真はひなのに思いを寄せていた。ひなのも真に想いを寄せていた。しかしある日、たった一つの勘違いで2人は仲違いしてしまう。真が途方に暮れているなか、見知らぬ人から殺意を向けられた事から事態は急変する。真とひなのの2人はひたすら生きるために逃げ、時には立ち向かう。そして、なぜ自分たちが他人から命を狙われるのかを解明していく。



イメージとして近いのはゾンビものですが、大きな違いとしては普通の人は普通の生活を送っていることです。つまり、感覚としては真とひなののみが現実社会から隔離されてしまう様なものです。そしてホラー作品として書いたものではありません。

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登場人物
主人公 真  
ヒロイン ひなの
ひなのの後輩 ゆうか


十字路

その時、心臓が跳ね上がる感覚、二度とないと思っていた。失恋の傷はまだ瘡蓋にすらなっていない。イスが並べられた部室、新入生が並ぶ椅子、前列右から二番目、

 

部活の引退式もおわり、楽器を片付ける時間となった。二年半の間に何回したかわからないほど楽器の片づけは洗練されていた。

「今日で引退ですか、なんかスッキリしますね」「もう少し悲しんでよ」ひなのさんは引退式を大掃除かなにかだと思っているようだ。ひなのさんの学生服は新入生らしく、真新しい輝きを放つ。「それは無いですよ、なんせ悲しくないんですから」「一応君たちのたった一人の先輩だよ?」ひなのさんはニコッと笑って「みんな泣いている部活の方が良いですか?」「ひなのと真先輩、早く部室に入ってください」僕たちを呼ぶ声が聞こえる、「ほら今日の主役がいないと始まりませんから」みんな笑ってる、これが幸せなのか?

 

その日の帰路、自転車を2台並べて夕暮れの道を走る「部活引退しちゃうんですね」

「うん」ひなのさんを横目で見る、そのあどけなさがのこる顔が夕暮れに照らされて赤く染まっている。

 

僕はひなのさんを見る。その顔は夕暮れに照らされて赤く染まっている。

 

私は真先輩を見る。その顔は夕暮れに照らされて赤く染まっている。

 

僕は先輩だったのだろうか、本当は先輩なんてものじゃなかったんじゃないか?

 

私は真先輩にふさわしい後輩だったのだろうか。

 

僕が高校生になるのは6ヶ月先のことだ、けど、いまここではっきりと口を動かさないと後悔するのだろ

 

私は後悔したくない、けど、あの十字路が近づく。

 

なぜかあの十字路に近づくたびに自転車の速度が落ちていく。

 

僕らは十字路の一歩手前で完全に止まった、僕らが止まったその場所は、夕暮れに照らされて赤く、綺麗に染まっている。

どことなく風が吹きつけ、それが心地良い、あたりには田畑が広がっていて2人以外、だれも人はいない。しかし彼女を視界に入れるとそんなことはどうでもよくなり赤く染められたひなのさんのみが僕の視界にのこった。

「あの、これから高校に行っても部活を見に来てください、私が吹奏楽部員であるかぎり」

太陽が完全に沈み、赤い絵の具がおちていく「いいよ、会いに行くよ」その一言の後に再び自転車を漕ぎ始める。僕は勝手に坂道をこいでいるのだと勘違いした。

 

2年後、僕は高校二年生、ひなのさんは中学三年生となりひなのさんの部活の引退式が始まっていた。

「ねえ、これあげるよ」僕は2つのヘアピンを手渡す。「これもらっていいんですか?」「ダメって言うわけないじゃん」「それもそうですね」「今年で部活引退なんだね」「そんな顔しないでくださいよ」「これでも楽しかったからね」中学3年生になって背も僕と変わらないひなのさんが僕の瞳に映る。ひなのは白い星が描かれたヘアピンを受け取った。「ひなのさん、」少しだけ鼓動が高まる「大切に思ってるからね」ひなのさんの目がほんの少し丸くなる。「はい!」

 

部活の引退式は終わり、名残り惜しさの残る部室「真先輩?ちょっと来てください」同じ部活の後輩に呼ばれる。「ゆうか?どうしたの?」そして二人で楽器庫に入った。

 

真先輩が楽器庫に入るのが見えた、さっきの一言の真意を聞くべく私は決意をかためるように強く自分の手を握った。そして真先輩が居るであろう、薄暗い楽器庫のドアノブに手をかけた。

 

