鬼滅の刃 〜炭塗りの刀〜   作:サモア リナン

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20話です。よろしくお願いします!


第20噺「壺と憎しみと燃える羽」

その日の夜、刀鍛冶の里は三つに裂けた。

 

同じ空の下でありながら、

 

そのどれもが、生死の境を彷徨う戦場だった。

 

 

玉壺戦 ――

対峙するのは神楽柱の竈門炭十郎

 

 

工房の空気は――変えられていた。

 

木と油と鉄の匂いだった場所に、ぬめるような生臭さが混じる。

 

逆さに張り付いた壺から現れた異形は、舌なめずりでもするように田中姫乃の絡繰義手を見つめていた。

 

「なんと美しい造形……美しいぞ、それは」

 

それでも、上弦の伍・玉壺は炭十郎の強さを感じているのか油断はない。

 

 

「「「「ギョギョギョ!!」」」」

「う、うわぁぁあ!!化け物だあ!」

 

工房の外からは、およそ人が発さない声と助けを求める声が聞こえる。

 

助けに行きたいが目の前の鬼からは目を離し、気を逸らせば、自らの命が失われるであろうと確信できた。

 

炭十郎は二刀を静かに構える。

 

鼓動は速い。

 

だが乱してはいない。

 

(時間はかけられない…嫌な予感がする)

 

「田中殿と小鉄殿には縁壱零式と共に外を任せたい」

 

「了解!」

 

「任せて下さい!」

 

炭十郎は前へ出る。

 

玉壺が笑った。

 

「ヒョヒョヒョ、一人で来るか、人間」

 

「一人ではない」

 

炭十郎の視線は動かない。

 

「背後に、頼れる仲間がいる」

 

肌で感じた…死地に踏み込んだと…

 

 

伊邪那岐神楽 壱ノ手――禊。

 

流れる。

 

斬るのではない。

 

洗い流すような初動。

 

玉壺の首へ。

 

だが。

 

ズルリ。

 

壺へ潜る。

 

空振り。

 

次の瞬間、別の壺から現れた拳が炭十郎の頭のあった場所を通り過ぎる。

 

ビシッ、と背後の壁が魚へ変質した。

 

(む…血鬼術か?

攻撃が当たれば魚になるのか!?)

 

しかも、その魚は牙を剥いて襲いかかってくる。

 

「ヒョー!ヒョヒョヒョ、教えてやろう!

その魚には毒があるぞ?掠ってだけであの世行きである!

さぁ、存分に焦るが良い!」

 

「おのれ!!!」

 

冷汗。

 

遅れて恐怖が来る。

 

だが止まれない。

 

「遅い遅い!」

 

玉壺の拳。

 

壺移動。

 

死角から死角へ。

 

息を付く暇がない連続攻撃。

 

(触れたものを魚にする能力に壺による移動能力…血鬼術とは一匹の鬼に一つでは無いのか!?)

 

炭十郎は今までの常識を覆す鬼を相手に警戒度を最大限まで引き上げる。

 

二刀で受けず、躱し続ける。

 

受けてはならない。

 

触れてはならない。

 

受け流しすら禁忌だ。

 

神経が焼ける。

 

さらには毒魚は増えていくばかり

 

(ぐぅ…今までで、最も難敵かもしれん…!)

 

活路は…限りなく狭い…

 

 

 

 

工房の外では。

 

「来た!」

 

手足の生えた魚の群れが武器を持って鍛治師達に襲いかかる。

 

 

田中姫乃の絡繰義手が唸った。

 

「初の実践ね……いくわよ!!

絡繰腕…捻砕(ねんさい)!」

 

キュイィィィーン!!

 

義手が回転し魚頭を叩き潰す。

 

次に縁壱零式、六腕を展開する。

 

「いっけぇーーー!縁壱零式、六刀乱舞ッスーー!」

 

カチャ…ズババババババ!!!

 

高速移動しつつ六方向からの斬撃は陸戦型毒魚を確実に減らしていく。

 

小鉄が叫ぶ。

 

「右から来ます!」

 

陸戦型毒魚の矛と牙が襲いかかるが姫乃が避ける。

 

一匹漏れた。

 

だが――

 

ガシン。

 

カチャ…ザシン!!!

