闇が弾ける…そう、感じた。
「生きる価値のない雑魚…邪魔だな」
男の声…しかし、やや高く、よく通る乾いた高い声。
同時にズブリ、と
肉を貫く鈍い音がして――
「ごふ……」
小泉寸津浪の身体が、宙を舞った。
胸に穿たれた穴から血を撒き散らし、
まるで壊れた人形のように、投げ捨てられる。
「――寸津浪!!」
炭十郎が、反射的に踏み出そうとする。
だが。
ゾワリ、と
全身の皮膚が粟立つ。
空気が、重い。
足が――止まる。
鬼……
眼に刻まれているのは…上弦の参
そこに“いる”だけで、
この場の支配権を完全に握っていた。
(動けぬ……!)
迂闊に一歩でも出れば、殺される。
確信にも近い予感が、背骨を縛る。
「むん…!」
煉獄杏寿郎も、歯を食いしばった。
炎柱である自分が。
目の前で仲間が倒されているというのに――
(動けば、次は……)
鬼の視線が、わずかにこちらを掠める。
それだけで、
“今は動くな”と告げられているようだった。
小泉の身体は、
善逸と伊之助の足元へ、どさりと落ちた。
「……っ!?」
善逸が、声にならない悲鳴を上げる。
「おい……嘘だろ……」
伊之助が、思わず膝をつく。
近くで見ると、はっきり分かる。
致命傷だ。
胸の穴。
呼吸の度に、血が泡立つ。
「こ……いずみ……さん……!」
善逸が、震える手で身体を支えようとする。
だが、小泉はわずかに首を振った。
「……いい……」
声は、かすれている。
一呼吸ごとに、命が流れ出ていくのが分かる。
伊之助が叫ぶ。
「おい!!死ぬな!!
まだ……まだ戦えるだろ!!」
小泉は、かすかに笑った…ように見えた
「……無理……だ…」
視線が、彷徨う。
焦点が合わない。
話せる内に…
託したい言葉を必死に言葉を探していた。
「……二人……に……」
善逸が、ぐっと身を乗り出す。
「な、なに!?
言うことあるなら……全部、聞く!!」
小泉の唇が、震えた。
「……両親……と……兄……」
息を吸う。
それだけで、喉が鳴る。
「……いつまでも……元気で……って……」
声が、ほとんど風になる。
「……伝えて……ほしい……」
善逸の目から、涙が溢れ落ちた。
「……分かった……
絶対……絶対伝えるから……!」
伊之助は、唇を噛みしめて、ただ頷く。
「だから……だからよ……」
言葉が、続かない。
小泉の胸が、小さく上下し――
ふっと、力が抜けた。
ぼこ…
「……あ……」
それが、最後の音だった。
目は、もう何も映していない。
「……小泉、さん……?」
善逸が、呼ぶ。
返事はない。
伊之助が、拳を握りしめる。
「……っ」
炭十郎は、遠くからそれを見ていた。
近寄れない。
駆け寄れない。
ただ、立ち尽くすことしかできない。
(寸津浪殿……!!)
