君と出会えた僕は、最高のトレーナーになりたい 作:ティファールは邪道
シャリタツとの契約(という名の同行)から一夜明け……。
ソウヤは新たなシャリタツと相棒のコノハナを連れて、住んでいるカナズミシティの近くにあるカナズミの森に足を踏み入れていた。
「コノハナ! 『やどりぎのタネ』の使い方を工夫しよう!!」
ソウヤは興奮気味に、その奇抜な発想を口にした。
「ただ相手からエネルギーを吸い取るだけじゃ芸がない。……あのタネを攻撃と防御に使えないかな?」
コノハナは『コノ!』と力強く鳴いたが、どこか戸惑いも感じられた。コノハナの頭の葉が、ソウヤの指示の複雑さに首を傾げるように揺れる。
「ねぇ、アナタ! もうちょっと分かりやすく言ってちょうだいよぉ! コノハナが困惑してるじゃない!」
ソウヤの頭にちょこんと乗っているシャリタツが、優雅なオネェ言葉で通訳に入った。
「コノハナが言ってるわ。『"攻撃と防御に使う"って、具体的にどうすればいいの? やどりぎのタネは、そんなに瞬時に成長する技じゃないんだけど?』って」
ソウヤは目を輝かせた。
やはり、シャリタツがいると話が早い……。
「ほら、草タイプって植物の成長に作用する能力を持つって言うだろ?
それを使ってやどりぎのたねの体力をすいとる効果と絡み付くような柔軟性を無くして、代わりに成長速度と硬さを高められないかな?って思ったんだ……『ハードプラント』みたいに」
ソウヤは早速、最初のアイディアを説明した。
「イヤ、それ多分カナリ難しいと思うんだけど……?」
「コ、コノ……」
それを聞いたシャリタツは、理解しながらもかなり引いていた……
それを特訓させられるコノハナの心情も推して知るべしである……
「一度やってみようよ?……ってわけでコノハナ! あの大きな岩を相手だと思って、タネを足元にめがけて全力で撃ち込んでくれ! タネが地面に触れた瞬間に、そこから太い根を勢いよく生やすイメージだ!」
-ポケモンセンターにいたハードプラントを使うジュカイン連れたトレーナーにコツ教えてもらっていたから、イメージはわかるハズ!!
-昨日なんか熱心に誰かと話してたのソレダッタノ!?
ソウヤの言葉に驚くシャリタツ……
それを聞きつつも、コノハナは半信半疑ながらソウヤの指示通り「やどりぎのタネ」を放つ。タネは岩のすぐ手前の地面に突き刺さり、
そして
ゴゴゴゴゴッ!!
タネが地面に吸い込まれた瞬間、地面が隆起し、巨大な根が岩の周囲を突き刺すように伸び上がる!
根は岩の表面に刺さり、わずかにひび割れさせた……。
「エエェッ!? ホントにデキタワ!?」
それを見て驚くシャリタツ……
コノハナも驚きながらも喜んでいるのか嬉しそうな顔で声をアゲル……
「コノハナも喜んでるわよ! 『この技すごい! 地面の下で何かと繋がった感覚があった!』だって!」
シャリタツが興奮してソウヤの頬をペチペチ叩いた。
ソウヤはガッツポーズをした。
「やったな、コノハナ! これが『ハードタネアタック』だ!」
「ちょっとマテやコラ」
「ハナハナハナ」
嬉しそうに技名を言うソウヤに、かなり真顔で止めるシャリタツとコノハナ……
うん、気持ちはわかる……さすがにその名前は無い……
「?何?」
「何?じゃないワヨッ!?ナニその名前ッ!?ダサすぎよっ!?」
「ハナナッ、コノハナノコノノハナハナハッ!?」
「ほらッ!?コノハナだって『ソウヤ、その技の名前はやめようッ!?』ってイッテルワヨ!?」
「え、そんなにダサい……?」
「ダサすぎよ、プロポーズ直前に指輪を忘れてあたふたする男と同じレベルよ」
「滅茶苦茶流暢に喋ってしまう程酷い!?」
コノハナもうんうんと頷く始末である……。
「え、えっと……と、取り敢えず名前は一度保留にして、次進めようか……?」
-それが良い
そう思った二匹は頷く……。
気を取り治して、ソウヤは話を進めることにした……。
「次は防御への応用! コノハナ、さっきと同じように、自分の身体の足元に『やどりぎのタネ』を全力で展開してくれない?今度はそうだな……吸収機能と柔軟性の代わりに芽吹く速さと成長速度を高めて」
コノハナは、ソウヤの指示の意図を掴みかねて再び戸惑いの鳴き声を上げた
「ちょっとソウヤ! 今度はなによ! 自分の足元にタネを撒いてドウスルのよ? 自分で足を絡めてどうするの……あら?」
シャリタツが鋭くツッコミを入れようとした、その時だった。
「ガアアアアアア!!」
森の奥から、けたたましい咆哮が響いた。同時に、草木をなぎ倒しながら、大きな影がソウヤたちに迫ってくる。
現れたのは、全身が鋼の如く硬そうな甲冑に包まれた、四足のポケモン……
てつヨロイポケモンのコドラだった。その眼は爛々と赤く光って、怒り狂っていることが見て取れる。
「きゃあああぁ! なによ! アタシ、こんな大きなポケモンと戦いたくないわよ!」
「コドラ!?何でこの森にいるの!?」
シャリタツはソウヤの首に必死にしがみつき、ソウヤもこの森にいないハズのコドラを見て驚きの声を上げた。
しかも、そのコドラは本やテレビで見たものより一回りどころか二回りほど大きな印象があった……
そのコドラは、ソウヤたちを獲物と見定めたように、巨大な頭を向けて、一直線に向かってきた。
アイアンヘッド……
唯硬い、それだけ故の単純でありながら移動による衝撃をそのまま与えられる、まさに"轢き飛ばす"ことに特化したようなそれがソウヤ達向けて迫ってきていた……
「!!コノハナ! やどりぎのタネを、自分の足元に、さっき言った様にありったけ撃ち込めぇっ!!」
コノハナは驚きと恐怖に震えながらも、ソウヤの指示通り、自身の足元の地面に、「やどりぎのタネ」を高速で大量に植え付けた。
ドゴオオオオオン!!
コドラの突進は止まらない。巨大な身体が、鈍色に耀く頭と共にコノハナ達の元へ到達しようとする……
しかし、その瞬間コノハナの足元の地面から、無数の太い根が瞬時に生え上がり、コドラの足首や顔の周囲をググッと締め付けた!
「へぇ?!」
シャリタツが声を上げた。
根に動きを止められたコドラの『アイアンヘッド』は、コノハナの数センチ手前でピタリと止まった……。
「今のうちに逃げるぞっ!!」
それを見たソウヤは、瞬時にコノハナを抱えて逃げ出すのであった……