もしかするとおれは原作の流れを変えてしまったのかもしれない。
本編に登場したかどうかすらわからないロックスがいつまで経っても死なずに、海賊王になるはずのロジャーがいつまで経ってもそう呼ばれるようにならなかったのだ。
一体どこでどう変わってしまったんだろう。
特に原作通りとか壊すとか意識していなかったとはいえ、気付けばこうなってて不思議に思う。
「海賊王になる気はないのか?」
「あぁ? 海賊王? なんだそりゃ。海賊に王なんてもんがいるかよ」
試しにロックスに聞いてみたが興味はないらしい。
こいつの目的はあくまで世界の王。
それ以外はどうでもいいようで、今では海賊島と呼ばれているハチノスを乗っ取った時も、なんとなくおれをボスにしようとしたくらいだ。結局はこいつにやらせているのだが。
「海賊島のボスになったんだ。海賊の王を名乗ったっておかしくないだろ」
「そう思うんならお前が名乗ってもいいぞ。おれが取ってもいずれもっとでかいもんを得る」
「もしくは……グランドライン最後の島を見つけるとかか」
「んん? なんだ、目的ができたのか? 探したきゃ探してこい。どうせうちの連中も好きにやり始めてるんだ」
ロックスが言う通り、明確にあの日を境にしてロックス海賊団は変わった。
はっきり言って海賊団として瓦解しつつある。だが一応はロックス海賊団という母体の下、各々が自分の海賊団を形成しようとしているのだ。
白ひげは一番おれやロックスに対して疑問を持っているみたいで、色んな島を巡って自分の仲間を集めているところらしい。
本人が言ってた通り家族みたいな海賊団を作るんだろう。いずれは親父と呼ばれるはず。むしろ今までよくそうしなかったもんだ。
リンリンは当初の予定通り、国造りを始めている。
拠点を決めて、人を集め、自分の血縁者を幹部にするつもりだと聞かされた。
カイドウはあのゴッドバレーの日以来、会っていない。
突然どこかへ消えてしまった。
そのことにリンリンはキレていたが、去る者は追わずがロックス海賊団の暗黙の了解。
きっとあいつも自分の海賊団を作ろうとしているんだろう。いずれおれたちの前に現れておれたちを殺しに来る。それくらいは簡単に予想できた。
シキはゴッドバレーでロジャーを殺せなかったことに腹を立てていた。
今度こそあいつを殺すために自分の海賊団を組織し、何らかの計画を練っている。行動するまでまだしばらくかかりそうだ。
キャプテン・ジョンも自分の海賊団を作って、各地で金銀財宝を集めているそう。
ステューシーは白ひげについていった。
グロリオーサは気付けばいつの間にか去っていた。どこへ行ったかは知らない。
“銀斧”こと凶も独立を目指してるようだが、シキとの小競り合いが絶えず、何かきっかけ一つあれば戦争でも始めるかもしれない。
首領・マーロンとガンズイはあの日、ゴッドバレーで死んだ。両方の死体をおれが回収して利用してるんだがそのことを知ってる奴は少ない。
ハチノスに残った王直はおれとロックスが殺した。ケチな奴でおれたちの不在時にハチノスを自分のものにしようと思ってたみたいだが、結局はおれたちに実力で勝てるはずもない。
なんだかんだで何年もロックス海賊団として行動していたものの、ついに限界が来たんだろう。
外からの影響じゃなく自発的に崩壊しようとしている。こうなれば時間の問題だ。
それでもおれとロックスは慌てていない。
集めた強者があちこちに散ってしまうのは大変とはいえ、こっちはこっちで得たものが多い。
海賊たちの楽園、ハチノスを手中に収めているのも大きかった。
ゴッドバレーでの一件以来、世間は少し騒がしくなった。
海面上昇が起こったって話もあるが定かじゃない。海賊島は酔いどればっかりで海面の高さも確認できないバカばっかりだ。
それでも世界政府や海軍がバタバタしてるのは間違いなくて、事実だと言っているようなもの。
仲間たちがそれぞれ動き出す中、ロックスの計画は確実に前進している。
しかし改めて考えてみて、やはりおれは世界の王には興味がない。