煉獄も、動かなかった。
いや――
動けなかった。
仲間の死を憂うために動けば…
ここにいる全員が死ぬ。
それほど大きな隙を晒す事になってしまう。
柱としての判断が、
一人の人間としての叫びを、押し殺していた。
鬼は楽しげに拍手する。
「素晴らしい」
その声が、この場の全員の胸を、深く抉った。
小泉寸津浪は、善逸と伊之助の腕の中で、
静かに、息を引き取った。
夜は、まだ終わらない。
――この死を抱えたまま死闘へと移行する
炭十郎は、己の呼吸が乱れているのを自覚していた。
夜気の冷たさではない。
胸の奥で燻る、焦げ付いたような思考が、呼吸を濁らせている。
小泉の死が…煉獄杏寿郎の背中が、視界の端にある。
(寸津浪殿…いや、今は…煉獄殿と協力して鬼を討つ事だけを考えろ)
歯を食いしばる。
その一瞬の“思考の隙”すら致命となる。
目の前の鬼はそれほどの威圧感を持っている。
守るために、前に出る
呼吸を乱さぬようにと、自分を抑える。
「(…くそ…この威圧感、今の私では寸津浪殿の下に駆け寄ることすら出来ないのか…)」
声に出さず、心の中で吐き捨てる。
仲間の死に意識を奪われ、
“斬るべき敵”から目を逸らしてはいけない。
たとえ、この身が砕けても前に出る。
炎柱の煉獄杏寿郎の隣に立つために…
炭十郎は、一歩、前に出た。
それは覚悟を決めた証だった。
「いつでも…煉獄殿」
その声には、迷いはなかった。
「うむ…」
…
……
………
『『ドン!!』』
踏み込む音が、ほぼ同時だった。
煉獄杏寿郎が地を蹴り、炎が夜を裂く。
炭十郎もまた、半歩遅れてではなく、並ぶように前へ出た。
「行くぞ!上弦――!」
叫びに応えるように、鬼の口角が歪む。
「いいぞ……いい目だ!」
瞬間、三者の距離が消えた。
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象!」
煉獄の刀に宿った炎が横薙ぎでより広範囲を薙ぎ払う、と同時に対象的な炭十郎の静かな一太刀が、限りなく低い位置から二薙ぎの斬り上げとなり鬼を襲う。
「伊邪那岐(いざなぎ)神楽 漆ノ手 鎮火」
怒り、恐怖、暴走――己の未熟な感情・業火を鎮めるため斬り上げた。
二方向からの痛烈な斬撃。
逃げ場はない。
…はずだった。
だが鬼は、笑ったまま両腕を振るう。
「破壊殺・羅針」
――衝撃。
拳が空気を砕き、焔と刃が弾き飛ばされる。
地面が爆ぜ、剣気がひしゃげた。
「っ……!」
炭十郎の身体が後方へ押し戻される。
それでも足を止めない。
(止まるな)
攻め続けろ。
間合いを与えるな。
煉獄が間髪入れず踏み込み、連続の斬撃を叩き込む。
「炎の呼吸 伍ノ型ぁ!!炎虎」
ガォン!!
炭十郎も呼吸を重ね、猗窩座の懐へ滑り込んだ。
「伊邪那岐神楽 肆ノ手!澪返し(みおがえし)!!」
力の流れの道(澪)を作り、猗窩座の力を強制的に導く。その出口に集まる力を反撃の力をへと変換する。
ザシュン!!
2人の刃が、猗窩座の肉を裂く。
「はは!やはり強い!」
鬼の肩口から血が飛ぶ。
確かな手応え。
均衡が生まれ…鬼が話しかけてきた
「今の動きだけでお前達の練度が垣間見えた。とても好ましいぞ!俺の名は猗窩座…素晴らしい提案をしよう……鬼にならないか?」
…一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「断る!私は君のことをよく知らないが既に嫌いだ!!鬼になる気もない」
「同じく、鬼になる気は全くない。お前は小泉殿の仇で…斬るべき敵だ」
猗窩座の気配が、変わる。
「なぜ人間は…鬼になるのを拒むのか…今までこの提案に乗った者がいない…理解できない、老いて死んで終わるのだぞ?鍛え上げた身体も…技も廃れ消えていく、勿体無いと思わないのか?」
「「思わない」」
「人間は老いていく、だからこそ美しい、私は人間として生きて死にたいのだ」
「人は想いを託し続けて来た。だからこそ、繋がりを持ち、正しい未来へ導けるのだ」
猗窩座の表情が一気に嫌悪感へ変わっていく。
「くだらない事だ…所詮、死ねば終わる。その繋がりとやらがどれほど脆いか、分かっていないのだな」
ドン!!
