弟がお姉ちゃんと呼んでくれない   作:狂骨

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帰る時間

 

それからあっという間に修学旅行は幕を閉じて皆は帰路についた。帰りの新幹線は、行きと異なり、E組の皆と同じ普通車だった。因みに、班も席も殺せんせーの計らいがあったのか、1班で更に桃花の隣である。

 

行きと比べて帰りの新幹線の中では皆は疲れが溜まっているのか、殆どは寝ており、先程までトランプをしていた磯貝や前原達は寝息を立てていた。片岡達も同じだ。

 

それによって、今は桃矢は彼女と2人きりとなっていた。

 

「…」

 

どう会話すれば良いのか分からない。今までずっと避けてきたため、こうして2人だけの空間になるのはあまりなかった。

 

「桃矢」

 

「…?」

 

突然と、彼女の方から声をかけて来た。振り向けば、こちらを見つめる彼女の顔があり、そっと腕を伸ばすと、包帯が巻かれた腕に手を添えてきた。

 

「傷は大丈夫?」

 

「…えぇ」

痛みなど元からない。ただ糸で縫い合わせた切り口に包帯を巻いただけだ。別に放っておけば治る。

 

「大丈夫ですよ」

 

「そっか…」

 

そんな彼女は表情を曇らせながら頭を抱き寄せ、頭を撫でた。

 

「ごめんね…本当はお姉ちゃんが守ってあげなきゃいけないのに、何度も何度も助けられちゃって」

 

「…」

 

その言葉を耳にした瞬間 頭の中に再び自身を必死に看病する彼女の姿が思い浮かんでくる。それと共にあの日、止められなかった自身の無力感が心の奥底から湧き上がってきた。

 

そうだ。楽しむのが目的じゃない。彼女を護らなければならない。こんな言葉を出させてはいけない。

 

もう今回の様な事があってはならない。

 

「…大丈夫ですよ…貴方が私を守る必要はありません。今まで守ってくれたから…今度は私が守ります…あんなボロクズ共や、バカにしてくる連中から」

 

「桃矢…?」

 

彼女から、自身はどんなふうに見えているだろう?どんな表情に見えているのだろう?

 

そんなのどうでも良い。

 

「貴方を二度と…あんな目に合わせません」

 

そして、笑顔で答えた。その笑顔を見た彼女の額からは冷や汗が流れていた。

 

「(橙子さんも隆さんも知ってるだろうな…あの二人にもこれ以上、心配される様な事、しない様にしなきゃ…)」

 

己を責めて責めて、自己責任の塊となったその感情は次第に開いていた心を再び閉ざしていく。

 

「(もう迷惑かけない様に…しないと…)」

 

 

それから桃矢は家に帰るまでずっと、笑みを浮かべていた。心の困っていない、ただ空っぽな笑顔を。

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

それから修学旅行とその振り返り休日が終わり、再びやってきた登校日。

 

「…」

 

いつもの様に早く目覚めると、キッチンへと赴き、食事を作り、洗濯物を干し、家を出ると、全校生徒の誰よりも早く校舎に着いた。

 

そして校舎に到着すると、ロッカーの中にしまってある自身の荷物を全てカバンの中へと入れ、裏山の入り口へと向かうと、自身の所属クラスであるE組校舎へと向かった。

 

 

E組校舎へと続く道は木による階段など、道がわかる様にされてはいる。そのためにどの道を行けば向かえるかも分かる。

 

それでも普通の人であれば険しい山道に代わりない。

 

「(ここをE組の人達は毎日歩いてるのか…)」

 

毎朝、おぼつかない足取りで校舎へと向かうE組の生徒達を思い出しながら脚を進めた。

 

 

 

 

そして、歩く事数十分。次第に林の数が減っていき、遂には大きな光が差し込んできた。

 

 

そこを通り抜けると、そこには広大な敷地があり、その奥に古びた校舎が佇んでいた。

 

『旧校舎』そして現在は『3年E組の教室』

 

「ここがE組校舎か…」

 

「その通り!」

 

「ん?」

 

呟いた瞬間に、背後から聞き慣れた声が聞こえ、振り返るとそこにはタコ型の超生物である『殺せんせー』が立っていた。

 

「おはようございます桃矢くん!」

 

「…おはようございます。殺太先生」

 

「『殺せんせー』と呼んでください。それよりも、誰よりも早い登校、素晴らしい!」

 

「…どうも」

 

朝からハイテンションな殺せんせーに桃矢はついていけず、ただ反応を繰り返すのみ。

そんな中で、殺せんせーは数本の触手を取り出すと懐から数種類のお菓子を出した。

 

「生徒達が来るまでまだ時間があります。どうです?先生とお茶でもしませんか?」

 

「…」

 

陽気に誘ってくる殺せんせーに対して、桃矢はその風貌と身振りを見つめていた。

よくよく考えれば、桃花はこの教師が来てから数学どころか、自身の教えていない範囲も出来始めてきている。

E組には本校舎の様に教科ごとの担任は配属されず全て新人かつ一人の教師が担当するため、本校舎よりも質は高いとは言えない。

 

だからこそ気になっていた。殺せんせーと呼ばれているこの超生物はどの様な教え方をしているのか。

 

それよりも、なぜこの超生物はここへ来たのか。

 

知りたい。その思いに駆られて桃矢はノートを取り出す。

 

「お茶は結構ですが…分からない部分があります。教えてくれませんか?」

 

「ヌルフフフ!良いですよ!」

 

それから校舎の中へと入り、殺せんせーの後をついていく。

 

 

そんな中で、ある物が眼に留まった。

 

「…ん?」

 

それは、普段使われている教室の席に佇んでいた。そこにあったのは、机の前に置かれた____

 

 

 

 

_____黒く巨大な機械だった。

 

「(なんだあれは…?まぁいいか)」

 

少し興味はあったが、今はそんなところではない。その物体を無視して殺せんせーの後をついていった。

 

 

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