ぼっちアートオンライン(再)   作:凪沙双海

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大元のぼっちアートだとEp2で二十五層クリアしてるんですよね。そう考えるとペースがちょっとゆっくり気味ではあるかもしれません。
感想をくださった方ありがとうございます! すごい嬉しいです!
まったりやりますが、またお付き合いくださったら嬉しいです。


Episode3,part2

「あ、あの……ごめんね、私たちのために来てもらって」

 

 

「別に謝らんでいい。負けは負けだからな」

 

 

今日も今日とて二十五層の迷宮攻略……ではなく、俺はまた二十層へと足を運んでいた。そして隣を歩くのはこの前キリトに紹介された月夜の黒猫団の女剣士サチだ。

なんでこんなことになってるかと言うと、先日攻略組を集めて行われたフィールドボスの討伐戦に呼ばれて行ったときにキリトにポップした雑魚の討伐数を競えと言われてそれに負けたからである。

俺がそんなのに乗るのが珍しいって? そりゃそうだ、俺やるって言ってないし。アスナがなんかやる気だして俺まで巻き込んで結果俺はあの二人に負けて言うことを一つずつ聞くことになったのである。

ちょっと怒られるかもしれないけど言ってもいい? 不幸だー!

と脳内で叫ぶのはさておき、キリトから頼まれたのがこいつらのレベリングというか特訓というかの付き合いで、くじを引いた結果俺はサチと二人で歩くことになったのである。いや、うまく分ければいいのに変なアミダ組んでしかもミスってそのままって、それでいいのか黒猫団。

 

 

「まぁ、盾役と組むのは俺にとっても悪い話ではないからな」

 

 

「そうなの?」

 

 

「まぁ、いろいろあってな」

 

 

あいつ(ヒースクリフ)の言葉の通りであればボス戦時はあいつと組む可能性もある。最前線の盾役と絶賛練習中の中層プレイヤーじゃ全然違うかもしれないけど一回でもやっておけば要領はわからなくもないからな。

 

 

「にしても、上に行くのに合わせて盾役に転向ってのはずいぶん思い切ったな」

 

 

ギルドの紅一点、しかもあのキリトを擁していてなお盾役がやりたいってのは正直驚いた。こいつらが将来的に俺ら側に来たとしてキリトと動くのなら攻略組のさらに前線近いところになる。

ぶっちゃけ俺だって命がいくつあれば安心できるんだって思いながらプレイしてるようなところだ。生きてられる保証なんてどこにもない。

 

 

「……その、ね。私、最初はすごく怖かったの。死ぬのが怖くて怖くて」

 

 

ぽつりぽつりと話を始めるサチ。小さいけど、何か決意が籠ったような声音だ。

……雪ノ下に声が似てるからとかじゃないと思う、たぶん。

 

 

「あまりにも怖くて、話を聞きに来たキリトに一緒に逃げようって言っちゃったの。キリトは攻略組のトップにいる人なのにね」

 

 

苦笑するサチに合わせて笑ってやることもできたのかもしれないが、俺にはできなかった。俺だって今でも怖い。

あの時、一層のボス戦前夜に感じた恐怖は今でもふとした時に俺を襲うし、ボス戦に挑むときはいつだって死の恐怖と戦っている。紙耐久故のダメージで体力が半分を切る度に発狂しそうになるのを堪えてポーションを飲んでるんだからな。

 

 

「そうしたらね、キリトが言ってくれたの。私のこと、団のみんなのことは死なせないって。必ず守るって、守れるようにするって。

──年下の男の子の言葉なのに、保証なんてないのに。私はそれで満足しちゃったの。満足して安心して、だから……私もキリトを守れるようになろうって思ったの」

 

 

「──そうか」

 

 

恋は盲目ってこういうことか、なんて他人事のように思って俺は相槌を打った。

 

 

「先に、厳しいことを一つ言っておく」

 

 

「え?」

 

 

「これから先お前たちが攻略組に合流したとして、難しいと思ったら俺は躊躇いなくお前たちを最前線には組み込ませない。いつ死ぬかわからない場所に感情だけで編成をさせるわけにはいかないからな」

 

 

例えば、サチを守り切れず死なせてしまった。サチを庇ってキリトが死んでしまった。なんてことは決してあってはならない。

少なくともサチにとって今抱いている感情は本物だ。だから、その本物のせいで命を失うことを許してはいけない。

 

 

「今回俺と組むんで良かったかもな。少し、前線で戦ってるような動きでやることにする。最前線に来るなら体感しておいて損はないだろ」

 

 

「ハチマン……ありがとう」

 

 

「俺自身のためでもあるからな、気にするな」

 

 

ちょうどポップしたモンスターを相手に俺は刀を構えた。

らしくない、自分でもそう思うけど──

──本物の感情に触れてしまった以上、俺はそれを無視することはできなかった。

 

