ワケアリ少女の進む道   作:猫耳の人

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抱える物


第十話 頂点に立つ者

 

〈No side〉

 

「やべえってアイツ......」

 

飯田対魔嚙戦直後の観戦席、ここでは先ほどの試合を見たA組の生徒達が戦慄の表情を浮かべていた

 

「飯田の脚が......」

 

最後の光景が目に焼き付き、最早試合の内容など覚えていないといった様子で呟く上鳴。場の空気は最悪、その空気を生み出した張本人......魔嚙蒼の姿は、そこにはない。

 

観戦席に戻ってきたのならば、彼女に文句の一つでも言ってやりたいだろう。しかし、どれ程待っても彼女は姿を現さなかった。

行き場のない不満を解消するべく、A組の生徒は魔嚙に対する愚痴を零し始めた。

 

「ほんとにヒーロー目指してんのか?アイツ......」

「訓練の時もそーだったけどよ......おおよそヒーロー目指してる奴の所業じゃねえよな......」

「いったい何が彼女をそうさせるのでしょうか......」

 

愚痴......というよりも、恐れや脅威、怖気を言葉にしているといった様子だ。自分の事を何も話さず、他者を遠ざけ、触れる物を皆傷つける彼女の事をどうしようかと頭を悩ませている。

彼女の過去も経験も、何も知らない彼ら彼女らがどうにかできるハズが無いというのに......

 

「仮にヒーロー目指してるとしてさ......なんでヒーローになろうと思ったのかな、アイツ」

 

ふとそう口にしたのは耳郎だ。嫌味や陰口を言っている様子は無く、単純な疑問を持っているという様子だ。先ほど切島が言ったように、彼女の行動や思考は、ヒーローを目指している人間のソレから大きく外れている。他者を盾にしたり、容赦なく顔面を蹴り飛ばしたり、一歩間違えればヴィランと言われてもおかしくない事をこれまでしてきた。

 

しかし、彼女はヴィランではなくヒーローを目指している。ヒーロー科に在籍し、ヒーローとしての知識や技術を学んでいることが何よりの証拠だ。力を誇示したいだけなら、態々ヒーローにならずとも、ヴィランになった方が手っ取り早いし、何よりルールに縛られる必要がない。

なのにそれをしていないという事は、少なからず、彼女にも「ヒーローを目指す理由」があるという事......

 

「確かに、彼女はヴィランのに間違われてもおかしくない事をしてきたとは思う。それでも、彼女が本気でヒーローを目指して此処にいるって事は確かだと思うよ。」

「尾白?」

「......あれだけの技術や実力、生半可な鍛錬じゃ身に付かない程研ぎ澄まされてる。彼女が目標の為にこれまでしてきた努力は、誰が何と言おうと賞賛されるべきものだと、俺は思う」

 

尾白のその言葉に、A組一同は複雑そうな顔を見せる。

A組然り、雄英高校ヒーロー科に在籍する一年生たちは確かに強い。今年の一年は粒ぞろいだと言わしめる程度には......

 

だが、それは「個性」を見た場合の話だ。戦闘技能や経験に置いてはズブの素人。プロの足元にも及ばない。しかし魔嚙は違った。素人目で見ても分かるほどにレベルが違う。

 

個性が「尻尾」の尾白だからこその視点なのだろう。個性単体で見れば、戦闘力は皆無に等しい、故に今は廃れた武術で、その不足分を補っている尾白だからこそ。

体の使い方や格闘技術、地形の活かし方。「個性」以外での総合的実力が群を抜いて高い。それこそ、トップヒーローと比べても遜色ない程に。

 

学生の身でそこまでの実力を身につけるには、どれ程の時間を鍛錬に捧げればよいだろうか。これまでの人生の半分か、或いは全てか......いずれにせよ、彼女と近しい実力を、彼女と同じ期間で身に付けろと言われれば、「無理だ」と答える他無いだろう。

 

それを理解しているのか、或いは魔嚙がしてきたであろう鍛錬を想像してしまったのか、A組一同は口を紡いでしまう。

 

「......次の魔嚙の相手は轟か、どんな試合になると思う?なぁ緑谷」

「え!?ななななななんで僕!?」

「落ち着けって」

 

静寂が広がるその空気を嫌がったのか、瀬呂が緑谷に魔嚙について問うた。

突然話を振られた事に狼狽え、しどろもどろになる緑谷を苦笑しながら宥める瀬呂。少しして落ち着きを取り戻した緑谷は、どこからか所々焦げたノートを取り出し、ページをめくり始めた。

 

「う~ん......正直な所、考察の範疇を出ないと思うけど、それでもいいかな?」

「おう、緑谷の意見を聞かせてくれ」

 

瀬呂の問いに答えるように、開いたノートを見ながら口を開き始めた緑谷。開かれたページには、魔嚙らしきイラストが描かれており、そのイラストと一緒に彼なりの考察が書かれている。

 

「次の試合......勝率自体は五分五分だと思う」

「五分五分?そりゃまたなんでだ?」

 

ノートに視線を落としながらそう答える緑谷の表情は、至極真剣な物だった。先ほどまで狼狽えていたとは思えない程に。

 

「轟君が魔嚙さんに対抗できる個性なのは間違いないんだけど、やっぱりどれだけ強力な力を持っていても、当たらなきゃ意味がない。だから、今回カギになってくるのは、炎じゃなくて氷結だと思う」

「......なるほど、氷で拘束って事か」

「そう、轟君的には魔嚙さんの攻撃は食らいたくないだろうから、真っ先に氷結で拘束しに行くと思う、それも最大威力で」

「確かにな、あんだけのパワーと機動力も動けねーんだったら怖くねえもんな」

 

緑谷の言葉に納得の表情を見せる瀬呂。どちらの攻撃も食らったことのある瀬呂だからこそ、案外すんなり納得できたのかもしれない。

 

「だから二人の試合は初動で全てが決まるんじゃないかな。轟君が魔嚙さんを拘束するか、魔嚙さんが轟君の攻撃を対応するか......」

「成程な」

 

逆に言ってしまえば、初動に負けた方は、その時点で負けが決定してしまうという事でもある。緑谷の考察を聞き終えた瀬呂は、その後も緑谷にいくつか質問を繰り返していた。そんな二人の会話は、いつの間にかA組全体に伝播していき、最終的には「魔嚙の個性」の話になった。

 

未だ不明の彼女の個性はいったい何なのか。ある者はシンプルな増強型の個性だと、ある者は案外異形型の個性かもしれないと、ああでも無いこうでも無いと意見を出し合っていた。そうこうしているうちに、第三試合の芦戸対常闇の試合の時間になったので、考察は一時中断。

 

二人の応援をするべく、A組一同は第三試合の観戦を始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

観戦席でそんな会話がされている中、控室に続く通路である二人の人物が会話を交わしていた。

一方は全身に包帯を巻き、黒い服を身に着けた長髪の男性、もう一方は背が高く、藍錆色のウルフカットをした、目つきの鋭い少女......相澤消太と魔嚙蒼だ。

 

「婆さんから話は聞いた。お前、普通科の生徒に手を上げたらしいな」

「......はい」

 

