ぼっちアートオンライン(再)   作:凪沙双海

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前では現実サイドの話からでしたが、今回はいろいろな都合上SAO内からスタートになります。



Episode2,part1

「まさか、ゲーム内で一歳年取るとはな……」

 

 

一層攻略から半年ほどして、俺は二十一層の迷宮を歩きながら一人呟いた。あれから結構なペースで攻略は進み、かつ死者は攻略組のボス討伐グループからは出ていない。

上手くやれている、とは言えるだろう。

 

 

「っと、沸いたのか」

 

 

手に持った刀を構えて一閃。首と胴が離れたそいつはポリゴンとなって消えた。

あれから俺を含め、いくつか変化が起きた。まずはこの俺の武器。曲刀を順調に使い込んでいったら刀が使えるようになっていた。エクストラスキルというやつだそうで、その条件を満たしたらしい俺は曲刀のスキルを一通り覚えてからこちらの刀に武器を変えていた。より太刀筋少なく、クリティカルダメージを出すこの武器は俺向けだと言える。

 

 

「ん、レベルが上がったな。こっちもよし、と」

 

 

攻略組は今二つのギルドと二人──正確には一人のプレイヤーが中心になっている。

ギルドは主にアインクラッド解放軍と聖龍連合と言うギルドで、あのディアベルの取り巻きがそれぞれ興したギルドである。大規模な戦力を誇る軍と、攻略組を打数擁する聖龍連合。これらの存在は攻略組に入ったプレイヤー達にもありがたい存在だろう。すぐに仲間ができるのは一般的にはいいことだろうからな。

逆にソロプレイヤーはキリトとアスナ……主にアスナの元につくことになっている。というか、作戦とか立てる時は主にアスナが中心だ。あいつのカリスマ性というか、女でかつあの容姿と実力もあるんだろう。見事な姫騎士様だ。

そこ、くっころとか言わない。

他には、驚くべきことにクラインが率いる風林火山。リアルフレンドだけの少数ギルドだが、攻略組の中継として欠かせないポジションであり、そして全員の錬度も高い。

 

 

「っと、もう一匹──」

 

 

武器を振るう腕を斬り飛ばし、そのまま首を撥ねる。この倒し方が完全に定着してしまったせいか、あの妙なあだ名がつけられたのか……

 

 

「首斬りハチマンか。ずいぶんなこって」

 

 

他には影纏いとか。俺は一層のあれ以来完全ぼっちプレイヤーだから、どういう意味があってそんな名前がつけられてるかは知らないが。

これ、やっぱりリアルに帰ったら頭抱えそうな気がする。

 

 

「……あれ、ハチマンくん?」

 

 

「──お前か、アスナ」

 

 

首を撥ねて消えたモンスター越しに白を基調とした装備をつけたアスナが立っていた。

珍しいことでもなんでもない。お互い目的は同じだ。

 

 

「キミも攻略、よね?」

 

 

「当たり前だ。というかそれ以外に何があるんだよ」

 

 

「あはは、それもそうね。にしても、久しぶりね。ハチマンくん」

 

 

少し早歩きでこちらへ来て、アスナはにこりと笑顔を浮かべた。何を開き直ったのか吹っ切ったのか、おそらくこちらが素であろうこいつのこの明るい性格は攻略酌みでも大人気だ。アスナにいいところ見せたくて頑張ってるやつもいるだろうな。

 

 

「相変わらずね、首斬りさん」

 

 

「その呼び方やめろ」

 

 

「じゃあ影纏い?」

 

 

「……お前な」

 

 

「あはは、冗談です。ね、ハチマンくん。ちょっとパーティ組まない? 情報交換も兼ねて」

 

 

「お前の場合、断ってもついてくるじゃねぇか、ストーカーめ」

 

 

「あ、それひどい」

 

 

一層攻略後から、俺はアスナ(とあとキリトもか)にやたら付きまとわれる。どんなに辛辣な言葉をぶつけてもこの女怒りもしなければ諦めもしない。

キリトはキリトで毎回ボス攻略では人の近くにいるわ無言でパーティ申請送ってくるわで、正直怖い。

 

 

「お前らな、俺といたって何も得しないだろ」

 

 

「それは私やキリトくんが決めること。そもそも、そんな勘定をしてないよ。私も、きっとキリトくんも」

 

 

「いや、それはさすがに……」

 

 

おかしいだろ、こんな状況下で損得勘定なしに動くとか。そんなわけ──

 

 

「ハチマンくんがひねくれ過ぎなの。キミはあんな風に悪役演じて満足かもしれないけど、私達にとってはいい迷惑よ」

 

 

「演じたわけじゃねぇよ。本音で思ってる」

 

 

「キリトくんのことも?」

 

 

「……当たり前だろ」

 

 

「あ、今間があった。あとそっぽ向いた!」

 

 

こいつは……

 

 

「お前、めんどくさい女だな……」

 

 

「面倒な男の人に言われたくないわよ。ほら、行きましょ?」

 

 

ここまで強引な奴はあまり知らない。他にいたら迷惑過ぎるが……

ため息を吐いて、俺はアスナについていくのだった。

 

 

「よし、終わりっ!」

 

 

アスナの刺突がモンスターを消滅させて、ポップが一旦終了する。その隙にセーフティエリアへと入り、俺はベンチへ腰掛けた。隣にアスナが座るので、端に寄って距離をとる。

 

 

「……まぁ、いいとします」

 

 

不満そうな顔をこちらに向けるが、そんなものは知らない。

 

 

「何度も言うけどな、俺にとってお前らはゲームクリアの為に利用する存在で、お前らにとっても俺はゲームクリアの為の駒だ。それでいいし、そうであるのが理想だ。キリトもお前も、俺に関わる必要はないだろ」

 

 

「私も何度も言うけど、ハチマンくんを心配することの何がいけないの? キミの言葉を借りて言えば、ゲームクリアに必須なプレイヤーの安否を気遣うのは何も変なことじゃないと思うけど?」

 

 

「俺は心配される必要ねぇよ」

 

 

「どうかしら、ハチマンくんもそういうところは信用できなさそうだし」

 

 

ああ言えばこう言う……こんなタイプの奴は関わったことないから、とてもめんどくさい。

 

 

「信用なんてしなければいい。期待するだけ無駄だろ。

こんな嘘だらけの紛い物なゲームの中で、そんなところで築いたものなんてたかが知れてる。本物にはなれない」

 

 

俺が求めた本物は、俺の手で閉ざしかけてしまっている。

それをこんなところで求める必要はないし、そんなの、あいつらへの冒涜だ。

 

 

「ハチマンくん……?」

 

 

「……俺はこのゲームが開始した時から止まってる。だから関わるな。お前らは動けるんだから、動ける人間同士でやっておけ」

 

 

会話をそれっきり打ち切って立ち上がり、意味はないものの大きく伸びをする。

 

 

「続きやるなら行くぞ。行かないならここでお別れだ」

 

 

「あ、行く! 待って、ハチマンくん」

 

 

あいつらは、こんな俺を見てなんて言うだろうな……




ハチマン……攻略難度上がりすぎか……
前と違い、ハチマンの方向性がしっかりしちゃってるせいで大変意思の強い状態に……
でもあれですね、冷徹(のつもり)で振る舞って、イレギュラーに振り回されて動揺したりして「なんでお前は……」とかってデレてくキャラって王道だけど萌えますよね(笑)

では、次回にてまた!

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