瞬きの間に時間経ち過ぎー!!←「それは言い過ぎー」
続編を待っててくれた人がいたならば、これほど嬉しい事はありません。
炭十郎は玉壺を討伐後、急いで音の鳴る方へ向かう。
「頼む…」
仲間の無事を祈って…
「恋の呼吸 伍ノ型――揺らめく恋情・乱れ爪からの…
弐ノ型 懊悩巡る恋!!」
恋柱、甘露寺蜜璃の“しなる刀”から繰り出される技と技は夜空を裂く。
次いで遅れた追撃が木龍をさらに破壊する。
「痣付ノ拳 参ノ構――砕岩掌!!」
肉蝮かな子の拳が憎珀天の胴体を打ち抜き、
「心眼ノ禅呼吸 参ノ型――無明穿ち!」
石野川門の一閃が首筋を捉え、
「痣付ノ風呼吸 参ノ型――晴嵐烈斬!!」
五十嵐の斬撃が追撃する。
木造蜥蜴の頭達を断ち
風を
雷を
槍を
超音波を
連携と発想と実力と
わずかな運で潜り抜ける
頸に辿り着くまでに当然、浅くない傷を受ける
そして――
甘露寺が切り開き、後続の攻撃が更に甘露寺が突き進めるよう道を押し広げた。
「すごいわ!!ありがとう、皆!!!
恋の呼吸 陸ノ型 猫足恋風(ねこあしこいかぜ)」
ズバァァァァッ!!
2度目の断頭に成功し、憎珀天の首が再び宙を舞った。
「これでどう!?」
甘露寺が声を上げる。
今度こそ。
今度こそ倒れるはずだ。
誰もがそう思った。
しかし。
ボトリ……
地面に転がった首が大口をあけ、怒った形相で語る。
「……不快だ」
「う!?またなの!?」
甘露寺の表情が凍る。
ミチミチミチ……
気味の悪い音。
切断された首と胴体が再び繋がっていく。
肉が伸びる。
骨が繋がる。
血管が脈打つ。
そして。
何事もなかったかのように憎珀天が立っていた。
ギリッ!!!
「くそぉ…」
肉蝮かな子が歯軋りをして
「またかよぉぉぉ!!?」
五十嵐が頭を抱える。
石野川は刀の柄を強く握る。
「…打つ手が……」
首は切った…絶対だ。
一度ではない。
二度も。
それなのに。
死なない。
憎珀天は冷たい目で彼らを見下ろした。
「無駄だと言っている」
ドドン!!
太鼓が鳴る。
瞬間。
木蜥蜴が四方八方から襲い掛かる。
「散ってえぇ!!」
終わらない。
次から次へ。
無限に増えてくる。
「痛ッ…!」
かな子の腹の傷が開き血が滲む。
「かな子!」
「大丈夫……まだ動ける!」
そうは言うが声に力はない。
彼女の痣は既に消えていた。
五十嵐の痣も消え、肩で呼吸している。
痣を維持する負担は大きく、限界を迎えた証拠だった。
石野川の着物も血で染まっていた。
甘露寺でさえ息が大きく乱れている。
(まずい……)
誰も口には出さない。
だが全員が理解していた。
勝てる気がしない。
いや。
正確には。
倒し方が分からない。
そんな時だった。
遠方から。
ドン!!
地面を蹴る音。
高速で近づく気配。
憎珀天も視線を向ける。
そして。
「すまぬ!!待たせた!」
赤黒い羽織が夜を駆けた。
神楽柱――竈門炭十郎。
二刀を携え着地する。
「炭十郎さん!!」
甘露寺の顔が明るくなる。
「「「竈門さん!(殿)」」」
五十嵐達はもう1人の柱の合流に心底、安堵する。
憎珀天は眉をひそめる。
「また増えたか、だが…同じ事だ」
ドドドン!!
木龍の数が更に増え、纏う風や雷に力強さが重なる。
炭十郎は周囲を見渡す。
傷だらけの仲間達。
再生した憎珀天。
木竜の群れ。
状況を一瞬でやるべきかを理解する…
「何も違うものか!!頸を斬る!」
だが、その判断は“普通”鬼への対応の理解だった。
「違うの炭十郎さん!!頸なら二回切ったの!」
甘露寺が叫ぶ。
「私が確実に切ったの、2回も…でも…でも死なないの!」
炭十郎の目が細くなる。
上弦。
やはり普通ではない。
「こちらも一筋縄ではいかぬか」
「炭十郎さんも戦ったきたの?」
炭十郎の呟きに甘露寺の問う。
「上弦一体を討伐した」
その短い言葉に全員が驚く。
「えっ…もう!?」
「マジかよ!?」
「とんでもない…しかし流石でござる……」
自分たちが手こずっている間に既に上弦を討伐した。
その事実は甘露寺たちに希望をもたせるには十分な情報だった。
しかし。
炭十郎の表情は晴れない。
目の前の鬼。
首を切っても死なない。
明らかに異常。
さらに
遠く。
別方向から響く轟音。
ドォォォン!!