猗窩座が地を踏み締め
「奥義――」
低く、殺意に満ちた声を放った。
「破壊殺・終式」
世界が、歪む。
「青銀乱残光(あおぎんらんざんこう)」
視界が引き延ばされ、空間そのものが敵意を帯びる。
煉獄の動きが読まれ、炭十郎の踏み込みも先を取られた。
数え切れない拳の嵐が来る。
「いかん!炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり!!」
「これはっ……!伊邪那岐神楽 伍ノ手 波断ち(なみだち)!」
煉獄と竈門、両名とも防御に特化した技を振るう。
しかし…
避けきれない。
受け切れない。
煉獄の目・胸・腹を、衝撃が貫いたと同時に、炭十郎の頭・脇腹・足にも、重い一撃が見舞われた。
「ぐっ……!」
息が、吐き出される。
均衡が――崩れる。
押されていた、確実に。
それでも、炭十郎は歯を食いしばった。
(ここで……下がるものか)
血の味が口に広がる中、全集中の呼吸を、深く――さらに深く。
そう…小泉寸津浪が使っていた…全集中とは、また違う可能性の呼吸…。
「深呼吸・伊邪那岐(いざなぎ)神楽・玖ノ手――」
チャキ…
刃が唸る。
「―― 迦具土討ち(かぐつちうち)!!」
今までとは深度の異なる、渾身の一撃が、猗窩座を捉えた。
斬撃が胴を深く抉り、骨を断つ感触が腕に残る。
猗窩座の身体が、弾けるように後退した。
更に――頸を狙う…
「捌ノ手 間詰め(まづめ)!」
シャン…
シャン…
舞う様に猗窩座を立て続けに攻める。
しかし、猗窩座は笑っていた。
「…ぐぅ!?コレは!!…はは!!いいぞ!!」
次の瞬間。
捨て身の踏み込み。
常軌を逸した速度。
炭十郎の視界が、白く弾けた。
「――っ!!」
「破壊殺・滅式!!」
ドッー…ーオォォーン
衝撃が全身を貫き、地面に叩きつけられる。
「うっ…ぐあぁぁぁ!!」
なんとか受け身を取るだけで精一杯の衝撃。
生きている事に自分で驚いたほどだ。
呼吸の反動とダメージで身体が言うことを効かない
(信じられん…今の攻撃を受け、生きている…しかし…ぐ、身体が…動かない…)
声が出ない…立てない。
炭十郎は甚大な怪我を負ってしまう
だが、滅式は炭十郎の技の傷が治りきらないまま放ったため、威力は十全ではなく、また致命的な隙が生じていた。
その隙を、煉獄が逃すはずがなかった。
「竈門殿!?
その覚悟…見事!!思いは、しかと受け取った
いくぞ!奥義――!」
夜空を裂く炎天が、猗窩座を焦がす。
「煉獄――!」
「なに!?くっ…おのれぇぇ!!」
ズッッドオォォ…ー…ォォオン!!!
剣が、猗窩座の胸を貫き、更に頸へ至る。
しかし猗窩座の腕も煉獄の胸に突き刺ささる。
「あぁぁぁ!!」
「馬鹿なあぁぁ!?」
それを見ていた善逸と伊之助は寸津浪と同じ未来へ煉獄が向かう事を理解してしまう
猗窩座と煉獄は互いに、掴み合い、動かない。
そして――朝日が、昇り始めていた。
首も、切れる。
あと、わずか。
猗窩座の表情が歪む。
「……チッ、朝日が昇ってしまう…放せえぇえ!!」
「放すものかあぁぁ!!」
「「ウオォォオォォォォォォオオォ!!!!!!」」
そして
ブチィ!!!
猗窩座は自らの両腕を引きちぎることで、血を撒き散らしながら退避行動を取ろうとした。
それを見た善逸と伊之助の行動は早かった。
「あ……っ!!
逃すかぁ!!伊之助えぇ!!」
「分かってらあぁぁ!!」
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・神速!!」
ビキビキ…バギィ!!
善逸は足を犠牲に自身が出来る最大の型で猗窩座に迫り
「獣の呼吸 捌ノ牙(はちのきば)投げ裂きぃ!!
…からの、爆裂猛進!!」
ブォン!!……ドドドド!!
