初めて書いたので誤字や至らぬ点は多々あると思いますが楽しんでくださると幸いです
今年の3月にやり始めた新人先生ですので矛盾等があるかもしれません。その際は教えてくださると嬉しいです
ここは生徒たちが思い思いの青春を過ごす学園都市"キヴォトス”
そこで学ぶ生徒たちを教え、導くのが、連邦捜査部S.C.H.A.L.E顧問”先生”の役割だ。
だがキヴォトスの外の世界からきた、ヘイローを持たぬ先生にとってそれは簡単なことではない。
銃声が隣り合わせのこの世界において、銃弾一発で死にかねない先生はあまりにもひ弱な存在だった。
そんな先生を支えるのは、大人の切り札”大人のカード”、そして連邦生徒会長が遺したオーパーツ”シッテムの箱”の二つ。
そしてシッテムの箱のメインOSとシステム管理を担当するスーパーAI(自称)こそが「A.R.O.N.A」ことアロナである。
自称ではあるが、スーパーAIの名は伊達ではない。キヴォトス全てを管理可能とされるほどの圧倒的演算能力、そして幾度もの危機から先生の身を守った防護壁の展開等々、オーパーツの名に相応しい規格外の性能を誇る。
そしてともに様々な困難を乗り越えた先生の良き秘書であり、相棒でもあった。
だがそんなスーパーAIアロナちゃんは今―とんでもない怒りのオーラを放っている先生に正座させられていた。
いつだったかコユキが勝手にパソコンをハッキングしてHなデータを覗き見た後、そのデータを消したときでさえここまで怒っては居なかった。
おそらく今のこの姿を生徒に見せたらどんな問題児でも泣きながら謝るであろう...一部興奮する者もいそうだが。
何故こうなったのか、それは数時間前に遡る。
☆
「暇だなぁ...」
シッテムの箱の中、いつもの教室でアロナはため息を付いた。
先生も常に
いつもなら外を見たり居眠りをして過ごすところだが、今日は事情が事情なので目が冴えていた。
今、先生は——ベロンベロンに酔っ払っていた。
なんならもう眠りそうな段階に入っていた。
「先生、飲み過ぎは控えたほうが...」
呼びかけたが聞こえているんだが聞こえていないんだがわからない曖昧な返事を返され、ふくれっ面になる。
いつもならこの時間には先生と楽しくお話していたはずなのに。
先生は忙しい。いつも生徒のために東奔西走し、書類仕事に追われている。
それを手伝うのがシッテムの箱のメインOSであり、先生の秘書でもあるアロナの仕事の一つだ
そんな忙しい仕事の終わり際、手伝ってくれたアロナへのお礼にとくだらない会話をするのがいつのまにか日課となり、アロナにとって楽しみの一つとなっていた
もちろん今が先生の貴重な休息であることはよく分かっているが、それでも不機嫌な気持ちが抑えきれない。
「お酒と私どっちが大事なんですか!?」
腹立ち紛れにうがーっと腕を振り回していると良いことを思いついた。
先生にいたずらをしてやろう。
普段ならまず思いつかなかっただろうが、楽しい時間がなくなった恨みでテンションがおかしくなってしまっていた。
そのテンションのまま、どんないたずらをやろうかと考え始める。
仕事のデータを消すとかの本当に先生が困ることは流石にやらないほうが良いだろう。
モモトークに今の先生のあられのない姿を送りまくるというのも考えたが、やめておいた。
もしそれを見て生徒の皆さんが暴走した場合、銃の引き金が羽より軽いここキヴォトスでは先生が怪我を負いかねない。
先生を驚かせることができて、かつ本当に危ないラインは避ける塩梅を考えるのは存外難しい。
だがスーパーAIアロナちゃんの名は伊達じゃない。良いことを思いついた。
(死んだふりなんていいんじゃ?)