「ゆうかどうしたの?」「実は来週友達とおばけやしきに行くんですけど、先輩も来てくれませんか?」「嫌だ」「もう少し迷ってくださいよ、少しでいいので付き合ってくださった」「そんなにおばけやしきに行くのに付き合って欲しいの?」「付き合って欲しいんです」

「分かったよ」「なんか恥ずかしいです。」

 

固く握ったはずの拳の力がどんどん弱くなっていく、

「付き合って欲しいんです」「分かったよ」「なんか恥ずかしいです。」

確信は無い、ただ私が浮かれていただけなのかもしれない。だけど今の会話は、ゆうかと先輩がくっ付く最低のシナリオを私に思い浮かばせるには十分だ。「あっひなのさん、ひなのさん?」「あ、先輩ですか」「今日は何時くらいに帰れそう?」「、、、、」「どうしたの?」「今日から一人で帰ります」「えっ」「お疲れ様です」 ただ一つ、その言葉を先輩に残した。大好きなはずの先輩に、、

 

夕暮れに照らされた僕の肌は酷く焼かれている。ひなのさんがなぜ急に一人で帰ると言い出したのか見当もつかない。ふたりの別れ道である十字路をただ一人で歩く。

遠くの方に人影が怪しく揺れる。

その人影は僕を見るとこっちに走り出した。

「ひなのさん」僕の肌を焼いていた太陽が地平線に沈む。

その人影は僕に近づく。

辺りは完全に暗闇と静寂に支配される。寒い、まだ三月か。

あの人影はそこまで足が速くないようで僕の所までくるのに少し時間がかかっていた、少し落とした視線を上にあげて夕暮れだった空を見る

目の前にまでその人影が迫る

「死ね」

端的に放たれたその言葉はなにも考えなくなった頭を無理に回転させた。その人影の手にはナイフ、的確な殺意、来た道をもどり十字路につく。わからない事だらけではあるが、わかることがある。いま僕は唐突に殺されかけている。普段であればもっと取り乱していた。なぜ自分がこれほどまでに、冷静なのか、その理由が頭のなかに思い浮かぶ。ひなのさん・・・・・。

「うっ」背中から蹴り飛ばされる、地面に背中をぶつける。急いで十字路から数メートル程離れた所にある橋の下に駆け込む。橋の下に入りこんできた男の頭に傍にあったパイプを叩き込んだ。

男は川に落ちた。流されている男をみる。腕の震えが鉄パイプに伝わる。僕は人を殺し「先輩」心臓が飛びあがる「ひなのさん?」「先輩もですか?」「先輩も全然知らない人に殺されかけたんですか?」「えっ、うん」

 

いつのまにか夜が来た。三月の風は気まずさすら気にしていられない程二人の身体を密着させた。「なにかあったの?」「知らなくていいです」「教えてよ」「ほっといてください」「それで大丈夫?」「そんなの大丈夫ですよ」「さみしくないの?」寂しいという言葉にひなのさんの体が反応した。「食べる?」僕は何故かたまたま持っていた非常食バーをひなのさんの口に差し出した。「そんなの、、、」その一言の後数秒おいてバーにかぶりついた。「怖いですよ、真先輩、さみしいですよ、真先輩。私、、ここで死ぬんじゃないかって。」そうして彼女は寂しさと恐怖と悲しさをほっぺたに流した「心がグチャグチャで、、、私、、家族も友達も後輩、先輩も、、、全て無くしちゃうんじゃないかって」中三になって成長したはずの彼女の体は昔のように小さく感じた。「真先輩は私の味方でいてください私は」少しの間をおく「私は先輩が味方じゃないと生きていけませんから」「うん、僕はひなのさんの味方だから」そう言いながら彼女のヘアピンが一つもついていない頭をなでる。彼女は一瞬険しい目つきになる、そのあとすぐに俯いた。「いいんですか?」「何を?」「、、、」「あの、ヘアピンは?」「あの、それは」一瞬寂しそうな顔をして言葉を放つ「ゆうかにあげました」「ゆうかは嬉しそうだった?」「見たことないくらい喜んでました」「ならよかった」そう彼女に告げた。「ごめんなさい、厳しい態度を取ってしまって」「今はこれで良いよ」今の時間は7時、「深夜になったらここを移動しよう、というよりは移動せざる負えない。ひなのさんも見ず知らずの人に殺されかけたんだよね?」彼女の心を抉るであろうその一言に彼女は首肯を返した。ひなのさんも見ず知らずの人間に殺されかけたという事実を鑑みて人目につかない場所に移動すべきと考えるのがいいのか?「どこに移動するんですか?」「僕の祖母の家に行こう。そこなら食べ物もあるし土地が400坪あるし別荘だから普断は誰もいない。土地の中にはたくさん木が生えているから外から見えにくいからカモフラージュになる。ただ歩きだと6時間はかかる」「覚悟は出来ました」できたというよりかは「させられた」その言葉がしっくりくる。そして 時計の針は進み時間が来た、いくつもの一歩の先に希望があると信じて。

