聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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投稿主です。

投稿がいつもより遅くなってしまい申し訳ありません。現実(リアル)の方が大分バタバタして小説を書く時間があまり取れませんでした……。

なお、この状況が続きそうなので、今回のように投稿頻度が二週間に1つのペースになりそうなことをお伝えしておきます。(完成し次第投稿していきます)


52話 『奇跡の水』の正体

「うわぁ~ん!エレンく~~~~~~ん!!!」

 

「ぐふぇっ!!??」

 

 

 リヴェリアと別れたエレンは何(・)故(・)か(・)寝(・)た(・)筈(・)な(・)の(・)に(・)重(・)い(・)体(・)を引き摺りながら何とか本拠(ホーム)へと帰ってくることができた。エレンが本拠(ホーム)の扉を開けると主神であり、エレンの創造神(母親)に当たるヘスティアが猛ダッシュで突進してきてエレンの胴体へとダイブ。

 

 本来なら恩恵(ファルナ)を授かっているエレンなら大したダメージではなかったが、疲れ切っているエレンの体にとっては中々大きなダメージとなっており、ヘスティアのダイブを受け止めきれず、そのまま倒れこんでしまった。

 

 

「本当にすっごく心配したんだぞぉ!ボクが目を覚ました時にはベル君とエレン君はいないし、朝になって帰ってきたベル君はなんかボロボロの状態だし───」

 

 

 エレンに抱き着いた状態で事の経緯を話してくれた。如何やら、あの後のベルは無事に?本拠(ホーム)に帰ってこれたようだったが、何故かボロボロの状態で帰ってきたという……。

 

 

「……帰ってきたか、エレン」

 

「あっ、アルテミス様」

 

「……」

 

「?」

 

 

 エレンがヘスティアに抱き着かれていることで身動きが取れない状態になっていると、玄関の奥からエレンにとってもう一人の創造神(母親)に当たる女神アルテミスがやってきた。

 

 やってきたアルテミスは無事に帰ってきた我が子の無事を喜びの表情を露にする一方で、何処かとても気まずそうな雰囲気を醸し出していた。そんなアルテミスの様子がおかしいことに気が付いたエレンは首を傾げると、彼女はエレンの元へと近づき彼の方に手を置いた……。

 

 

「……エレン。誰がなんと言っても……お前は私の子供だ」

 

「アルテミス様?」

 

「安心しろ。私はお前の味方だからな」

 

「アルテミス様!?」

 

 

 アルテミスの意味深な発言にエレンは大いに混乱した。

 

 エレンを安心させようと無理をして作ったであろう笑顔を浮かべるアルテミス。未だにエレンに抱き着いて離れようとしないヘスティア。状況が全く呑み込めていない状態のエレン。

 

 エレンはてっきり昨夜の出来事が既にばれているのでは?と冷や汗を滝のように流しながらアルテミスに促されるがまま……さらには『重要な話がある』と言って本拠(ホーム)に中へと入った。本拠(ホーム)の中にはベル達の姿があったが、エレンの姿を見るやあたふたする始末。

 

 

「(───いや……、まさかっ!?)」

 

 

 エレンの頭の中には昨夜の出来事が浮かび上がっていた。内容は詳しくは言えない───が、敢えて口にするならば“処女神の精霊としてあるまじき行為”と言ったところであろうか……。

 

 しかも、相手は他派閥の副団長。さらに王族妖精(ハイエルフ)というおまけのトッピング付きである。他派閥同士のそのような関係はどう見繕っても『特大の爆弾要因』。最悪の場合は派閥同士の抗争に発展する原因にもなると聞いたことがある。

 

 

「(やばいやばいやばいッ!!?何でもいいから弁解をしないと───ん?)」

 

 

 少なくとも、昨夜の出来事は『事故』であったと説明するべくエレンは今までにないほど頭をフル稼働させていると、アルテミスに促され、応接室へと入ると、そこには一(・)柱(・)の(・)男(・)神(・)……と、天(・)井(・)か(・)ら(・)吊(・)る(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)一(・)名(・)の(・)女(・)性(・)の姿が目に入った。

 

 

「やぁ、エレン。お邪魔しているよ」

 

「えっ?ミアハ様……?」

 

「エレンさ~~~~ん。助けてくださ~~~い!!!」

 

「……え~~~と、確か……ランテさん、でしたっけ?」

 

 

 応接室にはヘスティアの神友である【ミアハ・ファミリア】の主神ミアハ。

 

