公安対魔特異課のヒーラー   作:水滴

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週一投稿とは週のどこかで一回、いい感じに投稿することを指します。
つまりこれも週一投稿です。


8. 解体現場

 

「ここ座るね?」

 

 先週の初遭遇から一週間後。言った通りに僕は二道へと一人で来ていた。曜日こそ違うが先週同様、仕事の昼休憩だ。

 モンちゃんも誘ったが、ニヤニヤした顔で断られてしまった。どことなくムカついたので後で報復をしようと思う。

 さて、それよりも目の前のレゼだ。現在僕は昼食として頼んだ予想通り本格的だったチャーハンと烏龍茶を片付けた後、食後のコーヒーを飲んでいるところだった。レゼはバイト姿のまま向かいに座ってくるというなかなかの無法ぶりを発揮している。

 

「不思議なくらい客は来ないけど、流石にサボりはまずいんじゃ?」

 

「マスターで足りてるから良いんですよ〜」

 

「バイトの意味…」

 

 レゼの向こうに見えるマスターはため息をつきながらコップを拭いている。こんな不良バイトをおいてくれるなんて、心が広いマスターだ。

 いや、レゼがいるだけである程度人が来そうだしそういうこと?現に僕がまた来た理由は半分くらいはそれだしね。

 もう半分はここの料理が美味しかったのと前回飲まなかったコーヒーを飲むためだ。

 まだ最初の量から7割ほど残っているコーヒーを飲んでいるとレゼがこちらに話しかけてくる。

 

「お仕事はどうですか?」

 

「一般人に話して良いわけなくない?」

 

 前回の公安デビルハンター襲撃事件からより一層情報の秘匿に気をつけるよう通達されている。なので、誰であろうと一般人相手に関係のない仕事の内容は話せないんだよね。

 

「えぇ〜?いいじゃないですか〜」

 

 レゼは不満げな「つまらない!」とでも言いたげな顔だ。

 どうやら公安デビルハンターの最近の仕事について知りたいようだ。といっても、興味があるからというよりは任務のための情報収集のためだろう。

 前に二道に来た時もなんか好意的だったし、特異課の顔と名前は割れていると見ていいはずだ。見た目からして公安のデビルハンターなのがバレバレなのもあると思うけど。自分で考えていて悲しくなってくる。

 

「ちょっと前になんかすごい襲撃があったんでしょ?そんな大変なとこ私ならすぐにでも辞めたいな〜って」

 

 そう言いながら上目遣いでこちらをレゼが見てくる。かわいい。

 

「理由なら助けになりたい人が多いからだよ。公安に好きな人が多いんだ」

 

「好きな人……女の子ってこと?」

 

 「やるねぇ〜」とニヤニヤとこちらに言葉を投げかけてくる。今日こんな感じの反応で返されるのは2度目だ。

 でも不思議とムカつきはしないね。

 

「男でも女でも、人として好きな人だよ」

 

「なるほどー。……公安のデビルハンターにチェンソーの悪魔になれる人がいるって話があるんだけど、それも話せない?」

 

 「悪魔になれる人間なんて噂初めて聞いたの」らしい。どの口が言うんだ。

 デンジの情報が抜かれてるから日本に来てるはずだし、内部のより細かい情報が欲しいのかな?でも答えは決まっている。

 

「難しいね、あの人は結構重宝されてるから」

 

 これはマジだ。具体的には赤髪のぐるぐる目女が常時監視するくらい。

 ……マキマは僕のことも常時監視してたりするのだろうか?今度適当な野鳥に手を振ってみようかな。

 

「ってか、そんなこと知ってどうするの?」

 

「今は自分探し的な感じだから、色々なことに触れてみてるの」

 

 そういう感じか。家出少女的な設定でやってるのかな?

 

「なら、デビルハンターは将来の道としては勧めないよ。向いてる人でも長くは持たないことが多いし」

 

 「知り合いにいる分には心強いかもだけどね」と付け加える。

 この世界一週間外出てたら1日は悪魔が同じ地区に居るって言えるくらいには悪魔が出現するからね。知り合いにデビルハンターがいるとそれだけで生存率は上がるだろう。

 

「じゃあ安心、もうミミ君は私の友達だもんね」

 

「早くない…?僕結構友達の敷居高いつもりなんだけど」

 

「知りませ〜ん。もう飛び越しました」

 

 頬杖をつきながらレゼは楽しそうに話した。

 あ〜かわいい。でもこの子その気になれば簡単に僕のこと殺せるんだよな。

 

「そういえばミミ君は今何歳?」

 

「…19だね」

 

「おお〜、年上さんでしたか」

 

 オーバーに驚いたような反応だ。かわいい。

 

「大学は?行かないの?」

 

「いいかな、デビルハンターもかなり慣れてきたし」

 

 目線をコーヒーが残り3割ほどになったカップに落としながら答える。

 大学は前世で行ったしね。2度目も面白そうだけど、こっちじゃ講義中に悪魔が特別講師として殺しに来そうで嫌なんだよな。

 

