鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
※御船千早視点
私が、運命は変わらないと思った最初の出来事。
初めて占った、私の親友の話。
私の力が分かってから、親友は他の人と同じように私を避け始めた。
私と親友、2人の間の運命を占うと…とても悪い結果になった。
どれだけ願っても変わらなかった。
だからなのか…運命は変えられるものだって気付くのに、こんなにも時間がかかってしまった。
具体的な行動をせず、願うだけ…物を買うだけじゃ変わるわけがないのに。
一回の失敗を、ずっと胸に残しすぎていた。
運命を見る方法…自分ができることにだけ目を向けていて、
できないことを、どうすればできるのかって探求を怠っていた。
だから…この掴んだ
緊張に振るえる指を、努めて抑えながら電話を掛けた。
…。
〜〜
夜
〜〜
新宿に毎日顔を出す占い師…御船千早の自宅。
一人暮らしのその家には、珍しくも来客が一人。
玄関の扉を空けた矢先、靴を脱ぐところにそのまま崩れ落ちて泣きじゃくる福来さん。
福来友一
「…ごめんっ!」
「俺、隠してて…実は、ちーちゃんのこと、昔っから、知ってて…!」
嗚咽混じりの、涙も感情も全て隠さず曝け出した言葉。
福来友一
「あんな腐った村、名前も、方言も全部捨てたかった。けど、ちーちゃん達の事は、どうしても忘れられなくって…」
「東京に居るのを偶然見つけて、運命だと思った。」
方言の影すらも見せない標準語で、彼は言葉を紡いでいく。事前に聞いた話が無ければ…彼が同郷など微塵も思わなかっただろう。
福来友一
「俺が、助けてやらなきゃいけないのにっ…」
苦しんでいる顔。
これまで張り付けられていた、今思えば人を騙すための顔はどこにも無く…
その表情は、僅かに、面影を感じさせた。
福来友一
「なのにっ、俺はっ、もう…都会に、毒されて…いや、勝手に騙されて、勝手に腐って…」
「『利用できる』としか考えられなかった!許してくれ、俺を、許してくれ…なんでも、なんでも、するから…っ!!」
…改心が完了している。罪を悔い、懺悔する信徒のように己の罪を告白する彼がそこに居た。
だから、微笑んでやる。
御船千早
「もう知ってましたよ。だから助けたんです。」
「貴方の名前って、もしかして…」
そうして、口に出したのは。
故郷の村に居た親友…彼女の、歳の近い兄の名前。
福来さんへ『予告状』となるような電話をしてから…過去を振り返ったからなのか、気になってしまい。
親友との運命を視ると…繋がっていたのだ。それも、とても綺麗に。
福来さんは私と同郷だと鴨志田先生から聞いた。
ただ、おかしい点があったのだ。
私が生まれた村。街と呼べぬほどに狭いコミュニティでは当然、互いに濃い関わりがある。
同郷であれば、必ず名前を覚えている筈。
外見を覚えていないほどに成長しているなら、そんな若い歳で村を出るなんて噂になって然るべき。
もしも、私を都会で拾ってくれた福来友一という人物の名前は偽名だったなら、その本名は。
あの時、東京に進学すると言って村を出て行った…親友の兄。幼馴染の『彼』なのではないかと思ってしまったのだ。
名前を呼べば、その福来と名乗っていた男は目を見開いた。
人の顔というものは、時に水晶やタロットよりも明確に真偽を語る。
御船千早
「もう、専門学校に行った結果がこれですか?あんなに要領が良くって、こんな大きい組織を作る腕もあったのに。」
幼馴染
「…専門学校、アレ、騙されてたんだよ。入学金も、何から何まで全部払っだっでのにざぁ…。」
「なんで、なんでそこで…俺も騙してやるって思っちゃったんだろうなぁ…うぅ、ヒック…。」
御船千早
「よしよし。男の子が泣いちゃダメですよ。」
「やった事を、これからどうやって補っていくか。未来についての話をしましょうか。」
「ひとまず上がってください。ばっちぃので、手は洗ってくださいね。」
幼馴染
「ゔん…」
喉を鳴らして鼻水を啜る彼を、家の中に招き入れた。
…。
洗面台を使わせてから、部屋に。
一人で使うには十分なテーブルに向かい合うと、やけに距離が近く感じた。
都会の家賃はべらぼうに高いもので、これでも2桁の諭吉が連れ去られてしまう。
元より、信者の訪問を断る為に狭い家に住んでいた。
そんな事情のせいで…彼は座布団も無い床に直接正座をしている。
楽にしたら良いと言ったのに、聞いてくれなかった。
幼馴染
「ごめんな、ごめんなぁ…こんなの、ちーちゃんが一番嫌な扱いだったろうになぁ…」