先に言葉を発したのは相澤だ。包帯の奥から覗く鋭い瞳が魔嚙を見据える。

その視線の先に居る魔嚙は、特に反応を示さず、無表情で相澤の話を聞いている。

 

「事の経緯も聞いた。お前の行動も分からないわけじゃない。だがな、お前はヒーロー科で、相手は普通科だ、守る立場のお前が守るべき対象に手を上げてどうする」

 

相澤はため息を吐きながら、僅かな呆れと疑問の籠った声色で魔嚙に言葉を放った。

 

「お前の個性は軽々しく人に向けていい物じゃない。それはお前もわかってるだろ。自分の夢を悪く言われてカッとなるのは分かるが、それでお前が悪者になったら元も子もないだろ」

「......」

 

ぐうの音も出ない正論をぶつける相澤、しかし魔嚙は答えない。ただジッと相澤の目を見据えていた。

 

「プロになってからも同じだ。自分のアンチに一々反応して傷害事件を起こしてたらキリがない。それがお前の夢なのか?」

「......いいえ」

 

答えは否だ。魔嚙とて事件を起こしたくてヒーローを志しているわけではない。

その意を示すように、魔嚙は小さく否定の言葉を漏らした。

 

「そうだろ、教師と言う立場である以上、俺はお前を叱らなくちゃならないが、一人の人間として、お前と言う人間を否定するつもりはない」

「......」

 

この言葉は相澤の本心からの言葉、嘘偽りのない、一人の人間、「相澤消太」の言葉だ。

「否定するつもりはない」、何と綺麗な言葉だろうか。普通の人間であれば、その言葉を信じ、彼について行くだろう。

だが、魔嚙は過去に、信じて、縋って、全てに裏切られてきた。今更人を信じろなんてのは無理な話である。

 

「お前の原点はなんだ、夢を志した理由はなんだ、それを忘れるなよ」

 

彼女の......魔嚙蒼の原点。

 

忘れるはずがない、忘れられるはずがない。その原点こそが彼女の生きる理由であり、今の彼女を形作っているのだから。

 

「......言われなくても、わかってますよ」

「何か言ったか?」

「......いえ、なんでもありません。ではこれで」

「あ、オイ......」

 

半ば強引にその場を立ち去ろうとする魔嚙を止めようとする相澤だが、結局止めることが出来ず、その場を去る魔嚙をただ見送る事しかできなかった。

 

「......」

 

その場に一人残された相澤は、今回の件を含めたこれまでの魔嚙の事件や出来事を思い出し、人間的にもヒーロー的にも「危うい」と判断した。

他者どころか自らも顧みない行動。爆豪とはまた違った、他方面に敵を作るような態度......彼女が何を目的にヒーローを志したのか相澤には分からないが、少なくともこのまま行けば、魔嚙を待つのは「破滅」。誰からも祝福されることなく、夢への道は閉ざされ、道半ばで力尽きる......

 

この世界のヒーローが、良くも悪くも人気商売であることは魔嚙も理解しているだろう。

拳藤にも言われたことだ。人気や実力があれば、それだけ道は開けるし、夢も叶えやすくなる。

しかし、それを理解していて尚あの態度だとするのなら......

 

「はぁ......厄介な奴が来たもんだ」

 

誰も居ない通路で相澤は小さく呟き、魔嚙蒼という生徒の性質を改めて理解し、どうしたものかとため息を吐いた。

これまでの相澤の教師人生の中で一番とも言える程偏屈な生徒、試せることはなるべく試すつもりではあるが、それで確実に改善できるかと問われれば、「できないだろう」と答えざるを得ないだろう。

 

「......他者を教え導くってのは、中々難しい物だな......なぁ、白雲......」

 

珍しく弱音を吐くように、今は亡き友の名を呟く相澤。

数秒ほど物思いに馳せた後、自らの仕事を思い出したかのように解説席へ戻る。やる事は山積みだ。彼に休んでいる暇などない。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移り控室、荷物だけが置かれた誰も居ないはずのこの場所に、魔嚙はたった一人で佇んでいた。

 

「......」

 

何をしに控室に来たのかというと、先ほどの飯田との戦闘で活性化した個性を鎮めるべく、薬を飲みに来たのだ。魔嚙は自分の荷物の中から二つの瓶と水を取り出し、中に入っている薬を水で流し込む。

 

「ケホッ......」

 

口の端から垂れる水を拭い、大きく息を吐く。すると少しずつ個性が落ち着きを取り戻していき、昂っていた心が沈静していく。

 

「......この程度で十分か」

 

自分の掌を眺めながら言葉を零す魔嚙。

個性の活性具合を考慮しても、魔嚙の「実力」を見せつけるフェーズはこの辺りで終わらせても良いだろう。

ここからは魔嚙と他の奴らの「力の差」を見せつけるフェーズだ。弱者がいくら力を付けようと、所詮は「力を付けただけの弱者」、本物の「強者」の足元にも及ばない。

 

ならばその力の差をどのようにして見せつけるか。

 

もし最低限の力で、クラス屈指の実力者二人を一瞬で下し、その上でまだまだ余裕があるように見せつければ......

 

強さの次元が違うと、お前達の敵う相手ではないと、力の差を理解させることができるだろう。そうすれば、今回のように面倒事に巻き込まれることも無くなる。

 

彼女がどれだけ力を抑えようとも、彼女を疎み、妬む人間は蛆の如く湧いてくる。ならば、初めから力を見せつけ、恐怖を植え付けることで、関わらせないようにすればいい。

 

「......そんなに見たいのなら見せてやる。その目に焼き付けると良い」

 

黒い感情の籠った声で、魔嚙は一人そう呟いた。

 

「切島君戦闘不能!!爆豪君の勝利!!」

 

その呟きの数秒後、二回戦最終試合......爆豪対切島の対戦が終了した。案の定勝利したのは爆豪だった。これから小休憩を挟み、直ぐに準決勝が始まるだろう。

 

「......行こう」

 

準備を済ませた魔嚙は、薬の瓶とペットボトルをカバンにしまい、フィールドに向かうべく控室を後にした。これから始まるのは、「戦い」ではなく一方的な「狩り」......

 

今、血に飢えた一匹の狼が、獲物を求めて動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『準決!!サクサク行くぜ!!お互い成績トップクラスの実力派!!魔嚙蒼バーサス轟焦凍!!』

 

小休憩を終え、体育祭もいよいよクライマックスに差し掛かって来た。

そのため、プレゼントマイクも盛り上げようと声を上げるが、その声に反して会場は全くと言っていい程盛り上がりを見せない、それどころか、更に不穏な空気が辺りに立ち込めている。

盛り上げようと奮闘するプレゼントマイク本人も、不安のせいか、イマイチ盛り上がりきれていない。

 

「......」

 

その空気を作り出した原因である魔嚙は、そんな事すら意に介さず、ただ始まりの合図を待つかのように、静かにそこに佇んでいた。

 

「......」

 

対する轟も、魔嚙の方を見つつ、いつ試合が始まっても良いように準備をしている。

轟にとって、彼女は自分の復讐を下らない物だと吐き捨てた怨敵......だが、その考えや価値観は、先の緑谷との試合で壊された。

左の炎は自分の力だと、氷で覆われた自分の心を正面から打ち砕かれ、封じていた炎を使った。母を追いつめた父の事も、自分に煮え湯を浴びせた母の事も忘れ、あの一瞬だけ、轟の心は一つの思いで満たされた。

 

「勝ちたい」という思い、ただそれだけに。

 

だが、轟は今迷っている。あの思いが正しかったのか、忘れたことが正しかったのか......今の轟には分からなかった。

 

しかし、そんな出来事があったからこそ、視野が広くなり、周りにも視線が行くようになったのだろう。轟は魔嚙のことを思い出していた。

鋭い眼光に感情の読み取れない表情、そしてこれまでの彼女の発言や行動......まるで今までの自分を見ているようだと、轟は無意識に考えた。

 

彼女は何処を見て、何を目指しているのか......

