地上から地下へ移り住んだ人類の話。
主人公・ユリは女子高校生で地上に出たいと思っていた。
そんな時にとある少年と出会って...
地上に出たい少女
「昔、地球温暖化による驚異的な気温上昇により地下へと大規模な移民を行なった。
その際の計画者が現在の地正教会のため実績を讃えられ...
というわけで実質的な政治、統治をしているのは現在地正協会であり
その成り立ちは…」
先生が唱える呪文にしばらくうつらうつらしているとチャイムがなる。
チャイムの音で目が急に覚めてくる。
どういう原理なのかな。なんて考えながら
鞄を肩にかけて帰る準備をする。
駅前を友達と歩いている時に空を見上げる。
映し出された偽物の空
「本物の空の下を歩いてみたいな...」
「ユリー!なにぼーっとしてるの!行くよ!」
電車に乗り遅れそうだからか大きな声で呼ばれる。
「今行く!」
このまま変わらない生活を送りたくないんだ。
私は地上に出たい。
噂では地上に続いてるとされる鉄門が街の外れにある。
明日、そこに向かおう。
ご飯を食べ、お風呂から出て寝る準備もできた。ベットに腰をかけて携帯端末で位置情報などを調べていると
AIペットのポッチが語りかけてくる
「今日も一日お疲れ様
体調はどう?」
こんな犬の見た目から出る言葉ではない。
元気。とだけ伝えて
背を向けて横になる。
本物じゃないくせにわんわんとまるで犬のように騒ぎながら去っていく。
地上にだったら本物の犬もいるのかな。
次の日の放課後。
私は友達には用事があると言って門に向かった。
外れの森の中に門と小屋
なんの小屋?見張り小屋なのかな?
そんなことを思いながら門に近づく、
今日は入り方を調べるつもりだ
押したり引っ張ったりしてみるが全然開かない。
鍵のようなものも見えないしまるで接着されてるかのようにびくともしない。
「これじゃ開けられないよ」
思わず声に出てしまう。
がちゃん、と小屋のドアが開く。
しまった。声が聞こえたか?
「誰ですか」
出てきたのは同学年くらいの男子で緊張が解ける。
「あ、えっとこの門の向こう側が気になって」
そう言うと男の子は少し申し訳なさそうな顔をして
「そこは立ち入り禁止になってますから」
とだけ言って小屋に戻っていく。
こんなとこに住んでいるし、間違いなく開錠権限を与えられているはず。
そうだ。チャンスだ。
思い切って、小屋をノックする。
「なんですか?」
感情のなさそうな顔で覗いてくる。
「あそこを開けて欲しいんですけど...」
そう私が言うと無表情で
「理由はなんですか?」
少し躊躇いつつも伝える。
「地上に繋がる道を探してるんだけど...」
彼は驚いたのかこちらをじっと見つめてくる。
「わかった」
まさかいいと言われると思ってなくて大きな声が出る。
「えっ!!いいの!?」
「実は俺も気になってたんだ。
俺が守ってきたそこに何があるのか」
「守ってきた?」
彼はやっぱり見張りだったようだ。
今日はもう遅いから明日また来るということになった。
家に帰ってくる。
前は家族っていたらしいけど
私は物心がついたころからいない
ていうか、みんないない。
教育プログラムの組まれたAIが常に家の中で家事をしている。
「おかえり。ご飯は何にする?」
「なんでもいいよ」
いつもこの会話。
遅く帰ってきても早く帰ってきても絶対変わらない。
結局、本当に心配してくれる人なんていないんだ。
きっと今回違反をして教会に捕まったって。
誰も。
それからは毎日放課後になったら彼のところに行った。
何日かした後に名前を教えてもらった。
彼の名前はリエルというらしい。
リエルは不思議な人で遊びに行ったことがないという。
学校にも通ってないそうだ。
「じゃあ、今日ゲームセンター!行こ!」
正直私が楽しみたかっただけかもしれない。
公園のベンチに座り、空を見ながら話す。
「私さ、秩序維持型AIが人殺すところ見たことあるんだ。確かに悪いことしてそうな人たちだったんだけどね。
でもその時思ったんだ。結局私たちなんてすぐに殺されちゃうんだーって」
リエルの表情は見れない。
だって、急に重い話始めたな。とか思ってそうな顔してたら嫌だったから。
「それから、AIが怖くなって、ここから抜け出したいって思うようになった」
少し沈黙が続く。
失敗したかな。そう思っていたらリエルが口を開いた。
「ユリ。地上に行こう。
きっと、本物を見つけられる」
あぁ。私はこんないい人に出会えて、本当に運が良かった。
そう、思った。
次の日いつものように小屋をノックしようとした瞬間中から声が聞こえる。
リエルと、誰かわからない人がしゃべっている。
「しっかり門を守っているんだろうな」
「はい」
「お前の役目は鍵と門の守護。
それだけだ。
本来なら鍵もいらないが何故いちいち設定したのか地上になんぞ誰も行かなくていいというのに」
AIならばしっかり役目を果たせ。
そういうと声の主はこちらに歩いて来る。
足音がドアの前に来る前に小屋の後ろに隠れる。
少しのスラスター音が聞こえ
ジェットブーツで空を飛んでいく姿が見える。
行ったみたいだ。
小屋に入って気になっていたことを聞く。
「・・・AIって、誰のこと?」
驚いた顔をしているリエル
「盗み聞き、するつもりじゃなかったんだ。
ごめん」
そういうと申し訳なさそうな顔をして謝って来る。
「俺は、AIだ。黙っててごめん」
AIだから、なんだっていうんだ。
