドラの少女は崩れ落ちる。

 

「最後まで、天晴よカナ。このイナホが認めてあげる」

 

 剣がイナホの頭をかち割る寸前に赤い光となって消えた。

 

 アンリは全く動じず、それを見たイナホは彼女を睨みつけるしか無かった。

 

「ありがとう、カナ。いけ、ミミッキュ、「のろい」!」

 

 そして現れた、ピカチュウ型の布を前に、とりあえず炎を放ちつつ、イナホは天を仰いだ。

 

 詰んだわ私。と言わんばかりに。

 


 

 ソウスケとトルーネン、カインとチルタリス姿のホロビは商店街のアーケードをくぐりながら飛ぶ。汚れ、白くなった天板が激しく軋む。

 

 その先に見えたのは白いふわふわしかし、短髪の美少女。両手に綿の塊。彼女は嘲るように笑う。

 

「ハハハ、面白いのー」

 

「ワタッコか、やべーな」

 

 ソウスケの目線の先はもはやワタッコでは無い。

 

 シャッターまみれのアーケードの先。

 

 急激に太陽光が網膜に焼き付いた直後、そこは綿毛で埋め尽くされていた。

 

「トルーネン!」

 

 ブレーキが間に合わずフライゴンは動きを絡め取られる。

 

 チルタリスはピタッと静止し、カインをその羽根スライダーでアーケードの上に下ろしながら光り、綿アイドルに戻る。

 

「あらあら、あなたももこもこなのね」

 

 謎のシンパシーがあるらしい。そのまま綿毛の中を歩き出す。綿ポケモンにしか分からない歩き方だろうか。

 

 ソウスケはフライゴンごと綿の繊維に絡め取られ停止する。

 

 迫るホロビに向かって、ワタッコの少女はニヤニヤしながら、角のタバコ屋からくすねたのか、ライターを取り出す。

 

「おい、やべえぞカイン!」

 

「分かっている!なんとか良い方法、一撃で止める!だが、燃やすな電気もやめろ!」

 

「おい、水タイプいないぞ!」

 

「俺は、あ、いいこと思いついた」

 

 カインがモンスターボールを出す。そして投げる。

 

「いけクリス!」

 

 わざとか、綿毛に向かってそれは出る。

 

「ちょっ? なんでこっちに?」

 

 エスパー特有の念話が言った。

 

 緑色の液体の塊は綿毛にぶつかる。チラチラ中の肌色の太ももやお腹が見えていた。しかし、そのまま液体の表面に綿毛がくっつき雪だるまのようになる。

 

 頭の部分だけ白くならずに中に幼げな、しかし知的な女の子の顔が覗く。

 

「え、面白? 何やってんの」

 

 ニヤニヤ笑うワタッコ少女を仕留めるため、カインが指示を出す。

 

「よし、これで大丈夫だな、クリス! そいつをアーケード内にかっ飛ばせ!」

 

「もう、人使いが荒いなあ! サイコキネシス!」

 

 ランクルスそっくりの液体の腕、しかし真っ白になった片側を振り上げる。

 

「ちょっ、これが見えないの。え、正気なのあんたら、逃げないと」

 

 ワタッコの少女は、ライターをかざす。しかし、効果が無いことを見て、ふわり上昇しようとする。

 

「じゃあバイバイ、あれ、上がれない! なんで」

 

 ワタッコの片足が下に引っ張られているような不自然な姿になっていた。

 

「あ、チャーンス」

 

 ランクルスことクリスが念話で言いながらサイコキネシスで捕縛する。直後、ワタッコ少女は恐ろしい加速度で、白い塊、クリスに向かう。見えない巨人の手で引き寄せられているように

 

「ひっ」

 

 ワタッコの少女は振り上げられた真っ白な腕型仮足を見た。

 

 うわ、ダブルサイコキネシス。流石ランクルス怖いな。ソウスケは他人事のようにそう感じた。

 

「ホームラン!」

 

 ワタッコ少女は脊髄の芯まで捕らえるようなインパクトを受け、アーケード内の地面やシャッターを数回バウンドしながら、跳ね転げた。

 

 彼女は白目を剥いている。ライターは側溝に転がった。

 

「ナイス。ソウスケ。どうやらそいつを瀕死にしてしまったらしい。イシスで頼むぞ」

 