 

彼女の視界には、轟は愚かクラスメイト達も映っていない。

もし、そんな彼女を、緑谷が自分にしてくれたように救えたのなら、自分の選択が、思いが、正しかったのか分かるかもしれない。

そんな思いを持ち、轟は目の前に立つ魔嚙に声を掛けた。

 

「なあ、魔嚙」

「......」

 

轟の声に、魔嚙は反応しない。しかし、轟は気にせず言葉を続ける。

 

「お前が今、何を見て、何を思ってるのかわからねえし、俺が言えた事じゃねぇかもしれねぇが......もし、何かに囚われてんなら、緑谷が俺にしてくれたみてぇに、お前を助けたい」

「......」

 

魔嚙を見据え、ハッキリとそう告げる轟の顔は、何かに迷っているような顔ではなく、ただ一人のヒーローとして、目の前に居る者を救わんと決意を固めた、凛々しい顔つきをしていた。

 

「......」

「......」

 

相対する両者は、互いに無言のまま開戦の合図に備えた。魔嚙は利き足を引き、轟は右側に冷気を纏う。

肌を突き刺すような張り詰めた空気が辺りに充満し始めたその時......

 

『START!!』

 

プレゼントマイクにより、開戦の合図が為された。

 

その瞬間......

 

「っが......!?」

 

最大威力の氷結を放とうとした轟の腹部に、魔嚙の鋭い蹴りが突き刺さる。内臓が潰れてしまうのではないかと錯覚する程の衝撃に、轟は耐える事ができず、大きく後ろに吹き飛ぶ。

 

「っ......!!

 

場外に出る寸前、辛うじて動き出せた轟は咄嗟に背後に氷塊を出現させ、場外に吹き飛ぶのを防いだ。

 

「ゲホッ......」

 

氷結を出す間もなく吹き飛ばされた轟。咳き込みながらも、震える脚で立とうと踏ん張る。

 

しかし、轟が立ち上がる前に、いつの間にか近づいていた魔嚙の容赦のない蹴りが、無慈悲にも轟の腹部に炸裂した。脚を伸ばす瞬間に体重を乗せて蹴る、所謂ヤクザキック。

力が一点に集中したその蹴りは、轟の背後にあった氷を粉砕し、氷の欠片諸共、轟を場外まで吹き飛ばした。

 

「が......はっ......」

 

凄まじい威力の蹴りを受けた轟は血反吐を吐き、スタジアムの壁に激突する。そのまま壁からずり落ち、場外で力なく横たわった。

どうやらあまりの衝撃とダメージに意識を失ってしまったようだ。

 

「......」

 

魔嚙は意識を失った轟を見下ろしてから、ミッドナイトの勝者宣言を聞くことなく、自身が入って来た出入り口まで歩いて行く。

 

その時、魔嚙はふと観戦席の方を見上げた。視界の先あるのは普通科の生徒達......その中で、魔嚙はある人物を見つける。

その人物は、先ほど魔嚙の地雷を踏み抜き、締め上げられた普通科の女子生徒。

魔嚙がその女子生徒を発見するのと同時に、普通科の女子生徒が、魔嚙が自分を見ていることに気付く。瞬間、女子生徒の顔が一気に青褪める。

 

そんな女子生徒を見据えながら、魔嚙はその女子生徒に向けて、口パクで言葉を発した。

するとその女子生徒は恐怖に顔を染め、涙を流しながら過呼吸を起こし始める。様子のおかしいクラスメイトを発見したためか、普通科の生徒達が一斉にその女子生徒に駆け寄り、何とか落ち着かせようと奮闘している。

 

結局、普通科の生徒だけでは落ち着かせる事ができなかったのだろう、過呼吸を起こした女子生徒は担架で運ばれていき、救急搬送されていった。

 

会場がどよめきと混乱に包まれる。

 

にわかに騒がしくなり始めた会場には目もくれず、魔嚙は観戦席から視線を外し、控室へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......」

 

控室

試合終了後、何事もなく控室に到着した魔嚙は、次の試合に備えて休息を取っていた。目を瞑り、瞑想をしている。

 

魔嚙がフィールドを去ったあと、プレゼントマイクの活躍で何とか空気は持ち直した。現在は準決勝第二試合の爆豪対常闇が行われている。

 

瞑想を始めてから10分ほど経った頃、ようやく試合が決着、魔嚙の予想通り、爆豪が常闇を下し、決勝まで上がって来た。

魔嚙はモニターに目を向け、次の試合の時間を確認する。試合はおおよそ50分後。決勝の前に三位決定戦がある。もう少し休息を取っても十分間に合うと判断し、再び目を瞑った。

 

そうして瞑想を続けていると、三位決定戦が終了した。結果は轟の勝利。魔嚙はそれを横目で確認し、再び瞑想を始めた。それからしばらく時間が経ったその時......

 

「あ?」

 

控室の扉が乱暴に蹴破られ、一人の男子生徒が控室に入って来た。

魔嚙の居る控室に入って来た不良の様な生徒......爆豪勝己は、何故か自分の控室であろう場所に堂々と居る魔嚙を見てフリーズしてしまう。

数秒の沈黙を挟み、再起動した爆豪は慌てたように外に立てられた表札に目を向けた。

 

「なんでテメェがここに......!?控室......あ!?ここ2の方かクソが!!」

 

どうやら自分が控室を間違えたことに気が付いたらしく、出入口で悪態を吐き始める爆豪。そんな彼を、魔嚙は横目でチラリと見た後、直ぐに視線を外した。まるで興味など微塵も無いと言わんばかりに......

 

「!!......舐め腐りやがって......!!」

 

その彼女の態度が気に食わなかったのだろう、苛立った様子を見せながら魔嚙に近づいて行く爆豪。そして、湧き出る感情のままに片手を振り上げ......

 

「どこ見てんだよデカ女が!!」

 

BООМ!!

 

と、見せつけるように魔嚙の前にある机を爆破して見せた。

爆風で魔嚙の髪が暴れる。しかし、当の本人である魔嚙は微動だにせず、爆破による威嚇を受けても尚、動揺する様子もなく瞑想を続けている。その態度が、爆豪の怒りをさらに加速させた。

 

「聞いてんのかクソアマ!!」

 

吊り上がった目で、怒りのままに言葉を吐き出す爆豪。そこでようやく魔嚙が目を開け、座っていた椅子から立ち上がった。

 

「......」

 

爆豪よりも身長が高い魔嚙は、立ち上がれば必然的に爆豪を見下ろす形になる。立ち上がった魔嚙は、そのまま爆豪に対して軽蔑と殺意を込めた絶対零度の視線を向けた。

 

瞬間、爆豪の背中に凄まじい悪寒が走る。USJ襲撃事件の時とは比べものにならないほどのドス黒い殺気と威圧感......それを向けられた爆豪は、一瞬臆されるが、直ぐにその鋭い眼光で魔嚙を睨み返した。

 

空気がヒリつく。数秒の沈黙の後、魔嚙は爆豪から視線を外し、出入口に向かって歩き始める。そして......