こちらに目を合わせようとせず、俯いてテーブルの木目ばかり見ている。
以前のように、頼もしい姿を見せてほしいものなのだが…
御船千早
「ん〜…あえて、こう呼びますけど。」
「"福来さん"は、私を助けてくれた恩人ですよ?」
だからこそ。
ここからが、師匠から教わった成果の見せ所だろう。
幼馴染
「へ…?」
御船千早
「私も騙されて、いかがわしいお店で働く直前だったんですから。どんなに堕ちていたとしても、貴方は…」
「自分と同じ末路を辿ってしまいそうな幼馴染を助けることが出来てたんです。 素敵な、『事実』ですよ。」
幼馴染
「…っ。」
罪悪感に押しつぶされそうな心に、光を示す。
巫女の存在や、ホーリーストーンなんかじゃいけない。
彼が『福来友一』として生きた人生の中にある光を、そっと掬い上げる。
御船千早
「小さな村で、アレだけ頑張って貯めたお金…その専門学校に騙されて無くなっちゃったんですか?」
幼馴染
「…そう、だよ。」
御船千早
「なのに、私が東京に来るまでに…あんなに大きな組織を作れてたんですよね。やっぱり、私達の
幼馴染
「そんな…俺は、間違った事をした、馬鹿で…」
御船千早
「間違っているいないと、凄い凄くないは別。」
「福来さんは…間違った、凄い人ですよ。」
幼馴染
「…。」
御船千早
「0からでも、私を迎え入れる居場所を作れたんです。今の元手があれば…
「…私も、一緒に手伝ってあげますから。」
少し、その種火に息を吹きかければ…酸素を得て、周囲に燃え移り、大きさを増していく。
幼馴染
「…本当に、怒ってない?」
御船千早
「怒ってますよ。ただ、同じくらい恩人なんです。」
「嘘だと分かって悲しくなりましたけど〜…『本物』が私以外にも居るって思った時、確かに一度、心細さは埋まったんですから。」
幼馴染
「…そう、か。」
「わかった。これからやり直そうって言ってくれるなら…投げ出さない。」
やっと、彼が前を向き…私の目を見てくれる。
福来友一
「『福来友一』として…騙してしまった人達を、全員救うまで逃げ出したりなんかしない!」
「見ててくれ!全員絶対に正気に戻す!」
「良いように騙した救済じゃなくて…ちーちゃんが話してくれたような、本物の希望を見せる!絶対にだ!」
その顔は、すっかり憑き物が落ちていた。
タロットを見なくてもわかる。彼の運命は大きく変わり、希望の光に照らされた。
今にも自害してしまいそうだった彼の説得に成功した喜び。十数年ぶりに見た、この頼もしい顔への懐かしさ。
様々なものが混ざり、私は満足げに息を吐いた。
その後は、少しだけ世間話をしてから解散した。
同郷だというのに、互いに方言を使わず。
どこか他人行儀にも聞こえる会話だった。
今は福来友一と名乗っており、これからもその
…。
来客が帰り、一人に戻った自室にて。
ふと気になって自分を占ってみる。
御船千早
「…あら。」
「私…先生とそっくり同じ…」
それは、タロットによって降りてきた啓示。
今の私は『追いかける異性が居るも、自身も誰かに追いかけられている』者だと、そのアルカナは示していた。
前者は鴨志田先生、後者は…今日、本当の意味で再会した幼馴染だろう。
私と、私の親友の運命が繋がったのと同様に、彼と私の運命も強固に結ばれたようだった。
鴨志田先生を助けた件から仲良くなった、アンジェラさんにジュリアナさんが教えてくれた話。
既に…恋焦がれる想い人と、助けた結果好意を持たれている同僚が居ると。
御船千早
「それに、この運命は…。」
「ううむ、確定した運命、私が干渉しなければ決まる未来は…こうなると。」
この先の運命を、ぼんやりと知覚する。
経緯は分からないが、結論のようなものが見えてしまった。一石を投じて運命を変えられるのは…私だけ。
私は選択することができる。
中々に、悩ましい選択となっていた。
御船千早
「…隠しても、いけませんよね。」
「いよっし、週末にでも早速…スッパリ、割り込んで良いか聞いてみましょう。先生、沢山侍らせるのが好きかもしれませんし。」
そうやって思考を纏めると、福来さんと話していたこれからの『目を覚まさせる』セミナーへと思考の議題を変える。
明日から忙しくなるだろう。
しかし目を覚ました福来友一の燃えようを見れば、不安など抱きようがなかった。
運命として見えた、ある人の前で花束を持って立つ鴨志田卓の姿は。
次の機会まで、記憶の中に仕舞っておくことにした。
運命コープ、特に友人ルート時の内容について
設定の独自解釈が大きく含まれます。