海王vsノアはイベント戦だ。
本来のノア攻略は道中で暴走した防衛システムとかの相手をしなきゃいけない筈だったのだが、此方ではノトスの権限で全部無力化出来てしまうのでここら辺は全部スキップ出来た。そしてジュニアの確保が終わるといよいよノア再起動で浮上し、海王との大決戦フェイズになる。
ここから急にアクションゲーになる。
というかRPG系の作者はRPGばかりの状況に飽きてちょくちょくアクションとかミニゲームとか突っ込み気味。別に求めてないんだよなぁ、そういう味変は……という意見がユーザーからまあまあ出て来る。でも老舗のRPGの味って大体この手の唐突なミニゲームとかジャンル変更で味変するんだよな……。
なんでだろうね?
まあ、このフェイズに持ち込めた時点で勝ちよ、勝ち。海王はぼろぼろ、ノアは自己修復可能で性能もアップデート可能。使える武装も反則なものばかりで基本的に海王に対して有利に戦える。だってこの船、もしも海王が暴走した時に海王を倒せるように作られてるからね。
天父によって。
考えとしては正しいけど人間性はクソの一言に尽きるよね。
だがこれはウィニングラン! 後は勝つだけの勝負。俺はば、と手を振るって指示を出す。
「さあ! やれノトス! お前の操舵を見せつけるチャンスだ! 海王をちゃんと送ってやるんだ!」
「いや、おぢさん操舵の腕前はふつーよ?」
ノトスを凄い目で見る。ノトスがいやいやいや、と手を振る。
「おぢさんは艦長……船長であって指揮する立場なの。航路決めたり寄港先決めたり。というかノアは航路設定すれば勝手に動くから舵手も飾りに近い名誉職だし。おぢさん、軍団戦ならともかくタイマンだとそんな強く……」
「マジ?」
マジで言ってる?
「じゃあノア、自動戦闘モードとかない?」
『申し訳ありません、当艦に元々あったシステムになりますが、邪神チクタクマンによって蓄積データがリセットされた影響で多くのシステムに未だエラーを残しています。アレより長い時が経っていますが、当艦のシステムが稼働していた時間はかなり短く、当時の別れから再会まで主観時間としてはあまり経っておりません。数時間ぶりですね、スペシャルゲストの方々』
電子頭脳さんもまあ割と個性的になっちゃって……いや、そんな感動してる場合じゃねぇわ。
「え、じゃあもしかしてまともにノアを動かせる奴いないの?」
「はい」
『はい』
終わった。
膝から崩れ落ちて顔を手で覆うとノアが震えた。
『ダメージ。自動障壁出力残り73%』
「あ、攻撃されてるねぇ、みこっちゃん」
「他人事みたいに語るの止めねぇか!!」
ブリッジから外を見ると海王が天空海から見下ろすように水弾を放って来ていた。それがノアが自動展開するバリアと衝突し、バリアを削っている。まだ海王はちょっと控えめって感じのモーションだから余裕は……いや、余裕はないな。
「え、待って、じゃあノア操縦できる人がいないのに手動で戦わなきゃいけないの!? 無理じゃね?」
いっせーのせっ!
全員一斉に遺書を取り出す。
「そう言えばこの前飲み会でビアガーデン潰した時の話なんだけど」
「開幕顔面ストレートって感じの話の入り方なんだけどそれで?」
「いや、その時なんかゲームしようって話をしたんだけどさ、ボドゲならともかく普段から一緒に遊べるような道具を私達が持ち歩くわけないじゃん? でもさ、基本的に遺書だけは皆持ち歩いてるというか標準装備っしょ? だから遺書でなんか遊べないかなぁ、って話になってさ」
酒クズが床にぱぁん! と遺書を叩きつけた。
「遺書メンコって遊びを編み出したって訳」
「イカレてんのか? やるか……」
「おぉっと、ワシの論文遺書と戦うつもりかな? 遺書の内容を未発表の論文で固めたからワシの論文は分厚いぞぉ」
「おぉっと、僕の電子遺書も中々のものだよ。見てこのハードディスク。そう、これは僕の遺書だ。重くて、硬くて、最強だ。つまり物理的に最強の遺書だ」
「勝てるか? 俺のバーニング遺書に」
「現実逃避止めなさいよアンタら」
エストってこういう時逆に冷静になるタイプなんだね。さっそく遺書メンコで誰の遺書が最強か決めようかと思ったら海王からの攻撃が再び叩き込まれる。ついにバリアの強度が30%以下にまで落ちてしまった。いやぁ、マズイなぁ。ウィニングランだった筈なのになぁ。
チクタクマン、死んでも迷惑な奴だよ。嫌がらせが的確過ぎる。
『おーい、尊ー。さっきから不穏な話しか聞こえてこないんだが? 後遺書メンコはデコると盛り上がるぞ』
「遺書デコはちょっと無かった発想だったなぁ」
というかマスター界隈で流行ってるのか遺書メンコ? いや、そんなこと考えている場合じゃないだろ。このままネタまみれのまま地球が終わるのはちょっと嫌だぞ。もうちょっと真面目に攻略方法を考えないとならないのだが……戦力的には詰みだ。
どうしたもんかなぁ、と思っているとノアからの解答が来た。
『―――艦全体のアップデート完了。変形できます』
「今なんて?」
衝撃。ノアがもう1度揺れる。外を見るとノアが展開していたバリアが割れ始めていた。次はもう耐えられない、直撃になる。かなりの強度を誇るノアであろうとも、海王クラスの生物であれば破壊は出来るだろう。
ふぅー……。
で、変形ってなんですか?
