長くなると思いますがよろしくお願いします!
――side アスナ――
「……どこにいるのよ、あの人」
あのとき、あのままやられるはずであっただろう私を助けた剣士。そこに一緒にいたアルゴさんも教えてくれない、多分強いプレイヤー。
――強いか弱いかなんて、素人の私にはまだイマイチわからないけど。
あれから幾分か精神的にまともになった私は、あのプレイヤーを探しながら迷宮の攻略に出ていた。
今、この迷宮を攻略している人間には名も知らない、けど話題になってるプレイヤーがいる。
「部隊を率いて進む騎士と盾を持たない片手剣の使い手、そして、私を助けた青い影」
アルゴさんが言うには、私が探す人間はその青い影だそうで(結構なコルを持っていかれた)、その人もこのゲームのクリアを渇望しているらしい。
それは、さらに会ってみたくなる話だった。
私もそうだったから。諦めてからは、精一杯生きて死んでやろうなんて思ったりもしたけど、あの青い影の人は、どうしてリアルに戻りたいの気になった。
……支えが欲しいだけなのかもしれない。けど、でもそれは私をこうやって生かして、前に進ませる。
少なくとも、破滅願望のような何かは今の私にはなかった。
「ん? お前……」
「え……?」
ふと、横から声がかかる。そこには私より背の高い、黒い髪の男の人が立っていた。
程よい長さの髪の毛の頂点からぴょこんと一束の髪の毛……いわゆるアホ毛が立っていて、気だるそうな顔でこっちを見ている。
「……なにか?」
「――いや、人違いだったみたいだ。お前も攻略か?」
「そんなところです。あなたも?」
「まぁ、な」
男の人は少し暗い、まるで死んでるかのような目でチラリとこっちを見て軽く頷いた。こんな状況なのだから、暗い目になるのもわかる。
私だって、少し前まではこの人のような目だったと思う。
攻略組だからって、生き生きしてる人ばかりがいるとは限らない。
「ハチマン、どうしたんだ?」
「どうもこうもしねぇよ。続き回るぞ、いい加減ボス部屋見つけてここを終わらせたい」
声のした方には少し小柄な男の子。二人で回ってるのだろうか、ハチマンと呼ばれた人は私に背を向けて歩き出して、少し進んで止まった。
「……ソロは死にやすいからな、気を付けた方がいい」
それは、忠告のつもりだったのだろうか。私が答えるよりも早くその人は歩き出して、やがて姿が見えなくなる。
他の人とちゃんと話したの、久しぶりだったな……
――side ハチマン――
「……ここか」
アルゴ経由の依頼をこなしつつ攻略を進めること幾日か。ようやくボス部屋が見つかったらしい。
攻略組と呼ばれる俺達前線のプレイヤーは今日こうしてこれから会議を開き、ボスへと挑むわけである。
あの二人の元へ戻る為の第一歩だ。俺も参加しないわけがない。
「――なるほどな」
キリトの姿を見つけて、その近くにあの時洞窟から放り出されたフードのプレイヤーを見つける。
あの時は不意打ちか何かでやられただけで、あいつも攻略組の一人らしい。
アルゴが無駄に太鼓判を押すくらいだから、腕もあるのだろう。だからと言ってあいつの言う通りに面倒なんて見る気はないが。
「で、あれが見つけた一団、と」
攻略組の中で噂される三つの勢力。うち二つは個人のことだからあれだが。
まず一つの騎士のような男が率いる集団、というのはあそこの一派で間違いないだろう。なんとなく、葉山達を思い出す。爽やかそうにしやがって。
もう一つの盾無し片手剣の男は間違いなくキリトだろう。あいつ、強すぎるし。防御を取らないのは俺もだが、キリト攻撃は激しすぎるわ腕力高すぎだわで、俺の知る中で最強のプレイヤーと言える。
もう一つ、青い影。これはよくわからん。目撃例が青い影しかない。っていう変な話で、その影の正体を見たことあるらしいキリトやアルゴが言うにはそいつもとんでもなく強いらしい。何故かニヤつきながら言っていた。
あいつらの御墨付きなら間違いないだろうし、おそらくこの中にもいるだろう。せいぜい攻略に貢献してもらいたいもんだ。
「ハチマン!」
「……おう、一人か」
「見ればわかるだろ。――いよいよだな、ボス戦」
「ああ。ずいぶん楽しそうだな、お前」
「やっぱりゲーマーの血が騒いじゃうんだよ、悔しいけどな。ハチマンだって、やる気があるからここにいるんだろ?」
「まぁ、な。楽しめそうかどうかで言えばまた話は別になるけど」
憎しみばかりが募る。このゲームを初めてしまった自分へ、こんなゲームを作ったあの男へ。
ここにいる連中の中でも俺はおそらくトップクラスに余裕はないだろう。まぁいい、今はやれることをやるしかない。比企谷八幡に戻るためにハチマンを演じるだけだ。
「……」
「ん?」
ふと、フードのあいつと視線(?)が合った。厳密にはこっちを向いただけだからなんとも言えないが。
「……」
「……」
ぺこり。とフードが上下に動いたのを見て俺もそれに倣って会釈する。なるほど、視線が合ったらしい。
と言うか向こうも覚えてたのか。
「はい、みんな注目!」
不意に材木座と間違えそうなくらい似た声が聞こえて、今までの思考を全部吹き飛ばしながらそちらへ視線を向けると、騎士然とした装備をした男が広場の中央に立って注目を集めていた。会議が始まるらしい。
「葉山みたいな材木座か……」
ふとそんなことを思い付いて、その姿に内心笑って、俺はそちらへ意識を向けたのだった。
「
次回ようやくボス戦です!
ちゃんと戦闘描写を書けるように練っておかなくては!ではでは!