 

歩く、国道に出ると人目につくため河原を歩く。この川は祖母の家の前まで 続いているのだ、川の流れとは逆をひたすら歩く。「ねえ大丈気?疲れてきてない?」しばらくの歩き、ひなのさんの歩行にふらつきが見え始めた。「えっ、なんですか?」「大丈夫かなって」「大丈夫です、歩きましょう」時刻4時、あきらかに 川幅がせまくなっている、1mあるかないかくらいだ。「どうかしたの?」ひなのさんが僕の背中にくっつく。背中に優しくぶつかる感触、耳にかかる息が少し荒い。僕は問いかける「大丈夫じゃないでしょ」「そんなの…」

なにかを強くかんだように小さな声で「大丈夫じゃありません。大丈夫だって言わないと。だが大丈夫です、」半分かすれた声で耳に息が当たる。僕はひなのさんを抱えて水の流れがない用水路の中に入った、ここなら誰にも見られない。「……ごめんなさい」「そう言うなら今は休んで」「はい」そうしてひなのさんは僕に体重をあずけてきた、しばらくするとスースーと寝息が聞えてきた。しばらくして僕もねむりについた。目覚めると用水路の出口から光が入っていた。自身の腕時計を見るPM3:00。ひなのさんを見る、ここまで疲れたともお腹すいたとも一つの愚痴もこぼさず歩いてきたひなのさん。僕に身を寄せて身動きの一つもとらずに寝ている

大きく背がのびて先輩として責任を持つようになったその体はとても小さかった。日が落ちて再び時計の針が真上を向いた時、また僕らは歩き始めた。昨日の疲れは概ね回復し、また、昨日と同じように水の流れる音を聞きながら進む。「そろそろだよ、あと5分で着く」腕時計を確認する。PM6:00。そろそろ日の出の時間だ。そもそも祖母の家は田舎にある。田舎に住む人の朝は早い。何とか朝になる前に、日の出の前に家に到達しなければならない。完全な誤算であった。ひなのさんは中学三年生、受験生だ。故に体力が大きく低下していることを考えねばならなかった。実際、6時間で到着予定が9時間もかかっている。そんなことを考えていた。だから、気づかなかったのかもしれない。

真横から人影、距離は10mもない、心臓が動く、ドクドクと、明らかな敵意。近づいてきた人影は刃物をふりあげる。脳の判断が追いつかないまま脇腹にナイフの柄が出ていた。無色のいたみが僕の身体を刺す。絶対に、絶対に 僕は引けない。一度前かがみになった身体をおこす、しかしそいつはもう一本の刃物をふりかぶっていた僕を狙う。絶対絶命、だが、そいつがなぜかよろける、後ろには木の棒を持ったひなのさん、今しかない、相手を確実に無力化する。刃物が刺さった時は引き抜くと出血で命の危険があるらしい、僕は自分に刺さったナイフの柄をつかむ、激痛、出血が激しくなる、引き抜かれたナイフをそいつに向ける。相手の刃物がひなのさんの命へ向かう。ひなのさんは一切ひるまない、絶対に僕が自分を見捨てないという自信、僕を助けるという覚悟。僕が握りしめるその刃が、全身に一気に力が入る。そいつの心臓を・・・

 

そいつは倒れていた。しかし僕にも、もう立っていられるだけの余裕はなかった。

 

ひなのさんが駆け寄る、「日の出が近い、ここの住民は日の出とともに活動する。そうなれば君は命を狙われるかもしれない」地面に寝ながらもあふれるのは血だけではない「そうか、僕も生きたかったのか、もっといろいろな事がしたかったのか。もし君が生き残ったら、部員のみんなに好きと伝えて欲しい」

 

川原に倒れた先輩を見ながら「わかりました」またなみだを流して「私、先輩に死んで欲しくないです」先輩は少し笑って「もっと生きたかったな、いろいろな事がしたかったな」いってきいってきなみだがほおをつたう「真先輩、私は、私は、先輩の事が、、」