 

「......君の癇癪に付き合ってやれる程、私は暇じゃないんだ」

 

歩きながらそう吐き捨て、体を伸ばしながら控室を出て行こうとする魔嚙。

 

その時......

 

「ふあ......ぁ......」

「......!!」

 

魔嚙が、爆豪の目の前であくびをした。最後の試合である事や、ここまでの疲れ等、様々な要因が重なり、魔嚙も個性も反応しない程微かに、気が緩んだのだろう。

 

あくびそのものはただの生理現象だが、自身の対戦相手のそれを目撃した爆豪にとって、それは自分自身を舐め腐っていると言われているようなものだった。

 

そんな態度を取られたからか、魔嚙に文句を言うべく、怒りに任せて声を出そうとする爆豪。しかしその時......

 

「......どこを見ているか、だったね。少なくとも、君の事は見てないよ」

「......!」

 

爆豪が言葉を発する前に、魔嚙がそう言い放った。

振り返る事もせず、爆豪に対してただ冷たくそう言い放ち、魔嚙は控室を出ていった。

 

控室に残された爆豪は、一人怒りに顔を歪ませていた。

「君の事は見てない」、つまりはハッキリと、「お前など眼中に無い」と吐き捨てられたのだ。爆豪にとって、それは最大限の屈辱。

侮られてすらおらず、一番になるはずの自分を、道端の石ころ以下の存在だと、気に留める程の存在ですらないと言われているような、そんな気分になるから。

 

爆豪勝己という人間は本質的に、他人に下に見られたり、舐められたりする事を極端に嫌う。何故なら自分が一位じゃないと気が済まないから。

だからだろう、魔嚙のその発言は、爆豪の怒髪天を突いた。

 

「見てねェだァ......?上等だ......その余裕を上からねじ伏せてやる......!!」

 

額に青筋を浮かべ、血が出るのではと思う程に拳を握りしめる爆豪。

しかし、その感情とは裏腹に、爆豪の顔は勝気な笑みを浮かべていた。

 

「テメェを負かして、そんで、俺がトップだ」

 

魔嚙が居なくなった控室で一人そう呟いた爆豪は、その勝気な笑みを浮かべたまま、魔嚙を追うようにフィールドに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『さァいよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!』

 

雄英体育祭決勝戦。文字通り、雄英1年のトップが決まる、正真正銘の最後の試合......

本来であれば、会場中からの歓声や万雷の喝采が鳴り響いているはずの試合だろう。だというのに、会場からは拍手は愚か、歓声の一つも聞こえない。あるのは虚しく木霊するプレゼントマイクのアナウンスのみ。

 

それもそうだろう、なにせ今フィールドに立っているのは、雄英高校1年A組が誇るド級の問題児二名なのだから。

 

粗暴な態度と言動が目立つ、ザ・不良といった風貌の男子生徒、爆豪勝己。

 

冷血で無常、人間味を欠片も感じ取ることができない女子生徒、魔嚙蒼。

 

フィールドに立つ二人の雰囲気はまさに一触即発。肌を突き刺すような殺伐とした空気が蔓延している。

そんな空気を気にも留めていないのか、フィールドに立つ二人は、それぞれが試合開始に備えて準備をしている。

体を伸ばしつつも、魔嚙を睨み付け爆豪と、そんな爆豪に視線も向けず、これまでのようにただ俯き、試合の開始を待っている魔嚙。

 

「「......」」

 

両者とも言葉は交わさない。理由は違えど、それは無駄であると理解しているから

何度目か分からない沈黙が流れる。緊張感が走る会場、誰もが開始に備え、固唾を飲んで見守っている中、ついにその時は訪れた。

 

『決勝戦!!魔嚙対爆豪!!今!!START!!』

 

開戦の合図、最初に動き出したのは爆豪だ。

 

「閃光弾(スタングレネード)!!」

 

爆豪は開始の合図とほぼ同時に正面へ両手を突き出し、常闇戦で使用した相手の視覚と聴覚を奪う技、閃光弾(スタングレネード)を使用。刹那、フィールドが爆発音とともに凄まじい光に包まれる。

 

余りの光量に思わず目を瞑ってしまう観客席の面々。

観戦席に居るA組の生徒達も、その光景に皆一様に驚いているが、彼らの驚きは観客とは別の所にあった。それは......

 

「かっちゃんが先手を取った......!!」

 

そう、爆豪が先手を取った事だ。

 

これまでの爆豪は、相手を圧倒してはいた物の、初動は待ちの姿勢を貫き、相手の攻撃を上からねじ伏せる、という動きを取っていた。

しかし、今回に限ってはそれをせず、自ら動き攻めに回った。それはなぜか、理由は単純、魔嚙に先手を取られると何もできないからだ。

 

魔嚙の身体能力を持ってすれば、たとえ爆豪が相手だろうと、何もさせずに勝利することができるだろう。

爆豪もこれまでの魔嚙の戦いを見て、不本意ながらもそれは認めている。だから先手を取ったというわけだ。先に攻撃を当て、流れを掴むために。

 

魔嚙の目と耳を潰した爆豪は、爆破の勢いを利用して即座に魔嚙に迫る。ノーダメージでの接近に成功した爆豪は、そのまま魔嚙へ爆破を......

 

するのではなく、かつて戦闘訓練で緑谷にやって見せたように、魔嚙の眼前で爆破を起こし、強引に軌道変更。勢いを調整しつつ、空中で器用に背後に回った。

やるなら徹底的に、舐められたからには相応の仕返しを。みみっちいと揶揄される彼だが、その実力とセンスは本物だ。そのセンスや実力を考慮すれば、彼の言う完膚なきまでの勝利を収める事が出来るだろう。

 

 

 

ただ、それは相手が魔嚙では無かったらの話である。

 

 

 

(獲った......!!)

 

背後に回った爆豪は、そのままがら空きの背中目掛けて爆破を放とうと、右の大振りを放つ。視界と耳が使い物にならない今なら回避も迎撃もできやしない。

 

確実に狩れる。

 

誰もがそう考えるであろうこの状況、それは爆豪も例外ではなく、彼もまた、その状況に勝気な笑みを浮かべている。

 

しかし、現実はそう上手くはいかない。

 

「な────」

 

がら空きの背中に向けて爆破を放とうとした爆豪の攻撃は、見事に空を切った。何が起きたのか、見えていないはずなのになぜ回避できたのか......その思考が完結する前に、爆豪の顔面に魔嚙の後ろ回し蹴りが炸裂した。

 

芸術的ともいえるその蹴りは、目が見えていないとは思えない程正確に爆豪の顔面を捉えた。蹴りを食らった爆豪は、錐もみしながら吹き飛ばされていく。

しかし、大人しくやられる爆豪ではない。咄嗟に爆破を起こし、追撃を避けるために空中に回避を試みる。

 

だが......

