えっ、もう正月から1ヶ月経っている上に、更新が数ヶ月前ですって?………………すみません。
ここ数ヶ月、大学受験などで切羽詰まっておりましたゆえ、更新が停まってしまいました。
今後も不定期ではありますが、投稿して参りますので、どうぞご贔屓にお願いします。
神奈川県横須賀市 洋上フロート 第一桟橋
一触即発の接触から一ヶ月、無事横須賀に入港し、陽人は隊員達に交代で休息を取らせていた。彼本人はというと、はるなの自室にいた。
陽人(あれから一ヶ月か。なんとか交渉も成功して隊員の無事と指揮権は保証してもらえるようにできた。問題は………)
2週間前
谷垣「ようやく…横須賀に入れましたね」
陽人「そうだな、副司令。だが、ここからが問題だ。この前我々の手の内をほとんど見せてしまった。今は丁重に扱ってくれるかもしれないが、いつ血相変えて襲ってくるかわからない」
彼がそう言うと、艦橋内は静寂に包まれる。
航海長「本当に私達が知っている横須賀………日本じゃないんですね………」
項垂れながら言うのは航海長である波間波瑠(なみま はる)3佐であった。それに続けて陽人は言った。
陽人「その通りだ。日本と言えど異国と同じ。今や、艦だけが俺達の故郷だ」
谷垣「失う訳にはいきませんね」
陽人「あぁ、だが問題は山程ある。例えば、今の我々には指示を下す上位組織が存在しない」
波間「では、ブルーマーメイドの傘下に入れば良いのではないでしょうか?」
波間がそう言うと陽人がこう返した。
陽人「それも考えた。確かに我々の生命と諸々は確約されると思うだろう。だが、よく考えてみて欲しい。そうなった場合、我々の艦艇達はどうなると思う?」
ほんの数刻考える隊員達。そしてその答えを頭に思い浮かべ、顔を青ざめる。
陽人「わかったかな?ほぼ確実に供出する羽目になる。そうなれば故郷を失ったも同然の用済みになった我々をあちらさんは排除に掛かるだろうね」
陽人は続けた。
陽人「他にもこの世界における先端技術である航空機やミサイル、戦術データリンク等の技術をどうするかも問題だ。間違いなくあっちの日本政府は欲しがるはずだ」
谷垣「………………気安く渡せるものではないですね」
陽人「そこでだ。あちらは交渉の席を用意してくれた。それに伴い、同席する幹部を募りたい。副司令、各艦の艦長及び補佐官と各職種の長を招集してくれ」
谷垣「了解!」
こうして集められた第五護衛隊群の指揮系統から陽人と谷垣に同伴する幹部が決まった。
まずは航空関係であかぎ型護衛艦一番艦『あかぎ』より艦長の秋津竜太(あきつ りょうた)1佐と航空司令の芹沢葵(せりざわ あおい)1佐が選定された。武装関係で選定されたのはこんごう型護衛艦四番艦『ちょうかい』より艦長の浮舟武彦(うきふね たけひこ)1佐と砲雷長の葛城玲香(かつらぎ れいか)3佐であった。
1週間後、海上安全整備局日本支部の本庁舎で陽人ら自衛隊と政府高官及びブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの幹部による会談が行われた。
結果は、陽人らはミサイル(旧式)等の一部技術を提供、政府及び海上安全整備局は陽人らの身の安全を保証、上陸の許可と補給への協力という条件で双方は合意した。
そして、序盤に戻る。
陽人(技術の提供自体には興味を示していたけど、連中………特に官僚共と海上安全整備局の高官がこっちの安全保障の話になった途端に苦虫噛み潰したような顔になりやがった)
陽人はそれを疑問に思い、会談の後とある部隊に司令を出していた。
陽人「まぁ、自分の目で確かめるとしますか」
陽人は隊員に内火艇を用意させると、輸送艦『ねむろ』に向かった。
輸送艦 ねむろ 艦橋
?「お待ちしていました、群司令」