他にも誰かが戦っている。
今も。
激しく。
炭十郎の胸がざわつく。
(まだ…まだ終わっていない……)
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
炭十郎は考えた。
援軍へ向かうべきか。
ここを優先するべきか。
だが。
目の前には上弦。
放置はできない。
「甘露寺殿」
「うん」
返事は早かった。
互いに理解している。
柱二人。
この場で最も高い戦力は分散ではなく統合し早期決着を目指すこととなった。
「この鬼は我々が抑える」
「うん!そうだね」
甘露寺が笑う。
だが疲労は隠せない。
それでも戦意は消えていなかった。
炭十郎は振り返る。
「石野川殿、五十嵐殿、かな子殿」
三人が顔を上げる。
「あの音が聞こえるか」
再び。
遠くで轟音。
爆発。
衝撃。
戦闘音。
五十嵐が頷く。
「他にも誰か戦ってるな」
「拙僧も感じる」
石野川も同意する。
かな子は拳を握った。
「私達が援軍にいくのね」
炭十郎は静かに言った。
「頼んだ。こちらは我々で引き受ける」
「ですが!」
石野川が反論しかける。
だが。
炭十郎は首を振った。
「正直に言う」
珍しく。
迷いのない言葉だった。
「この戦いに今の皆はついて来られない」
沈黙。
厳しい言葉だった。
しかし事実だった。
傷。
疲労。
出血。
誰も否定できない。
「悔しいけど……その通りね」
かな子が苦笑する。
「だったら別の場所で働くわ」
五十嵐が刀を担ぐ。
「よっしゃ!
今度こそ役に立つぜ!」
石野川も静かに頷いた。
「承知した」
炭十郎は頭を下げる。
「頼む」
三人は駆け出す。
轟音のする方角へ。
その背中を見送りながら。
炭十郎は二刀を構えた。
甘露寺が隣に立つ。
「二人だね」
「ああ」
憎珀天が見下ろしている。
そして笑った。
「ようやく静かになったか」
太鼓が鳴り木蜥蜴が吠える。
炭十郎と甘露寺。
二人の柱は同時に地を蹴った。
⸻
■ 憎珀天戦 ―― 再戦。炭十郎・甘露寺蜜璃
「「おのれ…!」」
奇しくも憎珀天と炭十郎の言葉が重なった。
斬っても斬っても終わらない。
どれだけ襲っても当たらない。
炭十郎が参戦して頸だけでなく弱点と考えられる場所を何度も切っただが、灰にならない。
憎珀天は攻撃が当たらず一方的に攻められる形となり額に血管を浮き出しているが、それによって何か変わることはなかった。
憎珀天について考えられる事は2つだった。
太陽のみが弱点か、弱点が体外にあるかだ。
夜明けまでは、まだ時間がある。
そのため体外に弱点があると考えて動くしかなかった。
甘露寺が木蜥蜴を斬り裂きながら叫ぶ。
「炭十郎さん!こっちにそれっぽいのはないわ」
「こちらもだ!どのような形かだけでも分かれば……」
「えぇい!!柱が2人揃ったからと調子に乗りおって…諦めて早々に喰われろ!!特に柱のアバズレ…貴様は珍しい人間だ!喰われることを有難く思いながら死ぬべきなのだ!なのに抵抗しおってからに…なんと傲慢なのだ!!!この、ちんくしゃがぁ!!」
「またアバズレって言ったわね!!!?なんて口が悪いの!?信じられない!!……ちんくしゃって何?」
「聞くに耐えん…」
技と口論の応酬に限りはなかった。
更に絶望的なのは憎珀天の本体である半天狗が既にこの場にいないことだった。
半天狗は肉腹達を追いかけていた。
柱2名はその事実に気付かない。つまり、
この戦いは太陽が昇るまで終わることはない。
ドォン!!バギャア!!
憎珀天の木蜥蜴の数匹が里に狙いを変え、破壊活動を行うが、それを見た甘露寺が跳ぶ。
「恋の呼吸 伍ノ型からの…揺らめく恋情・乱れ爪!」
しなる刀が雷を裂き、風を裂き、木蜥蜴の裂く。
だが。
再生。
増殖。
終わらない。
「もうっ、ほんっとーーに、キリがないわ!!」
炭十郎は舌打ちを飲み込む。
(長引けば……被害が広がるばかり…とは言え…光明が見えない)
嫌な予感は、消えない。
⸻
■ 上弦・漆「酷烙嘛」戦 ―― 煉獄槇寿郎・玄弥・村田・捨木
「炎の呼吸 弐ノ型――昇り炎天」
ゴウッ!!
槇寿郎の太刀が羽を焼き払う。
炎は以前より細い。
全盛には遠い。
だが。
鋭い、迷いがなく、的確に羽々の動きを抑制していた。
「す、すげぇ……」村田が息を呑む。
玄弥は歯を食いしばる。
(この人…前の炎柱だ。とっくに現場から退いているって聞いたのに)
強い。
それも、経験だけで立っている強さではなかった。
酷烙嘛が空で顔をしかめる。
「あーぁ。空気読めないおっさんが来て台無しだよ」
羽が唸る。
槇寿郎は前へ出た。
「それは喜ばしい事だ。鬼に有利な空気など吸いたくもない」
「ムカつくなぁ…ねぇ、おっさんは誰かの親?」
「そうだ、俺には勿体無い息子がいる」
そう言いながら胸に手を当てる。
酷烙嘛が笑う。
「あはは、ちそう考えてるなら少しはマシなのかなぁ?
