俺ガイル二期、始まりましたね。ちょっと作画変わったかな?
でもみんなたくさん動いてて良かったです!そしていきなりの修学旅行……面白いとこだけど、ちょっと気分が…(笑)
では、始まります。
「……で、用事ってなんだよ。鼠」
キリトとパーティを組むようになって数日。俺は情報屋――通称"鼠のアルゴ"の拠点を訪れていた。
ベータテスターの情報屋で、このゲームを手助けする情報やそこそこ有名なプレイヤーの情報すら取り扱っている。
キリトや俺、そしておそらくクラインっぽそうなプレイヤーの情報がある。俺の情報も取り扱っていることには少し驚いたが。
「依頼ダ、ハッチ。依頼人はオレッチでナ」
「……は?」
そして、こいつは自分を介して俺へ依頼を投げてくる。知り合った際に奉仕部の理念を説明したら、間接的なお助けマンをやれと言われてしまったのだ。
普段なら意地でも断るところだが、今回は俺の意地と指標の為に受けている。内容は選ぶけどな。
「お前が、かよ」
「仕方ないダロ、オレッチ戦闘は無理だしナ」
「……内容は?」
「ハッチはこんな噂聞いたことあるカ?
"とある森の奥深くの洞窟に、ログアウトスポットがある"
実際、向かったプレイヤーの何人かは帰って来ないそうダ」
「何度か聞きはしたな。まぁ、ガセだろ」
「だろうナ。現に、帰って来ないプレイヤー達はその死を石碑に刻まれてル」
面白半分の嘘が噂になったのか、あまりの事態に狂った妄想が噂になったのか。
……すがりたい気持ちはわからなくもないが。
「で、ダ。この噂が、鼠のような情報屋から流れているって噂も立ってル。
……あとは、わかるナ?」
つまり、この出所の知れない噂は何故かこいつ……またはこいつに良く似た誰かによってもたらされたことになってるわけだ。
まぁ、情報屋からすればそんなガセネタを自分のせいにされたらたまったもんじゃないだろう。
「つまりは、お前の風評被害を減らすために手伝えと」
「その通リ! オレッチ自身のことはオレッチがやル。が、もしその場所にモンスターがいたらオレッチは戦えなイ」
「だから、代わりに戦う人間が欲しいわけだ」
「一応、ホーシブの理念には叶ってるだロ?」
「――まぁ、な。それに、お前がこれで情報を集めれないのは困る。俺だってまだ知らないことが多すぎるからな。ベータテスターには知識では及ばないし」
「攻略組の最前線プレイヤーが良く言うゼ」
「は? なんだよそれ」
「ハッチやキー坊のことサ。迷宮攻略するプレイヤー、さらにその前にいるトップ組。あれダ、ネトゲ廃人」
「身も蓋もない言い方だな……」
「事実だロ。現にハッチは、キー坊と並べるくらい強い。
攻略組のプレイヤーから、ハッチのことを聞かれるくらいにはナ」
「嫌な話だ。俺は寄生を連れてく気はないからな。
……行くなら行くぞ」
話を打ち切ってアルゴの拠点を出ることにする。
これ以上聞いていると、まるで自分のことなのに自分でないような気がしてきて、俺はそれから逃げることにした。
……やれやれだぜ。そういやこのセリフが有名なあの主人公年齢的に同じくらいなんだよな……
くだらいことを考える余裕がまだあったのか、なんて脱線する思考に沈みつつ、俺は歩き続けるのだった。
―――――
「ここか……」
西の森の洞窟。噂の場所はなんとなく人気のない場所だった。
こういうところはエリアボスとか、ちょっと強めの敵がいたりして初心者殺しとして有名になったりするんだよな。
今回のも例に漏れず、その類いだと思うが。
……希望なんて抱きもしない。運営がクリア方法を述べてるんだ。それ以外の抜け道なんてあるかわからない。
あったところで、リスクが大きい。もしアカウントがBANされればリアルからもBANだ。そんなバカな話あってたまるか。
……どうあっても、俺達は人質の立場なんだ。
「噂の出所自体はお前が突き止めろよ。そこまでは付き合わないからな」
「わかってル。ついでにしばらく情報料はまけてやル。今回のはさすがにナ」
「そうかよ。……っと、何かしら準備しとけ、アルゴ」
洞窟の中から何かが飛び出してくる。あれは、ギミックか?
