鬼滅の刃 〜炭塗りの刀〜   作:サモア リナン

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今回は「ある方」をモチーフにした新キャラを出します

彼の参入で…物語はどう動くかな!!


第10噺「自らの道、新たな仲間」

那田蜘蛛山での激戦から、数日が経過した朝。

 

産屋敷邸。

 

手入れの行き届いた庭には、清浄な白砂利が一面に敷き詰められ、朝の柔らかな陽光を照り返して眩い白さを放っている。時折、風に揺れる藤の花の甘い香りが、静寂の中に漂っていた。

 

だが、その美しい庭に額を擦り付ける一人の男、竈門炭十郎がいた。

 

彼の背中には、厚く巻かれた包帯越しに血が滲んでいた。

 

炭十郎の声は、白砂利に吸い込まれるように掠れ、震えている。

 

「だけど、その後が問題だね……あなたは、その後に現れた上弦へ刃を向けることを躊躇った。その一迷いが、同行した隊士たちを死の淵へ追いやったという事実もまた、報告されている」

 

お館様の言葉に、責めるような響きは一切ない。

 

ただ、事実を淡々と、鏡のように映し出すだけだ。

 

だが、その静けさが、怒号を浴びせられるよりも遥かに重く、炭十郎の背中にのしかかった。

 

「……仰る通りです。弁明の余地も……ございません」

 

炭十郎は、地面に落ちる自分の影を見つめ続けた。

脳裏に焼き付いて離れない光景がある。

雪の日、鬼と化した子供たちが最愛の妻を喰らう地獄絵図。

そして数日前、那田蜘蛛山の頂で、最期に人間の笑顔を見せて散っていった娘、花子の姿。

 

『ごめんね、お父さん』

 

その声が、今も鼓膜の奥で反響し、彼の心臓を鷲掴みにしている。

 

「私は君に今一度問いたい。炭十郎」

 

産屋敷耀哉の声が、一段低く、厳かに響き渡る。

 

「あなたの剣は、何のためにあるのか。

次にまた、あのような修羅場……あるいは、まだ見ぬ他の子供たちと対峙した時。あなたは鬼殺隊士として振る舞えるのかな?」 

 

その問いかけは、炭十郎がこの数日間、己の心臓にナイフを突き立てるようにして、幾度となく繰り返してきた問いそのものだった。

 

「……お館様。正直に申し上げます」

炭十郎は、唇を噛み締めた。口の中に鉄錆のような血の味が広がる。

 

「私は、覚悟していた『つもり』でした。この身が朽ち果てようとも、鬼となった我が子を救う。そのために人間に戻す方法を探し、それが叶わなければ……斬るしかないのだと。

しかし……あの子たちを前にすると、親としての情が、魂の底から溢れ出し……切っ先が揺らぎました。自信など……到底、ございません」

 

……ピシ……

 

空気が張り詰める。

 

「自信がない」

 

それは、命を懸けて戦う鬼殺隊という組織において、即時の追放に値する禁句だ。

 

だが、炭十郎は震える拳を砂利に食い込ませながら、顔を上げ…

産屋敷耀哉を、その赫い瞳で真っ直ぐに見据える。

 

「しかし、この命……貴重な時間を多く使わせていただき、私は病床で、戦場の帰路で、自らに問い掛け続けました。揺らぐのは、親として当たり前のことではないかと」

 

炭十郎の目から、一筋の涙が溢れ、頬を伝う。だが、声は震えていなかった。

 

「甘いと、謗(そし)られるでしょう。

斬れないと思いながら……それでも、我が子を斬る準備と覚悟をする。

その『情』と『殺意』という矛盾。身が引き裂かれるようなその痛みから逃げず……あえて力に変え、業を背負って戦いに赴く……。

それこそが、今の私の、鬼殺隊員としての在り方だと……そう考えます」

 

静寂が場を支配した。

風が木々を揺らす音だけが、遠く聞こえる。

やがて、産屋敷耀哉は深く、ゆっくりと頷いた。

 

「……矛盾を力に変える、か。

情ゆえに斬り、斬ることで情を全うする。それは、とても…とても辛い茨の道だね、炭十郎殿」

 

「はい」

 

「よく、分かったよ。……その苦しみ抜いた覚悟、信じよう。

だが、隊律は大切だ。君をこのまま無罪放免とはいかない」

 