 

「か────っ」

 

まるで見えているかのように爆豪へ走り出す魔嚙。一度の踏み込みで追い付き、空中へ回避しようとしている爆豪を逃がすことなく正確に捉えた。

魔嚙は爆豪の胴体目掛けて強烈な蹴りを叩きこみ、その力を余すことなく爆豪にぶつける。

 

ミシミシと骨が軋むような音が鳴り、次いで骨が折れるような感触が魔嚙の脚に伝わるが、それに構わず魔嚙は脚を振り抜き、爆豪を天高く蹴り上げた。

凄まじい膂力で蹴り上げられた爆豪は一瞬怯むが、すぐに体勢を立て直し、空中へ逃げ延びる。

 

(あばら持っていかれた......!!)

 

あばらをへし折られた事による痛みに苦悶の表情を浮かべる爆豪。呼吸をするたびに鈍い痛みが爆豪に走る。しかし、爆豪は目論見通り、空中に逃げる事に成功した。

爆豪は個性で空中に留まり、思考を巡らせる。

 

(バカみてぇなパワーとスピード......馬鹿正直に突っ込んでも当たんねぇ。なら......!!)

 

痛みを堪えて体を捻り、魔嚙を視界に捉えた爆豪は、魔嚙に向けて両の手を伸ばし、個性を使用すべく構える。

 

(最大火力でぶっ飛ばしたる......!!)

 

当たらないのなら、絶対に避けられない範囲攻撃で確実に当てる。対魔嚙においては理にかなった方法だ。爆豪の掌がパチパチと音を立て、爆破の吉兆が現れる。そのまま最大威力の爆破を放とうとするが、それをさせてくれるほど、魔嚙は甘くない。

 

「......」

 

爆破の吉兆が聞こえたのか、爆豪が爆破を行う寸前、魔嚙は右脚を大きく振り上げ、そのまま力任せに地面に振り下ろした。

バガァン!!と大きな音を立てて砕ける地面。それを確認した魔嚙は、砕けた地面の瓦礫を一つ手に取り、空中の爆豪目掛けて正確に投擲した。

 

「っ!?」

 

咄嗟に爆破を収め、回避行動を取る爆豪、しかし完全には回避しきれず、頬が瓦礫によって切り裂かれた。ギリギリで何とか命中は避ける事が出来たが、もし当たっていたら、爆豪の頭がトマトのようにはじけていただろう。

そして回避を安堵する間も無く、間を潰すかのように、大小様々な無数の瓦礫が爆豪目掛けて飛んでくる。

 

「んの......!!」

 

爆豪は一度攻撃の体勢を解き、爆破を利用して瓦礫を砕いていく。当たれば致命傷は必須、ただでさえあばらが折れており、動くだけでも激痛が走るというのに、これ以上の傷は負えない。

 

「ウゼェなァ!!」

 

数秒間の攻防の後、ついに耐えきれなくなった爆豪が動き出した。

爆破で瓦礫の破壊と加速を同時に行い、凄まじい速度で急降下し始める爆豪。その勢いのまま魔嚙に爆破を食らわせるつもりだ。

 

魔嚙もそれを察知したのか、爆豪の攻撃が届くギリギリでバックステップで爆破を回避。爆豪の次の行動を見る。対する爆豪も、あばらに走る痛みに顔を歪めながら、そのギラついた瞳を魔嚙に向けた。

 

(チッ......めんどくせぇ......!!)

 

試合は膠着状態にあるが、依然として爆豪が不利なのは変わらない。

爆豪としては何としても最大火力の爆破を当てたいが、それを放つための「溜め」が作れない。それに、どう見ても魔嚙は本気を出していない。

本気ではない相手にここまで追い込まれていること、それは爆豪にとって非常に腹立たしい事だ。

 

「チッ......」

 

荒く息を吐きながら舌打ちをする爆豪。

このまま動き続ければ、先にくたばるのは間違いなく爆豪の方だ。爆豪もそれを理解しているようで、歯を食いしばって動き始めた。

 

(遠距離じゃデカ女に邪魔されてハウザーが撃てねぇ、なら......)

 

その思考と同時に、爆豪は爆破を起こして魔嚙に接近していく。

爆豪の思考の通り、遠距離では最大火力を撃てるだけの隙が無い。しかし、最大火力をぶつける以外に勝ち筋が見いだせない。ならばどうすれば良いか、彼が取った行動は、非常にシンプルな物だった。

 

(近接で隙作って、そこにハウザーブチ込んだる.....!!)

 

隙が無いなら作る。至極単純な考え。隙は伺うものではなく、動いて作る物。彼らしい思考回路だ。それを体現するかの如く、爆豪は魔嚙目掛けて動き出す。

 

(そのスカした面ァ、今に吠え面に変えてやんよ......!!)

 

轟音と共に踏み込み、魔嚙に肉薄する爆豪。勢いに任せて攻撃を仕掛け、魔嚙の体勢を崩すべく、体術と爆破を織り交ぜた連続攻撃を仕掛ける。

しかし、その攻撃は一撃も当たることなく空を切る。それでも爆豪は攻撃の手を緩めなかった。そうして数秒攻撃が続いた頃、いい加減鬱陶しくなってきたのか、ついに魔嚙も反撃に動く。

 

「っ......!!」

 

攻撃の後の一瞬の隙を突き、魔嚙の蹴りが爆豪の右腕を砕いた。鋭い痛みが爆豪の右腕に走る。それでも手を緩めない爆豪に対し、今度は左脚を砕く魔嚙。飯田の時と同様、観客席からどよめきが生じる。流石の爆豪もここまでされたらと、誰もがそう考えた。

 

だが、当の本人は止まるどころか更に動きを加速させていった。

爆破の威力も徐々に増していき、最初に比べて明らかに動きのキレも良くなっている。片手片足が機能していないというのに、むしろ今とは比べ物にならない程に動きが良くなっている。

 

「ハッ!!この程度で俺が止まると思ったかよ!!舐めプのカスに殺される程俺は弱くねぇぞ!!」

「......」

 

勝気な笑みを浮かべ、魔嚙を煽る爆豪。その瞳にはかつてない程の闘志が宿っているように見える。その爆豪と向き合っている魔嚙は、息を切らした様子も、疲労している様子も無く、ただその冷たい瞳を爆豪に向けている。

 

互いに一歩も譲らぬこの状況、戦況は更に加速していき、いよいよ「試合」の範疇を超え、「死闘」の領域に至ろうとしていた。

 

「がっ......!!」

 

膠着状態を破るかのように、魔嚙の回し蹴りが爆豪の腹部に炸裂、二人の距離が大きく離れる。

 

「まだまだァ!!」

 

口から血反吐を吐きながら再び魔嚙に迫る爆豪、それを迎え撃つべく、魔嚙が脚に力を込めたその時。

 

「そこまで!!」

「!!」

 

二人の間にセメントの壁が出現すると同時に、ミッドナイトの声が会場に響き渡った。ミッドナイトが試合を中断させたのだ。ミッドナイトは二人が停止したのを確認すると、魔嚙の方を向き、話しかけた。

 

「これ以上は爆豪君の身が持たないわ、試合は中断よ」

「......」

 

ミッドナイトが神妙な面持ちで二人にそう告げた。その言葉を聞いた魔嚙は、興が覚めたかのようにミッドナイトと爆豪から視線を外し、そのままフィールドから出ようと歩を進めた。それを見届けたミッドナイトは、救護用ロボットに指示を出し、爆豪を保健室に連れて行くよう指示を出す。

 

しかし......