『これよりノア・バトルモードへと変形します』
「あぁぁぁぁ、脳内でツッコミ入れてる間に変形し始めやがったああああ―――!」
海上を漂う箱舟が変形し始める。甲板が、艦橋が、全体が分離、再構築を繰り返しながら海上に立ち上がる様に巨大な人型へとその姿を変形させる。ブリッジ内は重力制御が働いているのか、ノア全体が凄い動いているのにその衝撃が此方へと何も来ない。
「ほ、本当の超巨大ロボットだ、本物の……!」
「見ろ! サイズは観測史上最高サイズになるぞ!!」
「ロマン回路がぎゅんぎゅんするねぇ!!」
技術屋トリオが大興奮する中、ノトスが1人頭を抱えて故郷の変貌に頭痛を覚えていた。そんな俺達のリアクションを一切気にすることなくノアは巨大な人型決戦兵器への変形を完了させた。ヴゥン、そう音を立ててたぶんカメラアイに光も灯った。お約束だもんね。
そんなもん今は求めてねぇんだよ。
『変形完了。ノア・バトルモードへの移行を完了しました。検索データから人型決戦兵器への変化は勝利フラグ。人と機械が力を合わせると焔となって最強になる。人機一体となると無敵等というデータがあります。また、足りない分は勇気で補えるというデータが提出されており、ここから人類の勝利率は90%を超えます。勝てます』
ふぅー……。
どうしようかね、この始末。誰ですか、アニメやゲームの理屈をリアルに持ち込ませた奴は? お前か博士? 違う? ジャック? え、ラムシン? マジで? その見た目で勇者ロボとかスパロボ好きなの? マジで? そっかぁ。
「……」
「無言で銃を口に咥えないで」
『さあ、今こそ人機一体となった力を―――』
轟音と衝撃。
変形したノアが弾き飛ばされた。海面を何度も跳ねる様に吹き飛ばされ、ブリッジ内部も一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図となる。飛んで行く金魚鉢とジュニアをノトスが最優先でキャッチし、確保するのを見て流石だなあ……と感心している間に俺が床に叩きつけられる。
痛い……。金魚鉢の中のジュニアは目を回してる。いや、ぴぃぴぃ鳴いて母親を呼んでる。アレを今から泣かせるのかぁ……。
『操縦を』
「オートパイロット!!!!」
『仕様にありません。スーパーロボットは人が操縦して成立します。パイロットを要求します』
「ラムシン! 今は自殺を考慮してる場合じゃないからその銃を仕舞わんかい!!」
「もっとまともな教材はなかったのかよお!!」
「あはははは、ウケる」
「面白くない!! ウィニングランだった筈なのに……!」
今の一撃でノアに多少のダメージが入った。まだまだ持ちそうだがこれ以上遊んでる余裕はない。真面目に打開策を考えなくてはならないが、いきなりスーパーロボットの操縦を任されても困るに決まっている。
もっと、こう。
「慣れ親しんだパッドとかコントローラーがあればワンチャン行けるんだけど……」
「あるよ」
ジャックが懐からすっ……とパッドを取り出した。ごめん、解ったよ。優秀な技術者って基本的に全員頭がおかしいんだな? 方向性がおかしいけど全員等しくどっか変なんだな? なんでノアにゲームパッドなんて持ち込んでるんだ?
「しかもこれが救いになりそうなのが一番気に入らねぇ……!」
ジャックがパッドを投げ渡してくるのを片手でキャッチし、それを勢い良く勇者の如く掲げる。ノアによるパッドのスキャンが走り、システムが接続される。天空海から見下ろしてくる海王が見える。海王の周囲の海が渦巻き圧縮され、それがレーザーの様に複数放たれて来る。
パッドを見る。
スティックを軽く弾きつつダッシュっぽいボタンを押し込む。
降り注ぐ水レーザーを瞬間横ダッシュで回避する事に成功した。
「ふぅ―――」
滅茶苦茶覚えのある操作感だわ。えーとこれがダッシュブースト、左武器に右武器、サブウェポンにジャンプ、これで飛行可能、と。はいはいはいはい。
滅茶苦茶触った覚えあるわこれ。
すぅ……と息を吸い込んでから近くの椅子に座り込み、パッドを持ち慣れた形に持ってゆく。
「良し、やるか」
ノアロボvs海王……ファイッ!