 

零式が首を断つ。

 

「助かったわ!」

 

「まだ終わっていませんよ!」

 

「そのようね!螢の呼吸 壱ノ型 灯火(ともしび)」

 

田中姫乃は絡繰腕と呼吸により最小動作での抜刀で毒魚達を次々と討伐していく。

 

それでも陸戦型毒魚の群れは増えるばかり

「た、助けてくれぇーー」

 

「これ…本体を倒さなきゃ意味がない!くぅ、このままじゃ…炭十郎さん、お願い!!早く!!」

 

「なんてこったーー!

オイラ自身は戦えないし……やばいッスーー!!」

 

工房周辺の戦場は拡大していく。

 

もう…2人と1機で戦線の縮小は限界だった。

 

 

バギィ!!

 

工房が完全に破壊され外に出て戦闘が継続される。

 

炭十郎は玉壺へ肉薄。

 

弐ノ手・天浮橋。

 

虚実の踏み換え。

 

右から見せて左。

 

だが玉壺は読んでいる。

 

「ヒョーヒョヒョ!見えておるぞ!」

 

拳。

 

来る。

 

紙一重に避ける。

 

髪が触れ――一本、魚になる。

 

(…〜ッ…危なかった)

 

無傷が勝利への絶対的な条件。

 

それが崩れかけた。

 

焦りが胸を焼く。

 

対して玉壺も理解していた。

 

炭十郎は今まで喰ってきたどの柱よりも強い

 

 

だが、自分の攻撃を受ける手段はない。

 

だから守勢を強いる。

 

奢りはない。

 

油断など、しない。

 

本気である。完全に…

 

「気付いているだろう?追い込んでいるぞ!!人間」

 

「……まだだ」

 

息を整える。

 

ここで焦れば死。

 

攻めることが守ること。

 

あの夜の答え。

 

煉獄の死が脳裏をよぎる。

 

(避けてばかりでは勝てぬ……下がるな)

 

参ノ手 裏禊。

 

二刀が逆回転で連結し玉壺の壺を斬る。

 

今までの舞とは刀の振り方、身体の動かし方が異なり、更には構える刀も左右逆となる。

 

「ぬ!?」

 

玉壺は動きを読めず攻撃を許した。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

移動先を潰す。

 

玉壺の目が変わる。

 

「おのれ……小癪なぁ!!」

 

初めて鬼が大声を上げる。

 

そこへ――

 

伍ノ手・波分け。

 

斬撃ではない。

 

間合いを“切り分ける”。

 

逃げ場を限定。

 

壺の配置を読む。

 

(ここだ)

 

玖ノ手。

 

構え。

 

空気が変わる。

 

「迦具土討ち」

 

爆ぜた。

 

火と水の二刀が交差し、

玉壺を縦横に裂く。

 

だが、まだ。

 

再生。

 

「ヒョホホホホホホ!甘いぞぉ人間!」

 

玉壺が真の姿を現した。

 

バキキキキキ!!

 

全身が脱皮したかの様に変貌し、更に全体的な速度が上昇する。

 

魚鱗。

 

拳が雨のように来る。

 

「ヒョヒョヒョ!まだまだぁ!血鬼術、一万滑空粘魚(いちまんかっくうねんぎょ)

 

毒魚の群れが炭十郎を襲う。

 

(これならば“受け”て良さそうだ)

 

玉壺本体の攻撃ではない。

 

毒を持っているとは言えこの程度の魚ならば、どれほどの数だろうが避け・受け・斬り、凌ぐことに集中できる。

 

「おーのれー!人間のくせに!まだ死なんのかぁー」

 

「負けられないのでな!」

 

反射ではない。鬼の動き…呼吸すら読む。

 

脳が焼けるほどの極限。

 

周囲は地面で悶える毒魚と陸戦型毒魚で溢れている。

足の踏み場すら無くなってきた。

 

これ以上はもう…保たない。

 

(もう…終わらせなければ)

 

 

その時、背後から姫乃の叫びが聞こえる。

 

「炭十郎さん!足つきの魚が突破する!」

 

まずい。

 

背後を通せば誰かが死ぬ。

 

(止まるな!)

 

 

炭十郎は振り向かない。

 

前へ出た。

 

「来るのか!?やはり人間は馬鹿だ!血鬼術… 壺間移動、からの水獄鉢(すいごくばち)」

 

「受けるものか!」

 

先程までいたところに水で出来た牢屋が出現し、何度目かの冷や汗をかく。

 

「陸ノ手――寄せ波」

「ヌ!」

 

玉壺を押し込み。

 

「漆ノ手――鎮め」

「ヌヌ!?」

 

動きを封じ。

 

「捌ノ手――間渡り」

「ヌヌヌ!!??」

 

死角へ。

 

そして。

 

「これで終わりだ!お前は強かった……

伊邪那岐神楽…玖ノ手―― 迦具土討ち」

 

今度こそ首が落ちた。

 

玉壺の眼が見開く。

 

「はあぁぁあ!?馬鹿な……この私(わたくし)が!下等な人間ごときに正面から戦って負けるだと!?」

 

首が分かれ、頭が地に落ちる。

 

「あり得ない、あり得ないィィィー!!