 

「待てや!!まだ俺は死んでねえ!!」

「......」

 

ミッドナイトの静止など知らんと言わんばかりに、爆豪が魔嚙目掛けてそう叫んだ。

 

「爆豪君......!!よしなさい!!それ以上はあなたの体が──」

「黙ってろ!!オイデカ女......虚仮にすんのも大概にしろよ!!何にビビってんのか知らねーが......俺に勝ちたきゃ殺す気で来いや!!」

 

動くことは不可能ではないにしろ、動く度に耐えがたい激痛が走るはずだ。だというのに、爆豪は立ち上がり、闘志を宿したその鋭い眼光で魔嚙を捉える。流石のタフネスと言ったところだろうか。しかし、いくら彼がタフだからと言って、今の状態で戦闘を続行すれば、確実に取り返しのつかないことになるだろう。

 

「テメェの底を引きずり出して!!それで俺が.....!!いち......ばんに......」

 

そんなことなど知らねぇと言わんばかりに、ミッドナイトの静止を振り切ってそのまま戦闘を続行しようとした爆豪だったが、次の瞬間には気を失い、すうすうと寝息を立ててその場に倒れた。

何が起きたのかは明白だろう。ミッドナイトの仕業だ。

 

個性「眠り香」、彼女の体から発せられる香りは他者を眠らせる効果がある。

その個性で爆豪を眠らせ、強制的に試合を終わらせたのだ。それを示すかのように......

 

「爆豪君行動不能、よって......優勝は魔嚙蒼さん!!」

 

ミッドナイトが勝者宣言を行った。

その宣言を耳にしながら、魔嚙は担架で運ばれる爆豪には目もくれず、控室へ続く通路へ向かって歩き出す。

 

歓声も、拍手も、勝者を称える喝采も聞こえない、あるのは沈黙と淀んだ空気だけ。

そんな空気だけを残し、異質とも言える今年の体育祭は、魔嚙蒼の優勝という形で強制的に幕を下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれより!!表彰式に移ります!!」

 

体育祭の全種目が終了し、カラフルな狼煙が上がる中で、表彰式兼閉会式が開式された。ミッドナイトの言葉と同時に地面が展開し、地中から表彰台がせり上がってくる。

しかし、その表彰台は異質なもので、お世辞にも普通とは言い難いであった。

 

まるで封印されている獣の様な風貌で、見事な暴れっぷりを見せる二位と、その二位を下し、一位という栄冠を手にも関わらず、嬉しそうな様子など微塵も見せない、無表情の一位の姿。

 

「ん゛ん゛~~~~~~!!!」

「......」

 

解放されれば今にも魔嚙に襲い掛かりそうな爆豪と、そんな爆豪は愚か、誰も視界に入っていない魔嚙の様子に、会場の人間達は何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「そ......それではメダル授与に移ります!!今年メダルを贈呈するのは勿論この人!!」

「ハ~ッハッハッハッハッ!!」

 

気を取り直して、と言わんばかりにミッドナイトがそう言うと、会場の上部......天井の更に上から特徴的な笑い声が聞こえてくる。

この世で彼を知らない人間など居ないと言われるほどに有名なヒーロー、そんなヒーローが、表彰台に立つ者たちにメダルを授与するべく現れた。

 

「私が!!メダルを持っ「我らがヒーローオールマイト!!」来た!!」

「......」

 

思いっきり被った二人の声。シーンと静まり返る会場。しばらく沈黙が続くが、流石に居た堪れなくなったのか、強引に空気を変えてメダル授与に移るオールマイト。まずは三位の轟からだ。

 

「轟少年、おめでとう」

 

轟にメダルを授与し、目を合わせるオールマイト。そのまま轟に問いかける。

 

「準決勝で初めから左側を使わなかったのには、訳があるのかな」

 

そう問いかけるオールマイトに答えるように、轟はゆっくりと口を開き、話し始めた。

 

「緑谷戦でキッカケを貰って......分からなくなってしまいました。あなたが奴を気に掛けるのも、少しわかった気がします。俺もあなたの様なヒーローになりたかった。ただ......俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃダメだと思った」

 

その言葉と同時に、轟は視線だけを魔嚙の方に向ける。それを受けた魔嚙は、気付いていないのか、それとも気にしていないのか、轟の方を向くことは無かった。

 

「清算しなきゃならない物がまだある」

「......顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。今の君なら、きっと清算できる」

 

そのことあの後、オールマイトは轟を抱きしめてから、その場を離れる。そして......

 

「さて爆豪少年!!っと、こりゃあんまりだ......」

 

拘束されている二位......爆豪の元へ歩いて行き、口の拘束具を外してやる。すると.....

 

「オールマイトォ......こんな順位......何の価値もねぇんだよ!!世間が認めても俺が認めなきゃゴミなんだよ!!」

(顔すげえ......)

 

ビキビキと音が聞こえてきそうな程目じりを吊り上げ、魔嚙を睨みつけながらそう言葉を発する爆豪。爆豪がキレるのも仕方ないだろう、なにせ対戦相手に舐められた挙句、外部から強制的に試合を終了させられたのだから。そして爆豪の視線の先に居る元凶、魔嚙は、轟の時と同様に、爆豪に一切視線を向けない。

そんな爆豪を宥めるように、オールマイトは話し始める

 

「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。だから受け取っとけよ!傷として忘れぬよう!」

「要らねっつってんだろうが!!」

 

首にメダルを掛けようとするオールマイトに抵抗するように、鼻の頭でメダルを防ぎ、拒否する爆豪。ついには力づくで口に引っ掛け、爆豪の元を離れた。

 

そしてついに、表彰台の一位......玉座とも言える場所に君臨する彼女、魔嚙蒼の元へ歩く。

 

「魔嚙少女、優勝おめでとう」

「......ありがとうございます」

 

魔嚙に向けて賞賛の言葉を述べるオールマイト。魔嚙もそれに対し礼を言うが、それは形式上の物であり、本心ではない。その証拠に、彼女の表情はピクリとも動いていない。

そんな彼女に、オールマイトは話しかけた。

 

「君は強いな、魔嚙少女。その強さには何か秘訣があるのかな?」

「......特に何も」

「そうか......魔嚙少女、君は確かに強いが、同時に危うさもある。今回は優勝できたかもしれないが、次はこうは行かないかもしれない。考え、学ぶことは多いぞ」

 

オールマイトがそう話すと、魔嚙はその鋭い瞳をオールマイトに合わせ、言葉を紡ぎ始めた。

 

「......今回の体育祭、私は勝つべくして勝ったと思っています。ですが、僅かでも油断があれば、私は今この場に居なかったとも思っています」

 