陽人を出迎えたのはねむろ艦長の坂本陸奥(さかもと むつ)2佐である。護衛艦の艦長を務める土佐弁を喋るお気楽な兄がいる。
陽人「特戦群の皆は何か掴んだかい?」
坂本「はい………どうやら司令のご想像の通りだったようです」
陽人の表情は暗く重い顔になった。
陽人「………………わかった。守総(もりふさ)群長はどこかな?」
坂本「守総1佐であれば、ウェルドックに併設されている指令所にいらっしゃるかと思います」
陽人「ありがとう。それじゃ、失礼するよ」
坂本「はっ!お気を付けて」
ねむろ ウェルドック 地上部隊指令所
その日のウェルドック内は静かでありながら、緊張感と近づいてはならないとういうオーラに溢れていた。
無線『イントルーダーよりハンドラー、目的達成。現在撤収のため、地点ヒトフタへ進行中、送れ』
守総「ハンドラーよりイントルーダー、そのまま進行せよ。スワロウテイル(回収班)が待機している。送れ」
無線『了、通信終わり』
守総「通信終わり」
無線機で潜入部隊に指示を送る彼女こそ、特殊作戦群群長の守総遥音(もりふさ はるね)1等陸佐である。作戦成功率は驚異の97%。そんな彼女だからこそ、潜入任務の総指揮及び責任を陽人から預かっていた。
ちょうど作戦成功は目前で、後は回収班に任せるだけだった。その時、コンコンコンと司令所のドアがノックされ、「どうぞ」と彼女が答える。ガチャン、ゴンとハッチ特有の金属的な重々しい音とともに陽人が入ってきた。すかさず、守総は敬礼し、陽人も答礼をする。
守総「お疲れ様です。群司令」
陽人「そちらこそ、お疲れ様。任務の進捗はどう?」
守総がバインダーを開き、話し始める。
守総「現在、潜入班は諜報を入手、回収地点へ撤収中です」
陽人「OK、どんな情報?できれば好ましいのが良いんだけど」
守総「内容を抜粋しますと、『情報を根こそぎ手に入れたらあの子どもたちを始末しろ。しかし、今はその時ではない。理由は、彼らの技術は我々(はいふり世界)にとって発展途上どころか、技術自体が確立されていない。よって、10年程は待たねばならない』とのことです」
陽人は怒りが沸き立つ前に呆れかえった。理由は彼自身が『得体が知れない、技術は欲しい、自分が絶対に手綱を握りたい。万が一、そんな理由で誰かを殺さないと体裁を保てず、生き残れないなら──そんな国家滅んでしまえばいい』と考えているからである。
どっかの革命を導いた大統領かな?
陽人「なるほど、つまり最低でも10年は猶予があると?」
守総「えぇ、ですがそれは多めに見積もった場合です。実質として5年程が限度かと。ですが、まだ技術交流が始まったばかりなので、すぐには襲ってこないと思われますが」
「なるほどな」と陽人が返す。数刻置いて守総が「ですが」と切り返す。
守総「何をトチ狂って襲ってくるか分かりませんし、その可能性がゼロではありません」
陽人はニチャアとしたどす黒い笑みを浮かべた。
陽人「そんなすぐに掌クルクルするようなら___褒めてやると同時に刺激的なプレゼント(ミサイルの飽和攻撃)をくれてやるさ!」
「ハーハッハ」と狂気じみた高笑いをあげる陽人を見た守総は、恐怖した。『この人だけは怒らせてはならない。もしそうなれば………………世界が終わりかねない』と。
陽人「まぁ、1佐の言う通り時間は限られてるだろうし、『その時』は必ず来るだろうからね。手は打たないと………一旦今夜の1900(ヒトキュウマルマル)に幹部全員を集めてブリーフィングをするから、用意はしておいて」
守総「了解」
その日の夜、『はるな』のブリーフィングルームでは陽人の説明に各艦の幹部たちが傾聴していた。呆れる者、怒りを顕にする者、戸惑う者と様々な感情が入り混じっていた。
陽人「___というのがあっちの政府高官の考えらしい。5年程度の猶予はあるとされるが、早急に手を打たなくてはならない。そこで、皆の意見を聞きたいんだ」