こんなに人間なんだ。
誰よりも人間らしいんだから、
私は、気にしない。
「あんなにAIを嫌がってたよな」
情けない顔で言って来るその顔に吹き出してしまう。
ツボに入ってしまった私を見て怒ったような照れているような顔で
「なんだよ!」
と言っている顔を見て思った。
あぁ、私。この人が好きなんだ。
門の前に2人で立つ。
子どもの頃から地上に行くのは愚かなことだと。扇動や、その他興味を持つような話をすることすら重罪で子どもですら取り締まられるとそう学校で教えられ、育ってきた。
この門の先に行ったら、もう戻れないかもしれない。
地上には何もないのかもしれない。
もう友達には会えないかもしれない。
リエルが横で待っている。
「行こう」
そういうとリエルは頷き門に触れる。
触れた瞬間、上から光の粒子になって門がキラキラと消えていく。
リエルの手を握り、階段を登る。
少し暗くて怖いけど、リエルがいる。
そう思うだけで安心できる。
かなり、歩いただろうか。
階段が終わり扉が出てきた。
それを開けるとひらけた場所に出た。
天井がない。
上を見上げると小さな光が見える。
直感した。あれが地上だ。
「ねぇ。リエル。あんな高いところにどうやったら行けるかな?」
リエルが辺りを見渡しておもむろに指をさした。
「あそこ、エレベーターがあるよ」
さすが!そう言いエレベーターのボタンを押す。
「・・・ま、そんな上手い話ないよね」
私がそう言ってる後ろで機械音が聞こえてくる。
「仕方ないな、ユリにはあんまり見せたくなかったんだけど」
振り返るとリエルに羽が生えていた。
「飛べるよ。俺」
真顔でそう言ってくる。
少し笑えた。
現在お姫様抱っこされてます。
少し、いや、かなり恥ずかしい。
こんなことをされたことなくて耐性がないのもあるけど
好きな人にこんなに近づいていると心臓がうるさい。
「一回あそこまで飛ぶよ」
そういい上の方にある岩が欠けてできた足場を指差す
私が頷くと発進準備に入る。
何か音が聞こえる。
勢いよく扉が開く。
「おい!リエルどこに行くつもりだ!?」
怒号をあげながら男が秩序維持型AIを何体も連れて入ってくる。
フラッシュバックする。
あの手にある銃の引き金はすごく軽い。
体が震える。殺されるのか。私たちも。
リエルは横目でそれを見て
思い切り空を飛ぶ。
「待て!おい!」
秩序維持型AIが発砲してくる。
リエルが震えている私の手を強く握る。
「大丈夫。俺が守るから」
その言葉に安心したからか、体の震えが止まった。
上の足場に着くと空は近いように見えた。
「後ちょっとだね」
そう言いながら穴を覗き込もうとした瞬間。
銃声がして弾が前髪を掠める。
目の前にジェットブーツを履いた男が飛んでいた。
「どこにも行けないんだよ。お前らは。
ここでおしまいだ」
銃を向けながら迫ってくる。
「とりあえずリエル。
お前は一回スクラップだな」
そう言い銃を向ける。
体が咄嗟に動いていた。
多分じゃなきゃ間に合わなかったと思う。
私とその男は宙に身を投げ出していた。
思い切りタックルした。近かったから。
下に銃が落ちていく。
私も落ちていく。
男がジェットブーツを使って体勢を立て直していて、
私はそんなの持ってないからずるいなぁなんて思っていた。
「ユリ!!!!!」
上からリエルが落ちてくる。
来ないで。とも。待って。とも言えなかった。
下では秩序維持型AIがもう撃とうとしている。
発砲音が聞こえる。
腕を掴まれ引き上げられる。
「ユリ。いくぞ。地上に」
さっきいた場所が急速に過ぎていく
「地上は太陽に焼き尽くされて何も無くなったんだ! いったって何もない!」
なんて聞こえてくる。
必死に追いかけてくる男。
でも、どうやらジェットブーツの燃料が切れたみたいで叫びながら暗闇の底に消えていった。
もう地上だ。
眩し過ぎて何も見えない。
ずっと暗いところにいたから。
明るさの話じゃない。
目が慣れてきて周りを見渡す。
地上は木々が生い茂り、動物たちが遊んでいた。
犬が足元に近寄ってくる。
本物はこんなにもふもふで可愛いんだ!!
「ねえ!リエル!」
そうリエルの方を見ると倒れ込んでいた。
「え...?」
「さっきの奴らに撃たれたみたいだ。
ユリと一緒に、ここに来られて良かった」
「AIだから、大丈夫なんだよね...?」
私の問いかけには答えない。
「俺が守ってきた門の先にはこんなにも綺麗な世界があったんだ」
ねぇ、待ってよ。
死んじゃ嫌だよ。
「最後に言わせてくれ。
ユリ。君のことがずっと好きだった。
俺はAIなのに、どうしても抑えられない」
「私も好き...」
涙が止まらない。嬉しいのかも悲しいのかもよくわからない感情だった。
リエルはその間ずっと待ってくれていた。
「ねぇ...何年かかっても、必ず起こすから」
そう言うと笑って
「期待してるよ」
リエルは動かなくなった。
あれから何年も経ち、地上にちらほらと人が来だした。
門があきっぱじゃ止められないみたいだ。
地上に残っていた物で何年も研究し続けてきてようやく私の止まった時間が動き出しそうだ。
「起きて、リエル」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本当に感謝でいっぱいです。
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