魔嚙の言葉に反応したのは爆豪だ。今にも噛みつきそうな程に強烈な表情をしながら魔嚙を睨みつけている爆豪、そんな彼を放っておきながら、魔嚙は言葉を続けた。

 

「これから先も、私は自分の力を過信するつもりはありませんが、やる事は変わりません。私は私の目的の為に進み続ける。ただそれだけです」

 

表情を変えずにそう答える魔嚙に、オールマイトやA組の面々は何とも言えない表情を浮かべる。ふざけている様子は無い。彼女の瞳から。その言葉が本気だという事が伝わってくる。

 

「そ......そうか......その向上心があれば、君の言うように先に進み続ける事が出来るだろう。言いたいことは色々あるが......その気持ちは大事にするんだぞ」

「......言われなくともそのつもりです」

 

オールマイトからメダルを受け取り、首に掛けられたメダルを手に持って眺めながら大きく息を吐いた。

 

(ようやく終わった......一時はどうなるかと思ったけど......何もなくてよかった)

 

多少危うい場面はあったものの、個性で完全に自我を失うことなく体育祭を終えられたことに安堵し、緊張の糸が解ける。

 

その瞬間

 

ドクンッ

 

「っ!?」

 

魔嚙の心臓が大きく脈動し、抑えていたはずの個性が急激に活性化し始めた。

 

(なん......で......!?)

 

心臓部を抑え、息を乱す魔嚙。薬を飲み、一度は抑え込んだはずの個性だったが、今こうして表に出ようと魔嚙を内側から刺激している。

どうやら、魔嚙自身が想定していたよりも個性が進行していたようで、ふと気を抜いた瞬間にそれが一気に襲ってきた、というわけだ。

 

「っ......」

「魔嚙少女......!?」

 

突如苦しみ始めた魔嚙を目撃したオールマイトが魔嚙に駆け寄る。ミッドナイトもそれに合わせて魔嚙に駆け寄り、心配そうに背中を擦り始める。

息を切らし、脂汗を額に滲ませながら膝を突く魔嚙。髪で隠れているが、瞳孔も開ききっている。その状態を普通ではないと判断したミッドナイトが、魔嚙を保健室に連れて行くべく肩を貸そうと腕を掴んだ。しかし

 

「ひと......りで......大丈夫です......」

 

苦悶の表情を浮かべながらも、魔嚙はミッドナイトの腕を少し強引に振り解く。そのままおぼつかない足取りで表彰台を降り、会場中の視線が集まっているのも気にせず、「控室」へ繋がる通路へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔嚙さん......大丈夫かな......」

 

閉会式終了後、HRを終えたA組一同は、爆豪と轟を除き、すぐには帰宅せず、教室の一角に集まって魔嚙の事を話していた。

 

「個性把握テストの時も体調崩してたよね」

「体弱いんかな......」

「あんだけ動けるんだからそれはねーと思うが......」

 

閉会式の最後、突如体調を崩して早退してしまった魔嚙。それ以前まではそんな素振りなんて毛ほども見せていなかったからか、或いは単純に疑問に思ったのか、彼女の体調不良の原因は何だろうかと延々と話している。

だが、本人が居ない以上、彼らの予想は所詮予想。結局最後まで真意を知る事は出来ず、次第に会話も少なくなっていく。

そうして皆が渋い顔をしながら思案していると......

 

「邪魔するよ」

 

突如教室の扉が開き、凛々しい女性の声が聞こえてくる。その声に反応し、A組一同は声がした方を振り返った。するとそこには、オレンジ色のサイドテールを携えた女子生徒、拳藤一佳が教室に居た。

教室に入って来た拳藤は、おもむろに教室中を見渡すと首を傾げ、次いでA組生徒がたむろしている場所に歩く。

 

「突然ごめんな、私はB組の拳藤ってんだけど......魔嚙ってどこに居るか知ってるか?」

 

いきなり現れたうえ、目下の問題である魔嚙に用があると言われ、驚愕を隠し切れないA組一同。とりあえず、聞かれたことに答えないのは失礼なので、八百万が拳藤の問いに答えるように口を開いた。

 

「魔嚙さんなら、体調不良で早退なされましたわ」

「そっか......もし教室に戻って来てたならと思ったんだけど......」

 

魔嚙の不在を知り、眉を下げながらはにかむ拳藤。どうやら魔嚙を探してA組の教室にやって来たらしい。

 

一体なぜ?そんな疑問がA組の頭を過ぎる。クラスが違う生徒が、A組で1、2を争う問題児に用があってやって来たというのだ。驚くなと言う方が無理だろう。

 

「あの......。なぜクラスの違う拳藤さんが魔嚙さんに会いに来たのか.........よろしければお聞かせ願えないでしょうか?」

 

そんなA組の疑問を晴らすかのように、八百万は拳藤に問いかけた。

 

「いや、そんな大した用事じゃないんだ。具合が悪そうだったから何かできる事がないかって思って来たんだけど......居ないんじゃ仕方ないな」

 

頭を軽く掻きながらそう話す拳藤の顔は、どこか悲しそうな表情を浮かべていた。いったい何があったのか、A組の面々がそれを聞く前に、拳藤は口を開いた。

 

「アイツさ、なんか色々抱えてるみたいだから、気にしてやってくれよ。違うクラスの私よりちゃんと見てやれるだろうからさ」

「その......失礼なのは承知でお聞きしますが......何故拳藤さんはそこまで魔嚙さんを気に掛けるんですか?」

 

違うクラスだというのに、何故そこまで彼女を気に掛けるのか......そんな疑問を解消すべく、悲しそうにほほ笑む彼女に、八百万は問いかけた。

自分達よりも圧倒的に関わりが薄いであろう他のクラスの彼女をそうさせる理由は何なのか、それを問わずにはいられなかった。

 

「うーん、そうだね......私らの遥か先を歩く、ワケアリのアイツと仲良くなりたいから......かな」

 

軽く頭を掻きながらそう言葉にする拳藤。その後何かを思い出したかのように、「急にごめんな!」とだけ言い残し、教室を去って行った。

 

「......気にしてやれって言われても......なぁ?」

 

不意に誰かがそう呟いた。

彼女を気にする余地などあるのだろうか?周りを威圧し、傷つけ、一人で完結してしまっている彼女の事を......

 

「体育祭の時の話の続きじゃねえけどよ......本当にヒーロー目指してんのか?アイツ......」

 

切島の言葉に、クラス一同なんとも言えない表情を浮かべる。

彼女の素行は、おおよそヒーロ―を目指している人間の物とは思えない程悪い。いっそヒーロー科に在籍している事の方が不思議なくらいだ。

加えて彼女の雰囲気、他者を寄せ付けず、触れる物を皆傷つける、まるで抜身のナイフのような危うさ。そもそも彼女に近づき、取り入る事そのものが難しいのだ。

 

そして極めつけは......

 

「蒼ちゃんのあの目......あの目は、心の底から何かを憎んでいるような目だわ」

 

魔嚙の目、他者に関心を一切持っていない冷たく淀んだその瞳。何も見えないあの目の奥底に、蛙吹は強い憎しみを見た。蛙吹はあの目を知っている。この世の全てを心の底から恨み、憎んでいるあの目を......