すると一人の幹部が手を挙げる。
?「質問えぇですか?」
彼は坂本辰馬。護衛艦『あおば』の艦長を務めている。階級は1等海佐だ。
陽人「どうぞ」
坂本(辰)「仮にあちらさんが攻撃してきたら、司令はどうするおつもりやか?」
陽人「そうなった場合は部隊行動基準に基づき、反撃することを考えているよ」
そう陽人が告げると秋津が言った。
秋津「私からも一つよろしいでしょうか?」
陽人が許可を出し、秋津が話し始める。
秋津「その攻撃の件ですが、恐らくあの日本政府………いえ、海上安全整備局が実際に手を出してくるのは航空機と誘導弾の運用について習熟した時、つまりは2年から3年以内と思われます。現在、彼らにはこちらの技術供与が始まったばかり、現状で彼らはこちらに対抗できうる兵器を持ち合わせていません」
陽人「なるほど、つまりあっちはミサイルや航空機で充分に武装した後でこちらを袋叩きにしようとしてくる訳か。まぁ、合理的だわな………俺らが渡した技術が最新ならの話だがなw」
秋津「そこでなのですが、警告としてF-2による演習弾での爆撃はどうでしょうか?」
秋津の発言に周囲が目を見開く。すると航空司令の芹沢が待ったをかけた。
芹沢「待ってください。そんなの、宣戦布告と殆ど同義ではないですか!」
秋津「明らかに敵意と殺意があるのはあちらの方だ殺らなければ、こっちが殺られる」
芹沢「だとしても、我々は自衛隊。先制攻撃なんて許されません」
秋津「芹沢1佐、君は先制攻撃と言ったな。だが、私が提案しているのはあくまで威嚇だ。我々は今のところどこにも属していない。所属する国家、組織はこの世界にはない。言ってしまえば、お尋ね者だ。いつ牙を剥くかわからぬ飼い主不在の武装勢力を野放しにする程連中は甘くはないと思うが?」
議論は白熱し、その場にいる幹部全員の論争へと発展した。しかし、陽人が仕切り直した。
陽人「落ち着け、言い争っても仕方がないだろ。秋津1佐と芹沢1佐の言い分はどちらも間違いではないよ。ただね、うちの艦隊はこの世界の日本政府からすれば、秋津1佐が言う『飼い主不在の武装勢力』であることにかわりはない」
芹沢「では、群司令は秋津1佐の案を支持なさるということですか?」
超えの震えた質問に対して、陽人は答える。
陽人「概ねは、ね。ただ、F-2とかを使う必要はないと考えているよ」
秋津「ならば、どのようになさるおつもりですか?」
陽人「なにも搭乗員を危険に曝す必要はない………………ミサイルの模擬弾頭をあちらの埠頭に着弾指せるだけで十分だよ。それも、あちらの射程外からね」
谷垣「ですが司令、それでは芹沢1佐の言うとおり宣戦布告になるのではないでしょうか?」
陽人の言ったことに副官の谷垣が質問する。
陽人「別に今すぐやるわけじゃないさ。仮に、あっちが不穏な動きを見せた場合、またはわが艦隊の脅威になり得る状況、つまりは攻撃してきた場合によるって話だよ。ほかに質問は?」
その場の幹部全員が真っ直ぐな目で陽人を見る。異論を唱える者は誰一人としていなかった。
2015年12月
神奈川県横須賀市 ブルーマーメイド建造ドック
作業員「いやぁ、にしても艦型が全くの別モンですなぁ。同じ艦を見ているとは思えない」
彼が見ていたのは改装が施された旧式艦の群れだった。
特に目を引くのは『陽炎』型航洋艦や「秋月」型航洋艦等の旧駆逐艦だ。主砲はのMk.33 3インチ速射砲に換装。後部甲板に至っては兵装が全て撤去され、格納庫と航空甲板が増設、シコルスキーS-61が運用可能となっている。魚雷発射管は3連装魚雷発射管が側面に2つ配置され、元の発射管があった場所にはASROC用の8連装発射機が搭載され、格納庫上部にボフォース製40ミリ機関砲とシースパロー用の8連装発射機が搭載された。そして、レーダーやFCSは1960〜70年代の技術が使用され、冷戦中期のミサイル駆逐艦と遜色ない性能に仕上がっていた。