 

言葉が出る前に噛み砕く、手を強く握る、なみだを断ち切る。今は、まだその時じゃない

 

先輩の腕を握って引っ張る「出来るかぎり、がんばってください」そう短く言い、フラフラと歩く先輩の体を支える。重い、足が痛い、肩の骨がおかしくなりそうだ。他の誰かのためじゃない、自分の思いのために。今この時おそってくる痛みも苦しみも、なにもかもが入る余地がないほどこの先の未来が心の中を満たす。ガクンと体が傾く、足に痛みが走る、足が構にはまっていた。頭の中を必死に幸せな未来で満たす。足を引き上げる。あぁ、足が。見ると足に鉄片が刺さっていた。自分をだまし続けるのにも限界がきていた。血なんて簡単に止まるでしょ、 止まってよ、ねえ、おねがい。なみだも、なみだも止まってよ。不意に体を持ち上げられる感触「祖母の家の玄間まで後もう少しだよ、この提防を登ればすぐだ」自分の身長より 高い提防を登る。お互いが支え合うように身を寄せあって、より高い場所に手をかける。地平線から赤い絵の具をしみださせたかのように確実に夜明けに向かう。

 

ここの住民は夜明けと供に行動する。まずい、なんとか提防の頂上に手をかける。が、力が入らない。その時、僕の手にひなのさんの手が重なる。堤防をこえる、だが、朝日が目に強くさしこむ。ドアのぶが遠い、それでも必死に手を伸ばす、、ドアのぶに、そのドアノブに手がかかる、おもいっきりねじる。ドアを引っ張る。そして玄関に倒れ込んだ。そして足で扉を閉める。横になったままひなのさんの手を握る「人って、こんなに温かいんだね」

 

数日後「先輩、具合はどうですか」「熱も出てないし、まだ立ち眩みはするけど大丈夫だよ」「あれだけ出血したんですから、しばらく動いちゃダメです」ふと顔をあげてひなのさんの表情をみる。「大丈夫なの?」「何がです?」「友達とか家族に会えないのが」君は無雅気な顔で言う「大丈夫です!なんせ先輩がいますから!」君の手は自分の口元を隠していた。

 

 

「あっ、先輩傷はもう塞がってますね。」本来ならもう、君は高校に行っているはずなのに、、

「 最近暑いですねアイスでも食べたくなります。」夏休み、高校生活にも慣れた頃、 初めての熱い暑い夏、君は、

「これぐらいの気温がちょうどいいです、あっ、栗の木です庭に栗の木があるんですね!」文化祭に体育祭、君は寂しくないのだろうか、

「クリスマスツリーが見えますよ。」暖炉の前、2人で炎を背にして座る。

「来年もよろしくです」

「今年もよろしくおねがいします」

「あっ、雪です、積もってます。」

「雪はもう溶けちゃいましたね」

「恵方巻、作ってくれたんですか!願い事は秘密です!」

「梅の花もう少しで咲きますかね」

「もうすぐで桜が咲きます、いっしょに見ましょう!」

期待も不安も混ざり、新しい事が始まる季節。「うん特別に満開なのを見よう」食べ物ももう残り一月ほどだ。「本当ならひなのは高校2年生か、、、始めて会った時は中学1年生か、、」「懐かしいですね」「今はいないけど、あと一週間で祖父母が帰ってくる。食べ物もあと一月で無くなる」ちらりとひなのの顔を見る。「そんな悲しそうな顔しないでよ」「こんな形でも、私、幸せだったんですよ」君の手は君の心臓の上に置かれてあった。しばらくの沈黙「一度、帰りましょう」「帰る?」

「私たちの出会いの場所です」「学校?危ないよ」「危ないのは知っています。けど、それならどこに行っても同じです、なら」「帰ろう」「え」「僕らの始まり場所へ」

 

夜の12時、僕らはカバンに食べものと水を入れ、一年ぶりに必死に希望を求めて捻ったそのドアノブに手をかけた。

 

