異世界三度笠無頼 ―凶状持ちの渡世人が、精霊の異郷へ旅立った―   作:美風慶伍

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弐:気づく少女 ―フレイア覚醒―

「ガンガン行くぜ!」

「うん!」

 

 エライジャは叫びながら、次々に湧いてくる守備兵を確実に打ち倒していく。

 2人のコンビネーションはまさに無敵だった。フレイヤの提供する火弾は尽きることがない。また、通常の弾丸と異なり即座に装填できる。これにエライジャの早撃ちと正確な狙いが加わることで複数の相手が同時に襲いかかってきても即座に打ち倒すことができる。さらにはフレイヤの手際の良さと、飲み込みの早さもあった。母を救うという強い動機が有るがゆえに、エライジャの役に立とうと必至なのだ。火弾の装填が瞬く間に熟達するのは当然だったのだ。

 

 ましてや向こうは剣を中心にして武装が構成されている、銃と剣、その特性の違いから向こうはエライジャたちに近寄ることすらできなくなっているのだ。

 それでもエライジャの表情は浮かない顔だった。

 

「いい感じだね、このまま勝てそうじゃない?」

「いや、まずい流れだ」

「え?」

 

 守備兵たちはエライジャの火弾に対策を立て始めた。荷馬車を繰り出し、横倒しにすると遮蔽物にし始めた。さらに新たな戦力が投入されつつある。すなわち――

 

「やっぱりそう来たか!」

 

 エライジャは恐れていた存在を見つけた。

 

――ヒュォッ――

 

 空を切って飛んできたのは〝矢〟だった。敵は接近を諦めエライジャを巧妙に包囲して、弓矢による遠距離攻撃で仕留めようと始めたのだ。

 

「シット!」

 

 苛立ちを口にしながらもコルトリボルバーの中の火弾で攻撃する。しかし荷馬車の向こう側に隠れている奴らに届くことはなかった。

 

「貫通力じゃ、やっぱり鉛の方が上か」

「火弾は火の塊の粒だからね、爆発させて吹っ飛ばすのが火弾の〝効き目〟だからさ」

「ああ、分かってる」

 

 巧妙に囲まれつつある状況下でエライジャは練兵場の真ん中に無造作に置かれている四角い巨大木箱の陰に身を寄せた。

 

「ホールカービンで荷馬車ごと吹っ飛ばして……、いやその間に背中を打たれたらアウトだ。ならばどうすれば――」

 

 こうしている間にもウォルフガングは逃げ道を探して行動している。練兵場の外に出られたら、地の利がにある以上、これを追いかけるのは至難の技になる。何としてもこの場において決着をつければならないのだ。

 

――ヒュオッ!――

――カッ!――

 

 異なる方向から矢も飛んでくる。包囲網は確実に、完成されつつある。時間は待っていてはくれない。万事休す――の状況になりつつあった。

 それをエライジャの背中でじっと見つめていたフレイヤだったが、あることに気づいた。

 

「あっ――」

 

 フレイヤが気づいたのはエライジャの銃の構えだった。右手で握りしめた拳銃の銃口が敵を狙う。ただそれだけのことなのだが、フレイヤは真似て、右手を握りしめて人差し指だけを突き出す。指鉄砲、というやつだ。

 さらに左の手のひらを上に向けて、その上に右手の指鉄砲を乗せる。そして意識を集中させ狙いを定めた。

 

「当たれ!」

 

 そう言いながら自らの意思で火弾を撃ち放つ。そしてそれは――

 

「ぎゃあっ!」

 

――1人の守備兵に見事に命中したのだ。

 

「当たった!」

 

 歓喜の声を出すフレイヤに、エライジャは驚き振り返る。

 

「おいどうした?」

「エライジャ! 私やったよ! 狙って打てるようになった!」

「本当か?」

「うん、エライジャの射撃を真似してみたんだ」

 

 そう言いながら2発目を打つ。今度は撃ち倒すことはできなかったが、敵に対する牽制には十分に役に立った。

 

「火弾が徐々に拡散していくので飛距離は長くねえな。だが、人を相手にするには十分だ」

 

 エライジャはフレイヤの成長を喜びつつも彼女に言い放つ。

 

「フレイヤ、〝背中は預けた〟」

「うん! 任せて!」

 

 それまで未熟であり、弾込めしかできなかった火精の少女はエライジャの相棒として必要な攻撃能力を身につけたのだ。

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