「ああ、殺処分が妥当な気がするが、尋問もあるし、任せるぞ、よし、イシス、さいきのいのり」

 

 断末魔よりひどい悲鳴がアーケードを反響し、ボールが吸収し終わる音がそれに続いた。

 

 

 

「なあ、カイン、なんでポケセンが駅前に無いんだろうな?」

 

「みんな汽車じゃなくて、ライドポケモンか車使うからだろソウスケ」

 

「不便だなあ、もっとそこらにあると良いのに、パルデアのように」

 

「その分でかいぞクワトロのポケセンは。クワトロの奴にパルデアのポケセンの写真見せたら「なにこれポケモン屋台?」とか言っていたぞ」

 

 カインとソウスケ、イシスと真っ白スライムが続く。

 

 セキエイ圏の住宅街はこれはこれで味がある。特に電柱が良い感じを出している。

 

 地蔵のある辻で、声が聞こえる。

 

「うげー気持ち悪いよー」

 

 ソウスケが聞き慣れてしまった擬人化キュウコンの人としての声。

 

「うんうん、でもイナホが悪いんだよ。もうすぐポケセンだからね、頑張ろうね」

 

 女子高生Aことアンリの声。

 

 肩を組んだアンリと狐耳イナホが曲がり角から出てくる。

 

 その後ろを気まずそうに歩く海パンと牙を模したアクセサリーのイケメン。

 

「げ、ソウスケさん」

 

 アンリの擬人化オーダイルにソウスケが尋ねた。

 

「これ、何があったんだ?」

 

 彼、オーダイルはその経緯を語り始めた。

 

「いや、俺もここまでうまく行くとは思わなかった」

 

 

 


 

 

 

 まず初めに、回想シーン。ボールの中からオーダイルが電車の車内を見ていると。

 

「ふふふ。もうすぐイナホちゃんと会える。ちょっとやり返さないと」

 

 主人の甘い楽しそうな声。

 

「おい、おい。どこまで対策しているんだ……」

 

 付き合ってくれたナイスガイことカインの呆れた声。

 

「だってあの子、伝説レベルだからね、でも最大の弱点は……」

 


 

 カインが叫ぶ。

 

「おい、ソウスケが擬人化ポケモンに突き落とされたぞ」

 

「距離がないやばい! 行け! カナちゃん! あっ、でもこれ使える。狂人の演技で行こう。ケケ」

 

 電車内に急ブレーキ金属音が響く。

 


 

 ミミッキュが出た後。

 

 イナホの火炎がミミッキュを焼くが、ミミッキュは布が一部倒れるだけでやり過ごす。

 

「駄目かあ」

 

 イナホの威厳は消し飛んでいた。末路を悟ったのだろう。

 

 当然、イナホはミミッキュにしっかり呪われる。

 

 イナホはミミッキュを焼くが、息も荒い。

 

「行って、ナマコブシちゃん」

 

 出てきたのは饅頭のような可愛らしい水生ポケモン。

 

 ほっといても呪いで倒れるだけのイナホはまた神通力でねじ伏せる。倒しきれないことを祈っていたのか手加減だ。

 

 しかし、強すぎるイナホは倒しきれてしまったらしい。

 

 ナマコブシの特性は倒される直前に受けたダメージのカウンター。

 

 ナマコブシの全力の飛び出す腸管、それはそれは綺麗な拳がうにょーんと伸び、イナホの顎をプロボクサーのごとく揺らした。

 

 イナホは脳を揺られながらフラフラと立ったまま揺れるが。

 

「行くぞ、アンリ!」

 

 全力で叫びながらオーダイルが出たとき、イナホは。

 

「目の前歪んだピカチュウだらけで気持ち悪いよー。もう無理ー。3体じゃ無理よー。卑怯だー」

 

 呪いの前に崩れ落ちていた。

 

 

 


 

 

 

 ソウスケは唖然としていた。アンリのポケモンのレベルはソウスケのそれよりかなり低い。そんな彼女がソウスケより遥かにレベルの高いイナホを打倒して見せたのだ。

 

 じゃあ、俺はなんなんだ。やはり、俺は駄目なのか。

 

「イナホちゃん、もうすぐポケセンだよ」

 

「まだあるのー」

 

 グロッキーなイナホの顔に対して、アンリのそれはとても晴れやかであった。

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