こんな人間がいるなんて…異常事態だ…せめて情報だけでも……無惨様に……」

 

 

玉壺は最後まで話すことは出来ずに身体が崩れ、消失する。

 

 

 

 

……沈黙が訪れた。

 

 

 

 

魚も消えた。

 

工房周辺は一時の静寂に包まれる。

 

小鉄がへたり込む。

 

「か……勝った……?こ、怖かったっす〜〜」

 

姫乃が息を吐く。

 

「危なかった……」

 

炭十郎は刀を納めない。

 

まだ周囲を警戒していた。

 

やがて――

 

膝が震え、掌に汗をかく。

 

そこで初めて、自分が恐怖の中にいたと知る。

 

(真に…無傷を保たねば勝てぬ相手だった…それに…)

 

一対一で周りの被害を抑えることを完全に任せたことで為せた成果と言えた。

 

本当に、その通りだった。

 

防衛まで担っていれば…紙一重でも狂えば負けていたのは自分で…間違いなく死んでいた。

 

 

「……柱、か」

 

小さく呟く。

 

完成などしていない…いや、完成はしない。

 

ただ。

 

生き残っただけだ。

 

それを実感する戦いだった。

 

だが――

 

外から。

 

轟音。

 

雷鳴。

 

咆哮。

 

里の別方向から。

 

二つの戦場が、まだ燃えているのが伝わってきた。

 

炭十郎は顔を上げる。

 

「しまった!まだ鬼がいるのか!?」

 

姫乃も驚愕する。

 

「嘘でしょ!?上弦の鬼が徒党を組むの!?」

 

「くっ!!

姫乃殿と小鉄殿は縁壱零式を連れて避難誘導を!私は討伐に向かう!」

 

二刀を握る。

 

傷一つない。

 

だが余裕もない。

 

本当にギリギリだった。

 

ただただ、体力の消耗があまりにも激しい。

 

それでも、次の戦場へ駆ける。

 

 

「「分かりました!!ご武運を!」」

 

「そちらも!」

 

 

 

 

■ 半天狗戦 ―― 肉腹かな子・五十嵐甚兵衛・石野川門

 

「かな子!大丈夫か!?」

「なんとかね、助けてくれてありがと!」

「仲間を傷つけた…許さぬ!」

 

厚みのある風が襲ってくる。

瞬きの間に雷が落ちてくる。

耳鳴りでは済まされない音と空からの予測困難な爪が襲ってくる。

それらに対処すると読んで字の如く、隙をついて横槍がくる。

 

 

しかし、そんな4体の鬼に対して三人は、数で負けても実力ではギリギリで拮抗を保っていた。

 

 

「上弦って首切っても死なねーの!?

痣付ノ風呼吸(あざつきのかぜこきゅう)、陸ノ型…えっと…黒ナンとか乱(正式名称:黒風烟乱(こくふうえんらん)」)!!!」

 

五十嵐の風が乱れ、四方八方に嵐のような斬撃をばら撒いていく。

 

「ぎゃはははは!なに、こいつ、雑魚じゃないのか!?楽しいなぁ!」

「頭が悪い…しかし弱くはない…あぁ…なんと哀しい生き物か」

 

五十嵐の技が団扇と槍によって弾かれるが、逆もまた然り。

 

 

「拙僧は目が見えなくなった…それでも…分かるものがあるでござる。貴様らの悪辣さだ…心眼ノ禅呼吸(しんがんのぜんこきゅう)… 弐ノ型 無二断(むにだち)」

 

風と槍の間を縫って空から襲ってきた鬼の超音波攻撃を石野川が切り裂き、爪を鞘で受ける。

 

「なぜ音が斬れる!?

なんで俺の爪を受けれる!?