「そう言う君も、この時間にこんなとこにいるけど学生じゃないの?」

 

「そのうち通い始めるかも」

 

「高校?大学?」

 

「高校」

 

 ……悪魔の心臓を持つ人間って老化しないみたいなんだよね。まぁ、何歳だとしても美人は美人だ。レゼが何歳かはどの道わからないから…。

 それに、武器人間になってから数年の可能性だってある。

 

「高校かぁ…制服が似合うだろうね」

 

「その時は見せてあげます」

 

「まぁ…楽しみだね」

 

 レゼは何が面白いのかニコニコしている。

 実際のところ、制服姿は見たいんだよね。ついでに同じ学校にデンジも通ってもらえたら完璧だ。

 

「そろそろ時間だ。午後も働いてくるよ」

 

「お仕事頑張ってくださいね」

 

 マスターを会計のために呼びながら僕は席をたった。僕が席を離れた後に残ったカップを片付けるためにレゼもサボりをやめたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

「また来てくださいね〜」

 

 背中からかけられる声に返事をしながら扉の外へ出る。するとそこには少し前に別れた時よりニヤニヤした顔の怪物娘が居た。

 

「とても楽しかったって顔だね」

 

「そろそろどつくよ?」

 

 モンちゃんは色恋の匂いがすると面倒なタイプという認識だったが、これはかなり面倒なタイプに認識を修正しておくべきだろう。

 

「午後もこの辺りの見回りだよね。ね!」

 

 僕の脅迫にそろそろマズイと感じたのかモンちゃんは露骨に話を逸らしている。今週に入ってからは僕達の業務も普段通りに近くなってきている。

 対魔特異課への襲撃から一週間と少しが経って、人数の減った特異課への指導もおおよそ終わったらしい。そのため、以前よりは減っているが人が戻ってきているのだ。それはつまり、そろそろヤクザ連中との決着の日が来るということでもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます岸辺先生」

 

「お前に先生と呼ばれるほど何か教えた覚えはないがな」

 

 二道への2度目の来店から2日後、早朝から特異4課は神奈川の都会の中に立つビルの前へと集められた。

 僕の眼前に立つのは岸辺先生。左頬に口から裂けたような傷を縫った跡を持つ、もう引退してもいい年齢でありながら未だに現役のやばい人だ。

 

「ここですか、ヤクザ連中が立てこもってるのは…」

 

「……どうせお前は情報を頭に入れて来てるんだから、俺とお話なんてせずさっさと他の4課と一緒に待機しろ」

 

 「時間の無駄だ」とバッサリ切り捨てられてしまった。お話は無しらしい。僕の後をついて来ていたモンちゃんはそれを見て「こわー」と岸辺先生からの歴戦デビルハンターのオーラを感じ取ったのかビビっている。

 

「すごいね、人間にも怪物がいたんだ」

 

 岸辺先生の言葉に従って移動しているとモンちゃんがそう話しかけて来る。

 

「結構お年を召されてるけど、公安最強だからね」

 

「えぇ〜⁉︎私とミミなら勝てるかなぁ?」

 

「…どうだろうね」

 

 特異課には長く居る方だが。岸辺先生の本気の戦いは見たことがない。契約してる悪魔も不明だしあまりにも底知れない。

 岸辺先生とモンちゃんにやり合わせて僕が後ろから支援しても何故かモンちゃんをすり抜けて来て僕がさっさと殺されそうだ。

 

「数少ない悪魔が敵対すべきじゃない人間の内の1人だろうね」

 

「私も敵対したくないな」

 

 いい子にしてれば殺されないよ……多分。

 そうして歩いていると地下駐車場の入り口付近へと着いた。今は入り口を閉じているが、中にはゾンビになった人間が敷き詰められているらしい。

 ゾンビの悪魔はデンジが最初に殺したんじゃないのか⁉︎殺されたらこの世に影響は残せないんだろ⁉︎じゃあ、なんで殺された筈のゾンビの悪魔の手下であるゾンビがこんなにいるんだ⁉︎

 そんなの誰かがゾンビの悪魔の死体を使役して保存している場合以外ではあり得ないじゃないか‼︎

 一体誰マが、ゾンビの悪魔の死体を持っているんだろう?

 まぁ、つまりそういうことだ。死体はマキマに保持られている。

 

 地下の入り口付近には他の特異4課が待機していた。と言ってもアキくんと姫野さんにコベニちゃん、そこから離れて天使の悪魔くんが居るだけだ。他にも特異4課の魔人・悪魔が参加するらしいが別口から投入されるらしい。

 荒井くんと都築さんは体が回復した後公安を退職した。荒井くんはデビルハンターには向いていないのが目に見えてたのでやめて正解だと思う。都築さんは民間へ行くとの話だった。

 デンジとパワーちゃんは一階入り口からエレベーターで登って先に内部制圧だ。僕達も地下駐車場が片付いたら上へと登っていくという段取りになっている。

 

 それはそれとして天使の悪魔くんだ。すげぇ、特異課にはいなかったタイプの面の良さだ!