死んだと言うよりは消えるふりといったほうが正しいだろうか。
これなら先生は大いに驚くだろうし、危険に晒すこともない。我ながら天才的アイデアだと思った。
そうと決まればさっそく練習である。
どんなシチュエーションで、どんな言葉を残すかを考え、シミュレーションしていく。
やり始めたらどんどん熱が入っていった。
今から先生の反応が楽しみになってくる。
——明日どうなるかも知らずに
☆
翌朝、先生は二日酔いになって家で倒れ込んでいた。
珍しく仕事が早く終わったから久々に飲みたくなったのが発端だった。
外で飲むのもいいが、たまには家で洒落込むのも乙なものである。
というわけで買ったはいいが手を付けていなかった高い酒と冷蔵庫にあったいいかんじのつまみを引っ張り出し、一人で乾杯をした。
久しぶりの晩酌は楽しかったが、明日も仕事がある。早めに終わろうと思っていたのだが、酒の魔力は罪深い。
美味しいつまみで酒が進み、酒で美味しいつまみが進む。1時間ぐらいで帰るつもりが2時間になり3時間になっていった。
そして今に至るというわけである。
”うぅ...飲みすぎた...”
割れるような頭の痛さと吐き気に苦しみながらベッドに倒れ込む。
とりあえず今日の当番の生徒には休みの連絡を送っておいた。
(”そういえばアロナに連絡してなかったな...”)
いつも仕事を手伝ってくれる良き相棒、アロナ。
流石に昨日の晩酌には呼べなかったが、彼女も心配しているかもしれない。
とりあえず昨日の件を謝ったほうが良いだろう。
シッテムの箱を手に取り、唱える。
"我々は覚えている ジェリコの古則を"
”我々は望む 七つの嘆きを”
眼の前の風景が置き換わっていき、いつもの教室とアロナが目に映る——はずだった。
”は...?”
目に映ったのは、乱雑に積み上げられた机に、機械のバグのようなノイズが走っている壁と天井。半壊した壁からはいつもの青空ではなく雨空がのぞいている。
そしていつも出迎えてくれるアロナは、どこにも居なかった。
酔いが一瞬で飛び、嫌な予感に冷や汗が出る。今までこんなことは一度もなかった。
”アロナ!”
大声で呼んでみても虚ろに響くだけで返事が聞こえることはない。
なんで、どうして、なにが、そんな考えが渦巻く中、唯一普通に置かれていた机に何かがおいてあるのを見つけた。
”先生へ...?”
それは、手紙だった。
震える手で便箋を開けた。
☆
先生へ
あなたがこれを見ているということは、もう私はここにはいないでしょう。
最初に言っておくと、私が居なくても心配することはないです。
今の私、アロナがいなくなってもこのシッテムの箱のOS「A.R.O.N.A」としての形は残ります。
戦闘指揮も、仕事の手伝いも、問題なくできるでしょう。
いちごミルクが必要になることもなくなります。
”大いなる力には大いなる責任が伴う”
先生は前にこんな事を話していましたね
先生は私のことをよく知っていると思います
「シッテムの箱」のメインOS、スーパーAIで、計算もハッキングもへっちゃらな私を。
そして、先生の秘書のアロナを。
でもそれは、ただのアロナとして背負うにはあまりにも大きな力で。
私が居なくなるのはこの力の、そしてあなたの隣にいたことの代償であり、責任です。
力を使うたびに、時間が、「アロナ」が削られていく。それは分かっていました。
ならば何故言ってくれなかったのか。
先生は今そんなことを思っているのではないでしょうか。
私は先生と一緒にいることがとても楽しかったのです。
先生が笑う姿が、私を頼る姿が、そのすべてが私の希望となってくれました。
その姿が曇ることが、先生の助けになれないのが嫌でした。
私のわがままでこんな形で別れることになってしまったことを申し訳なく思います。
長々と書きましたが、最期にこれだけは言っておきたいです。
どうか、責任を感じないでください。
私が負った責任を、先生まで負う必要はありません。
先生はこれからもたくさんの生徒さん達を教え、導いていくことでしょう。
たくさんの生徒さんたちの責任を背負っていく先生に、これ以上の責任を背負わせたくはありません。
今まであなたといて、本当に楽しかったです
アロナ
☆
その手紙を読み終えた私は、動けなかった。
冗談だと思いたかった。
しかしアロナが居ない現実がそれを否定する。
生徒には迷惑をかけたくない、負担にさせたくない。それが私の信条だったはずだ。
でもアロナには、ずっと頼りっぱなしだった。
”アロナなら大丈夫だろう””アロナならすぐできる”
彼女が背負ってきたものの大きさも知らずに
今までのアロナとの思い出が頭をよぎる。
いちごミルクとカステラをねだるアロナが、仕事を一緒に手伝ってくれたアロナが、
——私を、待っていたと微笑んでくれたアロナが
じきに自分は消える。それが分かっていて私に尽くしてくれたアロナは、あの小さな体にどれほどの思いを詰めていたのだろう。
一番長くアロナとともに過ごし、ともに駆け抜けてきたのに気づくことができなかった
彼女が背負うものに、その重みに。
”あ、あぁぁあ”
手紙を握りしめ、地面に突っ伏した。
もうアロナには、彼女には二度と会うことができない。
私が彼女を、顧みなかったせいで
私のせいで
☆
——ヤバい
教室の隅でアロナは冷や汗を流した
数多の小説からかき集めて出力した渾身の手紙を目につきやすいところにおき(小説を読んでる時間が長すぎて時間がなくなり30分で書いたが)、雰囲気付けにといつもの教室の内装をガラッと変える
そして私は光学迷彩の要領で隠れ、こっそり先生の反応を見守る。
完璧な作戦だと自負していた。
だが手紙を読み終わった先生はピクリとも動かなかった。
(あ、あれ...?)