伊之助は両腕の筋肉が千切れんばかりの全力で2刀を投げ、さらに全力で猗窩座に向かって走り抜ける。
「この、雑魚共があぁぁ!」
両腕が千切れ着地する寸前
伊之助の投げた2刀が猗窩座の目と足に当たり空中でバランスを崩す
そこに
ガギン!!
と
善逸が切れかけの猗窩座の頸を全力で斬りつけるが、その頸すらも斬り飛ばす事は叶わなかった。
「はぁあぁぁぁ!?
なんでなんで!?切れかけなのに…くっそぉぉ!!」
猗窩座はニヤリと善逸を嘲笑う
「は……ははは!やはり雑魚は価値がないな!」
と残った足で善逸を蹴り殺そうとした時
「爆・烈・猛・進・蹴り!」
ドッガアァァン!!
伊之助の両脚による空中蹴りが猗窩座の顔面に突き刺さった。
そして
バギン
「が!?」
斬れかけていた頸が折れ曲がる。
ドシャアァァ…
猗窩座、善逸、伊之助はほぼ同時に地面に倒れ落ちる。
そこはちょうど朝日が当たりにくい林の中
「しめた!これで太陽から逃れられる」
そう言って猗窩座は林の奥深く…闇へと溶ける。
だが、
「「逃げる(ん)なあぁぁぁ!!」」
善逸と伊之助が叫ぶ
「はぁ!?何を言っているんだ!頭が沸いているのか?
俺は貴様らから逃げる訳じゃない!太陽から逃げているんだ!」
クチャ!
折れた頸、失った手足、傷ついた顔、全てが高速で治り走り去る猗窩座。
「く!伊之助ぇ!」
「おうよぉー!!おらぁ!!!」
ブン!
キュン!!!
足が折れて立てない善逸から放られ預けられた刀を投げる伊之助
そして
ドズン!!!!
「がぁ!?」
猗窩座の背中に刀が突き刺さり、あまりの怒りで頭の血管を限界まで浮き上がる。
「この…雑魚のクソガキ共がぁ!!」
「俺達は……負けて無い!!」
「俺様達は負けてねぇからなぁ!」
「乗客は誰も死んでない!!」
「俺様たちは逃げなかった!勝ったのは俺様たちだ!!」
「「次は、絶対にお前を倒してやる!!」」
林の奥深くに逃げる猗窩座の背に善逸と伊之助の決意がぶつけられた。
「はぁ!?勝ったのは明らかに俺だろう!何を言っている、頭の悪いクソガキ共が!次会った時に覚悟しておくのは貴様達だ!!」
猗窩座もまた、善逸と伊之助に怒りのままに暴言を吐き去っていった…。
………
喧騒に塗れた夜がが嘘の様に…静かな朝となった。
倒れ伏す炭十郎の視界に、
炎の背中が、立っている。
しかし、足元には夥しい量の血が流れ出ている。
(……れ、煉獄殿…)
声が出ない、視線を向けるだけで限界だ。
一呼吸をするだけで地獄かと錯覚するほど苦しい。
そう感じていた時、煉獄は善逸と伊之助を呼び何か話をしている。
…自らの想いを託しているのだ。なんと強い男…そして切ない光景か…
対して自分はどうだ。
視線をずらして視界に入れたのは
(寸津浪殿…!)
決して長い付き合いでは無かったが、彼の人と成りを知るには十分な時間だった。素晴らしくまっすぐで純粋な心を持った青年だった。
この中で自分は1番彼との付き合いが長い。なのに、そんな彼の最期の言葉を聞いてやることも出来ない不甲斐なさ。
今の自分は息をして涙を流すことしかできない。
(くそ!なぜ、私は…こんなにも弱いのだ!!!)