「ほら、ひなのが僕に泣きついてきた橋の下」「止めてください、恥ずかしいです。」今度は、一日であの距離を歩ききった。そうして用水路の中で眠りについた後にまた動きだした。「こんな簡単に学校って入れて良いんですか?」「さあ? そっちのほうがありがたいけど」この学校は一年という時間を忘れてしまいそうになるほど、何もかわらず僕らを迎え入れてくれた。「夜の学校といえばここで絵画の目が動いたり、そういうホラー的ななにかが」「1年前からパニックホラーみたいな感じでしたので今更です」「辛辣なんだけど」しばらく2人で歩く。そうして部室の前にたどり着く。「開かないね」「職員室まで行かないと」そうして鍵をさしてそのトビラを聞けた。「懐かしいですね」「いや懐かしいというか、、あっ」「そこ座ってよ、前列、右から2番目」何脚か並べられた椅子がある。 「覚えてくれてたんですね」「こっちが言いたいよ、」2人の笑い声が2人だけの部室に響く、月の光がそっとあたりを照らす。「そっか、もう新入部員が来る時期か」「この椅子の並び方はそうですね。」いくあてのない僕らは学校のいたる所をまわった。 部活を引退して学年も違う僕らはお互いがお互いにバレないように時間割を把握して、理科室、家庭科室、音楽室の前に先回していた、そのせいで お互いが移動教室の時は結局すれ違いで会えなかった事など、学校の思い出をぞんぶん楽しんだ。

「5年間でいろんな事がありましたね、」「僕は本当なら大学に行ってたのかな、」この場所を見るたびに記憶がよみがえる、中学生の時の僕とひなのが徐々に形を成す「私は高校で、友達とか、家族とかにかこまれていたんですかね?」

中学生の時の僕とひなのの姿が僕の頭の中に浮かぶ。理科室への廊下の途中にひなのがいる。背は僕より低い。

「そんな悲しそうな顔しないでくださいよ」

ひなのが僕を見つけて笑顔になる、僕はひなのを見つけて駆け寄る。

「ちがうよ、笑ってるんだよ」

2人は出会えた事の喜びと離れなければならない寂しさで複雑な顔をしていた。

「みんな泣いてるより、笑ってる方がいいから」

太陽の光がさしこむ、2人の儚い姿は朝日にかき消されてなくなった。

「じゃあ、行こう」

 

2人で暗い部室に身を置き、学校に登校する人の声、チャイム、色々な音を聞きながらその時を待った。時間が過ぎていく、そろそろ部活の時間だ、一つの足音が近づく 。お互いの体を抱きしめる、カギがあく、鼓動が高まる。「ねえ」「だいす、、、」ドアが開く「こんなところでなにをやっているのですか?」ドアの前にはゆうかが立っていた「あの、ゆうか?殺意とかって湧かない?」「私をなんだと思っているのですか?」ひなのと目を合わせる。ゆうかは大丈夫だ、僕たちに敵意を持っていない「あの、なんで抱きしめあっているのですか?」途端に恥ずかしくなり、お互い離れる 「なんで一年もどっか行っていたのですが、心配していたのですよ」「ゆうか?実は」

1分後、、、

「それならうち来てくださいよ、いま家に私一人なので」

「いいの?」「むしろ先輩なら喜んで!」ゆうかの目は僕に向けられていた。

その日の夜。ゆうかの家に忍び込んだ。「先輩達喉かわいていませんか?」「ゆうか、お願い」「僕の分も」「分かりました」ひなのといっしょに床に座る。 「これからどうしようかと思ってたから本当によかったよ」「すこしの間ですけど、安心できますね。」「これからどうするか考えないと」「私は先輩について行きますよ」「本当にいいの?」「まぁ………死ぬ事はなかったですし………ね?」「少し遅くなりましたけど、お茶です」「ありがとう」ひさしぶりのお茶が胃に染みる。「ゆうか?どうしたの?」「いえ、なにもありません」、ゆうかが目をそらす。「じゃあコップ持っていきますね。コップを渡そうとするゆうか「え?なんですか!」1%の可能性であっても確実に潰す。ゆうかがひなのにコップを渡すのを妨害しようとする。コップをつかもうとしても上手く力が入らない「ひなの先輩、お茶おいしいですか?」「飲んでみるね」ひなのが慌ててお茶を飲もうとする「ひなの」力が全て抜けて体が倒れる。「先輩!」ひなのがゆうかを睨む。「なんですかひなの先輩、私の名前を呼ぶだけじゃなにも伝わりませんよ」ひなのは歯をくいしばった。その途端、ひなのの目に憎悪がやどる。「信じてたのに、なのにゆうかは私達を殺すなんて!」「いや、真先輩は殺しません。ひなの先輩もおとなしくしてくだされば殺しません」「じゃあ、なんで?」ひなのが絞り出したような声で問いかける