産屋敷耀哉は、静かに処分を告げた。

 

「竈門炭十郎。あなたの階級を『丁(ひのと)』まで降格するよ。

そして暫くの間、単独行動を禁じ、専属の『監視役』をつけることとするよ」

「監視役……で、ございますか」

 

「そうだよ。今後はその者と二人で任務にあたり、その報告内容によって、あなたの進退を改めて決めることとする」

 

鬼を前に刃を向けられなかった者への対処としては、異例の温情ある対応である。

 

本来ならば、切腹を命じられてもおかしくはない失態なのだから。

 

「……御意」

 

炭十郎は産屋敷耀哉の情けに感謝し、深く頭を下げた。

切腹も、追放も免れた。ただ……それは、まだ戦うことを許されたという慈悲であると同時に、地獄の釜の底で生き続けろという厳命でもあった。

 

 

 

 

とある一軒家の豪奢な書斎。

 

 

そこで物思いに耽(ふけ)る者がいた。

 

 

その名は、鬼舞辻無惨。

彼は、極めて不快げに眉をひそめていた。

指先には、美しい装丁の洋書がある。だが、その内容は一文字も頭に入っていない。

 

(累……そして堕摘が敗れたか)

思考の海の中で、彼は苛立ちを咀嚼し、吐き捨てる。

(役立たず共め……。

堕摘に至っては、新たな上弦の座を与えてやったというのに。柱二人相手とはいえ、たかが人間に遅れを取るとは。

……元が娘だとかいうくだらない情に足を掬われた…つまり父親がいた事が敗因か……。

忌々しい事に人間の「記憶」というものは、毒となり、私の完全なる支配を邪魔する)

 

「……ッ」

 

無惨の指に力が入り、洋書が音もなく灰となって崩れ落ちた。

(まぁ、もうどうでも良い。竈門炭十郎の生存など、些末なことだ。奴の存在は所詮、予備の予備……出汁殻に過ぎん)

 

無惨の赫い瞳が、虚空を睨む。

 

彼にとって、炭十郎への興味など既に失せた。

 

彼の思考を占有しているのは、もっと別の――千年もの間、渇望し続けた「光」の存在だった。

 

(下弦、上弦をそれぞれ十二に増やし、これほどの戦力をばら撒いたのは……『青い彼岸花』と『竈門炭治郎』獲得のためだ)

 

無惨の脳裏に、鮮烈な映像が蘇る。

 

あの日。鬼の血をその身に受けながら、朝日に焼かれることなく、太陽の下に立ち尽くしていた少年の姿。

 

太陽を克服した鬼。

 

青い彼岸花を探し求めた千年の徒労が、あの少年の肉体によって終わろうとしている。

 

(炭治郎は今、妹の禰豆子と共に移動しているようだが……どうやら妹を守るため、日中の移動は制限されているらしい。愚かなことだ。同族を守るために、進化の可能性を停滞させるとは……ふふふ、だが、好機ではある)

 

無惨の思考波が、どこからともなく響く琵琶の音色に乗って増幅され、全国に散らばる鬼たちへ伝播する。

その命令は絶対であり、恐怖そのものだった。

 

『――聞け、全ての鬼共!!』

 

闇の底から響く声に、遠く離れた地にいる鬼たちが一斉に震え上がった。

 

『もう竈門炭十郎など捨て置いて良い。時間の無駄だ。

 

最優先事項を教えてやる。

 

青い彼岸花の捜索…それは、貴様達が無能なせいで、ほぼ実現不可能だ。

ならば…貴様らでも出来そうな“竈門炭治郎”の捕縛だ。あの太陽を克服した小僧を私の元へ連れてこい』

 

ギリリ、と無惨の歯が鳴る音が、鬼たちの脳内に直接響く。

 

『そのために私は、増やしたくもない鬼を増やし、分け与えたくもない力を貴様らにくれてやったのだ。貴様ら程度の食事なども、もうどうでも良い。好きに喰え、食事の自由を許してやる

 

ただし……

 

……私の期待を裏切れば、どうなるか。細胞の一つ一つまで理解しているな?』

 

恐怖と、厚かましくも絶対的な命令が、血管を駆け巡る猛毒のように拡散していく。

 

鬼は今、確実に「竈門炭治郎」を中心に、破滅へと回転し始めていた。

 

 

 

 

 

