さよなら白禊流   作:ヘビとマングース

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5:刳雲

「刳雲は、辰羅さんが持っていてもらえませんか?」

 

 戦場になった場所から少しだけ離れて、俺は路地裏で千鉱と会っていた。

 体も服もボロボロ、出血が多いが腕を切り落とされるとかそういうのはない五体満足。ひどい状態だが本人は至って冷静だった。

 

 俺は最後の方を少ししか見られなかったとはいえ、双城は強かった。

 町の一角が巨大隕石でも落ちたんじゃないかってほど陥没してたから疑いようがない。

 

 千鉱と二人、体に雷を纏って高速移動しながら斬り合って、時には極太のビームみたいに雷を発射したり、雷を纏ってる水を津波みたいに吐き出したり、もうやりたい放題。

 妖刀ってこんなにレベチなのかって、妖術を覚えてこの世界の常識を知ると余計にそう思う。

 まさに公式チート。あの状態の双城なら妖術師十人で囲んでも多分普通に勝っただろう。

 

 千鉱はよくやった。

 可能な限り自分が双城の攻撃を受けたり逸らさせたり、市民を守るために必死に動いてた。

 最終的には俺も少しだけ手を貸して、予想外の動きをしたことで双城を倒せたのである。

 

 そして、千鉱は刳雲を取り返した。

 原作では戦いの中で折っていたはず。でも今は無傷の状態で彼の手の中にある。

 

「危険性はあります。でも、今日のこの戦いで流石に神奈備(かむなび)も黙っていない。誰かに刳雲を利用されるくらいなら、あなたに持っていてほしいんです」

「それは……契約するって意味か?」

「はい。あなたになら任せられる」

 

 六平国重の妖刀には“命滅(めいめつ)契約(けいやく)”という概念がある。

 妖刀と契約した人間にしか妖刀の力を使うことはできないという制約だ。契約者が死ねば契約は無効化され、他の人間が契約することができるようになるが、それ以外に契約を破棄する方法を、少なくとも俺は知らない。

 

 双城が死んだ今、刳雲の契約者は居ないことになる。

 俺が契約するのも可能なんだろう。そして俺自身も別に嫌な気持ちはしない。

 ただ、千鉱はそれでいいのかって話だ。

 

「契約者の居ない刳雲を神奈備がどうするか……確かに気になるし不安にもなる。でもいいのか? ようやく取り戻せたんだろ。このまま眠らせてやることだってできる」

 

 千鉱はすぐに答えなかった。その考えだって頭によぎっているはずだ。

 

「柴さんも居るし、俺が誰にも見つからない場所に隠しておくとかでもいい。本当に使って、まだ戦わせていいのか?」

「元々妖刀は戦うために作られたんです。こいつは戦争にも行った。これまで何人もの命を奪っているんです……」

 

 せっかく刳雲を取り戻した直後だっていうのにちっとも嬉しそうじゃない。

 妖刀が存在し続ける限り、妖刀を巡る戦いは終わらない。

 毘灼だってまだ活動中なのだ。

 刳雲だけ戦線から離れるなんてことはまず無理。千鉱もそう思ってるみたいだった。

 

「妖刀はいずれ、俺の手で全て破壊します。それまではせめて正しい人の手で使ってほしい」

「わかった……お前がいいならそれでいいよ」

 

 差し出される刳雲を受け取った。

 まさか自分が妖刀を握る日が来るなんて……そんなつもりなんてなかったのに。夢のような展開ではあるけど重責もある。

 

「期待に応えられるように頑張るよ」

「無理を言ってすみません……」

「いいさ。どうせ巻き込まれる前提で一緒に居るんだから。嫌ならさっさと離れてる」

 

 転生して、それなりに思考力とか知識がある状態でこの世界に生まれたけど、やっぱり俺は双城みたいな悪人にはなれなかった。幼少期から悪知恵働かせて好き勝手やってればきっとこうはならなかったんだろう。でも結局はこれでいい。

 無理なことはしない。言っちゃ悪いけど俺は千鉱ほどイカレてはないから。

 

「契約すれば、妖術は使えなくなりますが」

「それくらいいいって。俺の妖術なんて物を浮かせて飛ばすくらいのもんなんだから、刳雲と比較するほどのもんじゃないだろ」

 

「あれがすごく頼もしかったんですけどね……双城を殺せたのも、辰羅さんが俺まで刀を届けてくれたからでした」

「お前が淵天を投げてまで逃げ遅れた人を守ったからだよ。そういうことをやるやつだから手を貸したくなる。それがなかったら、俺もここまでやらなかったかもな」

 

 千鉱は強くなった。

 まだ完成されたとは言えないし発展途上。探せば千鉱より強い剣士は居るだろう。

 それでも並の剣士のレベルは超えているし、淵天を使えば自分より強い剣士だろうとあっさり斬り捨てるはずだ。

 

 ほんの一瞬目撃しただけとはいえ、双城は強かったが剣士って感じではなかった。剣術を専門的に極めた強さではなく、武器全般の扱いに長けているという印象。それでも十分怖かったが。

 ただ単純な剣術の腕なら千鉱の方が上。三年の鍛錬でずいぶん強くなったもんだ。

 

 俺が剣術を教えるなんて、とか思ったけど意外に上手くやれてると思う。

 だけどまだまだ始まったばかり。刳雲が残ったとはいえ、多分楽には進まない。

 

「今回はなんとかなったけど、きっとまた、妖刀と戦う時が来るんだろうな……」

「……そうですね。その状況は避けたいですが、毘灼に妖刀を奪われたままですから」

「それならしょうがない。教えるか、牙突(がとつ)を」

「がとつ?」

 

 実を言えばすっかり忘れてたんだけど。

 飛天御剣流について言及した日から今日まで刀を使った技って何があったかなーって考えてて、不意に思い出したのだ。

 

「剣術における必殺技だ。ちなみに俺の流派とかではない」

「……まあ、とりあえず話は聞きますよ」

 

 怪訝な顔をされてしまったが大丈夫。牙突さえあれば、妖刀使いだろうと簡単には負けない!

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