「昔の話しをしましょうか、私が中1の時の話しです。真先輩とひなの先輩はとても仲が良かったですね。吹奏楽部の中ではいつか2人がつきあうと、皆そう思っていました。私は、それを見ている事しかできませんでした。悔しかった、嫌だった、だけど二人が幸せならそれで

 

 

「先輩、一緒に帰りましょ」「ひなのさんどうしたの?」「どうもこうもありませんよ」

 

先輩が幸せならそれで

 

「真先輩、私の事はどう思ってますか?」「人間だと思って、くすぐったいからやめて」

 

真先輩が幸せなら

 

「真先輩、ねぐせついてますね、直してあげます」「ありがとう、ひなのさん」

 

真先輩が

 

「ひなのさん、一緒にあそびに行こうよ」「二人ですか?」「そうだよ」「楽しみましょうね」

 

真先輩

 

「いやだ!!」とつぜんの大声に真先輩とひなの先輩が驚く「いやだ、いやだよ、胸が苦しいのは嫌だ、胸がズキズキするのも嫌だ、息が苦しくなるのもいやだ、 もう痛いのはやなんですよ」「ゆうか?」先輩が私を見つめる「やっと分かりましたか?私は真先輩の事が大好きなのですよ。ええそうですよ、せっかく一年ぶりに会えたと思ったらひなの先輩と抱きしめあってたんですからそりゃ殺意だって湧きますよ 」僕はなみだでぐしゃぐしゃなゆうかを見つめる「私、思いついたんですよ。もし真先輩が嫌われものなら、もしそんな中で私だけが先輩に優しく接したら、真先輩は私に依存するんじゃないかなって、ひなの先輩の事なんか忘れちゃうんじゃないかなって、だけど先輩は皆からの人気者で、私と違うくて。だけど、そう思っていたら通じたんですよ」ゆうかが何を言っているのかがよくわからない「思いが、通じたんです。誰かは分かりませんが向こうの世界に真先輩に死んでほしいと願っている人がいましてね。私の「真先輩が嫌われ者であって欲しい」という気持ちと、向こうの世界の誰かの「真先輩に死んで欲しい」という気持ちが混ざった結果、真先輩は「皆から殺したい程の嫌われ者」になりました。そして思いが発動して真先輩が全世界から命を狙われる前に最後の仕上げとして真先輩とひなの先輩の仲を少しでいいから裂こうと思いました。それは思った以上に簡単でした。真先輩を楽器庫につれこんで途中から聞くと告白にしか聞えないような会話をしたんですよ。そしたら見事にひなの先輩は勘違いしました。ひなの先輩から真先輩のヘアピンをもらった時はやっと全てがむくわれる、そう考えただけで、もう」ゆうかは目を星のように輝かせる。一方でひなのの表情は一切動かない、目からこぼれる涙以外は「けど私はひなの先輩への憎しみを消しきれなかった、だから、ひなの先輩への憎悪も通じてしまったんですよ。」ゆうかは言葉を結まらせる。ゆうかの言ったことを整理する。僕を独占したいから向こうの人間と思いを通じさせて僕と愛の逃避行を始めようとした。けどひなのを殺したいあっちの世界の人間とも思いが通じてひなのも命を狙われるほどの嫌われ者になり、ひなのと僕の愛の逃避行が始まりゆうかの願いは打ち砕かれた。ダメだ、わからん。そもそも向こうの人間とは?「そうですね、ひなの先輩やっぱり死んでください、真先輩の事なら大丈夫です、私がかわりに幸せにしますから。」ゆうかが刃物をふりかぶる、ひなのの心臓めがけて

 

 

 

「大家に家賃渡してきて」「……わかった」「千円足りないじゃないか!盗んだのか?」 「ねえ、お金足りないって」「いいかんじにごまかせよ、頭悪いな」「おねえちゃん、、、、」「頭悪いな、何回も殴せるな、死んで欲しいんだけど」

 

僕は中学校の門の前に立つ。今日から中学生になる、とても喜ぶ気持ちには なれない。全てがどうでもいい、好きだった本、食べ物、おもちゃ、その全てがいつのまにか無くなっていた。入学式、レクリエーション、時間が過ぎる。強制入部は適当な、楽そうな部活を選んだ。吹奏楽部、そこで強制入部期間が終わるまでを過ごす。8月までか、長いな、「真君だっけ、元気ないけどどうしたの?」「別にいつもこんなんですよ」人とのつきあいは極力さける「私は真君の事もっと知りたいな」「そうですか」まな先輩は僕にしつこく話しかけてくる、正直うざい。「なにかあったら私に相談してね」「はい」このまま、このままでいい、自分も他人も大切だと思わない。そんな生き方を選んだ。あと一週間もすれば強制部活期間も終わる。