蝶屋敷、病室。

窓から差し込む日差しは穏やかだが、隣のベッドは冷たく、綺麗に整えられていた。

 

炭十郎が産屋敷邸での報告と治療を終え、身支度を整えていると、一人の隠が報告に訪れた。

 

「――む……田中殿が?」

 

「はい。田中姫乃様は、本日未明に蝶屋敷を発たれました。行き先は刀鍛冶の里です」

 

隠は、少し言い淀みながらも、彼女の決断を告げる。

「失った腕の代わりとなる『カラクリ義手』の適合実験を行うため……とのことです。

『炭十郎さん、挨拶できなくてごめんなさい。でも、湿っぽい顔でお別れするのは嫌いだから。次会う時は、お互いもっと強くなって会いましょう』と、伝言を預かっております」

「そうか……彼女らしいな」

 

炭十郎は、「お互い強くなろう」との言葉に、私は一人ではないという姫乃の優しさを感じ、自然と微笑みがこぼれた。

 

そして、ぽっかりと空いた隣のベッドを見つめる。

 

隻腕となってもなお、聡明で気丈な彼女は戦うことを、生きることを諦めていない。

その事実は、重い業を背負った炭十郎の背中を、強く押してくれるようだった。

「私も、立ち止まってはいられないな」

 

そう呟いた時だった。

 

ドタドタドタドタッ!!

静かな廊下を、野生の猪が突進してくるような凄まじい足音が響き渡る。

「竈門殿ォォ!! 生きてますかァ! いや生きてますよね! 新しい刀を持ってきましたよォォ!!」

 

バンッ!!

 

襖が勢いよく開かれ、ひょっとこの面をつけた男が転がり込んできた。

炭十郎の刀を担当する、あの妙にテンションの高い刀鍛冶だ。

 

「あ、ああ、すまない。随分と刃こぼれをさせてしまった……」

 

「いいんですよ! 刀は使ってこそ華! 折れなきゃ研げばいい! それより今回は、とびっきりの新作です!」

刀鍛冶は、興奮した様子で風呂敷を解いた。

そこには、二本の刀が収められていた。

一本は、今まで通りの長さの日輪刀。

そしてもう一本は、それよりふた回りは短い、脇差サイズの小太刀だった。

「二本……ですか?」

「はい! 那田蜘蛛山での戦いぶり、隠の人から聞きました!

あんた、ヒノカミ神楽と、ミズカミ神楽とかっていう舞いのような剣技を使うんでしょう? だったら一本より二本!

長刀で受け流し、脇差しで受け守り、その回転力を殺さずに、懐に入って隙を作って斬り突く! ……なんてどうかなって、夜中に思いついて勢いで打っちゃいました!!」

「勢い、とは……」

炭十郎は苦笑しながらも、その二振りを受け取った。

ずしりと重いが、不思議と手に吸い付くように馴染む。

 

突如赫い罅(ひび)のような紋様が鈍く光る炭色の刃は、彼の覚悟を待っているかのように静かだった。

 

(……二刀、か。あの子たちを守るために斬る刃……今の私には、お似合いかもしれないな)

炭十郎は二本の刀を腰に差した。

 

今までに無いその重みは、決して忘れてはならない罪の重さのようでもあった。

 

 

その後も、病室には騒々しいやり取りが響いた。

 

「おらぁあああ!! てめぇこの野郎! 大事な刀折りやがってー!!」

「貴様が無事で良かった、が!! 刀が無事じゃねぇ! ふざけんな!」

 

刀鍛冶たちの怒号と安堵の声が飛び交う。

 

「良く生き残った。なに……刀は折れても良い。ただの未熟さだ……お互いのな」

 

「生きてた!! 良かったーー! 生きてたーー!! もう負けんな! 最高の刀打ってきたぞー」

 

那田蜘蛛山で死線を超えた仲間達にも、新しい刀が運ばれてきていた。

 

「おろろろ!? すまぬ、拙者が未熟なせいで」

 

「んだとオラァ! 次は絶対折れねぇ刀をつくりやがれぇ! 分かってんのかぁ!!」

 

「致(ち)ッ…! 未熟は百も承知シテイル……わざわざイウナ」

 

それぞれの刀鍛冶と隊士たちの再会。

 