 そして、ミノムシのようにロープでぐるぐる巻きにされ天井からぶら下がっている【アルテミス・ファミリア】の団員のランテの姿があった。

 

 

 

***

 

 

 

「……え~と、話って何ですか……?」

 

「「……」」

 

 

 『重要な話がある』ってことで応接室にやってきたのはいいが、当の本神(ほんにん)達はとても言いにくそうな表情をするだけで一向に話を切り出す様子はなく、その様子を近くで見ていたミアハが『やれやれ』と呟くと、透明な液体が入った瓶を机の上へと置いた。

 

 

「……これは?」

 

「ふむ。これは『奇跡の水』と言ってな。結論から言えば、この水にはお(・)主(・)の(・)出(・)汁(・)が(・)入(・)っ(・)て(・)お(・)る(・)」

 

「ふむふむ──────へっ?」

 

「そこで吊るされている娘のお陰でもあってのことなのだが、お主が入った風呂の残り湯から『奇跡の水』と同じ成分が検出されてなぁ」

 

「──────」

 

「しかも、この『奇跡の水』が美容や健康にとても良くてな。女性を中心に、現在オラリオで大流行中になっておる───主に、飲(・)料(・)水(・)と(・)し(・)て(・)……」

 

「ごふっ!(謎の大量の吐血)」

 

「「エレン(君)!!」」

 

 

 ミアハから衝撃の事実を聞いたエレンは口から大量の血を吐き、床に倒れこんでしまった。

 

 無理もない。何しろ、自分の煮汁(ダシ)入りの水が大勢の人達に飲(・)料(・)水(・)として大流行していると聞かされて、嬉しいと思えるような人間が、この世界に存在するのだろうか?

 

 エレンは、駆け寄ってきたヘスティアとアルテミスに介抱されながら、この事実に辿り着いた事の経緯をアルテミスやヘスティアから気まずそうな表情で聞いた……。

 

 

 

***

 

 

 

「むむむぅ……」

 

「……何をやっているんだ、ランテ?」

 

「あっ、団長! 見てくださいよ、あれ!!」

 

「ん?あれは……」

 

 

 これは命が本拠(ホーム)を抜け出す少し前のこと。【アルテミス・ファミリア】の団員であるランテが通路の角に隠れているのを団長であるレトゥーサと数名の団員が発見し、ランテに声を掛けていた。

 

 そして、ランテが『見てほしい』と言って通路の先を指をさし、レトゥーサ達が身を乗り出して通路の先を覗き込んでみると……。

 

 

「……あれは、【ヘスティア・ファミリア】の団員達ではないか?」

 

「ですね。如何やらお風呂上がりのようですが……」

 

「ここのお風呂、どうやら『極東】のお風呂を参考に作られているようです」

 

 

 ランテの指をさす方向にはお風呂上りの【ヘスティア・ファミリア】の男性団員達の姿。極東風風呂でさっぱりとした彼らの様子をじーと観察をしていたランテだったが───。

 

 

「……おかしい」

 

「ん?何か言ったか、ランテ」

 

「気が付かないんですか、団長!!私達も同じ造りのお風呂に入っているのに……入っているのに……何であんなにツヤツヤになっているんですか!!!」

 

「「「……」」」

 

 

 そう。『竈火の館』(ここ)に来て感じた最大の疑問───それは、『男性側のお風呂って特別なものなの?事件』である。毎回お風呂から上がってくる男性陣の肌や髪の毛が女性陣が羨ましがるレベルで艶々になってくるのだ。

 

 無論、男風呂は女風呂と同じ造りとなっており、湯も同じ所から引いてきているので差なんて殆どない。ベル達に尋ねても特に何も手を加えていないし、入浴剤なんて物も使っていないと言っている。

 

 今のお風呂に不満があるわけでもないが、ベル達のお風呂あがりの肌と髪の潤いは女性が羨ましがるレベル。出来ることなら自分達もその恩恵を受けたいと思っていた彼女達だったが、そこに一人の勇者(おろかもの)が立ち上がった。

 

 

「団長、私……逝(い)ってきます!」

 

「ランテ?」

 

「見ていてください!私の『冒険』を」

 

「ランテ!?お前は一体何をするつもりだ───おい、待てぇ!!!」

 

 

 意味深な発言を残したランテはレトゥーサの静止を振り切り、走り去っていった。その場に残された彼女(レトゥーサ)達は必死にランテの後を追っていったが、彼女がとある場所に入り込んでしまったことで後を追えなくなってしまい、急いでアルテミスの元へと向かった。