 

そうすれば。

 

階段のおどり場、僕はそこに立っていた。下の階段から声が聞こえる。「言ったよね、真は部活を辞めてもらう」「真君だって頑張っているんです。」まな先輩の声が震えて聞こえる「真は今のままではただ足をひっぱる存在でしかない。」 「私がなんとかしますから、」「わかった、ただ真はもっと上手になってもらわないと困る」

 

階段を登る足音が響く。「まな先輩」「あれ真君、ごめんね、目にゴミが入って、」

 

8月11日僕はまだ部活を続けている。この世の中には他人のために命を張る人がいるらしい。とってもバカだと思う。まな先輩もほどほどにバカだと思えただそんなバカが僕を確実に変えていた、自分も他人も大切にしないはずだった。もうこれ以上まな先輩に迷惑はかけない、これはまな先輩のためとかでは ない。まな先輩が引退するまでの間だけの事だ。

 

アンサンブルコンテスト

地区大会・金賞

 

県大会・金賞 

 

関西大会・銅賞

 

「真君関西大会おしかったね。」帰りの電車の中でまな先輩が口をひらく「しかたないですよ、頑張ったので後悔はありません」

 

先輩は引退した。僕は中2でまな先輩は中3、引退するのが当然の話しだ。

嫌、まな先輩、先輩が卒業するなんて嫌ですよ。いつの間にか時間が過ぎた。すべてを投げ出したぼくは、時間のありがたみをこんな形で知った。中2の終わりの時、まな先輩は再び部活に来ていた。

 

「大きくなったね、真君、」「ありがとうございます。」違う、僕が伝えたい事は。部活動は終わり、放課後になった。まな先輩はもう帰ってしまった。まな先輩の家へ走る。お礼の一言も、ちがう、いや、もっと他の言葉が。胸の奥にあるいまいち訳の分からない感情を吐き出そうとする。まな先輩の家の前につく

 

3時間はたっただろうか、日が沈みかけていた。まな先輩はまだ帰ってこない、締めて家に帰る。家が見える。あたりに風がふきぬける。トラックが家につっこんでいた。道路の中央で倒れている女性、まな先輩。僕は駆け寄る。「遅いよ。真君、私ずっと君の家の前で待ってたんだよ。」先輩は地面に寝ながら。「もしできたら、部員のみんなにありがとうと伝え、欲しいな、」僕は、僕は道路に倒れた先輩を見ながら「分かりました。」またなみだを流して「僕、先輩に死んで欲しくない、です」先輩は少し笑って。「生きたかったな、いろいろな事がしたかったな」いってきいってきなみだがほほをつたう「まな先輩、僕は、僕は先輩の事が、」その時はじめて気づいた。僕はまな先輩の事が好きなんだ。「真君は誰かを幸せにして、幸せになって」「僕はまな先輩の事が」

 

まな先輩のひとみは動かなくなった。

 

分かりました。まな先輩、僕は誰かを幸せに

、、、

、、

 

白かった。ただひたすら白い空間だった。「先輩がいるという事は僕はもう死んでいるという事ですか?まな先輩」「違うよ」明るい口調でまな先輩は言う。

「意識だけがこっちに来てる感じかな?」途端に頭の中を駆ける失恋の思い出。「ごめんね、私、すっごく寂しかったんだ、交通事故なんかで君と会えなくなったのが」「ゆうかと気持ちがつうじたのはまな先輩?」「そうだよ」その目はどこまでも温かい「私は君を殺したかったたわけじゃない、けど、さみしくて、心の奥で君を求めてた、だから、君がこっちの世界に来るのを望んだ」僕はまな先輩の頭を撫でる。「そろそろもどらなくちゃだめだよ。」まな先輩は一歩後ろにさがる。「ひなのちゃんを助けなきゃ、私がんばって時間を巻き戻してみる、ゆうかが世界をおかしくしちゃう前に、ゆうかの恋愛感情も頑張って消す、だけど2人の恋を私は応援できない、心の奥では嫉妬でおかしくなっちゃう、だから君の記憶からひなのちゃんを消しちゃうかもしれない、だから」「いいんです、僕はまな先輩の事を誇りに思います。」 まな先輩はうるんだひとみに不釣り合いな笑顔で「頑張って、」意識が引き戻される。「私の願いなんかに負けずに、、、、」