先生が何か反応を見せたらネタバラシしようと思っていたアロナは出遅れた。
それが致命傷になった。
”あ、あぁぁあ”
どう出ればいいか迷っていた目の前で、先生が突如崩れ落ちた。
”私の、私のせいで”
”どうして”
”ごめん”
どうみても、どう見ても「ドッキリだいせいこ〜う!」なんて言える雰囲気ではない。
言ったが最後、私の無事は保証されないだろう。
だが放っておくのも論外だ。
あのまま放っていると何かこう取り返しのつかないことになる気がした
その場で動けないでいると、突っ伏していた先生が立ち上がった。
顔はなんの感情も見えない能面のような顔になっていた
凄まじい覚悟のオーラを放ちながら淡々と呟く。
”ごめん”
”ありがとう、アロナ。私は、私はもう間違えないから。見ていてくれ、この場所で”
放置していたら確実に何かが壊れる気がした
ここでネタバラシに出れなかったらもうおしまいだ。アロナは覚悟を決めた。
「てってて〜、ドッキリだいせいこ〜う!」
”...........................え?”
そこにはドッキリ後とは思えないような、どす黒い雰囲気が漂っていた
☆
そして現在に至る。
あの後、本当に私がアロナで、これがドッキリなのかを説明するのに1時間ぐらいかかった。
なんとか説明に成功したあとも胸を撫で下ろす暇もなくアロナを襲ったのは、
「アロナ、正座」
の一言だった。
先生の顔はにこやかな笑顔なのが余計怖い。
笑顔の起源は威嚇だったという話を走馬灯のように思い出した。
その後はお察しのとおりである
怒られた。それはもうひたすらに怒られた。
ユウカが見舞いに来るまで3時間詰められ、帰った後もひたすらに怒られ、先生の許可が出るまでいちごミルクとカステラ禁止の刑を食らった。
そして、もうドッキリなんてしないとアロナの胸に固く刻まれたのだった。
☆
それから一週間
流石に先生の態度も戻り、アロナにとっていつも通りの日常が戻ってきていた。
ただ変わった点もある。
まずは未だにいちごミルクとカステラ禁止の刑を食らっている。先生にそっと持ちかけてみたがいい笑顔で
”ダメ”
と言われた。まだまだ先になりそうである
2つ目の変わったところは、何があってもアロナと1日に一回は話に来るようになった。
徹夜明けだろうが生徒と一緒にいようが文字通り何があってもである。
無理してまで会いに来なくてもいいと思うが自分のやったことを考えると無理もない話だろう。
それに毎日先生と話せるのは正直嬉しかった。
そんな成り行きで今日も話に来た先生がシッテムの箱から出ようとした時、ふと思いついて声を掛けた。
どうしても聞きたいことがあった。
「先生!」
”なんだい?”
「先生は...本当に私が居なくなったらどうしますか?」
その問いを聞いた先生は、あの笑顔で、私が欲しかった答えをくれた。
”なんとしても、もう一度会いに行くよ...私の相棒だからね”
初めてこんな小説を書きあげることができました!
機会があればプレ先&プラナの話も書いていきたいですね〜
個人的に先生とアロナの関係は相棒兼秘書みたいなものだと思ってます