僕の父ちゃんはさぁ……お姉ちゃんと弟を殺した……自分の子供を殺したんだ。」
空気が変わる。
玄弥たちが息を呑む。
酷烙嘛は話を続ける。
「なのに自分だけ生きてさ。勝手だよね?家族って、皆一緒じゃないと駄目なのに、もう…こうなったら、一緒になるには僕たちに食べられるしかないのに!!なんでもっと嫌われるようなことするんだよ!!」
その声は、怒りというより。
幼かった。
槇寿郎は静かに刀を構える。
「……違うな」
「は?」
「親はな。子の幸せのためなら…不幸から守るためには…嫌われ役にもならねばならん」
酷烙嘛の顔から笑みが消える。
「……知ったような口きくなよ」
「俺も、息子を失った」
その瞬間。
羽が止まった。
ほんの、一瞬。
酷烙嘛の瞳が揺れる。
「……へぇ?」
「守れなかった」
槇寿郎は踏み込む。
「だからこそ分かる。お前の父親は――もっと不幸になる未来のお前“達”を止めたいのだ」
「知った風な口聞くなよ!!!!」
バサァッ!!
羽が暴走し、空が黒く染まる。
まさに羽の嵐
「玄弥さん、お止めになって!!!」
「言われなくてもだァ!!」
玄弥が更に落ちていた羽を喰らい血管が浮く。
鬼化が進むが羽が止まる。
「ぐ……ァァァ!!」
完全に止まるわけではない。鈍くなるだけ、しかも全ての羽に影響するわけでもない。
それでも道は開けた。
村田ノ“深”呼吸 伍ノ型――根性受け!!
ザギィッ!!
刃の剃り側を前面に出しになり、峰で受ける。
血が傷口から噴き出すが構わず村田は叫ぶ
「今だあぁぁ!!」
「破調の呼吸 肆ノ型――断絶ノ拍」
捨木が踏み込む。
音がズレる。
羽の軌道が乱れ
「!!」
その隙に槇寿郎が走る。
炎が唸る。
酷烙嘛の首へ――
届く。
だが。
「うざいんだよぉ!!」
羽の壁。
止められる。
その瞬間。
捨木が見た。
“空”。
一瞬だけ。
首筋への道が見えた。
(届く)
捨木は迷わなかった。
「ここが……分水嶺ですわー!!」
自ら羽へ飛び込む。
肉が裂ける。
骨が砕ける。
それでも。
「うぐぅ!!!……今ですわッ!!」
羽の流れを、己の身体で逸らした。
道が開く。
「く…やはり鈍くなった…歳には敵わないか…
それでも…出来る事はある。
炎の呼吸――奥義!!!」
槇寿郎の瞳に、かつての炎が宿る。
「煉獄――」
ゴォォォォォ!!!
「――ッオオオォォォ!!!」
炎が夜を裂いた。
首が飛ぶ。
酷烙嘛の瞳が揺れる。
「……ぁ」
落ちながら。
酷烙嘛は、初めて幼い顔をした。
「…なんでアンタなんだ…せめて…父ちゃんに………」
言い切る前に鬼の肉が崩れた。
…………
槇寿郎は立たない。
膝をついたまま。
捨木を抱えていた。
「……すまん」
捨木は話す事は出来なかった。しかし死んではいない。
弱々しく視線を動かすのが精一杯。
村田が震える。
「……勝った、のか」
玄弥はその場に崩れ落ちる。
鬼化が解け、全身から血が溢れていた。
羽は消えていく。
静かに。
ただ静かに。
夜が終わる。
⸻
その頃
半天狗は逃げていた。
そろそろ夜が明け朝日が昇るからだ。
肉腹達の跡をついて行くと里の刀鍛冶が多く避難している場所が目についた。
それを見た瞬間、半天狗は刀鍛冶の里の破壊を最優先とした。
半分は主である鬼舞辻無惨のために……
もう半分は命令を十分にこなせなかった場合の罰を逃れるため…
十分な殺傷能力を維持しつつ可能な限り自らの分身体を放った。
思考能力はほぼなく、目の前の生物を貪ることしかしない。しかし力だけなら下弦並の鬼、その数10体。
憎珀天がいなければ更に増やせるが…柱2人を相手にしているため解除は出来ない。必然的にその鬼の対応は田中、小鉄、縁壱零式、肉腹、石野川、五十嵐が行った。
肉腹達は田中達に情報共有して討伐を遂行する。
だが、それは討伐と言えるものではなかった。ただ朝日まで耐え続けるための消耗戦の始まりだった。
なぜなら
全て憎珀天と同じ頸を切っても“死なない鬼”だったからだ。
やっぱりお父さんは強いのだ!