 

「見るからに天使の悪魔の君、今日はよろしく」

 

「…えぇ?そっちはそっちで知り合いだから話しかけられないと思ってたのに……」

 

 天使の悪魔くんは首が痛い系男子のポーズでダルそうにしている。

 

「君がもしかして噂の特異4課のイカれてはいないけど1番変なやつ?」

 

 「なんかそんな感じがするよ」と僕を一瞥した後すぐ別の方向を向いて天使の悪魔くんがぼやく。そんな噂をされてたのか、心外だな。

 今の特異4課のメンバーなんてアキくん以外みんなどっか変だろ。僕が1番ってわけじゃない筈だ。

 

「私達には挨拶しないの〜」

 

 そう僕に姫野さんが声をかけてくる。傷も完全に治ってメンタルも万全のスーパー姫野さんだ。話だと幽霊が死ぬ可能性を考えて新しい悪魔と身体以外の代償で契約したらしい。

 余談だが、退院後にアキくんとデンジ、パワーちゃん、モンちゃん、姫野さん、僕で飲みに行った時はゲボこそ吐かなかったがまた不意打ちキスをされた。僕は彼女を許さない。

 あんたアキくんに惚れてるんだからもうちょっとキスを出し惜しみなさいよ。

 

「おはようございます、姫野さん。アキくんとコベニちゃんもおはよう」

 

「おっは〜、みんなおっは〜」

 

 僕に続いてモンちゃんも挨拶をする。モンちゃんに変な挨拶を教えた奴は誰だ。

 アキくんはかなり久々の大規模作戦を前に集中しているのか口数が少ない。コベニちゃんは荒井くんと一緒にやめなかったことを後悔しているようだ。

 

「地下駐車場にはゾンビしかいないって話なので、もはや同士討ちの方が脅威ですね」

 

「だね〜」

 

 姫野さんがゆるい感じで言葉を返してくれた。

 今回は僕ら以外にも魔人と悪魔が参加する。天使の悪魔くんはまだ人間に興味がないという点で安全だが、他の方々は虫の居所が悪くなくても人間に危害を加えかねない凶暴性を持つ奴もいる。

 ゾンビは数が多すぎるだけで手こずることはないが、そういう意味でフレンドリーファイアが心配だ。

 

 

 

 

 

 

 ゾンビは血がなくても動くので体をバラバラにしないといけないのが面倒だ。

 作戦が開始されたが、やはり地下駐車場は非常に楽な戦場になった。ゾンビに作戦はなく、ただこちらに噛みつこうと近寄って来るだけなので蹴散らすだけだ。

 こう考えている間もグラディウスで一体のゾンビの両腕を肩から切り飛ばして無力かした後、首を刎ね飛ばせている。

 モンちゃんの方は実物のゾンビを観察しながら両腕を結晶でできた鉤爪に変化させてゾンビのバラバラ死体を作り続けていた。

 

「うわっ」

 

 ゾンビをバラすマシーンと化していたら横合いからゾンビの頭が飛んでく来たので、グラディウスで弾く。

 

「お、悪りぃな」

 

 少し離れた場所から打撃音に混じって謝罪の言葉が飛んでくる。顔をそちらへ向けるとそこではペストマスクのような仮面の上に白いフードを被った不審者がゾンビを殴るだけでミンチを作っていた。

 

「暴力の魔人さんか、大丈夫ですよ」

 

 そう僕が返すと「サンキュー」と言ってまたゾンビを弾けさせながら暴力の魔人が離れていく。

 

「強いね」

 

 元の暴力の悪魔がかなり強かったからか魔人になった今でも悪魔の中ではかなり強いと言えそうな暴れっぷりだ。

 

「今日はいろんな怪物がいるね」

 

 近づいて来たモンちゃんも暴力の魔人の嵐のような暴れっぷりに興奮している。

 周囲を見ると暴力の魔人がいるあたり以外にも、ゾンビがメチャクチャにされているエリアがあるようだ。他の悪魔、魔人達も好きにしているらしい。

 

「これはそろそろ片付きそうだね」

 

 周囲には立っているゾンビよりバラバラだったり原型をとどめなくなっている死体の方が多くなって来ている。

 

「この間に逃げればいいのにね、どうせ勝てないわけだし」

 

 モンちゃんの言葉にグラディウスのグリップを握り直しながら少し考える。前回の襲撃で対魔特異課の面々が銃での不意打ちに対応できなかったことから、銃と蛇の悪魔とサムライソードとでなんとかなると考えているのだろうか。

 

「まぁ、なんにせよ殺すだけだね」

 

 対魔特異課の襲撃のツケは連中の体を穴だらけにすることで払ってもらおう。

 

 

 

 

 

 




週一投稿だと思っているのでこれは週一投稿です。
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