 

その目を見たのはUSJ襲撃時、彼女に襲い掛かって来た、恐らくボス格であろう「死柄木弔」と呼ばれたあのヴィラン、そのヴィランに近しい物が、魔嚙の目に宿っているように見えた。

今の彼女は、酷く不安定な状態にある。僅かなきっかけでヴィランに堕ちてしまいかねないと思えてしまう程には。あれほどの実力者が、ヴィランとして自分たちに牙を剥いて来たら?考えるだけでも末恐ろしい。

 

それほどまでに彼女は強く、危ういのだ。いっその事先生に相談してどうにかしてもらった方が良いのではないか、自分たちの出る幕などないのではないか、そう考え始めたその時、ある一人の生徒が独り言のように呟いた。

 

「......あの時は助けてくれたのに、何があったのかな......」

 

呟いたのは葉隠だ。

その場に居る誰もが耳を疑った。あの魔嚙が人を助けた?信じられないと声を上げる一同は、そのままの様子で葉隠に問うた。

 

「助けた!?あの魔嚙がか!?」

「うん、入学試験の時にね、瓦礫に潰されて動けなくなってたところを助けてくれたんだ」

「人違いとか気のせいじゃなくて......?」

「間違えるはずないよ、あんな人他に居なかったもん」

 

嘘を吐いている様子はない。信じられないが、葉隠の言っていることは本当のようだ。

余りの衝撃に驚愕の表情を崩せない一同。葉隠の言葉が本当であるのなら、これまでの魔嚙に対する視点が一気に変化する。

 

「他人なんかどうでもいい奴なのかと思ってたが......そうでもねえのかな」

「確かに、本当にどうでも良いと思ってるなら助けないだろうし......」

「でも......じゃあなんであんな態度を取るんだろう......」

「何か理由があるのかしら......」

 

視点が変わり、考え方が変化したからか、再び口を開く一同。

確かに、これまでの魔嚙の態度や行動のみを見れば、本当にヒーローを目指しているのかと疑問に思うだろう。だがしかし、入試の時......脚を潰されていた葉隠を助けたあの時、あの瞬間、彼女は間違いなくヒーローだった。

 

それだけに、彼女の事が不思議でならないのだ。なぜ他者を傷つけ、遠ざけるような態度を取り、誤解されてしまう様な行動を取るのか......

 

「......今にして思えば、俺達アイツの事だけ何も知らねえな」

 

同じA組に在籍しているのにも関わらず、魔嚙の事だけ何も知らない。本人が何も話そうとしないというのもあるが、それでも彼女の事を何も知らないというのは、同じクラスの人間として好ましくない事であるのは確かだ。

 

だが......

 

「けれど、蒼ちゃんが今、たった一人で苦しんでるって事は分かるわ」

「梅雨ちゃん......」

 

沈んだ空気を引き上げるかのように、蛙吹が小さく、されどハッキリと言い放った。何も知らなくとも出来る事はあると、それこそがヒーローの本質なのだと言わんばかりに。

 

「なんでそう思うんだ?」

「試合の時に爆豪ちゃんが言ってた事、覚えてるかしら」

「本気を引きずり出して......ってやつ?」

「その少し前、何にビビってるのか──でしょ、梅雨ちゃん」

「正解よ、響香ちゃん」

 

蛙吹の言葉に耳郎が答える。爆豪が試合中に発したその言葉、言葉の通りに受け取るのであれば、魔嚙は何かを恐れているという事になる。あれだけの猛者が何かを恐れている。信じがたい事だが、爆豪の目は節穴ではない。恐らく爆豪が言った事は間違いないだろう。

だがそうだとして、彼女は何を恐れているのだろうか。あれだけ強力な個性を持ち、実力も上澄みの彼女が。

 

「何を恐れ、何に苦しんでいるのかは分からないし、私達の事を良く思っていないのも分かるわ。けれど、それが見て見ぬふりをしていい理由にはならないのよ。お友達になりたくないと言われてしまったけれど、それでも、私は蒼ちゃんを助けてあげたい」

「......そうだね、私も魔嚙さんを助けたい。助けて......あの時の恩を返すんだ!」

 

ヒーロー科に在籍するだけあって、彼女らは根っからのヒーロー気質、困っている者が居たら放っておけない質なのだ。

そしてそれは、彼女達だけではない。

 

「ならまず魔嚙さんが何を抱えてるのか知らなきゃいけないし、どうやって助けるかも考えなくちゃ......考えられるのは誰かへの復讐や報復だけどそれなら態々ヒーロー科には来ないだろうから他の理由かなだとしたら何があるかな後でリストアップしつつやる事も同時に考えなきゃあとは僕たちの実力で魔嚙さんを助けられるかも問題になってくるだろうしやる事以上に考える事が────」

「やめて緑谷ちゃん、怖い」

「あぁごめん!!でも皆同じ気持ちだと思うよ。僕も魔嚙さんを助けたい」

 

その言葉を皮切りに......

 

「そうだね、ヒーローとしてもそうだけど、それ以前にクラスメイトとしても、魔嚙さんが困ってるのなら放っては置けない」

「彼女にはキラメキが足りないね☆」

「漢だぜオメーら!!」

「私......彼女にヒーローに向いていないなんて酷い事を言ってしまいましたわ......私はまず、彼女に謝罪したいですわ」

「魔嚙を助けたいのは梅雨ちゃんや葉隠だけじゃないよ!!」

 

緑谷を筆頭に、やれ「彼女を救う」だの「苦しみから解放する」だの、ヒーロー精神に溢れた他人思いの美しい言葉を口にするクラスメイト達。

今の言葉を彼女が聞けば、軽蔑の視線と共にドスの効いた鋭い言葉が飛んでくるだろう。

 

それに、彼女の過去はA組一同が想像しているよりもずっと血生臭く、酷く傷だらけの物なのだ。少なくとも、今のA組一同が努力したところで、どうにかできるような問題ではない。

 

「趣味とかあるかな......音楽系ならウチが......」

「あ!魔嚙さんに訓練つけてもらうんはどうかな?私達も強くなれるし、一石二鳥だと思う!」

「確かに......魔嚙さんの体術は私達の中でも飛び抜けて優れていますし......訓練ついでに何かお話が聞けるかもしれませんわね」

「まぁこうやってうだうだ話しててもわかんないし!次に学校来た時に色々やってみようよ!!」

 

本人の居ないところであれよあれよと話が進んでいく。次に魔嚙が学校に来た時には、彼女にとって今まで以上に面倒な出来事が起こるだろう。

そんな彼女の苦労を知らぬA組一同は、魔嚙の事を話しながらも各々帰宅を始めた。

 

次に彼女と接触した時、彼女の抱えるドス黒い闇の一端を目の当たりにするとも知らずに......

 




皆さんどうも、猫耳の人です

明けましておめでとうございます(大遅刻)

遅れてしまって大変申し訳ない、なかなか納得のいく物が出来ず投稿が遅れてしまいました。
ですが失踪した訳ではないのでご安心ください。
さて、今回にて体育祭編は完結しましたので、次からは職場体験編でございます。
その前に、「無敵のヒーロー(自称)」の方を更新いたしますので、そちらもよろしくお願いいたします。

それでは、今後とも私の作品をどうぞよろしくお願いします
次回もお楽しみに
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