いや、違う。あれは――
「ハッチ、あれプレイヤーダ!」
「わかってる……っ」
放り出されていたプレイヤーは、しかしその姿を消滅させないことからまだ生きていることがわかる。
が、ぐったりと倒れたまま動かない。いや、動けないんだろう。
絶望か、疲弊か。所詮バーチャルなこの身体は、しかし疲弊する。精神的に詰められるんだ。それは、現実で言うような肉体の疲労のように自身にまとわりつく。
「とりあえず、生きてはいるか」
声に出して再確認して、俺はそのまま剣を抜いた。
洞窟の奥からは呻き声、そして現れるのは牛頭の大きな斧を持ったモンスター。
ああ、よくいる強エネミーだ。間違いない。
「グォォォォォォッ!」
「――うるせぇな、喚くなよ」
背後を取って一太刀。できうる限り最速でソードスキルを準備して斬り払う。
あっけなく、そしてそれだけで戦闘は終わった。
思わず呆然と立ってしまう。
「……え、今ので死ぬのかよこいつ」
「それくらい強くなってるんだヨ、ハッチ」
アルゴがどこか得意気な顔でこちらへ歩いてくる。
なんでこいつこんなどや顔なんだ?
「キー坊の戦闘もハッチの戦闘も見たことあるけド、見てて熱くなるのはキー坊の方だナ。ハッチの戦闘は見てて寒気がすル。倒すよりも殺す。という言葉がよく合うナ」
「そいつは悪かったな。こういう戦闘方法しか知らねぇからな、他人の評価もどうでもいいし」
ボッチが培った知識による戦闘方法。それは少なくともこの世界では多分に役に立っている。
だからいい。それに、ここの他プレイヤーの評価なぞ興味もない。俺もトッププレイヤー扱いされるなら、それを利用したい人間を俺も利用する。利害の一致はしているだろう。
「相変わらずだナ」
「そんなもんだろ。クリアさえできればそれでいい。ところで、俺はそいつの面倒は見ないからな」
モンスターに投げられたであろうフードをかぶったユーザーにチラリと目を向ける。
「わかってル。そこまでは頼まないサ」
「……ならいい。お前からの依頼はここまでだな。じゃ、俺は行くぞ」
ぽい。と普通のポーションより強めの回復アイテムを渡して、俺はアルゴと、倒れているフードのプレイヤーから離れた。
……なんとなく、あのプレイヤーから見られているような、そんな感覚がしたが気のせいだろう。
ボッチは元々視線に敏感だからな、今ちょっと感覚が尖りすぎてるだけだろう。
――side アルゴ――
「……才能って言うのかネ、あれハ」
助けたプレイヤーは、まったくの素人。そのくせに尋常ではないセンスを秘めた女の子だった。
初めてキー坊……キリトやハチマンを見たときに近い感覚を覚える。
あの二人を見たときも同じだった。単純に見るものの目を奪うようなキリトの立ち回り、徹底的に相手を倒すために容赦なく殺しにかかるハチマンの攻撃。
そのどれでもない、けれどあの二人に同等のものを覚えた。
「――キリト、ハチマン、アスナ、か」
思わず素の口調になってしまう。どうせ誰もいない、だからいい。
きっと彼らは英雄になる。絶望的な未来が予想されるここで、彼らはきっと誰よりも前にいる。
ならば、私はどうする?
「適材適所。やれることをやればいい。やれないことは誰かにやらせとけ。
だったかナ、ハッチ」
初めて会ったときに言われたその言葉を思い出して、私も自分の拠点に戻ることにした。
そうそう、偽の噂を流した奴へのお仕置きも考えておかないとね。ハチマンに手伝ってもらった意味がなくなる。
「――大忙しだナ、お互いに」
独り言は、誰にも聞こえない。
私は一人笑ってその場を後にしたのだった。
今回はプログレッシブからです。ハチマン、アスナ(顔は見えてない)との初の遭遇。
前に比べ、プログレッシブの内容も挟んでいきます。つまり、アスナは比較的ちょろい。
矛盾が出来すぎないように、なるべくなら無いようにしっかり整合性取れたストーリーでいけるよう頑張りますのでまたまたよろしくお願いします。