整備士「あぁ、確かに艦橋構造物とか、兵装も段違いに違うが、動力なんか別次元だ。開発途中だったガスタービンエンジンを技術人が完成させたらしくてな、こいつらにはそれが積まれてる」
作業員「嘘だろ!?蒸気タービンから一気に総入れ替えかい?」
整備士「あぁ、おかげで大忙しよ。まぁ、楽しかったがな」
作業員「そういや、船もスゲェがよぉ、航空関連も自衛隊?とかいう子どもたちがもたらした物が技術革新を起こしたそうじゃねえか」
整備士「おう、なんでもヘリコプターとか飛行機っつう飛行船とは比べもんにならねぇ乗り物があって___あっ、そうそうこいつらに載せられる予定のシコルスキーってヘリコプターは最高速度が267km/h、222km/hで巡航できるらしい」
作業員「おいおい、余裕で飛行船の最高速度以上じゃねぇか」
整備士「だがな、飛行機はもっと速い」
作業員「ほう、その心は?」
整備士「プロペラ機ってので約900、ジェット機ってやつは余裕で音速を超えるって話だ」
作業員「はぁっ!?冗談だろ?マッハ超えんのは銃弾とか砲弾だけだろ!?」
整備士「俺も最初はそう思ったさ。だがな、実際に見たんだ。とんでもない速さで飛ぶし、なんつっても加速した時衝撃波が起きてた。あれは物体が音速超えた証拠だ」
作業員「まじかよ………」
こうして彼ら含むはいふり世界の住人は航空機やミサイル等の技術の凄さ、恐ろしさに只々言葉が出なかった。
2016年4月上旬 京都府舞鶴市 洋上フロート
その日、陽人たち自衛隊が転移してから丁度1年が経つと同時に日本各地の海洋学校で入学式が行われていた。
陽人たちは来横須賀女子海洋学校及び東舞鶴男子海洋学校に来賓として招待されていた。
陽人「おぉ、こりゃあ凄い。昔の護衛艦がたくさんある!既に退役してて見られない『たかつき』型に『やまぐも』型が!」
陽人は東舞校にある教育艦に興奮しっぱなしである。それと同時に『はるな』砲雷長の藍沢音弥(あいざわ おとや)3等海佐も潜水艦を見て大はしゃぎだった。彼は彼で潜水艦ヲタクである。彼は元々サブマリナーで魚雷管室の砲雷科要員だったが、昇進と同時に『はるな』に転属された。
藍沢「司令!こっちにははるしお型とおやしお型がありますよ」
それに陽人は目を輝かせて反応した。
陽人「なんだって!?そいつぁ、見に行かないと」
その様子を見ていた他の乗組員たちの笑顔はやや引きつったものだった。
横須賀、東舞鶴の入学式は淀みなく進み、教育艦と教官が座乗する教員艦が次々に出航していった。動力部が初歩的とはいえ全てガスタービンエンジンに換装されている為、出航の準備はとても速かった。
後の乗員の話だと「今までの物より遥かに馬力も強く、立ち上がりが速く素晴らしいとは思う。しかし、今まで使用していた蒸気タービンに慣れているせいで、度々出力を間違えたり、故障することがあった」とのこと。
陽人「さてと、ではこちらも出航するとしよう。全艦、出航準備!前部員、錨鎖詰め方!」
陽人の号令により、艦内と甲板で乗員が手慣れた手つきでつつがなく準備をしていく。
現在、『はるな』には谷垣が横須賀にいるという理由もあり、副司令がいない。その為、船務長の横田蓮(よこた れん)2等海佐が副長に就いている。
横田「全艦、出航準備整いました」
陽人「よし。全艦、出航!両舷前進微速!」
『はるな』を先頭に第11護衛隊が港を出た。
陽人「航海長操艦。両舷前進原速。赤黒なし。進路120度」
波間「頂きました、航海長。両舷前進原速。赤黒なし。進路120度」
こうして、陽人はまた大海原に出る。彼は後に起こる事件を予感しながらも、起こらない事を祈る。しかし、それは叶わず、日本どころか他国まで巻き込むエピデミックが船乗りたちを襲う。