個性『雷獣』   作:超高校級の切望

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ワン・フォー・オール

 連合がかかわる可能性がある事件。相澤としては生徒を関わらせたくなかったが、変に止める方が逆に暴走させると判断し、正規の活躍をしろとのことだ。

 

 カムイがエリを保護していた以上緑谷はそこまで暴走する可能性は低いが、彼なりに気を遣ってくれたのだろう。

 

 緑谷だってヤクザ共をぶん殴ってやりたい…………というよりは、エリを安心させたいんだろうな、緑谷はそういう男だ。

 

「1日と言わず事が済むまで泊まっても構わないのさ!」

 

 

 

 

「つっても俺からあまり離れようとしないかんな。決行日は一番近いナイトアイ事務所に預けることになりそうだ」

 

 カムイが黙って会議に向かってからだろう。エリはカムイが帰ってこないと徐々に落ち着きを無くす。エリの精神が不安定になると詳細不明の個性を破壊する個性が暴走する可能性もある。超人社会の幼少期というのはそういうものだ。

 

 カムイが買い物に行った2時間ぐらい、他の生徒達に構われつつも少しずつソワソワしだした。帰ってきたらコアラみたいに暫く離れなくなった。

 

 カムイが行かなければという案もあったが、カムイが言ったように連合の七海が出てくる可能性もある。

 

「現状エリが落ち着けるのは緑谷、通形先輩、俺、後は女………男はどうも苦手みたいだな」

 

 まあヤクザ連中に囲まれていたらそうも育つか。まだエリは全然救えていないのだ。

 

「エリちゃん。かわいいね〜、髪の毛ふわふわ!」

「おいで〜、アタシが結ってあげる!」

 

 と、女子達は可愛い子供にテンションが上がっている。

 

「将来間違いなく美人になるぜ」

「峰田はエリちゃんに近づいちゃ駄目だぜ」

 

 上鳴が峰田に真顔で言った。

 

「いくらオイラでもガキに欲情なんかしねえよ!? 将来を妄想するだけだっての!」

「それも駄目だろ。お兄ちゃん的にはどーよ?」

「妄想するだけで実害がないならいいんじゃねーの? 後、俺はお兄ちゃんじゃねえ」

「違うの?」

 

 首を傾げる上鳴。カムイはチゲぇよ、と返した。

 

「〜〜!!」

 

 可愛がられ恥ずかしさが限界に達したエリが女子達から抜け出しカムイの胸に飛び込んできた。

 

 

 

 

 

「カムイ君………」

「ん?」

 

 夜、梅雨ちゃんにエリを預け自室に戻ろうとすると緑谷が声をかけてきた。

 

「以前、僕がかっちゃんとのケンカで黒いのを出したのを、覚えてるよね?」

「ああ」

「あれ以来出ないんだけど、この先、さらなる力が必要になると思うんだ」

 

 まあ、否定はしない。今回の治崎もそうだし死柄木など、触れれば終わりの個性を持つ相手に超パワーだけで相手するのは無理があるだろう。

 

 オールマイトのように常に風圧だけで地形が変わるほどの身体能力で殴り続けられるなら話は変わるが緑谷がそのレベルの力を使いまくれば身体が弾け飛ぶだろう。

 

「だから、手段がいる。個性強化…………一時的でもいい。僕の中にある力を引き出したい。エリちゃんのような子供を、もう怖がらせないために!」

「いいだろう」

 

 

 

 

 

「来たね…………」

 

 真っ暗な空間に浮かぶ部屋。壁や天井は崩壊し、8つの椅子が存在した。女性が1人、人の形をした靄、残りは全員男だ。

 

「おう漸くご対面だな! お前さんが力欲しがったから叩き起こされたのに『邪魔すんな』って押し戻された黒鞭さんさぁ!」

「え、あ………ご、ごめんなさい?」

 

 黒い鞭のようなものをだしながら叫ぶスキンヘッドの男。爆豪とのタイマンで出て来た黒い鞭は彼の個性らしい。

 

「こ、こんなにはっきり喋れたんですね………オールマイトからは何も」

「うん。本来僕達は、所有者に干渉どころか意識同士で対話も出来ない程度の存在だったからね。個性因子の強化………雷業の末が再現した八木くんの親友の発明のおかげで、意志に輪郭を帯びたんだ」

 

 そう言いながら白髪の青年は人型の靄を見つめる。よくよく見るとそれはオールマイトに似ている気がする。あれがワン・フォー・オールの中にあるオールマイトの意識だろう。姿が朧気なのは、オールマイトが無個性だったからだろうか?

 

「輪郭を帯びたのはお前さんもだぜ。お前さんは自覚なかったろうが、ここに初めて来た時、顔とかなかったさ。目も耳もないからなんも見えんし聞こえんかったろ」

「雷業の………いや、稲妻君が脳の電気信号と個性因子の電気信号の繋がりを強めてくれた。器用だね、彼は………」

 

 言い直してくれた。カムイが雷業扱いされるのは好きではないと、緑谷の記憶を見たのだろうか?

 

「現状を知るために少し覗かせてもらった。今後のプライベートは保証すると誓おう」

 

 そういったのは顔に傷のある男。何処となく爆豪に似ているような……。

 

「ここに来たのは力を………俺達の個性を物にするため、ということでいいな?」

「は、はい!」

「八木君のおかげで兄さんは今捕まっている。だけどまだ終わっていない………」

「…………死柄木」

「………………」

「うん。そして、何も悪は彼だけじゃないからな」

 

 緑谷の言葉に肩を震わす女性。白髪の青年はそれを横目で見た後、改めて緑谷に向き直る。

 

「君が誰かを救けたいと願うなら、僕等は力を貸すよ…………と、格好つけられたらいいんだけどね。僕自身はこれ以上助力する余地がないや」

「まあ俺達が力を貸してやるさ! 安心しなって!」

「むろん、直ぐに使いこなせるものでもない。今日は個性の説明………発現は、ひとまず万縄のものでいいだろう」

「まー、四ノ森さんや志村さんはともかく俺とか使い道あんまないですしね」

 

 と口元を隠した黒髪の少年が笑う。

 

「だって煙幕だよ。しかも俺より後の世代は動けたり感知できんのに煙出すだけ」

「ええ!? そんな、すごい個性ですよ!」

「ありがと。お世辞はいいよ」

「お世辞なんかじゃ───」

 

 と、その時世界にノイズが走る。

 

「どうやら今日はここまでのようだ。既に道は繋がった……後は、こちらからも手繰り寄せていくよ」

「そう遠くない内に、彼の手を借りず君と話す時も来るだろう。それまで、頑張ってくれ」

「俺の力は使い易いぜ! 個性に憧れいろんな個性の使い方考えてた坊主ならきっと使いこなせるさ!」

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