 

 

 

***

 

 

 

「お、おぉ~。これが……男(・)湯(・)!!!」

 

 

 そう。ランテが入り込んだのは女性湯ならぬ男性湯であった。この時の男湯はベル達が入った後の状態だったので無人状態。そのお陰でランテは容易に侵入でき、何か手掛かりがないか辺りを捜索したのだが───。

 

 

「むむぅ。何も手掛かりがありませんねぇ~。お風呂の造りも女風呂と同じですし、特に変わったものは……」

 

 

 周囲を見渡しても、特に怪しいものが見つからなかったランテは最後の手掛かりとして、『湯船』に目をつけた。男湯も同様に檜で造られたものになっており、檜風呂にはまだ入るには十分な量の湯が残っている状態だった。

 

 

 

 ならば───。

 

 

 

「【アルテミス・ファミリア】のランテ! 行っきまーす!!」

 

 

 身に着けている服をランテは何の躊躇いもなく脱ぎ捨てると、そのまま檜風呂の中へとダイブ。ベル達が上がってそんなに時間が経過していないので入るには十分な量と温度が残っている湯はランテが飛び込んだことで大きな波となって風呂から溢れ。辺りには真っ白な湯気が立ち上っていた。

 

 

「…………」

 

 

 そして、飛び込んだランテはというと、さっきまでのハイテンションがまるで嘘だったかのように静かになり、肩まで湯舟に浸からせた状態で完全にリラックスしていた。表情も完全に蕩けきっており、もはや当初の目的の事なんてすっかり頭から抜け落ちていた。

 

 

「気持ちいい~♪」

 

「ほぉ?そんなに気持ちがいいか?ランテ?」

 

「はい!アルテミス様も一緒に───アルテミス様?」

 

 

 しっかりと男風呂を堪能していたランテに声がかかった。最初は何の躊躇いもなく返事を返したランテだったが、後から声の主が誰なのかが分かった彼女(ランテ)の表情は一気に真っ青になった。

 

 恐る恐る後ろを振り返ってみると、そこには怒りのオーラを纏った月女神の姿。その姿を見たランテの体は、暖かい湯船に浸かっているのにも関わらずブルブルと震えてしまっていた……。

 

 

「レトゥーサ達からの報告を聞いて来てみれば……随分と男風呂を堪能していたようなぁ、ランテ?」

 

「ち、違うんですぅ!!こ、これは『未知』を探求する冒険者としての本能というか……使命というか……」

 

 

 湯船に浸かっているランテにじわじわと迫ってくるアルテミス。ランテは迫ってくるアルテミスから逃げるように後方に退避しながら言い訳を並べるが、そんな言い訳が通用する筈もなく、気が付いた時には檜風呂の端の方まで追い詰められていた。

 

 

「あっ!ア、アルテミスも一緒に入りませんか?と~ても気持ちがいいですよ」

 

「…………」

 

 

 まさかにランテの提案にアルテミスの歩みが止まった。『これは助かった?』と思ったランテだったが、気が付いた時にはアルテミスの手はランテの顔を鷲掴みにしており───。

 

 

「入るわけないだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

***

 

 

 

「という事があったんだ……」

 

「リリ達が本拠(ホーム)を空けている間にそんなことがあったんですねぇ……」

 

 

 そして、リリ達が帰ってきてからの話。逸れてしまったベルと、その捜索に向かってしまったエレンの捜索を行っていたが、【歓楽街】の営業終了いっぱいまで捜索を行ったが見つけることが出来ず、本拠(ホーム)へと引き返す事となった。

 

 当然、本拠(ホーム)にはベルとエレンは戻ってきていなかった。ヴェルフは抱えていたヘスティアを神室へと運んでいき、リリ達は本拠(ホーム)で留守をしてくれていたアルテミスに何があったのかを説明している所だった。

 

 

「それで、上(・)に(・)吊(・)る(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)のがその罪人さんですか?」

 

「あぁ。済まないが、しばらくそのままの状態にしてくれると助かる」

 

「助けてくださいぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 リリが指をさす真上にはロープで簀巻きのように状態でシャンデリアのように吊るされている罪人(ランテ)の姿。まさか、男風呂に侵入者が出ようとは思いもしなかったリリだったが、今回の一件で確信できたことがあった。

 

 

「前から思っていたのですが、男湯だけ何かおかしくありませんか?毎回お風呂から上がってくるベル様達。髪の毛と肌が艶々になってくるのですが?」

 