本当に目が見えてないのか!?」

 

翼持ちの鬼は疑問を持つが一旦距離を置く。

 

その隙を肉腹が付く。

彼女は先ほど、腹を貫かれたが筋肉の締め付けで止血している。

 

「さすが石野川!痣付ノ拳、壱ノ構(いちのかまえ)…破壊骨」

痣が肉腹かな子の拳まで発現し放たれる一撃。

 

独特の構えから正拳突きが放たれた。

 

…パァン

 

空気の乾いた音が聞こえる。

 

「お前達!そんな雑魚どもに何をしている!」

怒っている鬼は、自らに拳が迫ると驚いた顔をしていた。

 

その動きは直線的ではあるがあまりの速さに正面から受けざるを得ず、更には押し込んでいく。

 

威力のままに地を滑る怒りの鬼。

 

ズザザザザー!!

 

「この…筋肉女め!!(受けた手が痺れた…そんな事があるのか!?)」

 

「「「まだまだー!!」」」

 

3人は息のあった連携で攻めに転じる。

 

『強い』

 

喜怒哀楽の鬼がそれぞれに感じた事実だった。

このままでは負けぬまでも時間が掛かる。

厄介である、と。

 

そう認識した瞬間、鬼達の動きは早かった。

 

「ふざけた奴らだ…あぁ…腑が煮え繰り返る!!!

怒りでおかしくなりそうだ、お前達…」

 

「楽は出来ねぇなぁ!!分かってらぁ!!」

「あぁ、なんと哀しい現実か…」

「喜ばしくはねーが、仕方ない、久々に“混ざる”か!!」

 

ギュルン!!!

 

瞬きの間に…四体は一つに混ざりより若く、凶悪な風貌となった。

 

「我が名は“憎珀天”…極悪非道な童どもめ…不快、不愉快、極まれり」

 

ドドン…メキメキメキ!!

 

背中の小太鼓を叩くと木でできた頭と首だけの蜥蜴が4体…襲いかかってきた。

「んなぁ!?めちゃくちゃだ!

痣付ノ風呼吸… 壱ノ型だ!

名前忘れた…何でも削ぐ旋風!(正式名称:壱ノ型:塵旋風・削ぎ(じんせんぷう・そぎ)」

 

「拙僧達が極悪非道だと?…なんと腹ただしい!!貴様達には決して言われたくないでござる!!心眼ノ禅呼吸… 肆ノ型 心眼無想(しんがんむそう)!」

 

「老人かと思えば分かれて若くなって合体して幼くなって…忙しい鬼ね!!痣付ノ拳… 弐ノ構 鬼牙崩(きがほう)」

 

3人は連携し迫り来る蜥蜴の首に立ち向かう。

 

「「「「ギャオオオオオォォォ!!」」」」

 

バギャ!!!!!!!

 

「ぐ!!」

「うっ!?」

「きゃあ!!」

 

勇んで立ち向かうまでは良かった。

 

しかし、蜥蜴のそれぞれの口から

 

風が

雷が

槍が

超音波が放たれた。

 

それぞれの鬼が放つ威力よりも明らかに強い。

 

憎珀天の背には翼が生え空から見下ろしている。

両手には小太鼓を鳴らすためのバチを握りながら胸の前で腕を組んでいる。

 

実力を伴った、その威圧的な態度は3人の攻勢を削ぐには充分だった。

 

3人は被害を最小限に抑えるために回避する事に全力を尽くす。それでも確実に追い込まれていく。

 

「ちくしょう……これが上弦!」

 

「なにか!何かないの!?

…うぐぅ…お腹の傷が…」

 

「拙僧達の見込みが甘かったのか

…は!?

いかん!かな子殿」

 

三位一体、いや、四撃一帯と言わんばかりの種類の異なる広範囲攻撃で3人は浅くない傷を負い、さらに肉腹は腹の傷が開く。

 

「ふむ?…強くは、ないな。

見込み違いか、我の観察眼もまだまだだな、…童ごときに本気になりすぎた」

 

ニヤリ、と

余裕を見せる憎珀天。

 

「そら、大人しく喰われるが良い」

 

ドドドン!

 

再度、小太鼓の音と共に蜥蜴の頭が一気に襲いかかってくる。

 

「ぐあああ!」

「ま…だよ!!」

「お…のれ!!」

 

 

憎珀天本体は見ているだけ、にも関わらず木造の蜥蜴頭は増え3人を追い詰めて行く。すでに攻撃を凌ぐ事すら難しい。

 

形勢は一気に傾いた

 

……かに見えた。

 

「えーーーい!恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき。

からの弐ノ型 懊悩巡る恋(おうのうめぐるこい)。

最後に参ノ型 恋猫しぐれぇ!」

 

その時、高速でしなる型を連続で放ち3人に迫る風、雷、超音波、槍と木造の蜥蜴頭、更にはついでと言わんばかりに憎珀天の首を切り裂きながら現れる者がいた。

 