 

意識が戻る。頭が痛い「うぐ、、、」ひなのの声が聞こえる。「ひなの!」「「先輩」」急いでひなのに駆け寄る。途端に空間がゆがみ始める。今まさに、時間が巻き戻ろうとしている。「ゆうか、ごめん、君の思いに気づけなくて」空間のゆがみを見てゆうかは遂にすべてを諦めたように手に持っていたナイフを地面に落とす。「謝らないで下さい。先輩の人生なんですから、自分の幸せを追い求めるのは悪いことじゃないです。」「ゆうかも自分の幸せを追い求めた、それは悪いことじゃない」遂にゆうかの顔も識別できない程に空間が歪む、空間は僕らを過去に連れ戻そうとする。ゆうかは膝を地面につけて泣いていた。「ごめんなさい」

 

 

 

 

夕暮、人通りの少ない十字路、男の人が僕の横を通り過ぎる。僕ももう高校2年生か、ゆうかも遂に先輩だ、時間の流れを感じる。少しだけ部活の事を思い出す、まな先輩との失恋、それ以外にはなにかあったが思い出せない。

 

「まあ、たいした事じゃないか、」しばらく考えた後、思考を放棄する。赤く照らされた道を歩く。「おーい、ゆうか」「こんにちは、 真先輩」「さっき会ったばっかだけど。」ゆうかは帰路を歩く。「たまには部活のぞきに来てくださいよ」「行けたら行くよ」「それ来ないやつじゃないですか、これでも尊敬してるんですから、 まあ、尊敬しかしていないですが、」「喜んでいいのかわからん、」ゆうかが笑う、つられて僕も少し笑う。部活も悪くなかったかな。「じゃ、行きますね」ゆうかが帰ろうとする。「え、ゆうかそのヘアピン」白い星がかかれたヘアピン「あぁ、これですか?」ゆうかがヘアピンを外して僕に見せる。「ひなの先輩にもらったんですよ、」ひなの……その名前が頭の中で何度も響く。「ごめんゆうか、」「えっ?真先輩、あっ、お疲れ様です」ゆうかの言葉を背に十字路へ走る、ひなの、ひなの。

 

私は走り去る真先輩をただ見送る。「やっぱり先輩はひなの先輩が大好きですね」自分の髪につけたヘアピンを外して。ポケットにしまう。真先輩の温もりをポッケに感じる。「ちゃんと気づけたのですから」

 

 

何度も足を動かして心臓は拍動し、息も荒くなる。しかしもう少しで、もう少しであの十字路にたどり着く。そして十字路の丁度真ん中にはよく見知った人がいた。

 

僕はひなのを見る。その顔は夕暮れに照らされて赤く染まっている。

 

私は真先輩を見る。その顔は夕暮れに照らされて赤く染まっている。

 

僕はひなのの先輩として青春を生きた

 

私はきっと真先輩にふさわしい後輩だ

 

僕はゆっくり十字路に近づく

 

私はゆっくり先輩に近づく

 

僕が高校生になるのは6ヶ月先のことだ、けど、いまここではっきりと口を動かさないと後悔するのだろ

 

私達は十字路の一歩手前で完全に止まった、私達のこの場所は、夕暮れに照らされて赤く、綺麗に染まっている。

 

十字路は「もう」私たちの仲を裂く事はできない

 

「もう」後悔はしない

 

「ひさしぶりだね」

 

「さっき会ったばかりですよ」

 

ただひたすらなみだが流れる。 口が乾く、心臓が高なる

 

 

 

「ひなの」「真先輩」

 

「「好きです」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




想いの契り
現世に居る人と死後の世界にいる人の思いが強く通じ合った時に発生する現象
両者の思いの中間が現世に実際の現象として発生する
ゆうか→真が嫌われ者なら自分に依存してくれる
           +
まな→真君が早くこっち(死後の世界)に来てくれないかな
           ll
    真がみんなから殺したいほど憎まれる


まな→時間とか戻してゆうかと真がくっ付くの阻止したい、同時に真がひなののこと忘れ    
   て欲しい
         +
ゆうか→真がひなののこと忘れて欲しい
         +
ひなの→ゆうかが世界をおかしくする前に時間戻して
         ll
   時間は戻り、且つ真の中のひなのの記憶がなくなる



          



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