「海賊王か……それも面白いかもな。あんたがならないなら多分ロジャーがなる」
「ロジャーが? もう負ける気はねぇだろう。あいつにやるくらいならお前が名乗っちまえ」
おれがワンピースを漫画として読んでいた頃、原作はまだ完結してなかった。なんなら最新話まで追い付いていたわけじゃないし、知らないことだって多い。
ロックスがどういうキャラなのかは知らないが、ゴールド・ロジャーは重要人物。“海賊王”と呼ばれたただ一人の男。
かつてのおれなら、原作通りロジャーが海賊王になることを望んでいたのかもしれない。
だがゴミ島で生まれて、ロックスに連れ出され、良いことも悪いこともして真に海賊になった。
ロジャーと殺し合ったことだってある。その結果、今はもう譲ってやるつもりなんてない。
おれがこの世界で海賊王になれば……かつてない偉業を果たした海賊ってことになる。
グランドライン最後の島に辿り着けたなら、“
「強化されたマゼマゼの能力と、ゴッドバレーで食ったウオウオの能力。お前がレイリーの片腕を奪ったのはまぐれなんかじゃねぇ」
「航海するのはまた別問題だろ。航海士、コック、船大工、操舵手、音楽家。脳がイカレた連中を操作して船動かすのは限界がある」
「仲間を募ればいいじゃねぇか。使える奴なんざ探せば見つかる。嫌がる奴だろうと仲間に入れる方法なら知ってるだろうが」
「デービーバックファイトか……面倒ではあるが」
「だが海賊なら逆らえねぇ。海のクズどもでも越えられねぇ一線ってもんがあるんだ。そこを越えれば殺したって誰も文句言わねぇからな」
「船と、乗組員と、旗」
どうにかなりそうだな。
海賊王を目指す戦い。案外面白く思えてきた。
「だがおれとの約束を忘れるなよ。おれが生きてる間は」
「わかってる。あんたに従うよ」
「ヴォハハハ! それさえ守ればなんだっていいんだ。世界政府の上の連中をぶちのめすにはまだ時間がかかる。ある程度はお前も好きにしろ」
まさか自分がこんなことを考える日が来るなんて。
ゴミだらけの島から出てずいぶん経った。
あの島の環境で前の自分からかなり変わったと思ったが、今はそれ以上に変わったと思う。でももう引き返すつもりはない。
数えきれないほど戦ってきた。こうなったらもう行けるとこまでだ。
「やってみるか……おれはグランドラインを一周して、最後の島を見つけて海賊王になる。あんたの野望を手伝うついでに」
「ついでときたか。でかく出たな」
「あんたの作業もでかくて長いだろ。まあ、いつかあんたが死んでくれるまでだ。そのあとはおれも自由にやれる」
「ヴォハハハハハ! ひでー言葉だ! 残念だがおれはそう簡単には死なねぇぞ」
「知ってるよ。心配しなくても、おれが背中からあんたを殺すことはない」
「あぁ、そりゃ安心だ。せいぜい頑張れ海賊王」
今ではすっかり殺し合いや戦争を心から楽しめるようになった。
能力も二つに増えて便利になり、戦闘力は上がってる。
白ひげ、シキ、リンリン、カイドウ、凶、グロリオーサ。戦う相手だってまだまだいる。
もしもロックスの野望が果たされたとしても、そのあともまだまだやることがある。
おれはこの世界をもっと楽しむことができそうだ。
「なあ、十分休んだだろ。早速行かないか?」
「あ? どこに?」
「レイリーを殺しに。片目潰されたお返しはちゃんとしとかないと」
「お前は腕ぶった切ったろうが。腹でも立ててんのか? その眼帯似合ってるぜ」
「別に恨んじゃいねぇよ。ただレイリーを殺せばロジャーも必死になるだろ。ゴッドバレーを超える戦争になるかもしれない」
「おれは政府をぶっ潰してぇんだが……まあいい! やるかァ! 前哨戦にしちゃド派手過ぎるがだからこそ他の連中も力を貸すってもんだろ!」
この話はここで完結とします。
全く想像しなかったほど反響があったので当初の予定より長くしたくらいですが、元々短編として執筆したのでこれ以上はどんどんぼろが出るだけでしょう。
すでにギリギリ。練ってないので勢いのみです。
読んでいただいてありがとうございました。