腹の底から自分自身の無力を嘆きながら限界を迎え、炭十郎は意識を閉じた。
夜明けの光が、地面を薄く染め始めていた。
煉獄杏寿郎は、地に座したまま動かない。
胸を貫いた傷から、血が止まらなかい。
善逸は伊之助に肩を借りながら駆け寄った。
「……煉獄さん」
その呼びかけに、炎の柱ははっきりと顔を上げた。
その表情は柱の風格を全く損なわない、凛としたものだった。
顔色だけが…徐々に白く…土気色に近づいていく。
「うむ。無事だな」
その声は、いつもと変わらない。
だからこそ――2人は次の言葉を探せなかった。
煉獄は、善逸と伊之助を順に見た。
「我妻少年、嘴平少年」
二人の肩が、びくりと跳ねる。
「よく戦った。恐怖の中でも、仲間を想い合い、格上相手にも逃げず立ち向かった…君たちは鬼殺隊の誇りだ」
善逸の唇が震え、伊之助は歯を食いしばる。
「小泉青年…本当に惜しい人を亡くした…彼は最期まで立派に鬼殺隊として戦ったとお館様に伝えてくれ」
「…グスッ…あ゛い!」
善逸が止まらない涙を拭いながら返事をする
「竈門殿は、柱になれるほどの実力者だ…ただ周りの環境に左右されすぎる…もっと自分の力を信じてほしいと伝えてほしい」
「あぁ゛!…わ゛がった!」
伊之助は猪の被り物から溢れ出る涙を拭き取る事もせずに答える。
「我妻少年、嘴平少年…このまま鍛錬を続けなさい。才能は十分にあるし、既に私より有益な能力を見せてくれたじゃないか…将来…必ず柱になれるだろう」
「「あ゛い゛!!!」」
「泣きすぎだ…君達も軽傷ではない…柱は後輩を導くのも役目なのだから、気にするな」
そうして、煉獄杏寿郎は何も無いはずの2人の後ろを凝視し、驚いた様に目を見開いた。善逸と伊之助の2人は振り向くが何も見えない。
しかし
煉獄杏寿郎は安心したように
穏やかな笑顔になり
そして
逝った。
2人にとって
この夜で、何かが確実に折れ、何かが確実に始まった。
善逸が背負ったもの。
煉獄と小泉の顔が、頭から離れない。
(俺が……弱いからだ)
震える指を、強く握りしめる。
小泉が足下に投げられた時、何も出来なかった。
そして
煉獄杏寿郎の背中。
あれほど大きくて、頼もしくて、
「大丈夫だ」と言ってくれそうな背中が、もう動かない。
善逸は、初めて理解した。
怖くて逃げた結果じゃない。
怖くても戦った結果でも、人は死ぬ。
だったら――
逃げる理由なんて、どこにも残っていなかった。
(次は……)
次は、間に合う。
間に合わせる。
誰かに言うことはない。
泣き叫ぶこともしない。
ただ、
「自分だけの速さを手に入れる」
それだけを、心に刻んだ。
⸻
伊之助は迷う。
小泉の亡骸の前に立ち、
じっと、それを見下ろしていた。
悔しい、という感情が
どういうものなのか、よく分からない。
ただ、胸の奥が
獣が檻に閉じ込められたみたいに、暴れている。
(俺は……負けてねぇ!
でも…勝ててもねぇ…)
猗窩座を討伐出来ないどころか、まともに戦えなかった。
小泉も煉獄も守れなかった。
それは「弱い」せいだ。
それ以外ない、あるはずがない
伊之助は、拳を握る
ぎしぃ……
拳を握力で骨折するほどの力で握った。
出血したが…やめなかった。
(次は――)
次は、
誰かの後ろに立たない。
前に出る。
先に噛みつく。
敵の注意を、全部引き受ける。
それが、
あの炎の男がやっていたことだ。
⸻
二人は、言葉を交わさない。
慰め合うこともない。
だが同じ夜を、
同じ死を、
同じ「間に合わなかった」という事実を抱えている。
善逸は、逃げた先の死を知った。
伊之助は、守るという概念を知った。
炭十郎は自らの不安定さを知った。
この三人は、
もう以前のままではいられない。
煉獄杏寿郎と、小泉の死は、
彼らを壊しはしなかった。
――ただ、
戻れなくしただけだった。
自分も読んでて楽しめるのが続ける秘訣やね!
モチベーション保つって大変だよねー