「遅くなってごめんね。

皆…上弦を相手によく頑張ったわね!もう大丈夫だよ!」

 

痣を発現させ、炭十郎との朝練で強くなった恋柱、甘露寺蜜璃が参戦した。

 

現れたと思えば憎珀天の胴と首は別れていた。

 

「は?…えぇぇぇ!?あんなにヤバい鬼が瞬殺?」

「きゃー!お師匠さまーーー、素敵ー!!」

「な、なんと…柱とはそこまで」

 

 

「えっへん!!!」

 

胸を張る恋柱。

 

 

…………

 

 

ガサガサガサ…

 

その後ろ

 

誰にも気付かれず人の足首にも届かない程の雑草をかき分けて戦いを終始観察している者がいた。

 

「ヒッ…………ヒィーーー!!な、なんて恐ろしい…ワ、ワシが何をしたと言うのか……しかし、とんでもなく美味そうな小娘だ。ここで逃すには惜しいのぉ…やれ、憎珀天」

 

ミチミチミチ

と気味の悪い音を立てて首が繋がる。

 

「やってくれたな……このアバズレが!!!」

 

それを見た3人は声を出せず甘露寺も心底驚いた。

 

「え…なんで死なないの!?」

 

戦いは終わらない。

 

 

 

■ ???戦 ―― 不死川玄弥、村田むら太、捨木彩子

 

空は、羽に支配されていた。

 

 

数えきれない無数の羽が一体の鬼の意のままに動いている。

 

「ほら、喰らいなよ」

 

「クソがあぁぁ!!」

「うわーうわーうわー!こんなのどうしろって言うんだよー!」

「だらしないですわよ!集中なさって!」

玄弥、村田、捨木はそれぞれ歯を食いしばる。

 

斬る。

避ける。

撃つ。

 

だが――

 

羽は減らない。

 

増える。

 

数えるのも億劫な程の羽が襲いかかってくる。

無傷でやり過ごすことは不可能。

 

「もう反応見るのも飽きたし、つまんないなぁ…」

 

上空で、鬼が欠伸をしながら目をこする。

 

「時間の無駄だなぁ、暇だなぁ…

あ、そうだ、せめて

死ぬ前に僕の話に付き合ってよ」

 

鬼が笑う。

 

「僕の名前は酷烙嘛(くらま)だよ

その前は竈門茂って嫌な名前でさ。6人兄弟が全員、鬼になったんだ!すごいでしょ!

羨ましい?

皆で分けてお母ちゃんを食べたんだけど、懐かしいなぁ……やっぱり皆と食べるとなんでも美味しいよね。お母ちゃんだからって言うのもあると思うんだけどさ!

なのにさ……父ちゃんは僕たちに食べられないどころかお姉ちゃんと弟を殺したんだよ!

信じられないよね?父親なら一緒に鬼になるか

食べられるべきだと思わない?親が子供を殺すなんてありなさすぎるよ!!」

 

その話を聞きながら3人は驚き、悲しみ、怒りを感じた。

 

「テメェがアイツの…」

「やっぱり鬼舞辻無惨って最悪ですわね」

「酷すぎるだろ……せめて俺らで斬ってあげたいが…」

 

 

「あれ?父ちゃんのこと知ってるの?

なのに話が合わないのかぁ…酷いのは父ちゃんの方なのに

…それでさ、この里にいるのは知っているんだけど、

どこにいるか知らない?」

 

こてん

 

と首を傾げる茂…

 

いや“酷烙嘛”

 

 

この質問で一時的に羽による猛攻が僅かに緩まった。

 

おそらく返答させるため、だが、その一瞬の間を逃すはずはなかった。

 

「知っていても、教えませんわ」

捨木は返答したと同時に呼吸を深める。

「… 破調の呼吸  参ノ型…」

 

 

「当然だな…」

バリ…バリ…

と玄弥は落ちていた酷烙嘛の羽を食い漁り翼が生える。

 

「そうだよ、炭十郎さんに討たせられない…って!玄弥何してるの!?