「おぉ! いい長さの鎖だし、いい感じの出刃……最高にかっこいい! うん、もう負けない! ありがとう!!」

顔に大きな傷を負った灰崎が包帯を巻かれながら満面の笑みを浮かべる。

 

そんな中、左目に眼帯をしている石野川と灰崎と同じぐらい顔に大きな傷を負った朽土がムッとしていた。

「むぅ! 私の日輪刀はまだ届かないのか!」

「ウム、拙僧の白鞘はいつ届くのか……」

 

そんな中、捨木が自慢げに声を上げた。

「もぉ!! 皆様、折れたからといって、もっと元々のご自分の刀に思い入れを持ちなさいな!! わたくしの刀を見なさい! この美しさ!!」

 

場が一瞬静まる。

 

村田が恐る恐る口を開いた。

「いや、捨木……お前の刀は茶色っていうか…木の色で一番地味だぞ」

 

 

ドゴン!!!

 

 

捨木が村田の脳天に、拳骨とは思えない音でツッコミを入れていた。

 

 

「「「「「「あ……」」」」」」

 

陽村、獅子森、雪之、灰崎、朽土、石野川。

その場にいた全員の心が《言わなきゃ良いのに》と

 

思いが一つになった瞬間だった。

 

 

「「お待たせしましたーーー……って、あれ? どうしました?」」

「「キターーーーー!!!!」」

 

時間差で朽土と石野川の日輪刀が届き、二人はガラにもなく手を取り合って喜びの声を上げた。

 

ここで、念のために持っていた“色残ノ刃(いろのこりのやいば)”は、刀鍛冶を生業とする鍛治士達に返却された。

 

予備として彼らを守った刀たち。

 

一本は折れてしまっていたが、それでも大切そうに彼らは受け取る。

 

一人の鍛治士が、静かに語り始めた。

 

「……色残ノ刃は、持ち主が“自分から”希望しないと、持ち主と一緒に弔われるんだ……。

それに……恨みが強すぎるものもあって、新手(あらて)……あー……次に刀を持ったものが呪われるって話もある」

 

場の空気がすっと冷える。

 

「そういう刀はお祓いして、厳重に祀るか、仕方なく『刀の墓場』に持って行く……どちらかなんだ。

お前らすげーよ。全員が認められたって事だ。

“壊れて”しまっても、“荒れて”ない」

 

その言葉を受け、去って行く鍛治士達の背中に皆がもう一度、役目を終えた刀達と、それを管理する者達に深く頭を下げ、黙祷した。

 

 

 

そして…ある隊員から別れの報告があった。

 

 

「皆じゃあな、短かったが悪くなかったよ」

 

鬼の毒を受けた赤嶺左内(あかみね さない)だ。

 

彼は手足が縮み、元の身体機能を取り戻すことはできなかった。

手足が元々の半分までの長さとなり指が2本ずつ、毛深さは蜘蛛の手足を彷彿とさせた。

 

そのため刀を持つ事も困難となり、無念の除隊となったのだ。

かなり良くなったとは言え、ただ歩き、食事等といった、何とか身の回りの世話を自分でするのが精一杯な状態だった。

 

今はまだ蝶屋敷で治療が必要な状態だが、今後はおそらく“隠”としての活動も不可能だろう。

 

「「「「「赤嶺……」」」」」

炭十郎を含め、共に戦った鬼殺隊員たちが沈痛な面持ちで赤嶺を見舞う。

 

だが、赤嶺は努めて明るく振る舞った。

 

「しみったれた顔すんな。鬼相手に生きて帰ってこれただけでも御の字だろ。お館様から仕事の斡旋もいただいた。生きるに困る事はない……ありがたい事さ……」

 

そう言う赤嶺の顔は、どこか無理をして作った笑顔だった。

 

皆、心に誓う。“赤嶺の分まで鬼を狩る”……と。

 

話もほどほどに退室しようと皆が腰を上げた去り際。

 

赤嶺がボソッと何かを呟いた。

「……まぁ……『神祓府(かんばらいふ)』に戻れば、このぐらい治るんだけどな…」

 

「ん…?」

 

炭十郎が聞き返そうとしたが、その言葉は雑踏にかき消され、誰の耳にも明確には届かなかった。

 

 

五十嵐甚兵衛と肉蝮かな子は不在だった。

 