 

☆☆☆ 

 

 

「そろそろ合流時間か」

 

 

「本当だ、結構戦ったよね……?」

 

 

「そうだな、思ったよりついてこれて正直驚いた」

 

 

あれから一時間ほど狩り続けた俺たちは約束の時間が迫っているのを確認して合流地点へと歩き出した。

意外なことにサチはきっちり盾役の仕事をこなそうとしており、それなりの速さで動く俺とスイッチしたりヘイト管理したりと思った以上の動きを見せていた。

 

 

「必死だったけどね。キリトよりも速かったし……さすが攻略組最速の男だね」

 

 

「もういろんな呼ばれ方しすぎてわけわかんねぇことになってるな……」

 

 

クスクス笑うサチを横目にため息を吐いて雪ノ下のやれやれポーズ。あいつもいつも俺や由比ヶ浜にこんな風に思ってたのだろうか。

……それはそれでなんか違う気もするが。

 

 

「そういえば、ハチマンはキリトと付き合い長いんだよね?」

 

 

「まぁ、サービスインしてからの付き合いではあるな」

 

 

途中めちゃくちゃ意図して避けてたけど。

 

 

「やっぱりそうなんだ。キリトの話題の中にあなたのこと良く入ってたから、普通の仲間とかよりも付き合いがあるんだろうなって思ってたの。

その、キリトってどういう子なのかなって。私じゃなくて攻略組で、付き合いの長いハチマンから見たキリトが知りたいっていうか」

 

 

どういうわけか、俺はあいつになんかなつかれてるらしい。初っ端からとんでもない扱いして突っぱねたはずなんだが、なんでだ?

そんなことはさておき、なんかもじもじしながらサチはこっちに視線をよこしてきた。口調とは裏腹に視線は俺にキリトのことを教えろとめちゃくちゃ訴えかけてくる。ハチマンちょっと怖い。

 

 

「率直に言えば大人ぶりたい子供、だな」

 

 

実際リーダーシップも取ろうと思えば取れるだろうしあれでなんかいろいろ経験してそうな感じではあるから大人びてるのかもしれんが。なんか俺と話してるときのキリトの印象はこれだった。

俺にばっかりそれとなく我がまま通そうとするの、ちょっと小町っぽいところあるんだよなあいつ。

 

 

「お前ら高校の同級生ギルドなんだったよな。俺も年齢的には同じくらいだから、あいつは少し年下ってことになる。

ここぞってときはしっかりしてるけど、基本的に年相応というか。これは男女で視点が変わりそうだからあんまり参考にならないかもな」

 

 

難しそうな顔で考えてしまったサチに一言加えて、こいつの想い人である黒い剣士のことを想い出す。

 

 

「あとはそうだな……あいつは結構押されるのに弱い。なんか誘ったりしたいなら多少強引に行ってもいいと思うぞ」

 

 

よくアルゴとかクラインとかに押し切られて付き合わさせられてるのを見かけるし、俺と違ってあいつは踏み込まれると結構懐を空けるタイプなんだろう。

サチは真剣な顔でなるほど。と頷いてなんか考えていた。真面目か。

 

 

「噂をすれば、だな。あいつらも今到着したみたいだ」

 

 

合流地点でこちらへ手を振る男五人。だいぶ仲良くなったんじゃないかって感じで楽しそうにこっちを見ている。

 

 

「サチ、ハチマンは大丈夫だったか?」

 

 

「うん、いろいろ教えてくれたよ」

 

 

「そっか。ハチマン、ありがとな」

 

 

「これで一応約束は果たしたからな。あとそうだ、キリト」

 

 

「うん?」

 

 

「とりあえず、一回か二回は爆発した方がいいな。お前」

 

 

「え、なんでだよ!?」

 

 

「あ、ハチマンもしかして知っちゃった?」

 

 

ガーン! みたいに肩を落とすキリトの後ろで意地悪く笑うケイタにそりゃあな。と頷いた。

 

 

「サチにいろいろ聞かれたからな」

 

 

「ち、ちょっとハチマン!」

 

 

慌ててに俺へ声をかけるサチをからかうように笑う黒猫団の男衆、そして何も知らず首を傾げるキリト。

そのやり取りがなんか、リアルでもなかなか味わったことのない感覚で。まるでここにいるのが全員ちゃんと学生みたいで──

──俺も、無意識に笑みを浮かべていたのだった。




おじさんになった今でも完璧に物事をこなすなんて全然できないし感情を隠して何かするのも仕事中くらいしかできないしで、彼らくらいの年の子が確かにいろんな経験してるとは言え完璧でいられるわけないよね。っていうのが今の自分の解釈になってます。
そのあたりの塩梅が変にならないようにできたらいいなと思います。
ではでは、今回もありがとうございました。
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