「疲れもよく取れるとも言っていたなぁ。ランテ、男湯に入ったお前の感想はどうだ?」

 

「また入りたいと思いました~♪」

 

「よし。あと6時間はそのままでいいな?」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

 

 やはり、男湯には何かあるようだ。そう確信したリリ達は男湯から採取したお湯を知り合いの神であるミアハにお願いして検査してもらうことにした。事情を聴いたミアハは早速リリ達が持ってきたお湯の検査を開始───結果は。

 

 

「ふむ、成分の結果が出たぞ」

 

「どうでした?ミアハ様」

 

「結論で言えば、この湯には回復薬(ポーション)のような回復効果があることが判明した」

 

「回復効果?」

 

「回復薬(ポーション)を水で薄めた感じだなぁ。……と言うか、この水は今話題の『奇跡の水』だぞ」

 

「「『奇跡の水』?」」

 

 

 検査の結果。男湯には回復効果が含まれていることが判明。さらに、検査をしたミアハがこの湯は今、【オラリオ】で話題になっているという『奇跡の水』であると告げた。

 

 

「あぁ。最近18階層で採れる水でなぁ。その水には疲労回復効果や美容効果があるといって、多くの採取依頼が出されているのだ」

 

「…………」

 

「むむぅ。どうして、18階層で採れる水が【ヘスティア・ファミリア】の男湯から採れるんでしょうね───アルテミス様?どうしたんですか?」

 

「…………」

 

 

 ミアハから『奇跡の水』の詳細を聞いたリリは頭を悩ました。何しろダンジョンから採れる水が自分の本拠(ホーム)の男湯から採れるというのだ。

 

 問題が分かった途端に新しい問題が出来てしまった。リリがそう思っていると、一緒に来ていたアルテミスの様子がおかしいことに気が付いたリリが声を掛けると、アルテミスは一本の赤い液体が入った試験管をミアハに渡した。

 

 

「……ミアハ。これも調べてみてくれないか?」

 

「?なんだアルテミス。これは見たところ、『血』のように見えるが……?」

 

「血?」

 

 

 ミアハとリリは首を傾げたが、ミアハはアルテミスから受け取った試験管を持って部屋の奥へと消えていった。

 

 

「アルテミス様。さっきの試験管の中に入っている血は?」

 

「…………あれは、『エルソスの遺跡』の別れ際に渡されたものだ。───できれば、外れてほしいのだが……」

 

「?」

 

 

 何やら意味深なことを呟くアルテミス。それをすぐ近くで聞いていたリリはその内容を理解できず、再び首を傾げる。しばらくすると、検査が終わったミアハがアルテミスから渡された試験管を持って戻ってきた。

 

 

「……ミアハ。検査の結果はどうだった?」

 

「ふむ。お主に渡されたこの『血』なのだが、『奇跡の水』と同じ成分が検出された───いや、源(・)泉(・)と言ったほうがいいか。そのような成分が検出されたぞ」

 

「…………」

 

「アルテミス。あんな代物、一体何処で手に入れたのだ?」

 

 

 ミアハの質問にアルテミスは答えずらそうな表情をした。だって、アルテミスが渡した試験管の中身の『血』は、彼女の精霊(子供)のものだからである。

 

 そして、全知全能の存在であるアルテミスには分かってしまった。『奇跡の水』とは、言ってしまえば、彼の血の副(・)産(・)物(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)も(・)の(・)。大体の予想が出来てしまったアルテミスは『なんてことだ……』と小さく呟いた……。

 

 

「…………その血は、彼……エ(・)レ(・)ン(・)の血だ。彼の血には精霊の血───言ってしまえば、癒しの力がある」

 

「へっ?」

 

「ふむ。確かに、精霊の血は癒しの力がある──────まさかっ!?」

 

「あぁ。『奇跡の水』の正体は、エレンの体に流れている『精霊の血』の副産物───正確には、あの子(エレン)だ」




ここまで読んでいただきありがとうございました。

『奇跡の水』の正体はエレンの煮汁(あせ)が溶け込んだ水です。どっかの聖女と同じようなものです。唯一違う点があるとすれば、この『奇跡の水』はエレンの体に流れる『精霊の血』を薄めることで同じようなものができることぐらいです。


エレン
 衝撃の真実を知ってしまって精神に大ダメージを喰らった。そして、始まるは邪神(ヘルメス)狩り。彼の命運もあと僅かである……。
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