「青い彼岸花」の効果が「採血」という医療行為で判明したらしく、呼吸は未熟だが、痣者として実力を期待され、五十嵐甚兵衛は風柱・不死川実弥の、肉蝮かな子は恋柱・甘露寺蜜璃の「継子(つぐこ)」になったらしい。

 

「あいつら、出世しやがって……」

「でも、似合いの師匠だよ」

 

二人とも今度会う時が楽しみだ……と、皆が気合いを入れ直していた。

 

 

 

蝶屋敷での治療が終わり皆と別れ、それぞれの任務に旅立って数日後。

 

炭十郎は指定された合流地点である、街道沿いの古びた茶屋にいた。

今日から、炭十郎には監視役がつく。

 

(どんな方だろうか……降格処分の者につくなど、相手にとっても貧乏クジだろう。私のせいで、余計な任務を増やしてしまった)

 

炭十郎がぬるくなった茶を啜りながら待っていると、入り口に人影が現れた。

 

隊服の上に、真面目さを絵に描いたような灰色の羽織。

髪は一分の隙もなく撫で付けられている、見るからに利発そうな青年だ。

年齢は炭十郎より14〜5歳は下、20代半ば…ほどだろうか。

男は、入り口で直立不動のまま、炭十郎をじっと見つめている。

 

「……竈門炭十郎殿ですか?」

 

「あ、これは失礼を……竈門炭十郎と申します」

 

炭十郎は慌てて立ち上がり、深々と頭を下げた。

 

「私の至らなさで、貴方に不要なご負担をお掛けする事になったこと、誠に申し訳ございません」

 

まずは謝罪と誠意を。

炭十郎が顔を上げる。

 

だが、男は瞬き一つせず、能面のような表情で炭十郎を凝視していた。

 

「……」

「……?」

(怒っているのか……? それとも、私の顔に何かついているのか?)

一秒、二秒、三秒。

奇妙な沈黙が流れる。炭十郎の背中に冷や汗が伝い始めた時。

 

「うん……」

何やら思案し、男はようやく挨拶に応えた。

 

「いえ……気にしないで下さい」

 

店内の客が思わずこちらを振り返るほど、驚くほど良く通る声だった。

 

「私はただ、職務に忠実に向き合っているだけです。必要な事だと思っています。私は乙(きのと)の隊士、小泉寸津浪(こいずみ すんずろー)。貴方と同じ、誇り高き鬼殺隊の一員です」

小泉は一度言葉を切るとグッと拳を握りしめ、炭十郎にズイと一歩詰め寄った。

 

その距離感、静かな熱量。妙な圧力が炭十郎を包む。

「私は……ただ、任務に誠実でありたいと……そう思っているんです!だから、あなたも余計な気遣いは不要です!」

 

「……あ、はい」

炭十郎は圧されて一歩引いた。

 

(……ん?)

炭十郎の冷静な部分が、ふと首を傾げた。

 

今、この人は……

『気にしないで下さい、職務に真っ当に向き合っているだけ』と言った直後に、『任務に誠実でありたい、余計な気遣いは不要だ』と言った。

と。

言葉は違えど、言っている内容は全く同じだった。

しかも、二回目の方が熱量が上がっていた。

 

炭十郎が戸惑っていると、小泉はキリッとした顔で言った。

 

「では、行きましょうか、竈門殿」

「……あ、はい。……先導いただきかたじけないが……今はまだ任務の指示はありません……どこに向かわれるおつもりか?」

 

炭十郎の問いに、小泉寸津浪は、彼方を見つめるような瞳で力強く答えた。

「分かりませぬ、しかし参りましょう。

我々は示された場所にしか行けないわけではありません。

我々の行く手には鬼がいる! そして、この先の道中には、恐るべき鬼が潜んでいるかもしれない……!

だからこそ! 我々は、一歩ずつ、自分の足で確実に自分の道に進まねばならないのです」

 

(いかん…目的地が分からぬままだ……それに…やはり、同じことを言っている)

 

真剣な眼差しで、当たり前のことを全力で力説する監視役。

 

その利発そうな見た目と裏腹な言動と、どこか憎めない横顔を見ながら、炭十郎はこれからの旅路に、一抹の不安と、微かな可笑しさを感じるのだった。




新キャラモチーフ「2025年10月防衛大臣就任・小泉進次郎」さん
でした!!!

話し方は小泉構文っぽく出来たかな?

……えっと…出していいよね?
だめだったらどうしよ…(笑
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