…え…翼が生えた!?何それー!!?」

1番負傷しているはずなのに1番元気な村田。

 

そして…

 

「何してるか分かんないけど…うん、俺も、もう切り札を切るしかないよな、行くぜ……村田ノ“深”呼吸…」

居合いの構えを取る村田

 

「あははは…まだ抵抗するの?教えてくれないなら別にいいんだよ?里を虱潰しに探すだけだから。うん、だから…もういいや、死んじゃえ!」

 

酷烙嘛は羽による猛攻撃を再開する。

そこに一切の躊躇はない。

先ほどまでの彼らならこれで終わっていたかもしれない。

 

だが、今回はそうはならなかった。

 

「自分の羽で溺れろやぁ!!!」

玄弥は酷烙嘛の羽を食べれるだけ食べる事で同じ能力を得るに至った。

ただし翼を生やすことはできたが飛ぶ事は出来ない。

それでも羽を操る能力を得て全意識を羽に集中した。

 

ピタ……

 

「え?」

 

視界に映る羽が一時的に停止する。

今までにない経験をして驚いた酷烙嘛が一瞬硬直する、

 

その隙を狙い

「……捨身一撃!!!」

 

捨木彩子が防御を捨てる一撃を放つ。

 

空に留まっている酷烙嘛。

 

捨木は鋭い羽の間を傷付きながらも最短距離で積めていく。それは、自らの傷を顧みない文字通り「捨て身」、羽が“動いていない”からこそ辿り着いた奇跡の軌跡。

 

戦いにすらなっていなかった状況の唯一の光

 

「くらえぇぇぇ!!!」

 

捨木の渾身捨身の一閃が酷烙嘛の首に届いた瞬間だった。

 

 

 

…ガキィン

 

 

「で……なにしたいわけ?」

 

「う!!!」

 

しかし、そこにはどうしようもない実力差があった。

 

首に到達しただけでも奇跡。

 

刃が届いたからと言って“斬れる”道理はなかった。

 

「はぁ…こんなのに時間かけてたなんて馬鹿みたいだよ。さよなら、オネェさん…いや、お兄さんを先にしようかな」

 

ズバァ!!!!

「〜〜〜ッ……」

 

羽々が酷烙嘛の後ろに迫っていた村田を襲う。

 

「ド…根性!!……肆ノ型 覚悟ノ踏み込みいぃ!!!」

 

これは攻撃を受ける前提の型。

言ってしまえば、ただの痩せ我慢だ。

村田はそれを型とした。

 

「あれ?意外と死なないね」

 

更に言えば、もう一つ…村田ノ呼吸は“深”呼吸と非常に相性が良く、酷烙嘛へと近づいていく。

 

「もう……一丁!!村田ノ“深”呼吸 漆ノ型 しぶとい追撃!」

 

村田は全力で抜刀し頸を狙う。

 

キィン…

 

「そろそろ、めんどくさいなぁ」

 

心底呆れた顔で斬撃を腕で受ける。…当然傷すら出来ない

 

「こちらも、まだ…死んでないのよ!!

 

破調の呼吸  弐ノ型 焦燥の太刀」

 

「あぁ、もう!弱いくせに!」

 

酷烙嘛の狂爪が捨木を襲う、が。

 

ドォン!!

 

弾が腕に当たり捨木から外れる。

 

「いい歳して豆鉄砲で遊ぶなよなぁ!!」

 

玄弥が南蛮銃で援護している。

 

「言ってろ…クソガキがぁ」

 

予想外に粘られ酷烙嘛は苛立ちを隠せない。

 

 

「なんだよ意地悪ばっかりして巫山戯るなよ!!みんな嫌いだぁ!!!!」

 

ついに酷烙嘛は我慢の限界を超える。

駄々を捏ねる子供のように見境なく暴れ出した。

 

その動きからして、周りを全く見ていない。

ただ感情のままに当たり散らかしている、まるで台風のように羽が暴れ、3人は吹き飛ばされる。

 

「もう…一回…」

「まだ…まだ…ですわ」

「舐め…ん…なよ」

 

皆、息も絶え絶えだが、明らかに勝ち時は“今”だった。

これを逃せば勝機はない。

 

それは分かるが身体が動かない。

 

この余りにも大きな隙を付くことができない。

 

 

 

そんな悔しさに絶望する3人に話しかける者が現れる。

 

 

「よくここまで戦った。良い後輩が育っているな。それにしても

まさか、刀鍛治の里に着いてすぐに鬼と戦うことになるとはな…炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」

 

 

ボオォォォ!!!

 

 

3人に向かう羽を切り裂き、守り、担ぎ、安全圏へ避難させる手腕は膨大な経験を感じられた。

 

彼らを救ったのは

 

「不肖、煉獄槇寿郎、ここに見参」

 

戻ってきた先代炎柱だった。




読んでいただきありがとうございました!!
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